□ 文覚上人書状
兵庫県太子町にあった神護寺領福井荘は、隣接する後白河法皇領大田荘の池から水をひいて四百年にもなるのに、わずかに田四、五丁つくろうとして件の池を干して、神護寺領の田百七十四余丁を干損させてしまった。 文覚は左衛門尉定康に対して「あにが妻をまきとりけるも、ことわりや、福井の水をぬすむとおもえば」と罵倒している。 あなたは世間ではおにいさんの妻を横取りしたとのうわさだが本当らしい。福井荘の水を盗んだことをおもえば、と書き送っている。