いにしえの・・・その1
いにしえの・・・と言えば・・・最近流行の真空管?・・・ではなくて第一世代の金田式DCアンプ
「FET入力対称型2段差動アンプ+プッシュプル・エミッタフォロアー」が基本回路で、巨大なトランスを擁して超高速シリーズレギュレーター、さらにはSWレギュレーターまで導入して、まさしく時代の最先端を突っ走っていた・・・・・・なんてイメージを持つのは私だけか?(^^;
でも、金田式DCアンプと言えばやはり「差動アンプ」の導入による低域時定数なしのDCアンプ部と終段まで安定化する「超高速シリーズレギュレーター」の組み合わせでしょう。きっぱり(^^;
金田さんは82年6月号のNo−65で、「この基本回路は10年以上前、レコードによるアンプの開発の時期にできたものであり、DC録音が導入されても変更を受けないばかりか、DCマイクからシリーズレギュレーターまで全てのアンプがこの基本回路で構成されている。マックスウェルの電磁場の基礎方程式が、アインシュタインの特殊相対性理論によっていっさい変更を受けなかったことと似ている」とおっしゃっている。(なかなかに凄いお言葉だ(^^;)
が、時は過ぎ、この基本回路も自身によって変更を受けてGOAの登場となり、超高速シリーズレギュレーターやSWレギュレーターは過去のものとなった。
と言うより、素人には余りに難しくなった超高速シリーズレギュレーターやSWレギュレーターを必要としないアンプに対する要請がGOAを生んだと言うべきか?
よってDCアンプ部は電源変動に強いGOA型式に進化したが、引き替えにあの出力段用超高速シリーズレギュレーターやSWレギュレーターはその後2度と復活することなく歴史の海の中に沈んだままだ。もう浮かび上がることはあるまい・・・
自作オーディオの世界が本当に風前のともしびになりつつあるような昨今の状況は何となく焦燥感を覚えるもの。もうTRを集めて新しいアンプを製作するなどということはそれこそいにしえの真空管を集めてアンプを製作する以上に困難なものになったかのようだ。
じゃあ・・・と言うわけでもないのだが、かつて作った第一世代の金田式DCアンプを歴史の奥底から引き上げてみたいという衝動に駆られてしまって・・・
どうなることやら・・・
タムラのビルトライトシリーズのトロイダルトランス、PR7807S。
容量は479VA。No−144で使われたテクニカルサンヨーTS−80の半分だが、値段はもっと高かったように思う、が定かでない。
当時地元の代理店に注文し取りに行ったら、「何に使うんですか?」と聞かれてしまったことを思い出す。
直径16cm、高さ10cm、重さ約6.5Kg
2次出力は50V−50V4.5A、65V−65V0.2A、6.3V0.5A。レギュレーターなしで使うとAB級240W+240Wのアンプが作れる可能性があるのは「GOAなアンプ達」で書いたとおりで、No−84はその実例。
ただし、第一世代のDCアンプでは超高速シリーズレギュレーターを使用することによって電圧降下するためAB級100W+100W用として使用されたもの。No−65がまさにそれ。
これを転がしておくのはやはりもったいない・・・
これを使っていつかUHC−MOSで8Ω200W超の完全対称型DCアンプを、とも考えていたのだが、UHC−MOSはMJ2000年9月号のNo−160の手法でハイパワー化する方が本来のようで。
右は日本ケミコンのCEPW、80V10000uF
直径77mm、高さ110mm程度ある。随分と大きい。
最近のケミコンはこの頃より大分小型だ。
別にこれに拘る必要もなく、なければ同じ日本ケミコンのKMHでも使うのだが、せっかくあるので(^^;
だが、電解コンデンサーは消耗品だから果たしてまだ使えるか。
もしこれが使えるなら労せずして電源部はできてしまったということになる。G・IのRKBPC2404もあるのだ。
当時使用されたのはファーストリカバリーではないKBPC2404の方だがRKBPC2404でも悪いことはないだろう。
いにしえの第一世代金田式DCアンプを復刻するかどうかを別にしても、こんな立派なトランスと整流回路用部品があるのだから、これらを再利用すればそれなりのアンプがすぐにも出来てしまいそうだ。(^^;
となると、次はいにしえの超高速シリーズレギュレーターだが・・・
No−65の±45V±14A超高速シリーズレギュレーターがこれ。
誤差アンプが2段差動アンプでゲインが非常に大きいうえに制御TRは三段ダーリントンだ。今見ても凄いと言えば凄い。
位相補正の56pと20pのSEコンに、0.1Ωをシリーズ接続した2.2uFのV2A、パラで20uFのタンタルB・Pなど、記事では説明されていないが微妙なポイントはこの辺だろうか?
制御TRの組み合わせ方にブリーダ抵抗の値などもあわせて微妙なポイントのよう。
要するに非常に微妙と言うわけ・・・
こんなレギュレーターで終段大電流部まで安定化したアンプなんて今はあるだろうか?
当時だってそんなにあったか?
と、凄いものだと思う、のだが、問題は安定して動作するものに仕立てられるか・・・で
かつて一度作ったことは作ったが、とても100Wとは思えない出力で保護回路が働いたように記憶している。今思えば多分このレギュレーターの仕業だったのだろう。
だから、指定部品、指定基盤、指定部品配置でこしらえることが先ず必要だ。が、それでも部品(TR等)のばらつきによっては上手くいかない可能性がある、らしい・・・
当時はこの原則をやや外していた・・・
また作るとすれば原則通りにしないと。それでもオッシロくらいは必需品かなぁ?
ところで+45Vの方の制御三段ダーリントン接続TRの初段には2SC984がパラで使われている。
「No−128?(完全対称型プリアンプ)製作記」で2SC984が金田式アンプに使われたのは74年頃のプリアンプが最初で最後なんて嘘を書いてしまった。
ここにそれは間違いだったと訂正します(「No−128?(完全対称型プリアンプ)製作記」の方は黙って齟齬のない表現に変えてしまった(^^;)
いにしえのアンプにはいにしえの部品がふさわしいでしょう。(^-^)
2N3055のロットナンバーの上2ケタは西暦らしいから、これは1974年製ということになる。27年前のTRだ。ftは1.5MHとかで第一世代の当時でもこの点は水準以下だったのだが、オペアンプを誤差アンプに使っていた頃からDCアンプの終段用大電流シリーズレギュレーターのプラス側制御TRとして変わらず使用されたのはこれ。
NECの2SB600もまた古い。こちらのftは4MHzでそれなりだが、これもオペアンプ時代からマイナス側の制御TRとして変わらず使用されたもの。
右は日ケミのタンタルB・Pに今となっては無さそうなTR&銀帯の・・・
全て見てのとおりのジャンク・・・でも使えそう(^^)
こちらは電圧増幅段用超高速シリーズレギュレーター
誤差増幅部は終段用の大電流レギュレーターと同じものであることが分かる。(位相補正がやや違うが)
制御TRが1個で出力電流変化量が少ない分大電流超高速シリーズレギュレーターよりは安定性・再現性は高い、と思う。
GOA時代のP.Pレギュレーターでも良いわけだが、復刻となればやはりこっちでしょうねぇ。
ところでNo−65はこの超高速シリーズレギュレーターの前にSWレギュレーターが使われていて、その出力は65V。
だが、当時SWレギュレーターの電池の持ちは水銀入りのネオでもあまり良いものではなかったように記憶しているし、今は水銀ゼロのネオで当時より電池の持ちが悪くなっているから今更またSWレギュレーターを使用するのはかなりきつい。
もし復刻するにしても電池使用を前提にしないでAC商用電源使用を前提にしたいなぁ。
となると、前段用にはPR7807Sの65V−65V出力の整流出力を使用することになるわけだが、その場合整流後電圧は±90V近くになりそうだから、このままでは制御TRの損失が厳しそうだ。
定数をいじってレギュレーターの出力電圧を±70V以上に上げた方が良さそうだし、また入力側コンデンサーも変更する必要があるかもしれない。というよりそもそも0.47uFのV2Aはもうないし。
懐かしの保護回路
これが実に完璧だった。
これがあればアンプを子供にも使わせることが出来る?くらいの安心感が得られる。
さて、以上がNo−65のいにしえの超高速シリーズレギュレーターの回路であるが、
問題は部品が揃うか?だ。
で、あちこちあさってみたところ・・・
な〜んと、あらかた揃ってしまった(^^;;
勿論、無いものもあるのだが9割以上は揃ってしまうようだ・・・
進の抵抗まであらかた揃う。みなジャンクの中古品だけれども・・・
いにしえのNo−65の電源部・・・
それは即ちタムラのトロイダルトランスを使用し、超高速シリーズレギュレーターでアンプ用の電源を全て安定化するという、今では考えられないような超豪勢なものなのだが・・・
これだけ揃っているなら復刻を本気で考えてみようかなぁ・・・
最大の問題はとっくの昔に絶滅した例のTRがないことだなぁ・・・
などと、他にもやりかけのものがあるというのに、いにしえの・・・をあれこれ妄想しているのである。
(2001年3月6日)
(続き)
いにしえの・・・アンプ部をどうすべきか・・・
No−65のアンプ部は、
まさしく抵抗負荷差動2段+プッシュプル・エミッタフォロワー。第一世代金田式DCアンプの最終型だ。
特徴は差動アンプの動作の完璧を期して初段だけではなく2段目にも定電流回路が付加されていること。終段を超高域まで正しくドライブすべくドライバーのC1161とA653も定電圧回路で結合してA級動作させていることなど。
また、半固定抵抗の接点も音を悪くするということから、レギュレーターで正確な電圧を作りこの正確な電圧を基準電圧とした定電流回路で差動アンプを動作させることにより(仕上がりゲインが小さいこともあるが)オフセットは±100mV以内に収まるはず、ということでオフセット調整用半固定抵抗もない。
さらに、記事の「調整方法」には2段目左側のA607のコレクタ電圧が−1V〜−3Vなら良いと記載されているのだが、これがこの範囲に収まらない場合の対処方法が載っていない。
と、理想的に動作する前提なのだが、現実にはレギュレーター出力電圧のズレや素子のばらつき等により、これらの電圧を指定範囲内におさめるために2段目差動アンプの定電流回路の動作設定抵抗のいずれかを半固定抵抗で調整後固定抵抗に置き換える、という作業を必要とする場合もあった回路だったと思う。
この回路で気になるのは、差動アンプの動作を規定する定電流回路の基準電圧がレギュレーター出力(要するに電源電圧)となっていることで、このためこのアンプ部はレギュレーターなしではあまり上手くなくて、その場合は定電流回路を付けた意味が薄れる、と言ったら言い過ぎかもしれないが、逆に言うとこのアンプ部はそれだけ超高速シリーズレギュレーター部と密接な関連を持って設計されていた回路だと言えるだろうか。
と、下手な講釈をしてもしょうがないのだが、いにしえのDCアンプの復刻を考えていながら、実はアンプ本体部分については第一世代のこの回路はイマイチ復刻意欲が湧いてこないのも確かで・・・(^^;;。何となく超高速シリーズレギュレーターに頼りすぎていないかな・・・と。
それが第一世代の第一世代たる所以だろ!と言われればそうなのだが(^^;
では、どうするか、
次のようなアンプを考えている。
No−139(もどき)のハイパワー版と言うべきか、MJ94年9月号のNo−134(もどき)と言うべきか(^^)
な〜んだ最近の完全対称型じゃないか、これで「いにしえ」か、と言われると(^^;;だが、
使用半導体は実に「いにしえ」だし、No−134も既に7年も前の発表で、そもそもTRによるDCパワーアンプ自体No−139で打ち止めになって久しく、事実上TR式DCパワーアンプは既に歴史の海に沈んでいると考えるのが正しいという現実からすれば、十分に「いにしえ」のように思えるもので(^^;
この回路は±60V超高速レギュレーターの出力電圧を制御トランジスタの損失を勘案して±70Vにしても定数をいじる必要もない。(と言うよりそもそも安定化電源を要しない、という声もあるだろう。)
何なら、プラス側のAC65V整流出力にAC6.5Vの倍電圧整流出力を重ねれば100V以上の整流電圧になるように思えるので、プラス側の超高速シリーズレギュレーターの出力電圧を100Vに設定すれば、初段で電圧ゲインを稼ぎ2段目に電圧ゲインを持たせない最新の型式も考えられる。
RD45Fなんてものはあるのかな・・・という程度のラフなものだが、こんな様なものも考えられるかもしれない。
ただし、このようなものは作例を知らないし、No−159等から可能性はあるかなという程度で、現実にはオープンゲインやその周波数特性を測るすべもない自分には、No−134を作例と出来る前者に比較すればいささか冒険的な回路ではある。
いずれにしても、今や殆ど失われつつある「いにしえのバイポーラトランジスター」による完全対称型DCパワーアンプを「いにしえの超高速シリーズレギュレーター」で鳴らしてみよう・・・(^^)
という、「いにしえの・・・プロジェクト」になりそうな妄想は取りあえずここらで(^^:
(2001年3月8日)
「いにしえの・・・プロジェクト」
MCプリアンプ編
こちらへ
(つづく)