1.京都 百鬼夜行は、あやふやな所から一条戻り橋へ
さて、上町のおっさん、久しぶりの逍遥先は、どうらんの幸助よろしく淀川を十里余り遡りまして、王城の地、京都へとやってまいりました。
阪急電車、昔で言う新京阪の終点四条河原町の駅から地上に顔を出し
まして、四条河原町の南西角が高島屋。
四条通を西へ参りますと新京極、寺町通、御幸通と来まして4番目の信号が麩屋町通りでございます。 |
ここを一筋下がったところ(御存じですね、京では南に行くことを下がると申します)
その南に行って、下がったところぉが綾小路通。
さ、お分かりですね。「あやのこうじ ふやちょう」という至って「あやふやな」場所。
私は、ずっと虚構の場所だと思っておりましたが、実在するのです。
「あやふや」どころか、きわめてピンポイント。「ここ」という場所がございますんですね。 |
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で、「あやふやなところ」にどんな人が住んでいたかというと、目を患って清水さんに100日の御参詣をして、平景清の奉納した眼を頂くという「景清」の主人公、目貫師(刀の目貫を彫る彫金師)の定次郎。また、大津の宿で壁土を食べて、塗りこめられていた弁慶の霊が肩口に「瘤」となって現れる「瘤弁慶」の主人公もここに住んでいます。
四条通へ取って返し、最前の新京極まで戻って、信号を北へ。繁華な商店街、お土産屋さんの食べ物屋、その他いろいろのお店をあっちぃうろうろ、こっちぃうろうろ、右側に赤い提灯がたくさん掲げられた錦天神を尻目に殺し、もう一筋「上がり」ますと、この左側に「蛸薬師さん」がございますな。 |
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正式名称は永福寺蛸薬師堂。
癌、いぼ、皮膚病の治療に霊験があるというそうです。
瘤弁慶では、しゃべる瘤が肩口に盛り上がってしまった男に甚兵衛さんが、「瘤やと言わずに、いぼやと言うて取ってもらえ」とアドバイスします。
うかっと聞いていると、なんか、情景が目に浮かぶのも不思議ですが、よう考えると「んな、あほなぁ」のコミックホラー落語でございますよ。 |
蛸薬師さんをへの御参詣をすませて、東へ。河原町通りを渡りまして、木屋町。
かつては風情のある町でしたが、今は、なんやしらんふーぞく店が並んでおります。
高踏派・森鴎外の高瀬川の味わいはどこえやら…。
ごちゃごちゃ、いいながらたらたらっと下がったところ、四条小橋の袂からちょっと東へ入ったところにあるのが、「志る幸」というお店。 |
勤皇の志士(きんのはシシなら、明日はトラか?)古高俊太郎の旧邸跡と案内がございます。新撰組が世にその名を轟かせた池田屋騒動。
「風の強い夜に京の町に火を放ち、お天子さまを御所より奪い奉り、尊王攘夷を実行する」
という志士の計画を実行すべく、その会合の場所を知っていた古高さんが、土方歳三の拷問に耐えかねて漏らしてしまったが故の大剣撃。 |
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いわば、対テロ行動の警察行動でありましたが、そこは勝てば官軍負ければ賊軍。
一時の大手柄も、御一新の後は、志士からは恨み骨髄で、局長近藤勇などは、せっかくサムライになったのに、最期は敢無く切腹を許されず、「斬首」とされてしまいます。ああ無常…。
という感慨はともかく、ここの利休弁当は、白みそのお味噌汁、型押しの炊き込みご飯、京風おばんざいのおかずが5種類。2,415円也は、ちょっと京都プレミアムではありますが、話のタネに食して損はないメニューでございますよ。 |
さぁ、もう一遍四条通。これから四条大橋を渡って、南座、祇園と過ぎまして突き当たりが「八坂さん」でございます。 |
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