前を読みたいという場合はこちらへ



(その後の9)



我がNo−168CDラインアンプもバリアブルゲインコントロール方式を廃し、No−168CDラインアンプ(もどき)に堕ちてしまった。(^^;

結果、非常に快適。(^^)

オフセット&ドリフトも非常に安定するし、位相補正も大変楽になる。

音も良い。と言っては怒られるか、あるいは笑われるわなぁ。(爆)(^^;













なお、回路図のとおり初段ステップ位相補正もついでに廃した。のは、このステップ位相補正があるとオーバーシュート、アンダーシュートが生じるため。

結果、非常に快適。(^^)


とばかり言っていてもしょうもない。(^^; 

ので、この状態での方形波応答を観る。



10kHz方形波応答 下:入力 上:出力 100kHz方形波応答 下:入力 上:出力 1MHz方形波応答 下:入力 上:出力


んっ、これでも100kHz方形波応答でややオーバーシュート、アンダーシュートが残っている。(爆)

が、この程度ならよかろうて。(^^;

しかしながら、この方形波応答写真をよ〜く観じると。。。、う〜む。。。100kHz方形波応答の出力波系の立ち上がり、立ち上がりが随分直線的になっているし、よくよく見ると立ち上がり、立下りが入力波形に比べるとやや遅れている。。。

って、1MHzの方形波応答を観るとそれが全く明白。(爆)(^^; 何と出力の方は正弦波と言うか三角波のようになっているではないか。

ふ〜む。。。、我がNo−128?よりNo−168の方がスルーレートは小さいのかな。。。? 

じゃあ、初段だよなぁ。。。と、早速小改良。(のつもり(^^;)

で、こうした。




定電流回路の2SC1400のエミッタ側の抵抗を1/2にし、要は初段の動作電流を倍にしたのだ。

併せて初段のドレイン側抵抗も1/2にしてあるので、2段目以降の動作点は全く変わらない。

ドレイン側抵抗が1/2になったことによりオープンゲインが低下することが懸念されるが、2SK246BLの動作電流が倍になりその分gmが大きくなるので、トータルではオープンゲインはそんなに低下することはない。これで単純にスルーレートだけ大きくならないかなぁ。。。と考えたのだった。(^^;

で、結果は、


10kHz方形波応答 下:入力 上:出力 100kHz方形波応答 下:入力 上:出力 1MHz方形波応答 下:入力 上:出力


う〜む。。。100kHz方形波応答で多少残っていたオーバーシュート、アンダーシュートが無くなったのは大成功なのだが、スルーレートの方はあんまり改善したという感じはない。(爆)(^^;

何故だ?

・・・・・・

と、しばし考えて、、、あっ!そうだった。と思いだした。

「方形波応答では電圧振幅もしっかり設定しなけりゃいかんよ」といつか某DCレコーディングなHPで注意喚起されていたよなぁ。。。(^^;

そうだよなぁ、スルーレート的に方形波応答を観るのでれば、時間軸だけでなく電圧軸もきちんと管理して観じないことには比較できないわなぁ。(^^;

ということで、当HPでは初めてのことだが、ちょっとまともにスルーレートを計測してみる気になったのだった。

そのためには何とことはない。出力がサチる直前まで方形波信号で振ってやって観ればいいのだ。



横軸:5uS/div
縦軸:上 50V/div、下 5V/div
横軸:10uS/div
縦軸:上下とも5V/div
横軸:5uS/div
縦軸:上下とも 5V/div


写真の上3枚が改良前の回路の方形波応答で、下の3枚が改良後の回路の方形波応答だ。2現象の下が入力波形で上が出力波形。3枚とも100kHz方形波で入力振幅はみな同じでだいたい7V(±3.5V)程度だ。クローズドゲイン設定が6.6倍だから出力振幅は46.2V(±23.1V)ということになる。電源電圧が±27V程度だから出力振幅はこれが限界だ。

左側の写真が、オシロの縦軸が最大5V/divのため出力側のプローブを×10にして実質50V/divにしたもの。これで、まぁ10uSで50V程度立ち上がることが分かる。したがってスルーレートは大体5V/uSだということが分かる。で、上下の写真にほとんど差異がないので、スルーレート的には改良の効果はあまりなかったということになる。(爆)

真ん中の写真と右側の写真は出力側の振幅軸設定も5V/divにしたもので、横軸(時間軸)が真ん中10uS/divで右5uS/divとしたものだが、右側写真が一番精度よく観察でき、これによれば5uSで23Vの上昇と見るべきだろう。したがってこのNo−168CDラインアンプ(もどき)のスルーレートは4.6V/uSということになる。そして、やはり今回の初段の動作電流値の変更ではスルーレートには有意な差は出ないものだったことも明らかだ。


さて、4.6V/uSのスルーレートだが、決して高速ではない。(爆)(^^;

で、この際、比較対象として、同じくVGAを廃してしまった我がNo−128?のフラットアンプのスルーレートも計測してみる。

結果。


これも縦軸は5V/divで横軸は10uS/div。No−128?は電源電圧が±15Vだから出力はこのように27.5V(±13.75V)が限界だ。

で、問題のスルーレートは甘く見ても5uSで15Vの上昇だろう。したがって3V/uS。

よってクローズドゲイン6.6倍同士の我がNo−168CDラインアンプとNo−128?フラットアンプの比較では、No−168CDラインアンプの方がNo−128?の1.5倍のスルーレートというわけだ。

まぁ、どちらもそれほど高速ではない。。。(^^;

が、しばらくはこれでいくことにした。






(2008年6月28日)






(その後の10:間違い訂正(^^;)


すっかり間違えた。ので、訂正。お恥ずかしい。(^^;

というのは、上のスルーレートを計測するためのオシロの写真の横軸(時間軸)だ。

それにしてもスルーレート、低すぎないか。。。と思ってよくよくこれらの方形波応答写真を見ながら考えてみたら、。。。そもそもこの方形波は100kHzなんだから横軸10uS/divや5uSでは全然辻褄が合わないではないか。。。(爆)(^^;

はたと押入れに仕舞い込んであるオシロを確認してみると、やはり水平軸の×10MAGスイッチがオンになっていたのだった。(^^; ← アホウ(−−)

なんと時間軸10倍拡大状態で観ていたのに気付かずにいたのだ。。。(^^;;;

したがって上の写真の横軸は5uS/divは正しくは0.5uS/div、10uS/divは正しくは1uS/divだったのである。(爆)(^^;


と、なると、スルーレートの計算も10分の1に計算していた訳で、このNo−168CDラインアンプ(もどき)のスルーレートは正しくは46V/uS、No−128?のフラットアンプは30V/uSなのだ。

いやいや、我ながらトンマだ。(^^;


なので、この際、再度100kHz方形波応答で我がNo−168CDラインアンプ(もどき)とNo−128?MCプリのフラットアンプ部のスルーレートを計測してみよう。

それがこの写真だが、ともに2現象で、立ち上がりがより早く振幅が大きく写っている方が入力でその振幅軸は1V/divであり、立ち上がりがより遅く振幅が小さく写っている方が出力でこちらの方はプローブを×10モードにしてあるのでその振幅軸は10V/divである。


No−168CDラインアンプ(もどき) No−128?フラットアンプ部
横軸:1uS/div 縦軸:1V/div&10V/div



これでもう一度よ〜く観察すると、どちらも0.5uSで25Vは立ち上がっていると観て良いような気がする。のだがどうだろう。

とすれば、我がNo−168CDラインアンプ(もどき)とNo−128?MCプリのフラットアンプ部のスルーレートはほぼ同じでその値は50V/uS。ということだ。

これならまぁまぁかな。(^^)


「あたりまえだ。。。」  ははぁ〜 m(__)m





(2008年7月3日)






(その後の11)



我がNo−168MCプリアンプも、このように改悪し、“退化”してしまった。




改 悪 前
退 化 後
・上手く追加部品が収まった。

・SEコンが0.1uFだったらこの配置は無理だっただろう。33000pFにしておいたことが幸いした。
   
・改悪前のNo−168のイコライザー部の方形波応答と正弦波応答を記録しておく。
No-168 MCEQ 1kHz 20mV 5V No-168 MCEQ 10kHz 0.1V 5V
No-168 MCEQ 100kHz 0.5V 2V No-168 MCEQ 1MHz0.5V 0.5V
・100kHz方形波応答の立ち上がり、立ち下がり部分に変なぎざぎざがある。

・No−168のイコライザー部は帰還回路に高域帰還量制限抵抗がないので、帰還回路のNFイコライズにより、500〜600kHz付近以上でクローズドゲインは1倍(0dB)になるはずなのだが、この応答は1MHz周辺でそのクローズドゲインが0dB以上に多少盛り上がっていることを表している。


・1MHzの方形波応答及び正弦波応答での方形波応答の形、及び、応答波形が入力波形より大きいことにもそれが現れている。

・要するに位相補正が完全に良好ではないということだ。
   
・退化後はゲイン的にこの方が使いやすいので、イコライザーのゲインを決める反転入力側2SK97のゲート抵抗を270Ωにする。

・のは二次的狙いで、真の狙いは位相補正の良好化。

・で、こちらが退化後のNo−168イコライザー部の応答波形。
No-168 Ver2 MCEQ 1kHz 20mV 5V No-168 Ver2 MCEQ 10kHz 0.1V 5V
No-168 Ver2 MCEQ 100kHz 0.5V 2V No-168 Ver2 MCEQ 1MHz0.5V 0.5V
・1MHzの方形波応答からまだ完全ではないことも分かるが、この付近でのゲインの盛り上がりはほぼ改善されたことが分かる。そのことが100kHz方形波応答に端的に現れている。

・上手くいったようだ。
  
・退化後のNo−168フラットアンプ部も観じる。
No-168 Ver2 MCFA 10kHz 0.5V 5V No-168 Ver2 MCFA 100kHz 0.5V 5V
No-168 Ver2 MCFA 1MHz 0.5V 5V No-168 Ver2 MCFA 100kHz 1uS 1V & 10V
・方形波応答から、この場合ポール配置は終段に自然に出来るポールに任せるだけで非常に良好な状態で、位相補償は特に必要ないことが分かる。

・右下の最後の写真からスルーレートも50V/uSを超えていることが明らかだ。

・ついでに、その立ち上がりと立ち下がりがほぼ対称なのは、さすがに完全対称型だ。我がNo−121(もどき)のそれでも明らかだが、GOAのカレントミラー折り返しでは残念ながらこうはならない。
   
・VGA方式の時との音の違いは全く感じない。一方、利便性はこちらの方が遙かに良い。

・最近No−121(もどき)となったGOAと比較してどうだろう。聴きようによってはメタリックな感じかもしれないが、こちらの方が鋭く、元気で、メリハリが利いている感じかな。まぁ、駄耳モード(爆)。

・当面これでいく。





(2008年11月30日)






(その後の12)




・従前の我がNo−168MCプリアンプのイコライザー部。
・オープンゲイン(赤)は最低域で94.5dB。初段のgmがソース抵抗込みでまぁ5、よって初段で5×2.7(初段負荷抵抗)=13.5、2段目は動作電流が0.5mA程度なので2mS、終段が10/2=5。よって全体でGm=13.5×2×5=135mSとなるから、低域での負荷410kΩ(帰還回路の820kΩと次段入力抵抗820kΩのパラ値)に乗じ、最低域での利得=135×410=55350倍=94.86dB。と、簡便なゲイン計算値と良く一致する。

・ループゲイン(緑)(≒NFB量)は、理想NF型イコライザーなので200Hzから20kHzまで37.5dBの一定値。200Hz以下での減少は、次段入力抵抗820kΩの存在と、無帰還状態での出力インピーダンスがこれらの負荷に対して十分に高くはないことによる。PSpice(評価版)は、次段の820kΩがなければ10Hzでのオープンゲインとループゲインはともにこれより4dB上昇すると占う。終段に2SC984を採用した我がNo−128?の場合は高域は100kHzまで一定であるのに対してこちらは20kHzまでとなる。のは、終段がCobの大きい2SC959(960)であるため。

・ループゲインの位相(黄)は、DCから40kHzまで±30°以内と理想的だが、これもNo−128?より狭い。のは同じく終段TRの違いによる。NFB安定度に直結する高域での位相回転は、利得交点周波数である2MHz超付近でマイナス140°であり、このためクローズドゲイン(青)の1MHz超領域に2MHzでピーク4dBの盛り上がりが生じている。180°にはまだ40°の余裕があるので発振には至らないはずだが、方形波応答にはリンギング等の乱れを生じるだろう。まぁ、安全範囲とされる120°を超えているので、何らかの要因でさらに位相余裕が減って発振に至る可能性はより高い。ということではある。
・この状態における方形波応答波形をPSpice(評価版)で占う。
1KHz 10KHz 100KHz
・やはり、100kHz方形波応答の立ち上がり、立ち下がり部分に段差のような乱れが生じる。というご神託だ。

・現実の方形波応答はどうか。
No-168 MCEQ 560Ω
1kHz 20mV/div  5V/div
No-168 MCEQ 560Ω
10kHz 0.1V/div  5V/div
No-168 MCEQ 560Ω
100kHz 1V/div  5V/div
全くシミュレーションの占う通りだ。100kHz方形波応答の立ち上がり、立ち下がり部分に段差のような乱れが生じている。したがって、実機もシミュレーション通りの利得、位相状況であり、シミュレーションも実機の状況を良く占っている。と考えて良さそうだ。ということになる。

・これを解決しようとすれば、初段ステップ位相補正のCを510pFなどに増やすなどの対策が必要になる。が、この際イコライザーアンプのクローズドゲインを6dB上げたいと考えているので、これを位相補正適正化対策に出来ないか。と考える。一挙両得を狙うのだ。クローズドゲインを6dB増やすと、これによりループゲインは6dB減る訳だが、ループゲイン(≒NFB量)を6dB減らすということは、NFB量を半分にすることである。これで上手く行くのではなかろうか。と。

当たるだろうか。まずはPSpice(評価版)で占う。
・反転入力側ベース抵抗を560Ωから270Ωに減らす。

・オープンゲイン(赤)は最低域で94.5dB。は同じ。この場合オープンゲインが殆ど変化しないのは当然。

・ループゲイン(緑)(≒NFB量)は、200Hzから50kHzまで31.5dBと6dB低下するとともに、一定値の範囲がより広くなった。

・ループゲインの位相(黄)は、DCから40kHzまで±30°以内なのは同じだが、要点の、NFB安定度に直結する高域での位相回転については、利得交点周波数が1.5MHz付近に下降し、その点での位相回転はマイナス130°となった。安全範囲の120°は超えているが10°位相余裕が増えたため、クローズドゲイン(青)の1MHz超領域の盛り上はなくなった。これだと上手く行くかもしれない。
・ので、この状態における方形波応答波形を再びPSpice(評価版)で占う。
1KHz 10KHz 100KHz
・100kHz方形波応答の立ち上がり、立ち下がり部分の段差はなくなる。

・現実の方形波応答はどうか。
No−168 MCEQ 270Ω
1kHz 20mV/div  5V/div
No−168 MCEQ 270Ω
10kHz 0.1V/div  5V/div
No−168 MCEQ 270Ω
100kHz 0.5V/div 2V/div
・当たりだ。

・PSpice(評価版)が示すところと同様、100kHz方形波応答波形にあった段差のようなリンギングは消滅し、位相補正は適正化した。

・ので、結論。イコライザーアンプ部はこれで行く。
  
・次に、フラットアンプ部。
・オープンゲイン(緑)は60dB。ループゲイン(赤)(≒NFB量)は43.6dB。クローズドゲインは16.4dB。と、くしくも我がNo−121(もどき)と全く同じである。

・オープンゲインは、初段のgmがソース抵抗込みで1.3mS程度。なので初段で1.3×1.8=2.34、2段目は動作電流0.6mA程度なので2mS、終段が1600/47=34。よって、全体のGm=2.34×2×34=159.12mSとなるから、全体での利得=159.12×6.6(帰還回路の5.6kΩ+1kΩ)=1050倍=60dB。と、簡便なゲイン計算値と良く一致する。

利得交点周波数2.8MHz点でのループゲインの位相(黄)はマイナス110°であり、位相余裕は十分である。このためクローズドゲイン(青)にはピーク等の盛り上がりはない。
PSpice(評価版)が占う方形波応答と実機の方形波応答を対比する。入力は左端及び中央は2Vp−p。
100kHz 1MHz 100kHz 振幅 26Vp−p
No−168 MCFA
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA
1MHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA
100kHz 1uS 1V/div 5V/div
・シミュレーションも実機も綺麗な方形波応答だが、1MHz方形波応答が三角波的になってしまっていることがスルーレートの相対的な小ささを表している。

・で、スルーレートはPSpice(評価版)の方形波応答で読み取ると、0.5uSで21Vの立ち上がりであるから42V/uS。実機では、0.4uSで15Vの立ち上がりなので37.5V/uS。

PSpice(評価版)のシミュレーション結果では、No−121(もどき)が50V/uSであるのに対しこちらは42V/uSと、こちらの方がスルーレートは小さい。が、実機ではNo−121と同じスルーレートになった。が、それは立ち上がりで読み取ったスルーレートであり、立ち下がりのスルーレートで比べると、No−121(もどき)は60V/uS程度になるのに対し、こちらは立ち下がりでも同じく37.5V/uSだ。結果、我がNo−168(もどき)のスルーレートは、我がNo−128?は勿論、我がNo−121(もどき)よりも低い最低値。(爆)

この回路構成でスルーレートを決めるのは2段目差動アンプの動作電流値と終段TRのCobである。だから、この場合、スルーレートを改善してスピードをより高速にする簡単な手法は、終段のTRをもっとCobの少ないTRと交換することだ。我がNo−128?では、終段を2SC959からCobの小さい2SC984に替えることによりそうなった。が、2SC959(960)以外の終段はありえない。となると、2段目差動アンプの動作電流を増やすしか手はない。No−196では、終段のベース抵抗(=2段目の負荷抵抗)を減らし、終段の動作電流を損失的に危ういほど増やし、結果2段目の動作電流を増やしてそうしている。ように観じられる。

・が、まぁ、こちらはDACのIVCではない。し、スルーレートのみで音が決まるわけでもない。し、音とは関係ないと言う人もいる。し、大いに関係すると言う人もいる。が、これでも十分な数値だと思える。ので、我がNo−168(もどき)についてはこのままで行く。
・と、一旦は思った。

・のだが、まぁ、現行世代の我がNo−168(もどき)を旧世代の我がNo−121(もどき)以下のスルーレートにしておくのもなんなので、少しばかり高速化しておくか。という気になった。

・で、こうなった。
・初段と終段の動作電流までいきなり増やす。ことはしないで、控えめに2段目差動アンプの動作電流だけを2倍ちょっとに増やす。

・結果、オープンゲイン(緑)は56.4dB。ループゲイン(赤)(≒NFB量)は40dB。クローズドゲインは16.4dB。と、今度は我がNo−128?と全く同じになった。すなわち、オープンゲイン及びループゲインが3.6dB小さくなった。が、この程度の低下は問題ない。

・オープンゲインは、初段のgmがソース抵抗込みで1.3mS程度。なので初段で1.3×1.8=2.34、2段目は動作電流が1.4mA強に増えたので3mS、終段が680/47=14.5。よって、全体のGm=2.34×3×14.5=101.79mSとなるから、全体での利得=101.79×6.6=672倍=56.55dB。と、簡便なゲイン計算値と良く一致する。

利得交点周波数はやや上がって3MHz程度になるが、その点でのループゲインの位相(黄)は同じくマイナス110°であり、位相余裕は十分である。このためクローズドゲイン(青)にはピーク等の盛り上がりはない。良さ気だ。

改めて、この状態における方形波応答をPSpice(評価版)で占い実機の方形波応答と対比する。入力は左端及び中央は2Vp−p。
100kHz 1MHz 100kHz 振幅 26Vp−p
No−168 MCFA−2
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA−2
1MHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA−2
100kHz 1uS 1V/div 5V/div
・シミュレーションでは、100kHz方形波応答で僅かにオーバーシュートがあり、1MHz方形波応答の肩部分にやや盛り上がりがある。が、この程度なら良いだろう。また、1MHz方形波の姿を上と比べればスルーレートが向上したことが明らかだ。PSpice(評価版)の方形波応答でスルーレートを読み取ると、0.2uSで18Vの立ち上がりであるから90V/uS。ほぼ2倍のスピードに向上するいというご神託だ。

・問題の実機の方形波応答だが、オーバーシュートもなく非常に良好な方形波応答だ。1MHzの方形波応答が上での三角波的形状から変わって角張った形状になっていることからも明らかにスルーレートが向上したことが分かる。で、右端の100kHz方形波応答から読み取ると、0.2uSで13V立ち上がっており、したがってスルーレートは65V/uS。もくろみ通りスルーレートは2倍程度に向上し、我がNo−121(もどき)のスピードを立ち上がりは勿論立ち下がりでも追い越した。(^^)

・が、終段を2SC984に替えた我がNo−128?には及ばない。といって、2段目の動作電流を増やす手法も、全体の中で自ずと取り得る限界というものがある。
Cobの大きなTRを使ってスルーレートを大きくするのはそう簡単ではないのだ。まぁ、回路を複雑にすれば可能だろうが。

・よって、結論。フラットアンプ部はこれで行く。








ところで、我がNo−168CDラインアンプと我がTR版CDラインアンプはともに廃用とした。




(2008年12月20日)






(その後の13)



・超高速プッシュプルレギュレーター。

・昨今は進化したのか退化したのか単なるシリーズレギュレーターになっている。のだが、我がNo−121(もどき)も我がNo−128?もこれなので、いにしえのこれにする。

・回路は時空を超えた旧単行本の±17.5Vレギュレーターそのものだが、基準電圧源のツェナーダイオードにHZ6C2を使ったところ、そのツェナー電圧は05Z6.2Xのそれよりやや高いようで、結果、レギュレーターの出力電圧は±18.5Vとなった。
・この際なので、その過渡特性を観る。

・先ずは+18.5VPPreg。最初に正弦波応答。いつものとおり、写真下が負荷電流波形で写真上がレギュレータ出力の応答波形。
+18.5Vreg for No−168
1kHz 0.2mS 上1mV/div 下1V/div
+18.5Vreg for No−168
10kHz 20uS 上1mV/div 下1V/div
・60mA(3V/50Ω)ppの負荷電流変動に伴い、1.2mVppの出力電圧変動であるから、1kHzにおけるその出力インピーダンスは1.2/60=20mΩ。 ・10kHzでは、同様に1.5/60=25mΩ。
+18.5Vreg for No−168
100kHz 2uS 上2mV/div 下1V/div
+18.5Vreg for No−168
1MHz 0.2uS 上10mV/div 下1V/div
・100kHzでは、2.8/60=46.7mΩ ・1MHzでは、16/60=266.7mΩ
・続いて方形波応答。
+18.5Vreg for No−168
1kHz 0.1mS 上1mV/div 下1V/div
+18.5Vreg for No−168
10kHz 10uS 上5mV/div 下1V/div
・1kHz。すでに見慣れてしまったが、応答波形の立ち上がり立ち下がり部分でリンギングがもやもやとしている。 ・10kHz。時間軸が10uS/divに拡大され、リンギングの姿が明らかになった。150kHz程度のリンギング(収束まで50uS)に更に600kHz程度のリンギング(収束まで18uS)が乗っている。 
+18.5Vreg for No−168
100kHz 1uS 上20mV/div 下1V/div
+18.5Vreg for No−168
1MHz 0.2uS 上20mV/div 下1V/div
・100kHz。時間軸が1uS/divに拡大され、600kHz程度のリンギングの姿が明確になるとともに、更に6MHz程度の微少なリンギングが乗っていることが明らかになった。さらに最初のピークが30mVであることも明らかになった。 ・1MHz。時間軸が0.2uS/divに拡大されて、さらに細かいデコボコが見えてきた。
・総じていつものK式超高速レギュレータのインピーダンス特性、過渡特性となっている。多少の違いはNFB量の違い等によるものだろう。
  
・次に−18.5VPPreg。これまでマイナス電圧のものは、No−199の−12Vregしか観ていないので、これはどうか興味深い。  
−18.5Vreg for No−168
1kHz 0.2mS 上1mV/div 下1V/div
18.5Vreg for No−168
10kHz 20uS 上1mV/div 下1V/div
1kHz。1.4/60=23.3mΩ 10kHz。1.7/60=28.3mΩ
18.5Vreg for No−168
100kHz 2uS 上2mV/div 下1V/div
18.5Vreg for No−168
1MHz 0.2uS 上10mV/div 下1V/div
・100kHz。4.4/60=73.3mΩ ・1MHz。13/60=216.7mΩ
・100kHzまでは+18.5VPPregより多少インピーダンスが高めだが、1MHzでは逆転して+18.5VPPregより低いインピーダンスだ。No−199の−12Vregも10kHzまではインピーダンスが比較的高めで、100kHz以上で比較的低めになっているが、これはマイナス出力のK式超高速レギュレータの一般なのかもしれない。
・次に方形波応答。
−18.5Vreg for No−168
1kHz 0.1mS 上1mV/div 下1V/div
−18.5Vreg for No−168
10kHz 10uS 上5mV/div 下1V/div
・1kHz。見慣れたリンギングのもやもや。 ・10kHz。時間軸が10uS/divに拡大され、リンギングの姿が明らかになった。+18.5VPPregに比較すると、150kHz程度のリンギング)はなく、600kHz程度のリンギング(収束まで25uS)のみだ。  
−18.5Vreg for No−168
100kHz 1uS 上20mV/div 下1V/div
18.5Vreg for No−168
1MHz 0.2uS 上20mV/div 下1V/div
・100kHz。時間軸が1uS/divに拡大され、600kHz程度のリンギングの姿が明確になるとともに、こちらにも6MHz程度の微少なリンギングが乗っていることが明らかになった。また、最初のピークは23mV程度であり、これは+18.5VPPregより小さい。 ・1MHz。時間軸が0.2uS/divに拡大されて、さらに細かいデコボコが見えてきた。1MHzではこちらの方が+18.5VPPregより出力インピーダンスが小さいことはこの変動レベルからも明らか。  
・と、まぁ、多少の特徴の違いはあるようだが、K式超高速レギュレータは、プラス出力でもマイナス出力でもほぼ同様の特性が得られている。
   
・さて、2008年もあと数日。我がNo−168MCプリアンプ(もどき)も新しい年を迎えるべく模様替えだ。

・新たに超高速プッシュプルレギュレータを加え、さらに、我がNo−121(もどき)同様に、フラットアンプ側にスイッチ切り替えでCD入力も出来るようにする。ケースは従前のケース(OS49−26−33BX)そのまま。

・アンプ回路は、電源電圧が27Vから18.5Vとなったことにより、ツェナーダイオードへの供給電流を決める抵抗を18kΩから10kΩへ変更。
・で、その音なのだが、レギュレータの導入によるのか、メタリックなほどの鋭い感じは和らいで柔軟性もある懐の広いちょうど良い感じになった。と言っては手前味噌か。(爆)

・が、同じような素子を使っているのに、やはりGOAのNo−121(もどき)とはかなり鳴りっぷりが違う感じを受ける。

・このNo−168(もどき)の音は一言で言って実にエネルギッシュ。伸びやかでないということではないのだが、No−121(もどき)の爽快な伸びやかさとはちょっと違う。この辺がGOAと完全対称の違いだろうか。

・どちらが良いかなぁ。。。(爆)










(2008年12月27日)








(その後の14)



フラットアンプ部を微修正した。初段のドレイン負荷抵抗を1.8kΩから2.7kΩに増やし、オープンゲインを元の60dB程度に引き上げたのである。これに伴い2段目差動アンプの共通ソース抵抗も1.6kΩから1.8kΩに増えている。増え方が初段の抵抗の増え具合に見合わないのは、電源電圧を下げたことだし、この際終段の動作電流も+側で7mA台の指定値にすることにしたからである。

余計なことだが、完全対称型プリは、かつてのGOAに比較するとオープンゲイン設定が小さい。ので、その分NFB量も少なく、そのため出力オフセットとドリフトがかつてのGOAプリより大きい。No−168型のVGA式フラットアンプは、クローズドゲイン設定が最大34dBとなっていることもあって、ドリフトを実用範囲に収めるのはかなり難しいところがある。新単行本搭載の、特に高出力MCプリアンプなどは終段の発熱も加わって、ドリフトを実用範囲に収めるのは不可能である。ように観じられる。もっとも、トータル音量から、殆どボリュームを絞ってゲイン最小付近で使用することになるので実用的には支障がない。と言えないこともない。のかもしれない。(爆)

で、我がNo−168(もどき)においても、前回の改良でオープンゲインが多少小さくなったところ、フラットアンプのドリフトが我がパワーアンプの保護回路を動作させる±15mVを超えてしまう状況になってしまったのだった。よって、初段のゲインをやや引き上げてオープンゲインを元に戻し、イコール、NFB量を元に戻し、ドリフトがその範囲内に収まるようにしたのである。




・各部の動作点はこう。
・結果、オープンゲイン(緑)は60.4dB。ループゲイン(赤)(≒NFB量)は44dB。クローズドゲインは16.4dB。と、終段でやや失ったゲインを初段で補うことにより、オープンループゲインは狙い通り旧に復した。

・オープンゲインは、初段のgmがソース抵抗込みで1.3mS程度。なので初段で1.3×2.7=3.51、2段目は変わらず3mS、終段も変わらず680/47=14.5。よって、全体のGm=3.51×3×14.5=152.69mSとなるから、全体での利得=152.69×6.6=1007.65倍=60.07dB。と、簡便なゲイン計算値と良く一致する。

利得交点周波数はやや上がって3.8MHz程度。残念ながら、その点でのループゲインの位相(黄)はマイナス120°をやや超えてしまった。この場合、終段TRのCobによる第一ポール形成と関係しない初段でのゲインアップは、位相回転はそのままに利得交点周波数だけを高域に移行させる結果,位相余裕を失わせる方向に働くので、むやみには増やせないのだが、マイナス125°ならまだまだ位相余裕的には大丈夫なはずだ。が、これに伴いクローズドゲイン(青)には4MHzで2dB弱のピーク等が生じてしまっているので、方形波応答ではオーバーシュートが生じるかもしれない。この辺はシミュレーションの占いと実機の方形波応答により対策が必要かどうかを観じる。
そのため、またしてもこの状態における方形波応答をPSpice(評価版)で占い実機の方形波応答と対比する。入力は左端及び中央は2Vp−p。
100kHz 1MHz 100kHz 振幅 26Vp−p
No−168 MCFA−2.4
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA−2.4
1MHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA−2.4
100kHz 1uS 1V/div 5V/div

・いやはや、PSpice(評価版)シミュレーターは大したものだ。シミュレーターが占う応答波形と実機の方形波応答は実にうりふたつ。(爆)

・予想通り、100kHz方形波応答には、シミュレーションでも実機でも僅かにオーバーシュートが現れた。

・1MHz方形波応答の左の山がそのオーバーシュートの実態だ。が、実機の方がその山の盛り上がりが低い。のは、実機の方の発振器の発振波形が写真の通りなまっているせい。

・さらに、スルーレートを観るための右端の方形波応答の姿は全く相似と言って良いように観じるほど。なお、当然だがスルーレートに変化はない。

・で、このオーバーシュートなのだが、これはそうだなぁ。。。許容範囲ではなかろうか。と観じられる。音も良いし。(^^)

・ので、結論。このままで行く。

・なお、右は参考までの10kHz方形波応答。

No−168 MCFA−2.4
10kHz 1uS 1V/div 5V/div
・と、一旦は思った。

・のだが、まぁ、取れないオーバーシュートでもないし、妥協しないで対策を講じておけ。という声が聞こえる。気がする。(爆)

・よって、こうなった。

・別途の位相補償として初段に例のステップ型位相補正素子を追加する。のだが、MHz領域での利得交点周波数をやや引き下げ、その点での位相回転をやや引き戻したいだけなので、ステップを大きくしない定数設定をする。オリジナルの270pFもリユースしよう。

・これでfc1=159/((2.7+2.7+5.6)*0.00027)=53.54kHz、fc2=159/(5.6*0.00027)=105.16kHz、fcc=√53.54*√105.16=75.04kHz、step=5.6/(2.7+2.7+5.6)=0.5091≒▲5.86dBとなる。これで、fc1の53.54kHz付近からオープン利得の下降率をやや大きくして結果利得交点周波数をやや低域に移行させ、fccの75kHz付近からfc2の十倍の周波数である1MHz付近までの位相引き戻し効果で、その利得交点周波数付近での位相余裕を確保するとともに、ステップを小さく設定することにより、fc1の1/10の周波数からfccまでの低域側での位相回転増加は極力少なくなるようにする。

・という狙いなのだが、果たして上手くいくか。

・PSpice(評価版)の占いはこうなった。

・よく観ると分かるが、ステップ位相補正の効果により、50kHz付近から100kHz付近までのオープンゲイン及びループゲインの下降カーブがやや急になっている。厳密にはfc1の1/10の5kHz付近から利得が減衰を始めるのだが、その結果、利得交点周波数は2.5MHz程度に下降している。併せて、そのポイントでのループゲインの位相回転もマイナス105°程度と良好な範囲に収まっている。上と比べてみると分かるが1MHzから10MHzにおける位相回転がやや減っているのだ。逆に、fc1の50kHzを中心として周辺2オクターブでは位相回転が増加しているのだが、増加後もマイナス90°を超えることなく、狙い通りに小さい範囲に収まった。


・と、結論としては上手くいくというありがたいご神託だ。(^^)
・というような観想も、初段ステップ位相補正がある場合とない場合のパラメトリック解析で一目瞭然。(爆)
・早速、この状態における方形波応答をPSpice(評価版)で占い、実機の方形波応答も観る。入力は左端及び中央は2Vp−p。
100kHz 1MHz 100kHz 振幅 26Vp−p
No−168 MCFA−2.5
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA−2.5
1MHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA−2.5
100kHz 1uS 1V/div 5V/div
・大変良好な結果となった。音も一層良くなった。気がする。(爆)(^^;

・が、スルーレートは僅かに悪化する。シミュレーションでは90V/uSから、2uSで15V、すなわち75V/uSに低下すると占う。実機の方形波応答でも、65V/uSから、2uSで12V、すなわち60V/uS程度に低下したようだ。まぁ、位相補償とはそういうものだからこれはしょうがない。

・結論。これで行く。
No−168 MCFA−2.5
10kHz 1V/div 5V/div











(2009年1月4日)







(その後の15)



いにしえの高速ハイブリッドオペアンプLH0032でMCプリを作ったせいで、私の他のMCプリの見直しが必要になってしまった。それはMCイコライザー部ではなくフラットアンプ部である。はっきり言ってレコードはソースとしては貧弱である。ことは否めない。CDやSACD、DVDオーディオ等のデジタルソースの方が、K式DAコンバーターを使わずともソースとしての情報量はかなり優秀だ。まぁ、いわれなくデジタルを毛嫌いしているうちにDVDオーディオは既に消滅、SACDも風前の灯火、CDとていつまで持つのか怪しい状況になってしまったのだが。(爆) で、レコードの方はカートリッジで音が規定されているようでもうそれほどの差は出ない。のだが、CDやSACD、DVDオーディオを聴き比べてみると、私の他のMCプリのフラットアンプ部の音に物足りないものを感じてしまったのである。

何故か?は勿論LH0032の音が良いからである。LH0032の音は、入力の情報を何も失わず、何も加えず、まさに正確無比で入力そのものという感じの音なのである。だから、ソースが良くなれば良くなるほど圧倒的な情報量で、音楽が実に楽しい。

これに比べると、
私の他のMCプリの音は、何となくくすんでいる。要するに何か情報を失ってしまっている。ように感じる。

原因は何か? そもそもLH0032に敵わないのか。。。レギュレーターも同じだし、ケースも同じ、ボリューム方式も、配線引き回し等も殆ど同じだしなぁ。。。

と、一旦は思った。



のだが、LH0032によるMCプリアンプと私の他のMCプリアンプには、回路的に一つ違いがあるではないか。と、思い直した。


それは、CD等用のAUX入力からコスモスのボリュームまでの経路に、私の他のMCプリでは51kΩのスケルトン抵抗をシリーズに入れてあることである。

これは勿論CDプレーヤー等の入力信号が大きいため、これをやや減衰する目的なのだが、LH0032MCプリの方はお遊び的に作ったものなので、面倒なこともあり、この51kΩのスケルトン抵抗を入れないまま回路を組んだのである。なので、もしかしてと思って、私の他のMCプリで、これまで無前提に情報量は高いはずと思っていたこの51kΩのスケルトン抵抗をスルーにしてみたのである。

結果は、即結論。スケルトン抵抗は撤去。

このスケルトン抵抗で失われた情報が回復して、一皮も二皮もベールがはがれた音になったのだった。


う〜ん。。。。。。もしかすると50kΩのハイインピーダンスでコスモスのボリュームをドライブすることが情報を失う原因かもしれないので、スケルトン抵抗に全面的に罪を被せるのは早計かもしれない。まぁ、この回路構成ではたまたまそうなるということなのだろう。とは思うが、万能なものはない。と今更ながら思い知らされた。

したがって、この用途で使用している私の他のMCプリアンプのスケルトン抵抗も、ほどなく全て撤去されるであろう。



で、これで我がNo−168MCプリアンプ(もどき)の音はLH0032MCプリアンプに勝る、あるいは匹敵する音になったのか?

は、保留。(爆)(^^;

これについては、今しばらく時間を掛けたい。




(2009年1月19日)







(その後の16)


・前回結論を保留としたテーマ。

・「これで我がNo−168MCプリアンプ(もどき)の音はLH0032MCプリアンプに勝る、あるいは匹敵する音になったのか?」

・は、必ずしもそうは言い切れない。から保留にした訳である。

・スケルトン抵抗51kΩとコスモスボリュームの組み合わせによる情報の欠落は、スケルトン抵抗を排除することによって消滅し、この点での差異は確かになくなった。が、これによって、GOAのNo−121(もどき)やLH0032と、完全対称型のNo−168(もどき)、No−128?の奏でる音の特徴もさらに明確となった。
モ  デ  ル 形 式 音の端的な特徴
No−121(もどき) GOA 伸びやか、自然、爽快
LH0032 一般的 正確無比、純粋、純水
No−128? 完 対 ダイナミック、かつ優美
No−168(もどき) 完 対 エネルギッシュ
・端的に言ってしまえば、完全対称型のNo−128?とNo−168(もどき)の音には、ゲインを有するエミッタ共通動作の終段が負荷を強力に掴んでドライブするが如きのエネルギー感、ダイナミック感、芯の太さがある。のだが、一方で、GOAのNo−121(もどき)やごく普通の形式のLH0032に比較すると、正確さや細やかさ、爽快感といったニュアンスの部分においてやや不満を感じてしまうのだ。特にNo−168(もどき)において。それは一言で言えば雑味のようなもの。ちょっと荒々しい感じ。これが純粋、自然、爽快といったニュアンスをスポイルする。もっとこう何というか、滑らかで抜けるような透明感も欲しい。

・って、まぁ、完対の音にGOAやLH0032の音も併せて求めているだけことのようだが。。。(爆)

・ので、この雑味というか、ちょっと荒々しいのは何が原因なのか?と、一生懸命ない頭を捻ってこねって、結果、あまり理論的とは思えないが、まぁたどり着いた。(^^;
  
・我が家には歪率計などという高等なものはない。(爆)

・のだが、PSpice(評価版)の過渡解析機能には、FFT(高速フーリエ変換)という機能が付いているではないか。これを使うと、回路で生じる歪みというものを占うことができる。

・ので、これでそれぞれのMCプリの歪みの違いを観じることにしたのである。

・もしや、この辺にヒントがあるかもしれない。と。


・シミュレーションは簡単で、過渡解析で正弦波を入力し出てくる出力波形画面でFFTボタンを押すだけ。出力させる時間は長い方が正確な結果につながる。が、そうすると時間ばかりかかるので、ある程度の慣れと見極めが必要。

・やりだすと切りがないので、ここでは代表として10kHz正弦波で観る。

・また、観測を簡単にするためシミュレーション上、各モデルのクローズドゲインは10倍(20dB)に設定し、1Vの正弦波を入力する。すなわち出力は10Vとなる。

・最初にLH0032“もどき”の回路。








・で、結果がこれ。↓

・横軸は周波数で、入力した基本波が10kHzなので、1kHzから100kHzまで表示させている。縦軸は出力信号の電圧で、最大10Vで最小は10uVのログ表示である。従って、出力電圧は10Vを0dBとすると−120dBまでである。

・で、赤線で表示されているものがフーリエ変換された10kHz出力正弦波の周波数成分分布状況。

・10kHzで10Vと表示されているのは10kHz出力正弦波そのものだ。これは当然このように表示されないとおかしい。

・問題は20kHz、30kHz、40kHzのところにも周波数成分が表示されていることだが、これらは入力が10kHz正弦波なので本来出力には現れてはいけないもの、すなわちアンプの増幅課程で付加された歪み成分ということになる。要するに20kHzの周波数成分が2次高調波、30kHzの周波数成分が3次高調波、40kHzの周波数成分が4次高調波だ。

LH0032“もどき”の回路では、基本波に対して−120dBの範囲では4次高調波までの歪みが発生し、その量は2次高調波が0.5mV、ということは0.0005/10*100=0.005%、3次高調波が0.1mV=0.001%、4次高調波が0.03mV=0.0003%、全体で0.005108%の歪みが生じるという占い結果だ。
・へぇ〜、すごいではないか。(^^)

・では、我がNo−168(もどき)の回路での歪みはどうだろう。





・ガーン!

・なんと、歪み率は一桁高い。し、高調波が7次までもある。(爆)

・2次高調波が3mV、ということは0.003/10*100=0.03%、3次高調波が1mV=0.01%、4次高調波が0.3mV=0.003%、5次高調波が0.12mV=0.0012%、6次高調波が0.05mV=0.0005%、7次高調波が0.017mV=0.00017%、全体で0.031792%の歪みが生じるという占い結果だ。

・なんと、LH0032の10倍の歪み。。。

・まぁ、LH0032の方がオープンゲインが大きいので、同じクローズドゲインではNFB量が多くなるから、その分を割り引いて考える必要はあるが、オープンゲインに10倍(20dB)の差はないから、やはり、そもそもNo−168(もどき)の方が本質的に歪みが多いということだなぁ。。。

・もしや、この歪みの多さが雑味の原因?
・ならば、No−121(もどき)はどうだろう。

・これのオープンゲインはNo−168(もどき)とほぼ同じだからNFB量もほぼ同じだ。

・No−168(もどき)とほぼ同じ歪みになるだろうか?





・ガーン!

・なんと、歪み率は遙かに低いし、高調波は3次までしかない。。。

・2次高調波が0.15mV、ということは0.00015/10*100=0.0015%、3次高調波が0.045mV=0.000045%、全体で0.001566%の歪みが生じるという占い結果。No−121(もどき)は、オープンゲインの大きい、すなわちNFB量の多いLH0032をも凌ぐ低歪み。

・まぁ、考えてみればLH0032とNo−121(もどき)の回路構成、増幅要素はほぼ同じだが、動作対称性の観点から見れば、要点となるカレントミラーの精度がワイドラー型のLH0032よりウィルソン型のNo−121(もどき)の方が良い。ので、これがNo−121(もどき)のこの低歪率という結果をもたらしているのだろう。

・No−121(もどき)の音は滑らかで伸びやかで爽快なのだが、その原因はこの低歪み?
・う〜む、そうなのか。。。

・こういう差動回路やPP回路で構成されているアンプでは、歪みの大小はPP動作の正確度のバロメータである。トータルNFB量が同程度でありながら歪み率が大きいということは、PP動作の成功度において完全対称型のNo−168(もどき)がGOAのNo−121(もどき)に敵っていない、ということになる。GOAのカレントミラー部になお非対称性があるとして完全対称型に移行したはずなのに。。。(爆)

・となると結果が怖いが(^^;、次はNo−128?。





・ガーン!(爆)

・ほぼNo−168(もどき)と同じ。

・2次高調波が2mV=0.02%、3次高調波が0.8mV=0.008%、4次高調波が0.2mV=0.002%、5次高調波が0.1mV=0.001%、6次高調波が0.03mV=0.0003%、7次高調波が0.015mV=0.00015%、全体で0.021659%の歪みが生じるという占い結果。

・う〜む。。。やはり、完全対称型の方がPP動作の完全度が落ちるのか。。。
・それは多分事実なのだろうと思いつつ、この際、いずれ我がMCプリアンプ群に参加することが予定されているNo−159(もどき)のフラットアンプ部についても観る。






・ガーン! と、驚くことはもうなくなったが、やはり同じである。

・2次高調波が2.5mV=0.025%、3次高調波が0.9mV=0.009%、4次高調波が0.3mV=0.003%、5次高調波が0.1mV=0.001%、6次高調波が0.03mV=0.0003%、7次高調波が0.02mV=0.0002%、全体で0.026761%の歪みが生じるという占い結果。

・まとめると、
モ  デ  ル 形 式 歪 み 率
No−121(もどき) GOA 0.001566%
LH0032 一般的 0.005108%
No−128? 完 対 0.021659%
No−168(もどき) 完 対 0.031792%
No−159(もどき) 完 対 0.026761%

・というわけで、完全対称型は総じて歪がGOAのNo−121(もどき)やLH0032より一桁(10倍)多い。

・って、これでも十分に低歪率であるような気はするが。。。

・しかしながら、歪み率で示されるこの結果は、回路のPP動作の完全度において、完全対称型が必ずしもカスコード−カレントミラーより優れたものではないことを示している。というか、はっきり言えば劣っている。ということを表している。

・ただし、この歪み率の違いが、即我がMCプリたちのフラットアンプ部の音の違いの要因なのかどうかは全く分からない。(爆)
・が、その点はとりあえず置いておくとして、問題は、何故こうなるのか?

・は、もうその見当は付いている。

・完全対称型のPP動作がなお完全ではないということだから、それは完全対称動作の“要”部分にその要因があるに違いない。

・完全対称型の“要”は2段目差動アンプが終段を電流ドライブすることだ。これそこ終段上下(プラス側、マイナス側)が対称動作をするための必須条件。(終段が3極管又は3極管動作の場合を除く。)

・が、問題は、2段目差動アンプから見た終段負荷条件が左右というか、上下というか、プラス側とマイナス側で極端に非対称なことである。

・マイナス側をドライブする差動アンプ左側の負荷はマイナス側終段のベース抵抗そのもので、電流出力アンプにとっては全く軽い負荷である。しかも動作中全く変動しない負荷だ。これに対して、プラス側をドライブする差動アンプ右側の負荷は、終段プラス側のベース抵抗ではなくて、アンプ自体の負荷×終段の電流ゲイン×2であるので、2段目電流出力アンプにとってはかなり重い負荷である。しかも、アンプにつながる負荷が変動すると2段目の負荷も変動する。

・さらに、これに伴い、電流出力である2段目差動アンプ右側のドレイン(コレクタ)電圧は、フローティング電圧となってアンプ出力電圧と同じ電圧振幅をすることになるので、そのゲート−ドレイン容量(ベース−コレクタ容量)にはミラー効果が生じ、結果としてここに低いポールが発生する。また、このミラー効果で増大した容量によって2段目差動アンプ右側に局部帰還が掛かるので、結果高域ではその出力インピーダンスが低下し、終段を電流ドライブできなくなる。差動アンプだから、その効果は左側にも及ぶわけだが、左側の負荷は非常に低いのでそれでも電流ドライブ条件は満たされるから、結果、終段上下のPP動作の正確性は、残念ながら周波数が高くなるほどにどんどんと失われる方向になる。

・が故に歪み率がGOA等に比較して高いものとなるのだろう。二十倍から三十倍も。。。

・と、完全対称といいながら、実は完全対称型の完全対称動作はなかなかに難しい。

・余計なことだが、真空管であればP型真空管はないので完全対称型にはかなりの意味を感じるのだが、P型素子もある半導体において、かなり完成しているGOA 等に変えて完全対称型を用いる意味はあるのか? ということにもなるのだが、まぁ、それは置いておこう。(爆)

・で、これをより正確なPP動作にしようとすれば、終段の完全対称動作がより正確になるようにすることになる。そのためには、要である2段目差動アンプの右側の出力インピーダンスを高め、ミラー容量による局部帰還も生じないようにする以外にない。で、そのためには二段目差動アンプ右側にカスコード回路を挿入するしかない。

・回路図上は左側にもカスコードを入れた方がエレガントに見えるが、まぁ、それによる特段の効果はないので、資源の無駄をするよりは片側だけにした方がよりエレガント。

・というわけで、No−168(もどき)のPSpice回路イメージに所要のカスコード回路を加えてPSpice(評価版)で占う。






・ガーン!

・と、想定どおりではないか。(爆)

・2次高調波が0.4mV、ということは0.0004/10*100=0.004%、3次高調波が0.2mV=0.002%、4次高調波が0.08mV=0.0008%、5次高調波が0.05mV=0.0005%、6次高調波が0.025mV=0.00025%、全体で0.004577%の歪みと、カスコードがない場合の0.031792%の1/7に減ってLH0032以下の歪率となった。
・まとめると、
モ  デ  ル 形 式 歪 み 率
No−121(もどき) GOA 0.001566%
LH0032 一般的 0.005108%
No−128? 完 対 0.021659%
No−168(もどき) 完 対 0.031792%
No−168(もどき)
改良後
完 対 0.004577%
No−159(もどき) 完 対 0.026761%

・と、想定した通りの結果とはなったのだが、この程度の歪みが本当に音に影響するのか?という問題もある。し、そもそも我が駄耳でその違いを聞き分けられるはずもなかろう。という問題もある。(爆)
・のだが、早速実機で改良作業を行ってしまう。

・もともと高密度に実装されているので、基盤を作り替えないでうまく追加部品(といっても2SJ1031個だけだが)を乗せられるかなぁ、と思ったが、立体配置で何とか収まった。

・で、その音は、。。。

・即結論。これで行く。

・完全対称型の特徴であるエネルギッシュ、ダイナミックな音であることはそのままに、雑味や荒さのようなものは薄れ、変わって滑らかな透明感や細やかな質感も感じさせる大変良い音になったのだ。(^^)

・よって、我がNo−128?MCプリアンプのフラットアンプにもほどなく同様のカスコード回路が付加されるであろう。また、近く登場するかもしれないNo−159 MCプリアンプ(もどき)のフラットアンプにも同様のカスコード回路が付加されるであろう。

・う〜ん。。。この音の変化が本当にこの歪み率の変化だけによるのなら、我が駄耳はこの0.00何%レベルの違いを聞き分けている極めて鋭敏な耳であるということになる。。。それはありえんわなぁ。(爆)(^^;
   
・と、本当に歪み率だけの問題かどうかは分からないのだが、我が完全対称型MCプリについては、もとより入っているイコライザー部だけではなく、フラットアンプ部の2段目差動アンプ右側にもカスコード回路を入れることが音的に必須となった。

・のだが、そうなると位相補正をやや手直しすることが必要になる可能性がある。

・なぜなら、これまで共同して相互作用でファーストポールを拵えていた終段のCobによるポールと2段目差動アンプ右側のドレイン−ゲート間容量によるポールが、カスコード回路によって切り離され、改良後は終段TRのCobによるポールが単独でファーストポールを担うことになるからだ。

・その場合、共同が単独になるのだから当然ポール位置は上がることになるので、これまで別途の位相補償として入れていた初段の5.6kΩ+270pFのステップ位相補正では補償が不十分になる可能性がある。

・ので、PSpice(評価版)に占ってもらう。





・やはり。

・まぁ、許容の範囲程度のものではあるのだが、利得交点周波数3MHzでのループゲイン(黄)の位相がマイナス130°程度まで回転してしまった。ので、これにともなってクローズドゲイン(青)の3〜4MHz付近で1.5dB程度のピークが生じてしまっている。
・ので、ステップ位相補正は4.3kΩと270pFの組み合わせに変えた。






・この場合のステップ位相補正の加減はなかなか微妙なのだが、結果としてはまぁまぁかな。

・実機とシミュレーションは完全には一致しないので、この組み合わせは実機での方形波応答の結果から設定したものだ。
この状態における方形波応答のPSpice(評価版)での占い結果と、実機の方形波応答。入力は左端及び中央は2Vp−p。
100kHz 1MHz 100kHz 振幅 26Vp−p
No−168 MCFA−3.0
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA−3.0
1MHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA−3.0
100kHz 1uS/div 1V/div 5V/div
・良好な結果だ。

・スルーレートは2uSで15V、すなわち75V/uSで変化はない。実機の方形波応答では、60V/uS程度から、2uSで10V、すなわち50V/uS程度に低下したようだが、これは測定の際のケーブルの影響。

・音的にはこれでLH0032MCプリや我がNo−121MCプリ(もどき)と比較してどうこうという気にはならないものとなった。というか、格調を感じさせるような大変素晴らしい音になったのだ。(^^)

・ので、結論。これで行く。
No−168 MCFA−3.0
10kHz 1V/div 5V/div










(2009年1月25日)






(その後の16の補足)



・PSpice(評価版)の占いに過ぎないのであまりシリアスに観てもしょうがない。のだが、一部だけでは誤った見方にもなる。ので、もう少しだけ占い結果を観る。

・で、LH0032、No−121(もどき)、カスコードのないNo−168(もどき)とカスコードを付加したNo−168(もどき)の4種について、1kHzと10kHzの正弦波で、出力1V、5V、10Vとした場合の高調波成分分布(要するに歪み)がどうなるのかを観る。なお、各アンプともゲイン設定は10倍(帰還抵抗1kΩ+9kΩ)。

・先ずは、1kHz、出力1V。
LH0032 MCFA 1kHz 1V out No-121 MCFA 1kHz 1V out
・非常に低歪率。−100dB(0.001%)を超えるのは3次高調波のみである。

・あとは、5次、7次、9次の奇数次高調波と、偶数次では2次高調波が見える。

PP動作が上手く機能していれば偶数次高調波は打ち消されて生じないはず。という意味ではPP動作が上手く行っているということになる。
・こちらも非常に低歪率だが、3次、5次、7次、9次の奇数次高調波が−100dB(0.001%)以上のレベルとなっている。その意味ではこの場合LH0032より歪みは大きい。

・が、2次高調波は勿論偶数次の高調波は全くない。奇数次高調波のみだ。すなわち、この場合PP動作が完璧。ということになる。
   
No-168 MCFA 1kHz 1V out No-168 MCFA with Cascode 1kHz 1V out
・非常に低歪率だ。−100dB(0.001%)を超える高調波はない。あるのは、−100dB(0.001%)以下で3次、5次、7次、9次の奇数次高調波と、偶数次では2次高調波のみ。これもPP動作がかなり上手く行っている。

・結果、総合的にはLH0032やNo−121(もどき)より低歪率。

・左のNo−168(もどき)の2段目差動アンプ右側にカスコード回路を追加したのがこれだが、基本的には左のカスコードがない場合と同じである。が、2次高調波が左との比較でかなり抑制されたことが分かる。2段目差動アンプ右側にカスコードを追加したことでPP動作がより完璧になった。ということだ。

・結果、総合的にはこの4種の中では最も低歪率。
   
・次は1kHzで出力が5Vの場合。
LH0032 MCFA 1kHz 5V out No-121 MCFA 1kHz 5V out
・この場合も非常に低歪率。−100dB(0.001%)を超えるのは今度は2次高調波のみである。あとは、3次、5次、7次の奇数次高調波。

・が、2次高調波のレベルが相対的に大きくなった。ということはPP動作の正確性がやや薄れたということになる。
・不思議なことに出力1Vの場合より低歪率となった。−100dB(0.001%)を超える高調波はなくなった。が、2次高調波が新たに現れた。他は、3次、5次、7次、9次の奇数次高調波。

・低歪率となったのは良いのだが、2次高調波が現れたのはちょっと気になる。
   
No-168 MCFA 1kHz 5V out No-168 MCFA with Cascode 1kHz 5V out
・出力1Vの場合に比べてかなり歪みが増えたように見えるが、基本波の振幅が5倍になっていることに注意して良く見ると、増えたのは2次高調波で、それのみが−100dB(0.001%)を超えている。

・3次はほぼ同等、4次が新たに出現したが、5次、7次、9次は逆に減っている。

・が、2次高調波が激増したのは、PP動作の正確性が弱まったということだ。し、それが故にこの4種の中では最も歪みが多くなってしまった。“完全対称型”としてはちょっと残念と言わざるを得ない。

・左と比べると、こちらは2段目のカスコードのおかげで、2次高調波を含め高調波が良く抑制されている。偶数次高調波も2次以外は見えない。

・すなわち、左との比較で、2段目差動アンプ右側へのカスコード回路の追加でPP動作がより正確なものになることが明らかだ。

・この結果、−100dB(0.001%)を超えるのは2次高調波のみであり、そのレベルも上のNo−121(もどき)以下であり、総合的な歪み率もこの4種中最低である。
  
・次は1kHzで出力が10Vの場合。
LH0032 MCFA 1kHz 10V out No-121 MCFA 1kHz 10V out
・高調波の様相は、基本的に変化がない。高調波は偶数次が2次と、あとは奇数次の3次、5次、7次、9次。

・2次高調波のみが−100dB(0.001%)を超え、他の奇数次は−120dB程度。奇数次高調波の歪みレベルはやや増加した。
・この出力レベルでも相変わらず低歪率だ。−100dB(0.001%)を超える高調波はない。し、なにより、2次高調波も増加しないままだ。

・で、No−121(もどき)は出力1Vから10Vまで2次高調波が3次高調波より少ない。カスコード&ウィルソンカレントミラーGOAのPP動作の正確性が伺われる結果。

・出力が大きくなって、この場合下のNo−168(もどき)の歪率が高くなり、この出力レベルではNo−121(もどき)が4種中最も低歪みとなった。
  
No-168 MCFA 1kHz 10V out No-168 MCFA with Cascode 1kHz 10V out
・この出力レベルとなって、完全対称型、と言うか我がNo−168(もどき)の特徴的な歪みの様相が明確になった。すなわち、高調波が2次からずらっと漸減で並ぶのである。まぁ、上でみたNo−128?もNo−159(もどき)もこうだったから、完全対称型の大振幅動作時に共通のものなのかもしれない。

・何故こうなるのか?は不明だが、PP動作の観点からするとあまり芳しくないと思わざるを得ない。

・まぁ、2次高調波のレベルはLH0032と同程度なので、量的にどうこうというべきものではないが、総量としてはこの4種の中で一番歪み率が高くなってしまった。
・高調波の様相は、2段目右側にカスコードを付加したこちらも基本的に変化がない。が、2次高調波のレベルが左の1/10であるように、カスコードの付加で歪みが全般的に抑制されることが分かる。

・総歪み量としては、No−121(もどき)にやや劣るがほぼ同等レベルで十分低歪みなのだが、偶数次高調波が急増したのは気になる。カスコードを付加しても大振幅ではPP動作の正確性を保てないのか?No−121(もどき)が保っているのに。。。

・結局、No−121(もどき)とNo−168(もどき)は、大振幅では奇数次高調波はほぼ同じで、偶数次高調波の多寡が異なる。ということになる。この辺が両者の音の違いの要因かもしれない。
  
・続いて、10kHzについて占う。

・先ずは出力1V。
LH0032 MCFA 10kHz 1V out No-121 MCFA 10kHz 1V out
・この場合も非常に低歪率。−100dB(0.001%)に2次高調波があるだけとも言っていいぐらい。

・で、1kHzの場合と比較すると、10kHzの方が低歪率のようだ。
・こちらも非常に低歪率。−100dB(0.001%)を超えるのは3次高調波のみで、他はこれ以下のレベルで5次高調波と7次高調波があるだけのようだ。基本波10kHzの場合もやはり2次高調波ほかの偶数時高調波は見えない。この場合もPP動作が完璧のようだ。

・これも、1kHzの場合より10kHzの方が低歪率。
  
No-168 MCFA 10kHz 1V out No-168 MCFA with Cascode 10kHz 1V out
・No−168(もどき)も1kHzより10kHzの方が低歪率?と思ったのだが、それは2次以外の高調波が見られないための勘違いで、その2次高調波が−100dB(0.001%)を超えているので、歪み率としてはこちの方が1kHzの場合より高い。

・この2次歪みの高さだけでLH0032やNo−121(もどき)よりも総合的に歪率が高くなってしまっている。

・カスコードが付加されたNo−168(もどき)の方は、1kHzの場合にあった−100dB以下−120dB以上の3次、5次、7次、9次高調波が見られず、代わって同程度のレベルの2次高調波のみとなった。したがって、これは明らかに10kHzの方が1kHzの場合より低歪みである。

・しかもこの4種の中でも最も歪み率が低い。非常に低歪率。

  
・次は10kHzで出力が5Vの場合。
LH0032 MCFA 10kHz 5V out No-121 MCFA 10kHz 5V out
・−80dB(0.01%)以下に2次高調波、−100dB(0.001%)以下に3次高調波。

・何となくNo−168(もどき)の1kHzで出力10Vの場合(低次から高次へ漸減で高調波が並ぶ)に似ているような。。。

・3次以降の高調波の率は低いので、1kHzの場合より引き続き低歪みである。

・−100dB(0.001%)程度に2次高調波、−120dB(0.0001%)程度に3次高調波。

・1kHzの場合に比較すると、5次、7次、9次の高調波がなくなり、3次高調波の率が低くなったが、2次高調波の率が高くなったので、総合的には1kHzの場合より歪み率は高い。

・しかし、ここで4種の中では最も低歪みになった。

   
No-168 MCFA 10kHz 5V out No-168 MCFA with Cascode 10kHz 5V out
・−80dB(0.01%)をやや超えるレベルの2次高調波、以下、3次高調波、4次高調波、5次高調波が漸減で並んでいる。

・カスコードのないNo−168(もどき)は、10kHzの場合、この振幅5Vの段階で完全対称型の大振幅動作時の特徴的な歪みの様相、すなわち、高調波が低次から高次へ漸減で並ぶ姿になってしまった。まぁ、まだ5次高調波までだが。。。

・が、この場合は1kHzの場合より明らかに歪みは多い。また、4種の中では最も歪み率は高い。

・−80dB(0.01%)以下に2次高調波、−100dB(0.001%)以下に3次高調波。

・左と比較すると、カスコードのおかげで歪みがかなり抑制されている

・が、残念ながら1kHzの場合より明らかに歪みは多くなり、これまで4種では最低レベルの歪みだったのだが、ここでLH0032、No−121(もどき)と同程度の歪み率となってしまった。

  
・次は10kHzで出力が10Vの場合。前回はこれを10Vから10uVの範囲で観た訳だ。
LH0032 MCFA 10kHz 10V out No-121 MCFA 10kHz 10V out
・その高調波は低次から高次へ漸減で並んでおり、これは完全対称型の大振幅時のものと同じだ。

が、歪み率は、1kHzの場合とほぼ同じか、ちょっと多い程度である。

・で、もしかすると、この
高調波が2次から高次へと漸減で並ぶのは別に完全対称型の大振幅時の特徴という訳ではなく、単にPP動作が不完全になった場合の歪みの現れ方の一般なのかもしれない。
・No−121(もどき)は、この場合も高調波は3次までに収まっている。

・しかも、1kHzの場合のはあった5次以降の奇数次高調波がなくなっているので、1kHzの場合より明らかに低歪みである。

・10kHzで、この大振幅ではNo−121(もどき)が最も低歪みとなった。高周波、大振幅でこの歪みの様相と歪み率の低さは、No−121(もどき)のPP動作の優秀性の表れだろう。
  
No-168 MCFA 10kHz 10V out No-168 MCFA with Cascode 10kHz 10V out
・残念ながら、4種のなかでは最も歪み率は高い、また、1kHzの場合より明らかに歪みは多く、10倍ほどになっている。し、1V出力の場合と比べても10倍程度の歪み率になっている。

・高周波領域で歪みが増加し、大振幅動作で歪みが増加するというのは、ちょっと残念。
・率が抑制され、左のカスコードがない場合の1/10の歪み率となり、数値的にはNo−121(もどき)に次ぐ低歪みではあるのだが、実は左と同じく1kHzの場合の10倍の歪み率となっている。

・そういう意味では、2段目差動アンプにカスコードを付加しても、やはり高周波領域で歪みが増加し、大振幅動作で歪みが増加しやすい、すなわち、そういう条件でPP動作が不完全になりやすいのかもしれない。完全対称型は。。。
   
・と、適当に考えてみたが、実は“占い”をあれこれ解釈してもいささか空しいところがある。(爆)

・ので、終了。





(2009年1月28日)







(その後の17)



基板を新しくして、組み直した。






回路もやや手直ししてある。

イコライザー部については、初段差動アンプのソース側トリマーを200Ωから50Ωに減らしてある。のは、初段反転側ゲート抵抗を減らしてクローズドゲインをやや増やしたことに伴いNFB量がその分減ったので、この際、初段に掛かる電流帰還量を減らしてオープンゲインを増やし、結果NFB量を少し増やそうという趣旨。

フラットアンプ部は、まず、初段ステップ位相補正をさらに適切なものに見直してある。1000pFは大きな容量のように感じられるが別に問題はない。次に、2段目差動アンプ右側のカスコードアンプはトランジスタによるものとした。のは、ここをイコライザー部同様の回路で2SJ103によるものとする場合、Idssが相当に大きな2SJ103にしないとかえって音が悪くなる、すなわち、ここは動作点が1.5mA程度と大きいので、Idssが相当大きいものでないと差動アンプ右側の2SJ103のドレイン−ソース間に掛かる所要電圧を確保出来ず、音がクリスタルになってしまう、ので、所要電圧を外部で確保するこの回路にしたもの。で、そうなればオールFETでもないNo−168(もどき)としては、FETより一桁gmが大きいトランジスタにした方が良いだろう。という判断。






・回路の見直しに伴って位相補正に変更が必要にならないかPSpice(評価版)で占う。

・まずはイコライザー部。初段のソース抵抗トリマーを200Ωから50Ωに変更しただけだ。が、オープンゲインが大きくなってNFB安定性がやや損なわれるかもしれない。





・オープンゲイン(赤)は最低域で98.5dB。初段のソース抵抗トリマーが200Ωの場合はこれが94.5dBであったから、200Ωを50Ωと1/4にしたことによりオープンゲインは4dBアップした。クローズドゲイン(青)はNFB回路設定を変更していないから従前通りであり、1kHzで48dBである。従って、ループゲイン(緑)(≒NFB量)は、200Hzから20kHzまで35dBと、オープンゲインの増加分4dBがそのままループゲイン(≒NFB量)4dBの増加となっている。まとめるとこのとおりで、クローズドゲイン設定を6.5dB上げたことで同量失ったループゲイン(≒NFB量)が、これでかなり回復できたことが分かる。
変  更  経  緯 オープンゲイン
  (10Hz)
クローズドゲイン
  (1kHz)
  ループゲイン
(≒NFB量at1kHz)
ループゲイン
 (対当初)
・当初(帰還量設定抵抗560Ω、初段ソーストリマー200Ω) 94.5dB 41.5dB 37.5dB −  
・変更後(帰還量設定抵抗270Ω、初段ソーストリマー200Ω) 94.5dB 48.0dB 31.0dB ▲6.5dB
・再変更後(帰還量設定抵抗270Ω、初段ソーストリマー50Ω) 98.5dB 48.0dB 35.0dB ▲2.5dB

・が、そうするとループゲインの位相がよりNFB不安定方向になる可能性があるわけだが、ループゲインの位相(黄)を観ると、利得交点周波数が2MHzと上昇したことにともない、そのポイントで位相回転が−140°弱となって、その結果、クローズドゲイン(青)の1MHz超領域に1.5MHzでピーク1dBの盛り上がりが生じている。当初の状況に近づいてしまった訳だが、当初はこのピークは4dBであった。大丈夫か?
・その辺は、PSpice(評価版)で占い、方形波応答で観る。
1kHz 10kHz 100kHz
No−168 MCEQ Ver3.1
1kHz 20mV/div  5V/div
No−168 MCEQ Ver3.1
10kHz 0.1V/div  5V/div
No−168 MCEQ Ver3.1
100kHz 0.5V/div  2V/div
・幸いにして何の問題もない。

・ので、これで行く。(^^)
・次にフラットアンプ部。





・ステップ位相補正を見直した結果、利得交点周波数はやや下がって2.5MHzとなり、利得交点周波数点でのループゲインの位相(青)もマイナス115°程度となった。ので、クローズドゲイン(水色)のピークは全くなくなった。
よって、方形波応答はさらに良好なものになるはずだが、早速この状態における方形波応答をPSpice(評価版)で占い、実機の方形波応答も観る。入力は左端及び中央は2Vp−p。
100kHz 1MHz 100kHz 振幅 26VP−P 
No−168 MCFA Ver3.1
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.1
1MHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.1
100kHz 1uS 1V/div 5V/div
・良好な結果だ。

・また、スルーレートに変化はない。シミュレーションでは0.2uSで15V、すなわち75V/uS。実機の方形波応答では、信号入力箇所の関係でケーブル容量の影響を受け0.2uSで10V、すなわち50V/uS程度となってしまう。まぁ、信号入力箇所を選べばもっと良くなる。

・なお、実機の方はプラス側2段目右側のカスコード回路のため、プラス側が飽和して出力±13Vp−pは出ない。これはカスコード回路を付加したことによるデメリットである。従前同様の最大出力を得ようとすれば電源電圧を上げる必要がある。のだが、別にそんな最大出力電圧は必要ないのでこのままで良いだろうて。まぁ、そのうち上げてしまうかもしれないが。(爆)

・で、その音。だが、やはり完全対称型の音がする。クールで正確なLH0032に比すと、高域方向の帯域の伸びや空間の透明性のようなところではやはりもう一歩及ばないかなぁ。。。という感じはある。が、それは持ち味の違いという感じで受け止められる。こちらは完全対称型らしいエネルギー感溢れる積極的な鳴りっぷりに加え、カスコードの効果で正確感や緻密感、透明感もほとんど遜色はないものとなっている。

・が、あくまで私の製作したものでは、という限定付きでの話だが、完全対称のNo−168(もどき)が、GOAのNo−121(もどき)やLH0032と比して無条件に音が優れているというものではない。ということもまた事実。

No−168 MCFA Ver3.1
10kHz 1V/div 5V/div




(2009年2月3日)






その後の18:ついに暴挙(^^;



・ディスコンとなって入手もなかなか困難になってしまった2SC1775A2SD756

・K式御用達だったこの二つのトランジスタは、高耐圧(120V)、高hfe、低Cob(1.6pF)、ローノイズな高性能トランジスタだ。が、もう一つの特徴は小電流型のトランジスタということだ。Ic=10mA以下の領域からhfeもftも低下する特性であり、要するにIc10mA以下で使うべきトランジスタなのである。したがってこの用途にはもともとあまり向いていない。


・となると、K式御用達で良さ気なのは唯一ソニーの2SC1811ということになろうか。

・これは高hfeではないが、高耐圧(150V、175V)、低Cob(2.4pF)、ローノイズである。今となってはデータシートがないので、対Icのhfe、ft特性が確認できないが、Ic(max)が100mA(2SC1775Aと2SD756は50mA)であることから推測すれば、数十mA程度は実用域だろうと思われる。したがって良さ気なのだが、問題は遙かいにしえにディスコンとなり入手不可能であること。まぁ、手持ちがないわけではないが。


・では、現行品で、耐圧はそんなに高くなくとも良いけれど、高hfe、低Cob、ローノイズで、Ic=数十mA程度までhfeやftが低下しない、この用途に良さ気な小信号用トランジスタはあるだろうか?

・K式御用達ばかりに拘っているうちに、最早ディスクリートトランジスタ自体が絶滅危惧種となってしまった今日この頃。。。


・と思ったのだが、あった。(^^)

・耐圧は50Vだが、高hfeであり、低Cob(2pF)、ローノイズである。しかもIc(max)は150mAと2SC1811より大きいし、なにより、Ic100mA程度までhfeの低下がなく、Ic対hfe特性も驚くばかりに水平直線で、また、ftもIc=50mAで最大(500MHz超)になる(それ以上で低下)という、小信号用としてはなかなかに大電流型の非常に良さ気なトランジスタだ。ついでに許容損失も400mW。良いじゃないか。(^^)

・で、ついに暴挙に出る。

・名石2SC959(960)に替えて、我がNo−168(もどき)の終段にこのトランジスタを起用してしまったのである。 えぇっ!

・で、そのトランジスタとは? 何を隠そう、2SC1815なのである。 ええぇぇぇっ!

・さらに結論から言うと、駄耳の私には音楽表現力においてこれが名石2SC959(960)に及ばないような感じは全くしない。(爆)

・ので、当面これで行こうと思っているのである。  おぃおぃ
(−−)

・もちろん、よい子は真似をしてはいけません。(^^;   真似る訳がなかろう。(−−;


・なお、この際レギュレータの出力電圧を調整し、プラス側を23.5Vに変えてある。やはりアンプ最大出力はプラスマイナスを揃えておこう。そのためにはプラス側の電源電圧をマイナス側より5V高くする必要がある。

・ので、こうした。変更はプラス側の帰還回路の9.1kΩを6.8kΩに置き換えただけである。
・さて、トランジスタを変更すれば、当然位相補正も見直さなければならない。

・ので、先ずはPSpice(評価版)で占う。

・最初にフラットアンプ部。

・2段目差動アンプ部にカスコードが入り、終段のCobも小さいことから、この場合ファーストポールは、(R4も関係するものの)基本的に初段のR1、R2、C1で決まってしまう。と言うか決めなければならない。ファーストポールは先ずは動かさないことにする。ので、C1=1000pFはそのままにし、利得交点周波数とその点におけるループゲインの位相については、R4の変更で適切なものとなるよう調整する。

・そこで、R4=500Ω、1kΩ、2kΩと変化させるパラメトリック解析。





・ファーストポールはステップ位相補正のfc1=159/((2.7k+2.7k+R4)*0.001uF)で、R4の影響は小さいのでこれを無視して計算すると29.44kHzだが、占い結果もそうなっている。もう少し下げたほうが良いかなぁという気もしないではないが、まぁ良いか。

・で、R4をパラメトリックに変更すると、その違いは20kHz〜50MHz程度の領域に現れる。

・ま、最終的にはグラフ一番下のクローズドゲインの1MHz超領域の状況を観れば一目瞭然なわけだが、これによれば、R4=2kΩでは10MHz超領域に7dBのピークが生じるので不適。R4=1kΩでも8MHz付近で1dB程度の盛り上がりがありやや不適。R4=500Ωではゆるやかに減衰しており適正だが、やや適正すぎ。との占い結果だ。
・と、ステップ位相補正の抵抗値はこの辺の値で良さそうなので、あとは、方形波応答をPSpice(評価版)で占い、実機の方形波応答も観、音も聴きながら位相補正値を決める。

・最初にR4=2kΩ入力は左端及び中央は2Vp−p。
100kHz 1MHz 100kHz 26Vp−p
No−168 MCFA Ver3.2 2kΩ+1000pF
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.2 2kΩ+1000pF
1MHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.2 2kΩ+1000pF
100kHz 1uS 1V/div 5V/div
・この場合、シミュレーションは少し現実と乖離がある。ステップ位相補正のR設定2kΩは、シミュレーションでは方形波応答的にもリンギングが生じて不適という結果だが、実機の方形波応答では2kΩは最適のようだ。

・このような場合は当然判断においては実機の結果を優先する。

・ところで、終段にCobの小さいトランジスタを起用したことにより、かなり高速化したことが分かる。1MHz方形波応答がこのような応答になるのは、LH0032以来だ。

・右の写真からスルーレートを読み取ってみると、0.1uSで13V立ち上がっており、したがって130V/uSである。入力方形波の立ち上がりスピードの関係で正確な測定は困難なのだが、まぁ、同一条件での相対比較として観れば、LH0032のフラットアンプが150V/uSであったので、かなり高速であるとは言えるだろう。

・で、問題の音だが、。。。。。。ふ〜む、悪くない。と言うか、終段2SC959の場合と比較しても何ら遜色がない。ように感じる。(爆)

・だけではなく、より晴れやかで爽快な感じも受ける。が、まだ少し鋭さが残る感じもあり、もう少したおやかだと更に良いような感じがする。

No−168 MCFA Ver3.2 2kΩ+1000pF
100kHz 0.1uS 1V/div 5V/div
・ので、R4=1kΩに変更してみる。

・また、シミュレーションと実機の方形波応答に差がありすぎるので、シミュレーションのモデルのCob設定が少なすぎるか、実2SC1815のCobが規格より大きいのかも、ということで、ここからは、シミュレーションの2SC1815モデルのコレクタ−ベース間に3pFをつないでシミュレーションする。で、入力は左端及び中央は2Vp−p。
100kHz 1MHz 100kHz 26Vp−p
No−168 MCFA Ver3.2 1kΩ+1000pF
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.2 1kΩ+1000pF
1MHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.2 1kΩ+1000pF
100kHz 1uS 1V/div 5V/div
・シミュレーション結果はこの方が現実の実機の方形波応答に近いようだ。

・で、右の写真からスルーレートを読み取ってみると、やや速度は落ちたようだが、0.1uSで12Vは立ち上がっており、したがって120V/uSである。

・問題は音であるが、たったこれだけの変更で期待通り全体によりたおやかな方向に変化し、バランスの取れた非常に良い音になった。完全対称型らしいダイナミックさと充実したエネルギー感はそのままに、透明感、爽快感も素晴らしく、聴いていてとても楽しくなる鳴りっぷり。情報量も驚くばかりでLH0032に勝るとも劣らない。

・ああ、もうこれでいいわ。(^^)

・終了。


No−168 MCFA Ver3.2 1kΩ+1000pF
100kHz 0.1uS 1V/div 5V/div
・次にイコライザーアンプ部。

2SC1815のモデルのコレクタ−ベース間には3pFを付けておく。





・位相補正はそのままで何ら問題はないようだ。と言うよりより良好となった。
・PSpice(評価版)の占う方形波応答と、実機の方形波応答はどうか。
1kHz 10kHz 100kHz
No−168 MCEQ Ver3.2
1kHz 20mV/div  5V/div
No−168 MCEQ Ver3.2
10kHz 0.1V/div  5V/div
No−168 MCEQ Ver3.2
100kHz 0.5V/div  2V/div
・何ら問題はない。ので、この場合位相補正の見直しは必要ない。


・で、その音なのだが、。。。素晴らしい。(^^)

・やはりレコードも悪くない。カートリッジが今間近で発電しているという感じがビシビシと伝わってくる鮮度感、生々しさはなかなかに得難い。レコードの音とは、レコードに刻まれた記憶の溝によってカートリッジが音楽を今ここに作り出す、まさにリアルな生演奏なのだ。

・よって、結論。これで行く。(^^)












(2009年2月11日)







その後の19:素人の浅知恵




・PSpice(評価版)でのFFTシミュレーションの占い結果でしかないのだが、完全対称型プリアンプ(フラットアンプ部)の2次歪みがGOAに比べて何故多いのか?と、考えていた。P−P動作が完全であれば、2次歪み等の偶数次高調波は打ち消され、理想的には0になるはずなのである。が、PSpice(評価版)シミュレーターは完全対称型の方がGOAより偶数次歪みが多いと占う。

・何故だろうかと考えていたのだが、その過程で、私が「但聞ドライブ」の考え方に触発されて考えた「根本的手法」なるものが、やはり素人の浅知恵に過ぎないものであることが明らかになった。


「但聞ドライブ」と私の「根本的手法」なるものは、概略ここに書いてあるが、まぁ、あれこれ言ってもしょうがない。ので、端的に以下にシミュレーション結果を示す。

・これは、2SC1815による終段上下のPP動作をFFTによる歪み解析から観ようというものである。終段上下に信号として位相反転した1kHz正弦波電流を与えるとともに、終段にアイドリング電流を流すためのバイアス電流をDC電流源で与えている。そうするとプラス側のベース抵抗R1(680Ω)に流れるバイアス電流をマイナス側Q2が吸い込まなければならないので、マイナス側Q2のアイドリング電流はその電流分だけプラス側Q1のアイドリング電流より多くなる。と言うか、多くならなければならない。このため、マイナス側バイアス電流もプラス側より多くしなければならない。

・そういう構造であるため、このプラス側のベース抵抗R1(680Ω)に流れる電流がQ1、Q2のPP動作の完全性を阻害し、2次高調波を生じさせているのではないか。という問題意識なのである。が、まぁ、それについてはこれらのシミュレーション結果だけで判断するのは早計だ。

・が、「但聞ドライブ」の考え方の正しらしさと、私の「根本的手法」の浅はかさは明らかなようなのだ。

・最初に、終段上下のベース抵抗が両方とも680Ωの場合。


・2次高調波がやはり多い。まぁ、レベル的には裸特性(無帰還)で−60dB以下(0.1%以下)ではあるが。
・で、次に私が考えた「根本的手法」の場合。2次高調波が減って欲しいところだが。。。
・残念ながら、なんら解決になっていないことが分かる。かえって2次高調波も3次高調波も増えている。やはり淺知恵に過ぎなかったか。。。_冂○
・ということが「但聞ドライブ」の場合と比較すると明確なのである。

「但聞ドライブ」の考え方を実現するため、上側R1(680Ω)に流れるバイアス電流(1.468mA)を同電流値に設定した電流源によって吸い込みマイナス側電源にバイパスする。これにより、当該電流をQ2が吸い込む必要をなくし、終段上下のQ1、Q2の動作条件を完全に一致させようというというのが「但聞ドライブ」の考え方である。
・一目瞭然。この場合、2次高調波が完全に消滅している。

ので、我がNo−168(もどき)も以前No−128?でやっていたように定電流回路で吸い込むか。とも思ったのだが、吸い込む電流がR1に流れるバイアス電流と一致しないと効果が薄れるとシミュレーターは占うし、単なる定電流回路では正確な値で吸い込むのはなかなか難しいし、では、完全自動で上側バイアス電流に正確に追随して吸い込む回路は出来ないかと考えたが、思いつかない。し、多分簡単な回路では無理だろうし、かといって複雑な回路でやるのもいかがなものかという感じがする。

・となれば、素人考えの「根本的手法」だけはとりあえず止めだ。

・が、考えてみれば、「根本的手法」についてもPSpice(評価版)でその方が終段上下までのゲインがより正確に一致するという占い結果に基づいて導入したもの。今回、FFTの高調波解析により歪み的には「根本的手法」に意味がない、というかかえって悪い、という結果が出たわけだが、これもシミュレータの占いに過ぎない、といえば過ぎないのだ。すなわち、本当のところはどうなのか分かった訳ではない。

・ので、実機で音を聴いて決めることにした。


・で、早速フラットアンプ部のマイナス側750Ωを680Ωに取り替えて、


・う〜む。。。。。。。。。。。。

・なにゆえこれまで気づかなかったのだろう。明らかにこちらの方が正解ではないか。

・よって結論。素人の浅知恵の「根本的手法」は廃止。

・いやはや、全く駄耳だったなぁ。。。いや、今でも十分駄耳だが。(爆)(^^;











(2009年2月24日)






その後の20



その後、いくつか石を取り替え、位相補正をいじったりしていたのだが、結果、我がNo−168(もどき)MCプリアンプはこうなった。

変更は二点。

先ずは終段のトランジスタだが、97A、945、959、984、1400、1627、1775A、1811、1815、1845、2235、2240、2705などを聴いた結果、この中では大人しく根暗な2SC2240を起用することにした。

そして、フラットアンプ部の位相補正なのだが、やはり大きな電圧ゲインを有する箇所でファーストポールを形成する方が精神衛生上も好ましい。ので、初段のステップ位相補正の効果をより高域に移してステップの効きも弱め、代わって2段目の例の場所にCを入れこれでファーストポールを作ることにした。Cの接続箇所がちょっと変に感じるかもだが、この場合この方が良いようなのでこうしてある。そのCは3pFでもアンプは安定だし、スルーレートも大きくなるが、ここは音の点から10pFである。









以下、記録写真


No−168 MCFA Ver3.4 1kΩ+1000pF 5pF
10kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.4 1kΩ+1000pF 5pF
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.4 1kΩ+1000pF 5pF
1MkHz 1V/div 5V/div
   No−168 MCFA Ver3.4 1kΩ+1000pF 5pF
100kHz 1uS 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.4 1kΩ+1000pF 5pF
100kHz 0.1uS 1V/div 5V/div
  
          
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−o 3pF
10kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−o 3pF
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3kΩ+270pF g−o 3pF
1MHz 1V/div 5V/div
   No−168 MCFA Ver3.5 3kΩ+270pF g−o 3pF
100kHz 1uS 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3kΩ+270pF g−o 3pF
100kHz 0.1uS 1V/div 5V/div
  
        
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−c 5pF
10kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−c 5pF
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−c 5pF
1MHz 1V/div 5V/div
   No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−c 5pF
100kHz 1uS 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−c 5pF
100kHz 0.1uS 1V/div 5V/div
  
        
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−o 5pF
10kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−o 5pF
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−o 5pF
1MHz 1V/div 5V/div
   No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−o 5pF
100kHz 1uS 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−o 5pF
100kHz 0.1uS 1V/div 5V/div
  
        
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−c 10pF
10kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−c 10pF
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−c 10pF
1MHz 1V/div 5V/div
   No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−c 10pF
100kHz 1uS 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−c 10pF
1MHz 0.1uS 1V/div 5V/div
  
        
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−o 10pF
10kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−o 10pF
100kHz 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−o 10pF
1MHz 1V/div 5V/div
   No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−o 10pF
100kHz 1uS 1V/div 5V/div
No−168 MCFA Ver3.5 3k+270pF g−o 10pF
1MHz 0.1uS 1V/div 5V/div
  





(2009年3月18日)






その後の21



もしやと思っていじってみたのだが、その結果、不要だろうと思っていたフラットアンプ2段目の左側のカスコード回路がこの場合音的には不可欠であることが分かった。ので、こうなった。









(2009年4月12日)






その後の22



No−168も既に8年が過ぎてしまったのだなぁ。。。

我がNo−168製作記も「その後の22」となってしまい、既にラインアンプ2種は解体の仕儀となり、ラインアンプ兼用となったMCプリのみ残っている。

そのMCプリも、随分と改変してしまったので、最早“No−168”の名称を冠するのも適当でないものになってしまっている。

特に、終段2SC959(960)を、2SC1815を経て、97A、945、959、984、1400、1627、1775A、1811、1815、1845、2235、2240、2705の比較試聴結果で2SC2240を選んでこれに変更してしまっていたから、尚更だ。と、思っていた。

が、No−210の“バッテリードライブ多機能DCプリアンプ”で、MCイコライザーアンプの終段に2SC959(960)に替わって2SC2240が採用されてしまった。

な〜んと。あれほど喧伝していたモールドの抑圧音はどこに消えてしまったのだろうか。と、いうことは置いておいて(^^;、目出度く2SC2240がプリアンプの終段素子として純正採用されたのある。

ので、我がNo−168(もどき)の今の姿を書いておく気になった。(^^)

と言って、大した変更をしている訳ではなくて、前回との違いはフラットアンプの位相補正として付けていた初段ステップ型位相補正を撤去したのみである。よって、フラットアンプの位相補正は2段目差動アンプ右側の10pFで、ここに作用するミラー効果を活用するものだけとなった。

つい最近の電池式完全対称型DCパワーアンプのStudyで、ここに作用するミラー効果を活用した位相補正は完全対称型では吉ではない、と言った舌の根も乾かぬうちに、今度はこれを使うとは実に節操がない。ようだが、パワーアンプとプリアンプでは定性的には方向として同様に言えても、定量的に見ればかなり差があり、この場合、殆ど問題となるようなレベルではないのである。

で、こうなっている。





No−210のバッテリードライブ多機能DCプリアンプはなかなか魅力的で、8年ぶりに製作意欲がかき立てられている。

が、この我がNo−168(もどき)を聴くと、果たしてこれより良い音がするだろうかなぁ。。。と、思わないこともない。(^^;










(2010年9月11日)