日常茶飯事

 王宮を出て僕一人だけの女になる・・・そんな勝手な願いを姫は叶えてくれた。

そんな姫にせめてものお礼として、新居はノルガースの外れに構えた。姫は弟のことが心配だろうからと・・・

 

・・それが大きな間違いだったと気付いたのはすぐだった。

 

 

漸く姫と暮らせることになった僕には“姫を家に置いて働きに出かける”と

いう考えは全く無かった。

 そこで、大きめの家を買い、その一角で軽食やお菓子を提供するお店を始めた。

 姫を働かせるつもりは無かったが、「リオウの仕事を手伝えるなんて嬉しいわ」と言われると悪い気はしない。

今ではすっかり看板娘だ。

 

 そう、看板“娘”それが1番の悩みの種・・・。

 

 

「こんにちは〜、これ差し入れ!」

「まあ!ロデルいらっしゃい!いつも差し入れありがとう!」

・・ほんとうは「そんな物、持って来るな!」と言いたいが、姫に「突然届いた材料ですぐ料理がつくれるなんて」と尊敬の目で見られるのは凄く嬉しくて、

「じゃあ、今からこれで料理を作りましょうか」

と言ってしまう。

どう見ても姫が目当ての新米鍛祷師をどう追い出すか考えながら手早く料理をして出す。

「お〜いつもすげ〜な〜」

「ふふっ、リオウは凄いでしょう」

 何時もの褒め言葉を複雑な思いで聞く。

 

 

「お姉さま、ごきげんよう」

「まあ、いらっしゃい!コゼット、エドガー」

「・・コゼットがどうしてもこういう庶民の店に入ってみたいというのでな」

    ・そう言ってこの店に来るのは何度目ですか。

だが、妹姫は時々、入手しにくい茶葉の供給情報を教えてくれる、おかげでこの店は“滅多に飲めないお茶もあの店なら飲める”と評価されている。

それが“姫が出戻って来るとカイン様を独占できない”からだとしても、有難い事はありがたい、今も国王補佐と次にエシューテに着く船の話をしているのもその話題だろう・・・・多分。

 

 

「今日は、のどが渇いたので、さっぱりしたお茶をください」

「おや、ジーク、薬草採取の帰りですか、お疲れ様です」

「神官様〜、このお店は?」

「ああ、滅多に手に入らないお茶でもここなら飲めると最近評判のお店なのですよ、お菓子も美味しいので貴女もきっと気に入ってくださると思って」

「・・アストラッド、あなたも相変わらずですね、姫の前で他の女性連れは失礼と思わないのですか?」

    ・・いえ、ジーク様この方に1人で来られると僕が困りますから・・

それに何故か神官様が連れてくる女性(毎回違う)は後日女性の友人連れでこの店に来る、一応顧客の増加には役にたっている。

ジーク様も姫の親代わりとして心配して来ているだけだ・・・きっと。

「困ったことがあったら何時でも相談してください」

そう言う年長者二人にキレそうになるのをガマンしていると。

 

 

「こんにちは〜今日のおススメのお菓子とそれに合うお茶を貰える?」

「おい、ゼノン!今は任務中だぞ!」

「もう!そんな堅いこと言わないの、ここのお茶とお菓子、本当に美味しいんだから」

「駄目だ!任務中に私用は許されない!」

・・ヴィンセント様、仰ることは立派ですが、“近衛兵”は本来君主を守る為に作られた物では・・・ここ最近、『近衛兵による市中見回り』が増えているような気がするのですが。

 まるで、ご近所の奥様方と同じようにフランシスカさんと話す姫に“彼も一応男ですよ”と指摘してもいいのだろうか。

 

 

「やあ、姉さん、また姉さんの淹れたお茶を飲みに来たよ。お義兄さんも元気?何かお茶に合うお菓子を出してくれるかな?」

「まあ、カイン!エミリオ! 来てくれたのね!」

「申し訳ありません。陛下が“姉上の淹れたお茶は美味しい”と仰るものですから」

 あからさまに姉が目当てのこの国の国王陛下、今日は侍従付きなのは度々のお忍び外出を咎められたせいだろう。

 楽しそうな姉弟の話を“久しぶりの姉弟の会話だから”と自分に言い聞かせる。  たとえ前回来たのが5日前だとしても、常に一緒にいた双子から見れば久しぶりなのだ・・・と思う。

 

「もう!兄様、私もカインとお話したいですわ!何故止めますの?」

「今は姉弟水入らずの話し中だ、邪魔してはいけない(シスコンの姉との会話を邪魔したら拗ねて国政に支障が出る)」

 

    ・国王には勝てないと帰り支度をする面々、やはり全員姫が目当てか。

 

 

 

リオウがキレて「姫!僕の故郷を探す旅に出ましょう!」と言い出すまであと○○。

                            2008/03/01

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