(2)@桐壺4ゆげいの命婦の見舞いと復命 .
語釈
(1)命婦は、「まだ1大殿籠もら2せ3たまはざりける(桐壺帝)」と、1あはれに見たてまつる(命婦)。御
・格対象
前の@壺前栽のいとおもしろき盛りなる(壺前栽)を、2御覧ずるやうにて、3忍びやかに(桐壺帝)心にく
・接単純
き限りの女房四五人(女房)さぶらはせたまひ(桐壺帝)て、御物語せさせたまふなりけり(桐壺帝)。このこ
ろ、明け暮れ御覧ずるA長恨歌の御絵、B亭子院の描か4せ5たまひて、C伊勢、貫之に詠ませたまへる、大
和言の葉をも、4唐土の詩をも、ただ5その筋をぞ、枕言にせさせたまふ(桐壺帝)。
(注)@壺前栽 清涼殿と後涼殿との間にある中庭の植え込み。A長恨歌 中国、唐の白居易の長詩。玄宗皇帝と楊貴妃をモデルとする。B亭子院 宇多天皇(867〜931 在位887〜897)C伊勢、生没年未詳。9世紀後半から10世紀前半の女流歌人。歌集に『伊勢集』がある。C貫之 紀貫之(?〜945?)。『古今集』の撰者の一人。『土佐日記』の作者。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 命婦 2 大殿籠る 3 前栽 4 長恨歌 5 唐土
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 大殿籠る
2 心にくし
3 やまと言の葉
4 まくら言
三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1〜5の問いに答えよ。
登場人物
1 誰が誰をどのよに見たのか。
2 「ご覧じて」と比べてどんな表現効果を生むか。
3 どこにかかるか。
4 なにのことか。
5 (1)指示内容を記せ。
(2)帝が「その筋」を「まくら言」にするのはなぜか。
四 二重傍線部1〜の文法問題について次の表を埋めよ。
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注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
給ひ |
せ |
給は |
せ |
大殿籠る |
語 |
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主語 |
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種類 |
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地の文 会話文 |
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敬意 誰が |
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誰を |
(2)いとこまやかに1ありさま問はせたまふ(桐壺帝)。あはれなりつること忍びやかに1奏す(命婦)。2
・接偶然条件
御返り御覧ずれば(桐壺帝)、いともかしこきは@置き所も2はべらず。かかる仰せ言につけても、Aかきくら
す乱り心
地になむ(桐壺更衣の母)。
ア 荒き風ふせぎし3蔭の4枯れしより5小萩がうへぞ静心なき 」
・格対象
などやうに6乱りがはしきを(桐壺更衣の母)、7心をさめざりけるほどと御覧じ許すべし(桐壺帝)。Bいと
・接逆接確定条件
かうしも見えじと(桐壺帝)、思し静むれど(桐壺帝)、さらにえ忍びあへ3させ4たまはず(桐壺帝)、C御覧
・接逆接確定条件
じ初めし年月のことさへかき集め、よろづに思し続けられて、「時の間も8おぼつかなかりしを、9かくても月
日は経にけり」と、あさましう思し召さる(桐壺帝)。「D故大納言の10遺言あやまたず、宮仕への本意深く
ものしたりしEよろこびは、Fかひあるさまにとこそ思ひわたりつれ(桐壺帝)。言ふかひなしや」とうちのた
・接順接仮定
まはせて、いとあはれに思しやる(桐壺帝)。「かくても、おのづから若宮など生ひ出で5たまはば、Gさるべ
きついでもありなむ。命長くとこそ思ひ念ぜめ」などのたまはす(桐壺更衣の母)。ち
(注)@置き所もはべらず ありがたい仰せごとをいただいて、どうしてよいかわかりません。Aかきくらす乱り心地 心が真っ暗に思い乱れる気持。Bいとかうしも見えじ 決してこんな気弱な様子を見せまい。C御覧じ初めし年月 更衣をお召しになり始めたころ。D故大納言 桐壷の更衣の父を指す。Eよろこび お礼。
Fかひあるさま 宮仕えをした甲斐があったと思われるような状態。Gさるべきついで そのような(うれしい)機会。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 侍る 2 仰せごと 3 宮仕え 4 本意
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 かしこし
2 乱りがはし
3 あさまし
三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1〜10の問いに答えよ。
登場人物
1 「ありさま」とは何か。
2 「御返り」は誰の誰に対する返事か。
3 「かげ」、4「枯れし」5「小萩」はそれぞれ具体的に何指しているか。
6 何について言っているか。またどういう点が「乱りがはしき」か。
7 誰のどういう状態か。
8 何が「おぼつかなかりし」とうのか。
9 「かくて」はどのような状態をいっているか。
10 どのような「遺言」か。
四 二重傍線部1〜5の文法問題に答えよ。
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注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
給は |
給は |
させ |
侍ら |
奏す |
語 |
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主語 |
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種類 |
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地の文 会話文 |
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敬意 誰が |
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誰を |
(3)@かの贈り物1御覧ぜさす(命婦)。「A亡き人の住処尋ね出でたりけむしるしの釵なら1ましかば」と
2思ほす(桐壺帝)もいとかひなし(評価)。
イ 尋ねゆくB幻もがなつてにても魂のありかをそこと知るべく
二句切れ
絵に描ける楊貴妃の容貌は、いみじき絵師といへども、筆限りありければいとにほひ少なし(楊貴妃)。C太液
・こそ+已然(中止)=逆接用法
芙蓉未央柳も、2げに通ひたりし容貌を、3唐めいたる装ひはうるはしうこそありけめ(楊貴妃)、4なつかし
・格対象
うらうたげなりし(桐壷の更衣)を3思し出づるに、花鳥の色にも音にもよそふべき方ぞなき(桐壺帝)。朝夕
の言種に、「5D翼をならべ、枝を交はさむ」と契ら4せ5たまひしに、かなはざりける命のほどぞ、E尽きせ
ず恨めしき桐壺帝)。
(注)@かの贈り物 亡き更衣の形見として母君から贈られた品。A亡き人の住処尋ね出でたりけむしるしの釵 「長恨歌」に、漢皇(玄宗皇帝を暗示する)の命を受けた幻術士が、楊貴妃の魂にめぐりあったしるしに、
釵を持ち帰ったという詩句がある。B幻 幻術士。「長恨歌」には「道士」とある。C太液芙蓉未央の柳 「長恨歌」に、「太液芙蓉未央柳 芙蓉如面柳如眉。」とある。「太液」は漢の武帝が作った池。「芙蓉」は蓮。「未央」は漢の高祖の時作られた宮殿。D翼をならべ 枝を交はさむ 長恨歌」に「在天願作比翼鳥、在ち願為連理枝」とある。E尽きせず恨めしき 「長恨歌」に「天長地久時尽、此恨綿々無尽期」とある。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 釵 2 長恨歌 3 楊貴妃 4 太液の芙蓉 5 未央の柳 6 契らせ 7 恨めしき
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 つて
2にほひ
3 かよふ
4 よそふ
三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1〜5の問いに答えよ。
1 「ましかば」のあとにどのような言葉が相ら省略されているか。
2 「げに」は、何をうけて「なるほどそのとおり」と肯定しているか。
3 修辞法を記せ。
4 誰のどんな状態か。
5 どういうことのたとえか。
四 二重傍線部1〜4の文法問題に答えよ。
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注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
たまひ |
せ |
おぼしいづる |
思ほす |
ご覧ぜ |
語 |
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主語 |
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種類 |
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地の文 会話文 |
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敬意 誰が |
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誰を |
・接逆接
(4)風の音、虫の音につけて、もののみ悲しう思さるる(桐壺帝)に、@弘徽殿には、久しくA上の御局に
も参う上り1たまはず、1月のおもしろきに、夜更くるまで遊びをぞしたまふなる(弘徽殿の女御)。いとすさ
まじう、ものしと2聞こしめす(桐壺帝)。このごろの2御気色を見3たてまつるB上人、女房などは、かたは
らいたしと3聞きけり(上人・女房)。いとCおし立ちかどかどしきところものし4たまふ御方(弘徽殿の女御)
にて、4ことにもあらず思し消ちてもてなし5たまふなるべし(弘徽殿の女御)。月も入りぬ(月)。
(注)@弘徽殿 桐壺帝の女御、弘徽殿の。右大臣の娘。A上の御局 清涼殿にある、后妃のための部屋。弘徽殿の上の御局と藤壷の上の御局があり、ここは、前者。 B上人 殿上人。Cおし立ち 我を張り。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1 弘徽殿 2 上の御局 3 上人 4 女房 5 夜更くる 奉る
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 すさまじ
2 ものし
3 かたはらいたし
4 かどかどし
三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1〜1の問いに答えよ。
1 月はこの後どうなるか、抜き出せ。
2 誰のか。
3 何を聞いたのか。
4 「ことにもあらずおぼし消ちて」とはどのような態度か。
四 二重傍線部1〜4の文法問題に答えよ。
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注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
給ふ |
給ふ |
奉る |
聞くこしめす |
給は |
語 |
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主語 |
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種類 |
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地の文 会話文 |
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敬意 誰が |
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誰を |
(5)ウ「 @雲の上も涙にくるる秋の月いかですむらむA浅茅生の宿 」(桐壺帝)
掛詞 すむ 澄む 住む 宿 体言止め 四句切れ 倒置法 縁語 雲の上 月
思し召しやりつつ、1B灯火をかかげ尽くして起き1おはします(桐壺帝)。右近の司のC宿直まうしの声聞こ
ゆるは、丑になりぬるなるべし(右近の司)。人目を2思して、夜の御殿に入ら3せ4たまひても、2まどろま
せたまふことかたし(桐壺帝)。朝に起きさせたまふとても、「D明くるも知らで」と5思し出づるにも、3な
ほ朝政は怠らせたまひぬべかめり(桐壺帝)。
(注)@雲の上 宮中。「月」の縁語。A浅茅生の宿 母君の屋敷を指す。次の「おぼしめやりつつ」に続く。
B灯火をかかげ尽くして。「長恨歌」に「狐灯挑尽未成眠」とある。C宿直まうし 左右近衛府の宿直巡察の武官が、一定の時刻に姓名を名乗ること。D明くるも知らで 『伊勢集』に「玉すだれあくるもしらで寝しものを夢にも見じとゆめ思ひきや」とある。「伊勢、貫之によませ給へる、やまと言の葉」のうちの一首。
一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。
1浅茅色 2 右近 3 宿直 4 丑 5 朝政
二 次の語の意味を辞書で調べよ。
1 丑
2 夜の御殿
3 朝政
三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1〜14の問いに答えよ。
1 (1)どういうことか。
(2)どのような様をあらわしたものか。
2 (3)の「長恨歌」のどの部分と対応するか。
3 どういう意味か。
四 二重傍線部1〜4の文法問題に答えよ。
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注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
おぼしいづる |
給ひ |
せ |
おぼし |
おはします |
語 |
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主語 |
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種類 |
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地の文 会話文 |
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敬意 誰が |
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誰を |
五 口語訳
(1) 命婦は、まだお休みにならなかったとしみじみと見申す。御前の中庭の植え込みが大層趣深いさかりであるのを、ご覧になるふりをして、ひっそりと奥ゆかしい女房ばかり四五人を伺候させなさってお半死なさるのであった。このころ明け暮れご覧になる長恨歌の御絵、亭子の院がお書きになって伊勢・貫之に詠ませなさった(ものだが)和歌をも漢詩をもただその筋をいつも口癖に言う言葉になさっている。
(2) 大層細かに(更衣の里の)様子をお聞きになる。しみじみしたことをひそやかに申し上げる。(桐壷更衣の母の桐壷帝に対する )御返事をご覧になると、「大層恐れ多いことはありがたい仰せごとをいただいてどうしてよいかわかりません。こういう仰せ事についても心が真っ暗に思い乱れる気持ちです。
ア 荒い風を防いだ木が枯れてしまったように(若宮を守ってきた更衣が死んでしまってからは、残された)小萩のような(若宮の身の上が)心配で静かな心もない。
などと言うように無作法であるのを、心を鎮めることが出来ないときとお許しになるのだろう。決してこんあ気弱な様子を見せまいと鎮められるが、まったく忍び堪えることができない。更衣をお召しになり始めたころのことさえかきあつめ万事お思い続けられて、時間も心配になったのに更衣がこのように月日は過ぎてしまったとあきれるほどにもお思いなさる。「故大納言の遺言を違えないで、宮仕えの本意は深く守ったお礼は宮仕えをした甲斐があったと思われる「こうしても自然に若宮などが成長なさったならば、そのような機会もあろう。命長くと願いなさいとなどとおっしゃる。
(3) あの贈り物をご覧にいれる。楊貴妃の魂にめぐりあった証拠の釵 なら嬉しかったのにとお思いなのも大層甲斐がない。
イ(更衣の魂を)尋ねて行ってくれる幻術師がいたらなあ。人づてにでも魂のありかをそkだと知ることができるのに。
絵に描いた楊貴妃の容貌は、優れた絵師であるといっても、筆の才能に限りがあるので、たいしてきれいだった美しさはない。太液の芙蓉、未史の柳もなるほどたがいによく似た、(中国風の装束はたとえて言えば美しかっただろうが)懐かしく可愛いかったことをお思い出されるにつけ、花の色にも鳥の声にもたとえることはできない。朝晩の言い草に、翼を並べ枝を交えようと約束なさったのに、かなわなかった寿命のことがいつまでも恨めしい。
(4) 風の音虫の声につけて、なんとなく悲しく思われるのに、弘徽殿には長く、上の御局にもお上がりなさらないで月が趣深いので夜が更けるまで管弦の遊びをしなさるようだ。桐壺帝は大層面白くなく不快だとお聞きになる。このごろの御様子を見申している殿上人女房などはにがにがしいと聞いていた。大層我を張り心が角張っているところがおありになる方で、、大したことはないと打ち消して、とりはからいなさるのであろう。月も沈んだ。
(5) ウ 宮中でさえ涙に目の前が暗くなる秋の月よ。どうして澄んでいようか。草深い更衣の里で
思いをはせて、灯心が尽きるまでおきていらっしゃる。右近のつかさの宿直の名乗りを申す声が聞こえるのは午前2時になったのだろう。人目をお思いになって御寝所におはいりになってもうとうと眠ることも難しい。朝にお起きなさるといってもあけるのも知らないでとお思い出しになると、やはり朝政は怠けなさるようだ。
五 口語訳
(6) 命婦は、まだお休みにならなかったとしみじみと見申す。御前の中庭の植え込みが大層趣深いさかりであるのを、ご覧になるふりをして、ひっそりと奥ゆかしい女房ばかり四五人を伺候させなさってお半死なさるのであった。このころ明け暮れご覧になる長恨歌の御絵、亭子の院がお書きになって伊勢・貫之に詠ませなさった(ものだが)和歌をも漢詩をもただその筋をいつも口癖に言う言葉になさっている。
(7) 大層細かに(更衣の里の)様子をお聞きになる。しみじみしたことをひそやかに申し上げる。(桐壷更衣の母の桐壷帝に対する )御返事をご覧になると、「大層恐れ多いことはありがたい仰せごとをいただいてどうしてよいかわかりません。こういう仰せ事についても心が真っ暗に思い乱れる気持ちです。
ア 荒い風を防いだ木が枯れてしまったように(若宮を守ってきた更衣が死んでしまってからは、残された)小萩のような(若宮の身の上が)心配で静かな心もない。
などと言うように無作法であるのを、心を鎮めることが出来ないときとお許しになるのだろう。決してこんあ気弱な様子を見せまいと鎮められるが、まったく忍び堪えることができない。更衣をお召しになり始めたころのことさえかきあつめ万事お思い続けられて、時間も心配になったのに更衣がこのように月日は過ぎてしまったとあきれるほどにもお思いなさる。「故大納言の遺言を違えないで、宮仕えの本意は深く守ったお礼は宮仕えをした甲斐があったと思われる「こうしても自然に若宮などが成長なさったならば、そのような機会もあろう。命長くと願いなさいとなどとおっしゃる。
(8) あの贈り物をご覧にいれる。楊貴妃の魂にめぐりあった証拠の釵 なら嬉しかったのにとお思いなのも大層甲斐がない。
イ(更衣の魂を)尋ねて行ってくれる幻術師がいたらなあ。人づてにでも魂のありかをそkだと知ることができるのに。
絵に描いた楊貴妃の容貌は、優れた絵師であるといっても、筆の才能に限りがあるので、たいしてきれいだった美しさはない。太液の芙蓉、未史の柳もなるほどたがいによく似た、(中国風の装束はたとえて言えば美しかっただろうが)懐かしく可愛いかったことをお思い出されるにつけ、花の色にも鳥の声にもたとえることはできない。朝晩の言い草に、翼を並べ枝を交えようと約束なさったのに、かなわなかった寿命のことがいつまでも恨めしい。
(9) 風の音虫の声につけて、なんとなく悲しく思われるのに、弘徽殿には長く、上の御局にもお上がりなさらないで月が趣深いので夜が更けるまで管弦の遊びをしなさるようだ。桐壺帝は大層面白くなく不快だとお聞きになる。このごろの御様子を見申している殿上人女房などはにがにがしいと聞いていた。大層我を張り心が角張っているところがおありになる方で、、大したことはないと打ち消して、とりはからいなさるのであろう。月も沈んだ。
(10) ウ 宮中でさえ涙に目の前が暗くなる秋の月よ。どうして澄んでいようか。草深い更衣の里で
思いをはせて、灯心が尽きるまでおきていらっしゃる。右近のつかさの宿直の名乗りを申す声が聞こえるのは午前2時になったのだろう。人目をお思いになって御寝所におはいりになってもうとうと眠ることも難しい。朝にお起きなさるといってもあけるのも知らないでとお思い出しになると、やはり朝政は怠けなさるようだ。
五 口語訳
(11) 命婦は、まだお休みにならなかったとしみじみと見申す。御前の中庭の植え込みが大層趣深いさかりであるのを、ご覧になるふりをして、ひっそりと奥ゆかしい女房ばかり四五人を伺候させなさってお半死なさるのであった。このころ明け暮れご覧になる長恨歌の御絵、亭子の院がお書きになって伊勢・貫之に詠ませなさった(ものだが)和歌をも漢詩をもただその筋をいつも口癖に言う言葉になさっている。
(12) 大層細かに(更衣の里の)様子をお聞きになる。しみじみしたことをひそやかに申し上げる。(桐壷更衣の母の桐壷帝に対する )御返事をご覧になると、「大層恐れ多いことはありがたい仰せごとをいただいてどうしてよいかわかりません。こういう仰せ事についても心が真っ暗に思い乱れる気持ちです。
ア 荒い風を防いだ木が枯れてしまったように(若宮を守ってきた更衣が死んでしまってからは、残された)小萩のような(若宮の身の上が)心配で静かな心もない。
などと言うように無作法であるのを、心を鎮めることが出来ないときとお許しになるのだろう。決してこんあ気弱な様子を見せまいと鎮められるが、まったく忍び堪えることができない。更衣をお召しになり始めたころのことさえかきあつめ万事お思い続けられて、時間も心配になったのに更衣がこのように月日は過ぎてしまったとあきれるほどにもお思いなさる。「故大納言の遺言を違えないで、宮仕えの本意は深く守ったお礼は宮仕えをした甲斐があったと思われる「こうしても自然に若宮などが成長なさったならば、そのような機会もあろう。命長くと願いなさいとなどとおっしゃる。
(13) あの贈り物をご覧にいれる。楊貴妃の魂にめぐりあった証拠の釵 なら嬉しかったのにとお思いなのも大層甲斐がない。
イ(更衣の魂を)尋ねて行ってくれる幻術師がいたらなあ。人づてにでも魂のありかをそkだと知ることができるのに。
絵に描いた楊貴妃の容貌は、優れた絵師であるといっても、筆の才能に限りがあるので、たいしてきれいだった美しさはない。太液の芙蓉、未史の柳もなるほどたがいによく似た、(中国風の装束はたとえて言えば美しかっただろうが)懐かしく可愛いかったことをお思い出されるにつけ、花の色にも鳥の声にもたとえることはできない。朝晩の言い草に、翼を並べ枝を交えようと約束なさったのに、かなわなかった寿命のことがいつまでも恨めしい。
(14) 風の音虫の声につけて、なんとなく悲しく思われるのに、弘徽殿には長く、上の御局にもお上がりなさらないで月が趣深いので夜が更けるまで管弦の遊びをしなさるようだ。桐壺帝は大層面白くなく不快だとお聞きになる。このごろの御様子を見申している殿上人女房などはにがにがしいと聞いていた。大層我を張り心が角張っているところがおありになる方で、、大したことはないと打ち消して、とりはからいなさるのであろう。月も沈んだ。
(15) ウ 宮中でさえ涙に目の前が暗くなる秋の月よ。どうして澄んでいようか。草深い更衣の里で
思いをはせて、灯心が尽きるまでおきていらっしゃる。右近のつかさの宿直の名乗りを申す声が聞こえるのは午前2時になったのだろう。人目をお思いになって御寝所におはいりになってもうとうと眠ることも難しい。朝にお起きなさるといってもあけるのも知らないでとお思い出しになると、やはり朝政は怠けなさるようだ。
構成
主題 亡き桐壷の更衣をしのぶ桐壺帝の哀惜と悲嘆
(1) (2) (3) (4) (5) |
節 |
壷前栽 長恨歌の絵 和歌 漢詩 楊貴妃 美しさ無し 芙蓉 柳 池 風の音 虫の音 月=風流 月=沈む 午前2時頃 |
時 場所 |
眠らない ←見るふり (女房四、五人と話す ←悲恋を口癖 様子を聞く → 歌 イ 更衣はどこ? 仲好くと誓ったのに。 ←悲しい。 「不快だ。」 歌 ウ 涙で曇る月 寝室へ 眠れない 朝の仕事を怠る。 |
桐壺帝 |
まだ寝ない ←見る ←報告 (桐壷の更衣の母) 「乱れた気持ち。 歌 ア 若宮が心配。」 ←(桐壷の更衣の母)贈り物 (弘徽殿の女御) 管弦の遊び 我を張る。 桐壺の更衣の死(20オ歳頃)を無視する |
命婦 |
(2)@桐壺4ゆげいの命婦の見舞いと復命 . 解答
(1)
一 1 みょうぶ 2 おおとのごもる 3 せんざい 4 ちょうごんか 5 もろこし
二 1 お休みになる 2 奥ゆかしい 3 和歌 4 いつも口癖に言う言葉
三 登場人物 命婦 桐壺帝
1 命婦が桐壺帝をしみじみといたわしく思った
2 「御覧ずるやうにて」は御覧になるふりをして、実は見ていない
3 御物語せさせ給ふなりけり 4 漢詩
5 (1)長恨歌の、玄宗皇帝が楊貴妃を失って悲嘆にくれた内容
(2)楊貴妃を失った玄宗皇帝の悲嘆の情と桐壺の更衣を失った自分の心情とが同じだから
四
最高敬語 |
最高敬語 |
最高敬語 |
最高敬語 |
最高敬語 |
注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
給ひ |
せ |
給は |
せ |
大殿籠る |
語 |
(かか=亭子の院) |
(かか=亭子の院) |
(大殿籠る=桐壺帝) |
(大殿籠る=桐壺帝) |
桐壺帝 |
主語 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
種類 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 会話文 |
作者 |
作者 |
作者 |
作者 |
作者 |
敬意 誰が |
亭子の院 |
亭子の院 |
桐壺帝 |
桐壺帝 |
桐壺帝 |
誰を |
(2)
一 1 はべ 2 おお 3 みやづかえ 4 ほい
二 1 恐れ多い 2 無作法だ 3 あきれるほどひどい
三 命婦 桐壺帝 桐壷更衣の母
1 桐壺更衣の母の近況 2 桐壺更衣の母の桐壷帝に対する 3 かげ 桐生簿更衣 4枯れし 死んだ
5小萩 若宮(光源氏) 6 桐壷更衣の母の歌 「荒き風」の歌では母一人が若宮の世話をしていて、父である桐壷帝を無視したような言い方をしているから
7 桐壷更衣の母の娘を失って悲嘆に暮れている様 8 桐壷更衣と離れていること
9 桐壷更衣が亡くなった以後の状況 10 娘を入内させること
四
|
最高敬語 |
最高敬語 |
|
絶対敬語 |
注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
給は |
給は |
させ |
侍ら |
奏す |
語 |
(生ひいで=若宮) |
(しのびあへ=桐壷帝) |
(しのびあへ=桐壷帝) |
|
命婦 |
主語 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
丁寧 |
謙譲 |
種類 |
会話文 |
地の文 |
地の文 |
会話文 |
地の文 |
地の文 会話文 |
桐壷帝 |
作者 |
作者 |
命婦 |
作者 |
敬意 誰が |
若宮 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
誰を |
(3)
一 1 かんざし 2 ちょうごんか 3 ようきひ 4 たいえきのふよう 5 びおうのやなぎ
6 ちぎ 7 うら
二 1 人づて 2 際だった美しさ 3 互いによく似る 4 たとえる
三 桐壷帝
命婦 桐壷帝
1 うれしからまし
2 長恨歌に、太液の芙蓉(蓮)は楊貴妃の顔に、未央の柳はその眉に似ていると書いてある事を受ける。
楊貴妃 顔―蓮 眉―柳・・・たとえ有り 「うるはし」
比較
桐壷の更衣 顔=花・鳥 ・・・たとえ無し 「なつかし」「らうたげなり」
3 挿入句 4 桐壷の更衣の、好ましくかわいらしかった顔かたち
4 夫婦が非常に仲睦まじいこと
四
最高敬語 |
最高敬語 |
|
|
|
注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
たまひ |
せ |
おぼしいづる |
思ほす |
ご覧ぜ |
語 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
主語 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
種類 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 会話文 |
作者 |
作者 |
作者 |
作者 |
作者 |
敬意 誰が |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
誰を |
(4)
一 1 こきでん 2 うえのみつぼね 3 うえびと 4 にょうぼう
二 1 興ざめである 2 不快だ 3 そばで聞いたり見たりしているのも苦々しい
4 こころが角張っている
三 桐壷帝 弘徽殿の女御 上人 女房
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注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
給ふ |
給ふ |
奉る |
聞くこしめす |
給は |
語 |
(もてなし=弘徽殿の女御) |
(ものし=弘徽殿の女御) |
(見=上人、女房) |
桐壷帝 |
舞う上り=弘徽殿の女御) |
主語 |
尊敬 |
尊敬 |
謙譲 |
尊敬 |
尊敬 |
種類 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 会話文 |
作者 |
作者 |
作者 |
作者 |
作者 |
敬意 誰が |
弘徽殿の女御 |
弘徽殿の女御 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
弘徽殿の女御 |
誰を |
1 桐壷帝 2 月も入りぬ 3 管弦の音
4 桐壷の更衣の死などは全く無視してしまう弘徽殿の女御の態度
(5)
一 1 あさじう 2 うこん 3 とのい 4 うし 5 あさまつりごと
二 1 午前1時から3時頃 2 清涼殿にある天皇の寝室 3 朝早く天皇が出御されて政務をおとりになること
三 桐壷帝
1 灯火の灯心を最後の所まで引き出すこと 2 夜の更けている様 3 未成眠
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敬語 |
最高 |
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注意 |
5 |
4 |
3 |
2 |
1 |
番号 |
おぼしいづる |
給ひ |
せ |
おぼし |
おはします |
語 |
桐壷帝 |
(入ら=桐壷帝) |
(入ら=桐壷帝) |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
主語 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
尊敬 |
種類 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 |
地の文 会話文 |
作者 |
作者 |
作者 |
作者 |
作者 |
敬意 誰が |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
桐壷帝 |
誰を |