住吉に斎く祝が神事と 行くとも来とも船は早けむ

さて本殿ですが、第一宮から第三宮までが直列、第四宮が第三宮に並列するという全国でも珍しい配列になっております。

以前に宮司さんに伺ったところによると、この住吉の浜は、遣唐使船の出発地点やったそうで、住吉さんで、航海の安全をお祈りして、どぼんちょうちょう、どぼんちょうちょうと、船出しはった。この遣唐使船の船団の隊列の様子を現わしているのやそうです。
 

住吉に斎く祝が神事と 行くとも来とも船は早けむ

すみのえにいつくはふりがかむごとと いくともくとも ふねははやけん

は、遣唐使船を見送り、航海の安全を祈る万葉集の歌です。 
ちなみに、この住吉は「すみのえ」と読みます。「吉」は、古くは「え」の発音に宛てられた文字で、住之江も住吉も同じ。澄んだ入江のことです。で、「吉」の「え」は、「良い」という意味でもあり、大阪弁の「ええな」の「え」はこれが語源だとか、前述の「大阪名所むかし案内」にありました。これもまた眼から鱗です。
 ずーーと、裏へ向けますと、樹齢千年を超える楠があり、お稲荷さんが祀ってあります。ここのお遣いは、狐やなしに招き猫です。毎月初めの辰の日が御縁日で、「はったつさん」と親しまれていて、偶数の月は右手、奇数の月は左手を上げた招き猫を頂き4年間48体集まると満願やそうです。
また、玉垣の向こうに「五」「大」「力」という文字を書いた小石があり、これをひとそろえ見つけてお守り袋に入れて念じると願い事がかなうという言い伝えがあります。願いがかなった人は、自宅の近くの小石に「五」「大」「力」と書いて、玉垣の内に戻すそうです。「五」「大」「力」のセットがたくさん見つかるということは、心願成就して返しに来た人が多いということでしょう。
で、裏の門から出て、ちょっと行きますと旧熊野街道に出ます。

池田屋さんという古い味噌屋さんの前を通って、少し北に行くと十三仏宝泉寺というお寺があります。恵心僧都(源信)の開基になる古刹だそうで、もとは「念仏坊」といったそうです。御本尊は恵心僧都が自ら厄除けのために刻まれたという一光十三佛で、門の脇に、江戸時代に掘り出された巨石を刻んだものがあると門前の由来説明書にありました。
 
この宝泉寺が、落語「幽霊の片袖」にゆかりのあるお寺、として地元の案内書にありました。

「幽霊の片袖」は、墓暴きの盗人が、土葬の新仏から着物を盗んで、その片袖をネタにさらにお金を騙し取るというお話で「念仏寺」というのが出てくるのですが、このネタは聴いたことがないので…。

またいずれ詳しく調べてみます。

という訳で、本日は住吉参り、これまででございます。

チンチン電車(阪堺電車、上町線)で天王寺に出て帰りましょう。
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浪花・上本町 御可笑拵処「東雲堂」 狐狸窟彦兵衛 謹製
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