1.京都 百鬼夜行は、あやふやな所から一条戻り橋へ
蹴上の階段下から南へ回りこんで、ちょっとたらたらたら、と上りますと「ねねの道」と書いた石碑が目に入ります。

北の政所、ねねさまが、夫の豊臣秀吉の死後、その菩提を弔って関ヶ原、大阪冬の陣、夏の陣と豊臣家滅亡の一部始終を見つめたという「高台寺」への参詣道でございますね。

この夏(2009年)、高台寺秘蔵の絵巻「百鬼夜行図」と円山応挙の筆になる「幽霊図」というのが公開されておりましたんで。拝見してましいりました。
 
高台寺

傘亭
高台寺の百鬼夜行図は、ざまざまな道具が100年の年月を経ると、霊力を宿して「付喪神」となり、夜な夜な町を練り歩くという図でございまして、江戸時代の土佐派の絵師の作品でございます。

また、応挙さんの幽霊図は、世の中の足のない幽霊のイメージを形作ったのでございますね。お寺の御説明によりますと、幽霊図というのは、世の中の無縁仏をお弔いするために掛けられ、ありがたいお経に触れて、線香の煙と共に往生していただこうという願いを込めて描かれたそうでして、「恨み」とか「呪い」を残したもんやないんやそうでございますよ。御安心くださいませ。

なに、ゆうれいさん、お足がなくなったんやから、そら、「往生しまっせ」…。

誰ですかそんなこというてるのは。…絵巻、掛け軸は撮影禁止でございますので、文中紹介のみ。

高台寺さんには、ねねさまゆかりのお庭、利休好みの茶室「傘亭」「時雨亭」を拝見できます。時雨亭は、珍しい2階建てのお茶室。
ねねさまが、このお茶室から西の空が赤くなるのを見て、大坂城炎上をお察しになり、人知れず落涙されたという伝説があるそうです。
 
高台寺から、さらに南へ。
二年坂、産寧坂といいますと、御存じ、清水さんでございますね。
東山を望みますと、ずらーーと、お墓が並んでいるのが見えます。今は、お墓でございますが、その昔は、弔いのあと、遺体は、鳥辺山に打ち捨てられたのでございますね。
想像しますと、かなりえげつない場所でございます。
そういう場所に観音霊場が建てられて、衆生が、来世を願い、現生利益を願ってお参りしたのでございます。
 
   で、冒頭に申しました、目を患った定二郎も、「あやふやな場所」から、清水さんに百日の願掛けのお参りに参りますのが「景清」の一席。
にわかに目の光を失った人が、この参詣道を上り下りするのは、かなりな難行であったことでございましょうね。

さて、なんで、「景清」かと申しますと、源平合戦のころの武将に平家の侍で「悪七兵衛景清(あくひちびょ〜えかげきよ)」という人がおりまして、平家滅亡の後、源頼朝の命を狙いまずが果たせず、「この目で源氏の世を見るのは忍びない」と、我とわが手で、自らの目玉をえぐりだして、清水さんに奉納した…。

という伝説があるのやそうで、「まんざら目ぇに縁がないこともないで、」という経緯でございます。
仁王門から階段を上りますが、この前の狛犬さん、普通は「あ」と「ん」の一対ですが、ここでは「あ」が二つ。
七不思議のひとつやそうでございますね。
あいた口が塞がらんというのはこういうのを言いますな。

で、石段を上って、本堂、舞台の方へと拝観しますが、このお堂に入る手前に、高さ2メートル足らずの石碑がありまして、大きな足跡がついております。これが、かの景清の足跡やという巷説もございます。またある人は、弁慶の足跡とも申します。

ほんまのところは、仏様の足跡をかたどって、その上にあるべきお姿をしのんで礼拝したとういう「仏足石」でございましょう。

いずれにしても、なーんにも解説がございませんので、これも「七不思議」なんでございますよ。
清水の舞台から京の町の景観を堪能し、拝観順路に従いまして、たらたらたらと坂を下りますと、三本の樋から三筋の滝が落ちております。
名にしおう音羽の滝とは、これでございます。音羽の滝のネキの茶店で休んでいた「茶金」さんが、手元のお茶碗を見て「はてな」とつぶやいたことから騒動が始まる「はてなの茶碗」。茶金さんが休んでおられたのは、さて、どの茶店でしょうかね。
蹴上にもどりまして、百鬼夜行を見たからには、そのお祓いにまいりますのは、「一条戻り橋」でございましょう。
はい、御存知、平安の陰陽師、安倍晴明さまのお屋敷跡に鎮座まします晴明神社。
歩いて行くのはちぃっと遠いので「祇園」から市バス12番に乗りまして、四条通りを西へ、堀川通りで上がりまして「一条戻り橋」のバス停で降ります。バス代は220円。
 
 鳥居をくぐりますと、かつて堀川に架かっていた戻橋の欄干が移してあります。傍らに「式神」の石造も…。NHKのドラマでは本庄まなみさんが「蜜虫」という蝶々の精の式神を演ったはりましたが、ちょっとイメージが違います。
あんさん、白雪姫と七人の小人…に出てはった?

社殿は新しい感じがいたしますが、境内には至る所に晴明桔梗とも呼ばれる五芒星が描かれ、結界に守られた聖地という雰囲気が致しますな。

現在も一条堀川には戻り橋が架かっていています。向こう側が、源頼光の屋敷跡。頼光の四天王の一人「源綱」が、鬼に出会うのもこの橋の上でございます。
 「四天王」…そんなん落語に関係ないやろ、でございますかぁ?
左様。
今のところは関係ございません。…今のところは、でございます。
お楽しみに!
 五芒星は、一筆書きで星を描きます。三角形を上下に合わせたのが六芒星。映画「ダビンチコード」でも出てきました。
三角形を二つ重ねると、一筆書きではないのですが、実は、これも一筆書きできるやり方があります。
お試しください。
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浪花・上本町 御可笑拵処「東雲堂」 狐狸窟彦兵衛 謹製
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