1 地球温暖化と二酸化炭素の削減
a)問題は地球温暖化であって、二酸化炭素の増加ではない。
b)本当に地球が温暖化しているか? この10年間は気温が上昇していない。
c)地球温暖化しているとしても、二酸化炭素の増加が原因か?
・太陽の黒点が多いと、太陽から来る熱は増える。これは周期的に変動。
・地球の過去は、マグマが冷えた後は氷河時代が長く続いた。今は氷河期の間の間氷期。
・ヨーロッパで中世は、今よりも暑かった時代があった(まだ化石燃料を使ってないのに)。
穀物が獲れ過ぎで十字軍が起こった。
・18世紀の大半は寒い時代だった。(ニュートンは太陽の黒点を見てない)
・20世紀後半にも一時寒冷化が心配された。(温暖化が問題になった後)
d)二酸化炭素が増加したのは、地球が他の原因で温暖化し、その結果かも?(太陽の黒点)
e)だが国連(IPCC)が、二酸化炭素が地球温暖化の原因と想定して研究を始めた。
・京都議定書では、二酸化炭素の排出権取引が決まったが、アメリカと中国は加盟してない。
カナダも後に断念し、排出権を外国から購入しているのは日本だけ。
・その後、IPCC(気候変動に関する政府間委員会)の報告に反対する意見も、出始めた。
(薬師院仁志、武田邦彦氏ら)
・二酸化炭素だけが温暖化効果ガスではない。他にも水蒸気やメタンガスなどあるのに。
f)二酸化炭素の削減は、ダイオキシン(世界では無毒)の問題と似ていて、評価は分かれる。
2 原発は蒸気タービンサイクル(蒸気で回る羽根車一式)の一種
a)原発は、火力発電と同じ蒸気タービンサイクルで、ボイラーが原子炉に替わっただけ。
・原発は大量の無駄な熱を放出する。地球温暖化の原因が人類とすれば、エコといえるか?
・二酸化炭素が温暖化の原因でないとすれば、原発はエコと言えるか
b)原発にはいろんな種類があり、その事故にもいろいろある。
・大事故を起こした旧ソ連のチェルノブイリは黒鉛減速水冷型。
・東電の原発はGEが開発した沸騰水型軽水炉。東芝、日立が技堤、汚染水がタービンへ行く。
・関電の原発は ウェスティングハウスが開発した圧力水型軽水炉。三菱が技堤、熱交換器で蒸発。
・沸騰水型は汚染水がタービンへ行く(280℃)、加圧水型は蒸気発生器(270℃)のチューブが漏れやすい、温 度が低いなど、一長一短あり。
c)厚さ10センチ以上の鋼鉄からなる原子炉の圧力容器には寿命がある。
・圧力容器は、古くなると脆くなり、低温(100℃以下)に戻せなくなる。低温脆性偏移温度。
・この低温脆性遷移温度は、ふつう零下で橋に使う鋼鉄で問題にされる。原子炉では長年、多量の中性子を浴び て、この温度がだんだん上がっていき、常温に戻せなくなる。たとえば100℃以上になると水で冷却するのが難 しくなる。だから、古い原発ほど危険になる。
d)原発は、発電量をなるべく一定に保って運転することが望ましい。
・臨界とは、核分裂がとだえることなく一定に続く状態。核分裂から発生する中性子を吸収する燃料制御棒の出 し入れで制御する。一定でないと、原爆になる。
・原発の発電量が変動すると、原発の動作が不安定となり、暴走しやすい。そのため、原発は昼でも夜でも、 同じ発電量で運転を続ける。
・昼間、足らない電力は火力発電などを追加して補い、夜間の余った電力は、揚水発電所で、夜間は上の池
に送水、昼間はそれで水力発電(これで30%損する)
e)原発の発電を停止しても、燃料棒が出す崩壊熱(全力の8%)放出が続くので、冷却を長期間続ける必要あ る。 だから、原発では、冷却が一番大切で、何重にも冷却系統がある。
(福島原発では冷却できなくなった。)
f)原発の発電コストは本当に安いのか?
・原発の発電価格は、一般に昔からある火力発電や、水力発電と同じくらいの価格とされる。
・太陽光や風力などの自然エネルギーは、現在はまだその数倍高価。
・各大学や研究所での研究開発費や核燃料の廃棄物の処理費、立地への助成金は含まれてない。
・核廃棄物の処理など、まだ保管場所も決まっておらず、いくらかかるか分からない。
g)原発は止められるか?
・日本の総発電量の3分の1が原発(火力が40%)であるが、関電では2分の1が原発で、原発比率が高い。
・関電の原発が全部止まったとき、休止中の火力発電を稼働させるが、真夏の電力を賄えるか?
・火力発電所で燃やす化石燃料(石炭、石油、天然ガス)の価格は、今後も価格が暴騰する。
・太陽光とか風力、地熱、燃料電池など自然エネルギーが総発電に占める割合は数%と小さい。
・原発の穴を埋める大きな発電方法がまだないから、原発が高くついても使われてきた理由だ。
3 蒸気タービンサイクル
a)高温の熱を使って、熱から動力または電力を取り出すのが熱機関である。みな同じ原理。
・蒸気機関(SL)、内燃機関(車、船)、蒸気タービン(発電)、ガスタービン(ジェット機)
・自動車のエンジンの1サイクルは、吸入、圧縮、爆発、排気と教習所で教わった。
・蒸気タービンサイクルでは、吸入はなく、給水ポンプで圧縮、ボイラーとタービンで爆発、復水器での排気
(凝縮による容積減少)が対応する。
・水は、圧力が高くなるほど、飽和温度が高くなる。
b)熱機関では、有効には使われずに、無駄に捨てられる熱量が必ず発生し、熱効率は最大40%。
・蒸気タービンサイクルで捨てられる無駄な熱は、ボイラーから出る排ガスの熱以外に、復水器で水に戻ると き海水に捨てる気化熱(約530カロリー/グラム)が損になる。
・熱のエネルギーは、火力発電の過熱蒸気温度600℃以上でも、40%ぐらいしか電力にはならない。つまり、 電力は100%熱になるが、逆に熱はせいぜい半分以下しか電力にならない。
・原発では排ガスはないが、蒸気の質が悪いので、その熱効率は30%ちょっとしかならず、海水に捨てる熱が大きい。
・原発の蒸気は飽和温度で、ウランを入れる燃料棒の容器の材料、ジルカロイ製の筒の強度が維持できる最高温度が284℃。だから原子炉内の水の温度はそれ以上にはならない。(この部分は、講演後に修正)
c)蒸気タービンサイクルは、次の機器で構成される。
・仕事をし終わった低圧蒸気を復水器で冷却して水に戻る。
・水は真空から水を引く復水ポンプと、蒸気圧になる給水ポンプでボイラーへ送られる。
・ボイラーで蒸発する蒸気は飽和蒸気で、それがボイラーの排ガスが通る過熱器でさらに加熱されて、乾いた 過熱蒸気となる。(シャープの電子レンジ)
・水と蒸気が一緒にあれば、必ず水のほうが先に蒸発し、飽和温度以上にはならない。
(魚焼きグリルのトレーに水を入れると、大気圧の飽和温度、100℃以上にはならない)
・過熱蒸気は蒸気タービンに導かれ、蒸気タービンとそれにつながる発電機を回して発電する。
d)サイクル内の最高温度が高いほど、サイクル全体の熱効率は高くなる。
e)原発では過熱器がないので飽和蒸気を使うしかない。最高温度も低く、熱効率も悪くなる。
f)蒸気タービンで仕事を終えて低温低圧になった蒸気は、復水器で大量の海水で冷却されて、気化熱を奪われ て水に戻り、サイクルは一周する。
・復水器には、エジェクターという真空ポンプがついており、その時の海水温度より7度くらい高い温度に対 応する飽和圧力(15〜20℃で約0.2気圧、かなりの真空)になっている。
・蒸気タービンは30キロ以上から、0.2キロまで膨張して、発電する。蒸気タービンの入口と出口の圧力比が大 きいほど、大きな仕事をする。 つまり、冷却海水温度が低いほど、
g)復水器の圧力が低く、その圧力に対応する飽和温度が低いほど、熱効率がよい。
4.熱効率の限界と無駄になるエネルギー
a)すべての物質(水素ガスですら)が固まる絶対零度(マイナス273℃)。これを基礎とした温度が絶対温 度である。(0℃=273度K)
b)もっとも理想的な熱機関(カルノーサイクル)でも、蒸気タービン入口の絶対温度に対する、出口つまり復 水器の絶対温度の割合だけは、絶対に利用できないで無駄になる。
これは、熱力学団2法則による。(第1法則は、エネルギー保存の法則)
・理想的な熱機関は、現実に製作は不可能。実際は半分くらいに。
・計算しやすいように、入口を627℃、出口を27℃とすると、絶対温度はそれぞれ900度K、300度Kとなり、その 比は 300/900=0.33 だけは損出。熱効率は67%。
・出口温度を10℃=283度Kと、低い温度になると、損出は283/900と少なくなる。
c)実際の蒸気タービンは、理想的な形にはできないので、熱効率は理想的な値の半分くらいに。実際は30%ち ょっとが原発の熱効率である。
・火力発電は、過熱蒸気を使うことにより、圧力は変えずにタービン入口温度を上げたり、排気ガスの熱を温泉 などにとことん利用することにより、熱効率は40%くらいに上げられる。
d)発生電力あたりの廃熱は、原発は火力発電の2倍くらい大きい。それだけ地球が温暖化されている。
・原発は30%として、(1−0.3)/ 0.3 =2.33 火力は40%として、(1−0.4)/0.4=1.25
原発のほうが電力当たり 2,33 /1.25=1.9 倍の熱が海水に捨てられ、地球が温暖化になる。
5.水という理想的な媒体
a)熱機関の中で、媒体が循環する大容量のものは、水を媒体としている。
・内燃機関(ガソリン・エンジン、ディーゼル・エンジン)やガス・タービンは燃料を圧縮して爆発させて仕事 をしたあと排気されるだけ。
b)水は安定した物質で、高温で酸素と水素に分解する以外は、他の物質とあっても共存して、水の性質を失うこ とはない。
・どこにでもある物質であることから、たまたま蒸気機関に使われたが、比熱が他の物質に比べて桁違いに大き いことも、結果的に大量の動力を発生することが可能になった。
c)人間も含めて生物に必要な物質で、生命の誕生も海の中から始まった。
・将来、人類が宇宙旅行をする場合も、水を持っている天体を渡り合って行くことが考えられている。食料など の他の物質は、宇宙船内で再生産することが考えられているが、水だけは補充しないと、廃棄物からの再生産 は無理なようである。
d)大量にあるように見える水資源が、地球温暖化とともに、もう一つの環境問題として脚光を。
・地球上の水を100%とすると、その97%は海水であり、残り3%の純水の70%は南極、北極の氷であり、生物 が利用できる純水は0.8%にすぎない。
・海に流れ込む川の水、湖沼の水の全体は利用できないので、実質利用できる純水は0.08%。
・水資源は、人口の増加とともに、その不足が深刻になってきていて、世界水戦争が発生中。
・さいわい、わが日本は、地理的、地勢的にも、世界的にも例がない雨が多い国である。
・森林がないと雨が降らないので、これからも森林資源と水資源を大切にしていかなければならない。
以上
後述:猛毒のプルトニウムを燃やし、燃料が永遠になくならないという「高速増殖炉」(もんじゅ)は、水の代わりに溶かしたナトリウムを使う。ナトリウムは水と激しく反応するので、空気に触れると火災を起こし、水と触れると爆破する。非常時に冷却する場合には、水を使えないので、空冷するという。アメリカ、フランスでは開発を断念した高速増殖炉を日本はまだ断念していない。その巨額の開発費も、原発の電力料には入っていない。
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平成23年
《原発と温暖化を考えよう》