(5)D若紫1北山の加治と明石の入道の女の話

 

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語釈

                                   ・接逆接

(1)@瘧病にわづらひたまひて、1よろづにまじなひ加持など参らせたまへど(光源氏)、しるしなくて、あ

            ・接原因理由

またたびおこりたまひければ(光源氏)、ある人、「A北山になむ、なにがし寺といふ所に、かしこき行ひ人1

                 ・接単純              ・格対象

はべる(僧都)。去年の夏もB世におこりて(瘧病)、人びとまじなひわづらひしを(人々)、やがて2Cとどむ

                                ・接順接確定

たぐひ、あまたはべりき(僧都)。Dししこらかしつる時はうたてはべるを(光源氏)、とくこそ試み2させ

 

たまはめ(光源氏)」など4聞こゆれば(人々)、3召しに 遣はしたるに「老いかがまりて、室の外にも

 

まかでず」と申したれば(僧都)、「Dいかがはせむ。4いと忍びてものせむ(光源氏)、」とのたまひて、御

 

供にむつましき四、五人ばかりして、まだ暁におはす(光源氏)、。

 

(注)@瘧病 「草ぶるい」のことで、俗のいう「おこり」とは別。A北山になむ 北山で、何とか寺という所に、えらい修行僧が。B世に起こりて 世間に流行したために。Cとどむるたぐひ 御祈祷で鎮めとどめる。

ししこらかしつる しそこなった場合は。Dいかがはせむ どうしようか。

 

一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

1 瘧病 2 加持 3 去年 4 遣はし 5 暁

 

二 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

 1 瘧病

 

2 わづらふ

 

 3 加持

 

 4 やがて

 

 5 うたて

 

 6 召す

 

三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1〜4の問いに答えよ。

 

 1 どこにかかるか。

 

 2 誰が何をするのか。

 

 3 誰が誰を呼びにやるのか。

 

 4 (1)光源氏のどういう気持ちが分かるか。

   

(2)この後では何と表現しているか。

四 二重傍線部1〜5の文法問題に答えよ。

 

 

 

 

 

 

 

注意

 

番号

まかで

 

聞こゆれ

たまは

させ

はべる

 

 

 

 

 

主語

 

 

 

 

 

種類

 

 

 

 

 

地の文

会話文

 

 

 

 

 

敬意

誰が

 

 

 

 

 

 

誰を

 

 

 

(2)やや深う入る所なりけり(庵室)。三月のつごもりなれば、京の花盛りはみな過ぎにけり(京の桜)。山

                          ・接単純             ・接原因理由

の桜はまだ盛りにて(山の桜)、1入りもておはするままに、@霞のたたずまひも2をかしう見ゆれば(霞)

 

かかるありさまもならひ1たまはず(光源氏)、3所狭き御身にて、めづらしう2思さけり(光源氏)。寺

 

のさまもいとあはれなり(寺)。峰高く、深き岩の中にぞ(居る所)、聖入りゐたりける(聖)。4登りたまひて

                                  ・接逆接     ・接原因理由 

(光源氏)、誰とも知らせたまはず(光源氏)、Aいといたうやつれたまへれど(光源氏)、しるき御さまなれば

 

(光源氏)、「Bあな、かしこや。一日、召しはべりしにやおはしますらむ(光源氏)。今は、この世のことを思

     ・接原因理由             ・接逆接

ひたまへねば(僧都)、験方の行ひも捨て忘れてはべるを(僧都)、いかで、かう4おはしましつらむ(光源氏)」

 

と5驚き騒ぎ(僧都)、6うち笑みつつ見たてまつる(僧都)。7いと尊き大徳なりけり(僧都)。さるべきもの

 

作りて、すかせ5たてまつり(僧都)、加治などまゐるほど(僧都)、日高くさし上がりぬ(日)。

 

(注)@霞のたたずまひも 霞のたなびいている様子。Aいといたうやつれ 大層ひどく身なりを変えて手軽になさったけれど。Bあなかしこや ああ恐れ多いことであるよ。 

 

一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

 1 三月 2 霞 3 聖 4 験方 5 大徳 

二 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

 1 所狭し

 

 2 聖

 3 やつる

 

 4 験方

 

 5 大徳

 

 6 すかす

 

三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1〜14の問いに答えよ。

 

 1 「もて」はどういう動作・状態を表すか。

 

 2 どこにかかるか。

 

 3 光源氏のどのような身の上のことか。

 

 4 主語を記せ。

 

 5 主語を記せ。

 

 6 聖のどんな気持があらわれているか。

 

 7 誰のことか。

 

四 二重傍線部1〜5の文法問題に答えよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注意

 

番号

たてまつり

おはしまし

思さ

たまは

 

 

 

 

 

主語

 

 

 

 

 

種類

 

 

 

 

 

地の文

会話文

 

 

 

 

 

敬意

誰が

 

 

 

 

 

 

誰を

                   ・接偶然条件

(3)1すこし立ち出でつつ見渡したまへば(光源氏)、高き所にて()、ここかしこ、僧坊どもあらはに見お

 

ろさるる(光源氏)、2ただこのつづら折の下に(つづら折り)、同じ小柴なれど(小柴垣の家)、うるはしくし

 

渡して(僧都の家)、@清げなる屋、廊など続けて(僧都の家)、木立いとよしあるは(僧都の家)、「何人の住

 

           ・接偶然条件 

むにか」と問ひ1たまへば(光源氏)、御供なる人、「これなむ、なにがし僧都の、二年籠もり2はべる方には

 

べるなる(僧都の家)」「心恥づかしき人住むなる所にこそあなれ(僧都の家)。あやしうも、あまりやつしける

 

かな。聞きもこそすれ」など3のたまふ(光源氏)。清げなる童などあまた出で来て(童女)、閼伽4たてまつ

 

り(童女)、花折りなどするも(童女)あらはに見ゆ(作者)。「かしこに、女こそありけれ(女)」「僧都は、よ

 

も、さやうには、据ゑ5たまはじを(僧都)」「いかなる人ならむ」と口々言ふ。下りて覗くもあ(女)。「をかし

 

げなる女子ども(女子)、若き人(若い人)、童女なむ見ゆる(童女)」と言ふ。

 

(注)@清げなる屋、廊など続けて 小ざっぱりした家屋や廊下などを連続させて。

 

一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

 1 僧坊 2 小柴 3 木立 4 籠る 5 閼伽 6 覗く

 

二 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

 1 僧坊

 

 2 あらはなり

 

 3 つづら折り

 

 4 清げなり

 

 5 籠る

 

 6 やつす

 

 7 閼伽

 

 8 をかしげなり

 

三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1〜2の問いに答えよ。

 

 1 主語を記せ。

 

 2 どこにかかるか。

四 二重傍線部1〜5の文法問題に答えよ。

 

 

 

 

 

 

 

注意

番号

たまは

 

奉り

 

のたまふ

 

はべる

たまへ

 

 

 

 

 

(問ひ=光源氏)

主語

 

 

 

 

尊敬

 

種類

 

 

 

 

地の文

地の文

会話文

 

 

 

 

作者

敬意

誰が

 

 

 

 

光源氏

 

誰を

 

 

五 口語訳

(1)  わらわ病にかかりなさっていろいろとまじないや加治などおさせなさるが、ききめがなくて、何度も病気にかかりなさったので、ある人が「北山に何とか言う寺と言うところに優れた修行者がいます。去年の夏も世間に流行して、人々がまじなってだめだったのをすぐに治した例がたくさんありました。そうなった場合は面白くなく厭でしょうから早く試みなさい。」など申し上げるので、呼びに行かせたところ、「年をとり腰が曲がったので僧坊の外にも出られません。」と申したので、「どうしようか。大層人目を忍んで行こう。」とおっしゃって御供に親しい四五人だけで、まだ暁にいらっしゃる。

(2)  やや深く入った所だった。三月の晦日なので、京の花盛りはみな過ぎてしまた。山の桜はまだ盛りで、はいっていらっしゃるにつれて霞のたなびいている様子も趣深く見えるので、こういうこともしたことがおありにならない。窮屈な身の上に珍しいこととお思いになった。寺の様子もしみじみと趣深い。峰が高く深い崖の中に聖人は入り座っていた。上りなさって誰とも知らせなさらず、大層ひどく身なりを変えて、手軽になさるけれどもはっきり分かる御様子であるので、「ああ、恐れ多いことであるよ。先日お召しになった方でいらっしゃるのだろう。今はこの世のことは考え申さないので効験を表すための加持祈祷も捨て忘れてございますので、どうしてこのようにいらっしゃったのだろう。」と驚き騒ぎ微笑み申し上げる。大層高徳の僧だった。加治のときに用いる講府を作りお飲ませ申し、加治などし申すうちに日は高くさし上がった。

(3)  少し外に出て見渡しなさると、高いところなので、あちらこちらにそうぼうなどがはっきりとみおろされる。ただ、このつづら折りの下に、同じ小柴垣であるれどこざっぱりした家居やろ過などを連続させて、木立は大層風流であるのは、「だれが住んでいるのだろうか?」とお尋ねになると、御供である人が、「これが某僧都がこの二年籠っています所でございますようだ。」「こちらが気後れするような立派な人が住んでいるというところなのだ。みすぼらしくも、あまりに目立たなくした。聞きつけたら困る。」などとおっしゃる。さっぱりした童女などが大勢出てきて仏に水を差し上げ花を折るなどもはっきり見える。「あそこに女がいる。僧都は まさかそんなに女を置いておくか、いや置かない。どなひとだろうか。」と口々に言う。下りて覗く者もいる。「かわいらしい女子供、若い人童女房などが見える。」と言う。

 

構成

 

(1)

 

 

 

 

 

(2)

 

 

 

 

(3)

 

 

 

北山へ

 

深い山 三月

京の桜過ぎ

山桜盛り

寺趣深い

 

高いところ

僧坊

趣深い家

時 場所

 瘧病が治らない

 

「連れてこい。」     →

「こっそり行こう。」   →

 四五人と行く。

 

 入っていく

こうした景色にも慣れていない

知らせない

 

 

見渡す

 

←「誰か?」

光源氏(18才の3月〜10月)

(ある人)「北山に優れた僧がいる。去年も治した。」

(僧)「年をとり外出できない。」

 

 

 

(僧)高徳の僧

 

 

 

 

(なにがし僧都)ここに籠る

(童女)(女こども)

(若い人)

僧都

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主題 光源氏は病気療養に北山に来て後の若紫を見かける。

 

 

 

 

(5)D若紫1北山の加治と明石の入道の女の話   解答

(1)

一 1 わらわやみ 2かじ 3 こぞ 4 つかわし 5 あかつき

二 1 周期的に発熱するマラリヤに似た病気 2 密教で行う祈祷の法 3 去年 4 お呼びにやる

 5 夜明け前

三 光源氏 僧都 四五人の御供

  1 まゐら 2 この行者が病気を 3 光源氏が行者を 

4 1一目に就かないように 2 いといたうやつれたまへて あやしうもあまりやつし給へるが 

四 二重傍線部1〜5の文法問題に答えよ。

 

 

 

 

敬語

 

最高

 

注意

 

番号

まかで

 

聞こゆれ

たまは

させ

はべる

僧都

 

ある人

 

(試み=光源氏)

 

(試み=光源氏)

 

 

主語

謙譲

謙譲

 

尊敬

尊敬

丁寧

種類

会話文

会話文

会話文

会話文

会話文

 

地の文

会話文

ある人

 

 

ある人

 

ある人

ある人

ある人

敬意

誰が

光源氏

 

光源氏

 

光源氏

光源氏

僧都

 

 

誰を

(2)

一 1 やよい 2 かすみ 3 ところせし  4 げんがた 5 だいとこ

二 1 窮屈な 2 聖人 3 地味で一目に立たない姿になる 4 効験を表すための加持祈祷

  5 高徳の僧 6 食べる 飲む

三 光源氏 都僧

1 だんだん山深く入っていく様子 2 めづらしうおぼされけれ 3 身分が高く勝手に出歩けない

4 光源氏 5 僧都 6 高貴な人が自分を訪ねてきてくれた尊敬と好意の気持ちを持って 7 僧都

 

 

 

敬語

最高

 

注意

 

番号

たてまつり

おはしまし

思さ

たまは

(見=僧都)

光源氏

(思さ=光源氏)

光源氏

(ならひ=光源氏)

主語

謙譲

 

尊敬

 

尊敬

尊敬

尊敬

 

種類

地の文

 

会話文

地の文

地の文

地の文

 

地の文

会話文

作者

僧都

 

 

作者

作者

作者

敬意

誰が

光源氏

光源氏

光源氏

光源氏

光源氏

 

誰を

(3)

一 1 僧坊 2 こしばがき 3 こだち 4 こもる 5 あか 6 のぞく

二 1 寺に付属した、僧の住む建物 2 外部から丸見えの様 3 折れ曲がった坂道 

4 さっぱりして美しいさま 5 はいっていて出ない 6 目たたないように姿を変える

7 梵語で水のこと。仏に備える神聖な水 8 かわいらしい

三 光源氏 僧都

  1 光源氏が僧都の庵室から外へ 2 下に 

 

 

 

 

 

 

 

注意

番号

たまは

 

奉り

 

のたまふ

 

はべる

たまへ

 

(据ゑ=僧都)

 

童女

 

光源氏

 

(問ひ=光源氏)

主語

尊敬

 

謙譲

 

尊敬

丁寧

尊敬

種類

会話文

 

地の文

 

地の文

 

会話文

 

地の文

 

地の文

会話文

供の者

 

作者

 

作者

 

光源氏

 

作者

 

敬意

誰が

僧都

 

 

光源氏

 

僧都

 

 

光源氏

 

 

誰を