(4)C夕顔5惟光隣家の調査報告

 

TOPへもどる

 

古文へもどる

 

語釈

                        ・接単純

(1)そのわたり近きなにがしの院におはしまし着きて、預り1召し出づるほど(光源氏)、荒れたる門の忍ぶ

                                           ・接原因理由

草茂りて1見上げられたる、たとしへなく木暗し(門)。霧も深く、露けきに簾をさへ上げ2                                         ・接逆接            

たまへれば、御袖もいたく濡れにけり(光源氏)。「まだ2かやうなることを慣らはざりつるを、3心尽くし

 

なることにもありけるかな(光源氏)。

 

ア いにしへもかくやは人の惑ひけむ我まだ知らぬしののめの道

 

慣らひ3たまへりやと4のたまふ(光源氏)。女、恥らひて(夕顔)

 

イ「 4山の端の心も知らで行く5はうはの空にて影や絶えなむ

                     ・接原因理由

心細く」とて、もの恐ろしうすごげに思ひたれば(夕顔)「かのさし集ひたる住まひの慣らひならむ」と、をか

 

しく5思す(光源氏)。御車入れさせて(光源氏)、西の対に御座などよそふほど(管理人)、高欄に御車ひきか

 

けて立ちたまへり(光源氏)。右近、艶なる心地して、来し方のことなども、人知れず思ひ出でけり(夕顔の侍

                ・格動作の原因

女)。預りいみじ経営しありく気色に(管理人)、6この御ありさま知りはてぬ(夕顔の侍女)。

 

(注)

一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

 1 夕顔 2 召す 3 簾 4 袖 5 御座 6 高簾 7 右近 8 艶なり

 

 9 経営 10 気色

 

二 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

 1 預かり 

 

 2 たとしへなし

 

 3 心づくし

 

 4 しののめ

 

 5 かげ

 

 6 よそふ

 

 7経営

 

 

 

三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1〜6の問いに答えよ。

 

 1 「見上げられたる」の次に、略されている言葉を六字以内の現代語で答えよ。

 

 2 指示内容を記せ。

 

 3 「心づくしなることにもありけるかな。」とはどういう意味か。また、「心づくしなること」とは何がそうなのか、六字で抜き出せ。

 

 4・5 それぞれ誰を指しているか。

 

 6 誰のことを指すか。

 

四 二重傍線部1〜5の敬語表現について、次の空欄を埋めよ。

 

 

 

 

 

注意

 

番号

おぼす

 

のたまふ

 

給へ

 

給へ

 

めしいづる

 

 

 

 

 

主語

 

 

 

 

 

種類

 

 

 

 

 

地の文

会話文

 

 

 

 

 

敬意

誰が

 

 

 

 

 

 

誰を

 

 

               ・格時                      ・接逆接 

(2)ほのぼのともの見ゆるほどに(様子)、下り1給ひぬめり(光源氏)。かりそめなれど、きよげにしつら

                                  

ひたり(某院)。「御供に人も2候はざりけり。不便なるわざかな(光源氏)。」とて、むつましき下家司にて、殿

              ・接原因理由

にも3つかうまつる者なりければ、4参り寄りて(管理人)、「さるべき人、召すべきにや。」など1申さすれど

 

管理人)、、「ことさらに人来まじき隠れが、求めたるなり(光源氏)。さらに心よりほかに漏らすな。」と、

                         ・接逆接 

口固めさせ給ふ(光源氏)。御粥など急ぎ5参らせたれど(管理人)、取り次ぐ御まかなひ、うちあはず(給仕)

 

まだ知らぬことなる御旅寝に4、息長川と契り給ふことより他の事なし(光源氏)。

 

一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

 1 不憫 2 下家司 3 漏らす 4 粥 5 息長かわ

 

 

 

 

二 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

 1 かりそめなし

 

 2 むつまし

 

 3 口がたむ

 

 4 粥

 

 5 食事や身の回りの世話アをすること。

 

三 傍線部1〜4の問いに答えよ。

 

 1 「申さすれど」、2「口がためさせ給ふ」とあるが、当時身分差の大きい者の間では原則として中間に立つ取り次ぎがいてそれを通じてコミュニケーションが行われた。その現象を示す1、2の場合、ア誰が、イ誰を通じて、ウ誰にコミュニケーションを図ろうとしているのか。

 1 

 2 

 

 3「まだ知らぬことなる御旅寝」という言葉は、ここまでのどの語句と照応している。

 

 4 「息長川と契り給ふこと」とはどういうことか、」

 

 

 

 

 

注意

 

番号

給ふ

参らせ

つかうまつる

候は

 

給ひ

 

 

 

 

 

 

主語

 

 

 

 

 

種類

 

 

 

 

 

地の文

会話文

 

 

 

 

 

敬意

誰が

 

 

 

 

 

 

誰を

 

四 二重傍線部1〜5の敬語表について空欄を埋めよ。

 

 

(3)日たくるほどに起きたまひて、格子1手づから上げ1たまふ(光源氏)。いといたく荒れて、人目もなく

 

はるばると見渡されて、木立いとうとましくものふりたり(庭)。け近き草木などは、ことに見所なく、みな秋

                ・接原因理由

の野らにて、池も水草に埋もれたれば、いとけうとげになりにける所かな(庭)。別納の方にぞ、曹司などして、

       ・接逆接

人住むべかめれど、こなたは離れたり(別納)。「けうとくもなりにける所かな(様子)。さりとも、2鬼なども

      

我をば見許してむ」と2のたまふ(光源氏)。顔はなほ隠し3たまへれど(光源氏)、女のいとつらしと思へれ

ば(夕顔)、「3げに、かばかりにて隔てあらむも、4ことのさまに違ひたり」と4思して(光源氏)、

  

ア 「夕露に紐とく花は玉鉾のたよりに見えし縁にこそありけれ6露の光やいかに」

 

とのたまへば、後ろ目にみおこせて(夕顔)、光ありと見し夕顔のうは露はたそかれ時のそら目なりけり 」と

 

ほのかに言ふ(夕顔)。をかしと思しなす(光源氏)。げに、うちとけたまへるさま、世になく、所から、まい

 

て7ゆゆしきまで見えたまふ(光源氏)。

 

一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

1 格子 2 水草 3 別納 4 曹司 5 後目

 

二 次の語の意味を辞書で調べよ。

 

 1 たく

 

 2 うとまし

 

 3 ものふる

 

 4 けうとげなり

 

 5 曹司

 

 6 つらし

 

 7 後目

 

 8 空目

 

三 傍線部1〜7の問いに答えよ。

 

 1 「手づから」の語からどういう状況が分かるか。

 

 2 「鬼なども」と言ったのは、この屋敷の有様と、どうかかわっているか。

 

 3 「かばかり」とはどのような状態を指すか、十字以内で完結の答えよ。

 

 4 どういう意味か。

 

 5 「おぼして」とあるが次に光源氏のどのような行動が省略されているか、六字以内。

 

 6 「露の光」は何を指すか。

 

 7 (1)その美しさを「ゆゆしき」と表現したのはなぜか。

 

   (2)この某院で、夕顔は枕上に現れた物の怪のために息絶えてしまう。この文章から恐怖感を表す 形容詞・形容動詞を五つ抜き出せ。 

 

四 二重傍線部1〜5の敬語表を埋めよ。

 

 

 

 

 

 

 

注意

 

番号

のたまへ

思し

たまへ

 

のたまふ

たまふ

 

 

 

 

 

主語

 

 

 

 

 

種類

 

 

 

 

 

地の文

会話文

 

 

 

 

 

誰が

 

 

 

 

 

誰に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五 口語訳

 

(1)夕顔の家のあたり、某院にお着きになって、管理人をお呼び出しになっているうちに、荒れた門がしのぶ草が茂って見上げられる。たとえようがないほど暗い。朝露も深くこめて露が一面におりているのに、あげなさると御袖もひどく濡れた。「まだこういうことは慣れていないので気苦労なことだなあ。

 

  ア 昔もこのように戸惑ったのだろうか。私がまだ知らない夜明け前の道を

 

成れなさっているか。」とおっしゃる。女は恥ずかしそうに

 

  イ 山の端の心も知らないで行く月は大空の途中で姿が消えてなくなるだろうか

 

と言って恐ろしくぞっとするように思ったので、光源氏は「あの狭い住居の習慣だろうとおかしく思う。御車を入れさせてに西の対に御座所など準備する間、欄干に御車のながえを引きかえて立ちなさる。右近は浮き立つ気持ちがして、過去の事(頭中将のこと)なども人知れないように思い出すのだった。管理人がきちんと準備する様子から、この御様子をすっかり知ってしまった。

 

(2)ほのぼのと物が見えだす時分に、おりなさるようだ。一時的だけれど、さっぱりと美しく整えてある。「御供に人も伺候していない不便さだ。」と言う。親しい下家司で左大臣家にもお仕えしていたものでもあったので、参り寄りて「しかるべき方をお呼びするのがよいだろうか。」など申されるが、『格別に人が来ない隠れ家を求めたのだ。さらに心よりほかに漏らすな。』と口がためなさる。御粥などを急いで準備させたが、御給仕をする給仕も間に合わない。まだ体験したことのない御旅寝に息長側の歌のように二人の仲が絶えることはないと誓いなさるよりほかにはなかった。

(3)日が高くなるころに起きなさって、格子を自身で上げなさる。大層ひどく荒れて人の出入りもなく、はるばると見渡されて木立が大層気味が悪いほどなんとなく古くなっている。近くの草木などは特に見どころもなくみな秋の野原で池も水草に埋もれているので、大層興ざめした様子になっている所だなあ。それでも、鬼などもきっと身許すだろう。」とおっしゃる。顔はやHり隠しなさるけれど、女が大層ひどいと思っているので、なるほどこれほどになって隔てているとしたらそのようなのもこの場にふさわしくないとお思いになって、

 

  「夕露に花を開く花は道の頼りに見えた縁でこそある。露の光はどんなだ。」とおっしゃるので流し眼にこ

 

ちらのほうを見て、

 

  「光あると見た夕顔の上露はたそがれ時のみまちがいであった。」

 

と、かすかに言う。趣深いとお思いになる。なるほど打ち解けなさる世すはこの世のものでなく、所がらまして気味悪いほどに見えなさる。

 

 

構成

 

主題 荒廃した某院で夕顔は光源氏に打ち解けていく。

(1)

 

 

 

 

(2)

 

 

 

 

(3)

某院

荒れた門

霧 西の対

 

 

夜明け 

某院=間に合わせだがきれい

 

 

日が高くなる

庭=荒れている

様子=恐ろしい

時 場所

 

女と外出は初めて

歌ア 私の知らない道

 

 

 

牛車からおりる

「人を呼ぶな 」     →

 

初めての体験

 

格子を上げる

「鬼は許してくれる。」

覆面をして顔を隠す。

歌ア 縁があえう

 「面白い」    

こわいほど美しい

 

光源氏(17歳の夏〜十月まで)

 

 

歌イ 心細い

(管理人)迎える準備

(右近)心浮き立つ

 

←(管理人)「供がいない。人を呼ぶか?」

 

←(管理人)粥の準備

 

 

 

 

←「ひどい。」

 

←歌イ 見そこない 

 

 

(この後、物の怪に取りつかれ殺される。)

夕顔(19才)

 

 

 

 

 

 

注意

 

番号

のたまへ

思し

たまへ

 

のたまふ

たまふ

光源氏

光源氏

(隠し=光源氏)

 

光源氏

(上げ=光源氏)

主語

尊敬

 

尊敬

 

尊敬

 

尊敬

 

尊敬

種類

地の文

地の文

地の文

地の文

地の文

地の文

会話文

作者

作者

作者

作者

作者

誰が

光源氏

光源氏

光源氏

光源氏

光源氏

誰に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(4)C夕顔5惟光隣家の調査報告  解答

(1) 光源氏 夕顔

一 1 ゆうがお 2 めす 3 すだれ 4 そで 5 おまし 6 こうらん 7 うこん

  8 えん 9 けいめい 10 けしき

二 1 管理人 2 たとえようがない 3 きをもむこと 

4 夜があけようとしてほのかに明るくなるころ 5 光 影 6 準備をする 

7 あれこれと世話を焼く

 三 1 門の様子は 2 女と同車して外へ連れ出して会うこと 3 (1)気苦労なことだなあ

  (2)しののめの道 4 光源氏  5 夕顔 6 光源氏

 

 

 

 

 

 

注意

 

番号

おぼす

 

のたまふ

 

給へ

 

給へ

 

めしいづる

光源氏

光源氏

(ならひ=夕顔)

(上げ=光源氏)

光源氏

主語

尊敬

尊敬

尊敬

尊敬

尊敬

種類

地の文

地の文

地の文

地の文

地の文

地の文

会話文

作者

作者

作者

作者

作者

敬意

誰が

光源氏

光源氏

夕顔

光源氏

光源氏

 

誰を

 

(2)

一 1 ふぶん 2 しもげいし 3 も 4 かゆ 5 おきなががわ

二 1 一時的なこと 2 親しい 3 口止め 4 こめをみずで煮たもの 堅粥 居間のご飯

  汁粥 今の粥 5 食事や身のまわりの世話をすること

 

三 光源氏 管理人 給仕

 

 

 

 

 

注意

 

番号

給ふ

参らせ

つかうまつる

候は

 

給ひ

 

光源氏

管理人

管理人

供の人

 

(下り=光源氏)

主語

尊敬

謙譲

謙譲

 

謙譲

 

尊敬

種類

地の文

 

地の文

地の文

会話文

 

地の文

地の文

会話文

作者

作者

作者

 

管理人

作者

敬意

誰が

光源氏

光源氏

左大臣家

光源氏

光源氏

 

誰を

 

 

 

 

(3)

一 1 こうし 2 みくさ 3 べちのう 4 ぞうし 5 しりめ

二 1 日が高くなる 2 気味が悪い 3 なんとなく古くなる 4 興ざめした様子

  5 宮中や役所などに設けられた役人や女官などの部屋 6 ひどい 7 流し目 8 見間違い

三 光源氏 夕顔

 1 光源氏は夕顔と二人でいる状況を邪魔されたくない。他の人を呼ばない。

 2 鬼でも住んでいそうなくらい屋敷の荒廃した様を暗示する。

 3 深い仲になった状態 4 この場にふさわしくない 5 覆面を取り

 6 光源氏の美しさ 7 (1)鬼や物の怪に魅入られるほど不吉なまでの美しさだから

 (2)もの恐ろし すごげなり うとまし けうとげなり けうとし

 

 

 

 

 

 

 

注意

 

番号

のたまへ

思し

たまへ

 

のたまふ

たまふ

光源氏

光源氏

(隠し=光源氏)

 

光源氏

(上げ=光源氏)

主語

尊敬

 

尊敬

 

尊敬

 

尊敬

 

尊敬

種類

地の文

地の文

地の文

地の文

地の文

地の文

会話文

作者

作者

作者

作者

作者

誰が

光源氏

光源氏

光源氏

光源氏

光源氏

誰に