(3)殺生石・蘆野

 

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語釈

 これより@殺生石に行く。館代より馬にて送らる。このA口付きの男、「短冊1させよ。」と

 

ふ。やさしきことを望みはべるものかなと、

 

野を横に馬引き向けよほととぎす

 

殺生石はC温泉の2いづる山影にあり、D石の毒気Eいまだ滅びず、蜂・蝶のたぐひ、真砂の色の

 

見えぬほど重なり1死す

 

 またF清水3流るるの柳は、G蘆野の里にありて、田の畔に残る。この所のH郡守戸部なにがし

 

の、「この柳見せばや。」など、をりをりにのたまひきこえたまふを、いづくのほどにやと思ひし

 

を、けふこの柳の陰にI立寄りはべりつれ。

 

  田一枚2植ゑて立ち去る柳かな

 

(注)@殺生石 那須温泉湯本の温泉大明神の裏山に現存。A口付き 馬の手綱を取っていく馬方。B野を横に 広野を進んでいくと、横の方で時鳥が鳴いた。C温泉 那須温泉。D石の毒気 毒気の正体は付近から噴出する硫化水素・炭酸ガス等の有毒ガス。Eいまだ滅びず 謡曲「殺生石」では殺生石の石塊が、玄翁和尚の回向によって成仏し退散する。F清水流るるの柳 西行が「道のべに清水流るる柳陰しばしとてこそ立ちどまりつれ」と詠んだという柳。G蘆野 栃木県那須郡那須町芦野。奥州街道の宿駅。H郡守戸部 芦野部資俊のこと。I立ち寄りはべりつれ西行ゆかりの柳のしたにたたずんで思わずを過ごした。

 

  次の語の読みを現代仮名遣いで記せ。

 

  1 殺生石  2 蘆野   3 舘代   4 短冊    5 請ふ       

  

6 蜂    7 蝶    8 真砂      9 清水

 

  次の語の意味を辞書で調べよ。

 

    1 真砂

 

三 傍線部1、2の問いに答えよ。

 

 1・2の主語を記せ。

 

四 二重線部1〜3の文法問題に答えよ。

 

 1、2、3 品詞名 基本形 活用形 活用の種類

 

 

五 口語訳 これから殺生石に行く。舘代より馬で送られる。この口つきの男が、「短冊を欲しい。」と頼む。風情があることを望みますなあと、

 

   野原の中、ほととぎすが鳴いている。鳴いている方に馬を向けよ。

 

   殺生石は温泉の出る山陰にあり、石の毒気はまだほろびないで蜂・蝶のたぐいは小さな砂の色が見えないほどに重なり死んでいる。

  また清水流れるという柳は蘆野の里にあって田の畔に残っている。ここの郡代戸辺なにがしが、「この柳を見せたい。」など、そのつどにおっしゃりもうしなさるのを、どのへんだろうと思っていたのを、今日この柳の陰に立ち寄りもうした。

 

      田を一枚植えて立ち去った。そこにあの柳がある。

 

構成  殺生石への途中   口つきの男

 

            野を横に馬引き向けよほととぎす

 

                    野原の中 

                            ○ほととぎすへの思い

          ほととぎす

 

           季語 植えて 季節 夏 修辞法 かな 切れ字

 

           蘆野 遊行の柳

 

 

           田一枚植ゑて立ち去る柳かな

                      田植え            農民

                                ○西行法師の柳への感慨

           柳に気を取られる 芭蕉

 

 

           季語 ほととぎす 季節 夏   修辞法 かな 切れ字 

 

 

(参考・遊行の柳)

 

 西行法師(1118〜1190)

 

     短歌 「道のべに清水流るる柳陰しばしとてこそ立ち止まりつれ」 

 

         清水 柳・・・長居した

 

 観世信光(1435〜1516)

 

     謡曲(能の詞章) 「遊行柳」

 

         遊行上人(一遍上人)の旅

 

 芭蕉(1689年6月6日)

 

     俳句 「他一枚植ゑて立ち去る柳かな」

 

         柳 田植え・・・田植えをする間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3)殺生石・遊行の柳  解答

一1 せっしょうせき 2 あしの 3 かんだい 4 たんざく 5 こ 6 はち

 7 ちょう 8 まさご 9 しみず

二 1こまかいすな

三 1 蜂、蝶の類 2 農民

四 1 動得未得ア下二 2 動いづ体ダ下二 3 動流る体ラ下二