依頼

 

「もう一度仰って頂けますか?」

『マクリール家・・・国王一家全員を暗殺して欲しいと言ったのです』

 

・・・大物の仕事と言っていいのか・・・この貴婦人はとんでもない依頼をしてきた。

 

「かしこまりました、暗殺方法に何か指定や要望はございますか?」

『厳守してもらいたいことが1つ、“国王一家は腹心の部下に裏切られて殺された”という形にすることです。
・・・国王は、信用していた者に裏切られる、その程度の男だった・・・と。

 

・・現国王と王子が暗殺されれば、“1番のメリットがある”と疑われるのはこの貴婦人の実家と嫁ぎ先だ、その矛先を逸らすための布石というわけか・・・

 

『現在、国王に仕える者を懐柔するか、そなた達の手の者を送り込ませるかは任せます。その者の名をこちらに伝える必要もありません。その者に私共が便宜を図っては意味がありませんからね。・・期間は今すぐというわけではなく、5年くらいは待っても良いでしょう』

 

・・確か王位継承権2位の息子は母親の生国であるブラヒストに留学中の筈、息子が足場をしっかり固めるまでは待っても良いという考え方か。

 

「随分と悠長な依頼ですね、私共が前金だけをもらって後は放って置くとは思わないのですか?」

『私の実家から、そなた達ならこの依頼を達成出来ると紹介されたのです。代々暗殺を生業としてきた手腕と実績、信用していますよ』

 

 そう言って微笑む貴婦人、“王族生まれの甘ちゃん”と嘲笑うべきか、“流石王族、陰謀慣れしている”と感心する所なのか。

 

「承知致しました、詳しい話は・・・・・・・・・」

 

 

 それから暫くして、エシューテのとある伯爵の下に一人の楽が召抱えられた。 王家直属の楽になる為の布石として。

 

                         2008/03/01  2008/03/11加筆

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