(6)  花橘 第六十段

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語釈

 

 

むかし、男ありけり。宮仕へいそがしく、心もまめならざりけるほどの家刀自、まめに思はむといふ人につきて、@人の国へ1いにけり。1この男、A宇佐の使ひにていきけるに、ある国の2B祇承の官人の妻にてなむあると聞きて、「女あるじにかはらけとらせよ。2さらずは飲まじ。」といひければ、3かはらけとりていだしたりけるに、さかんありける4橘をとりて

 

 五月待つ花たちばなの香をかげばむかしの人の袖の香ぞする

 

といひけるに5思ひいでて、6尼になりて山に入りてぞありける。

 

(注)@人の国 都を離れた地方。A宇佐の使ひ 宇佐八幡宮(大分県)への使者。B祇承の官人 勅使接待など雑事を承る地方官。

 

一 次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

  1 宮仕え 2 家刀自 3 宇佐の使ひ 4 祇承 5 橘

 

二 次の語の意味を辞書で調べよ。 

 

  1 宮仕え

 

  2 まめ

 

  3 家刀自

 

  4 かはらけ

 

  5 さかな

 

三 登場人物を抜き出せ。また、傍線部1〜6の問いに答えよ。

 

  登場人物

 

  1 誰のことか。

 

  2 誰のことか。

 

  3 主語を記せ。

 

  4 主語を記せ。

 

  5 誰が何を思い出したのか。

 

  6 女の気持を記せ。

 

 

四 二重線部1・2の文法問題に答えよ。

  

  1 活用の種類 基本形 活用形

 

  2 品詞分解・口語訳

 

五 口語訳

むかし、男がいた。宮仕えのつとめが忙しくて誠実に対応することを怠っていたとき、主婦が、誠実

に愛そうという男について地方に立って行った。この男が、宇佐の使いになって行った時、(途中の)ある国

の接待の役人の妻になっていると聞いて、「主婦に酒杯を持たせよ。そうでなくては飲まない。」と言ったので

酒杯をとって差し出したところ、つまみに出ていた橘を取って、

 

  五月を待って咲く橘の花の香をかぐと昔(親しくした人)の人の袖の香りがする

 

と言ったので、(女は)昔の夫だと思いだして、尼になって山にこもってしまった。

 

 

構成

 

 

 

地方

 

役人の家

時・場所

仕事中心 女にかまわない

 

 

 

宇佐の使いで泊る

 

「妻に杯を取らせろ。」   →

歌 橘の香=昔の女の香 → 

 

前の男

 

 

後の男について行く

 

後の男=接待役人

 

←酌をする  肴=橘

 本の男と分かる

 

尼になる

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主題 夫婦のいたわしい再会

 

 

 

(7)  花橘 第六十段  解答

 

登場人物 男 女 まめに思はんといふ男

 

一 1 みやづか 2 いえとうじ 3 うさのつかい 4 しぞう 5 たちばな

二 1 宮中に仕える 2 誠実だ 3 主婦 4 酒杯 5 つまみ

三 1 前の男 2 後の男 3 女 4 前の男 5 相手が前の夫であること 

  6 自分の行為を恥じて出家した

四1 動ナ変いぬ用

2 さら 動ラ変さり未 ず助どう消ず用 は係所 飲ま 動ま四飲む未 じ 助動消意じ止

  そうでないならば飲むまい