祝・DCアンプシリーズ30周年 記念プロジェクト  
No−69(+82) いにしえの第1世代(抵抗負荷2段差動アンプ)
“最新超高速SWレギュレーター採用DCプリアンプ”を復刻する



これを一目見て何者なるかを理解した人は、かな〜り古い。 (^^;

今も生きているこれの仲間がどこかにあるだろうかなぁ・・・

これが、スイッチング周波数613KHzのスイッチングレギュレーター。

今やスイッチング電源など当たり前に家電製品にも使われていて珍しくも何ともないようだが、金田式でも今から20年ほど前にスイッチング電源が使われていた時期があったのだ。

基盤中央上に鎮座しているのが双信のポットコア。これがスイッチング電源の心臓部だが、これに流す電流を断続(スイッチング)することにより、このコイルに逆起電力を発生させ入力電圧より高い出力電圧を得る、昇圧型スイッチング電源である。

電流の断続タイミングを出力電圧と基準電圧との比較により制御し出力電圧を一定に保っているのでスイッチングレギュレーターというわけだ。

実際、入力電圧が直流7V〜15Vの範囲で27V〜30Vの直流出力電圧が得られるものだ。こういうのをDC−DCコンバーターとも言うのかな?

入力は何か?って。勿論乾電池です。





これが基盤裏側。

目立つのは勿論右上のトランジスタだが、これがポットコアに流す電流を断続しているスイッチングTRである。富士通の2SC2430だ。

Vcbo=120V、Vceo=120V、Ic=10A、Pc=100W、fT=80MHz、Cob=200pF、tr=0.2uS、tf=0.12uS、tstg=0.7uSという規格のスイッチング用途のトランジスタだ。

ということも昨年トラ技に付いてきた“復刻版 トランジスタ規格表’88”によって分かる。分かったからどうこうという話しでもないのだが・・・(^^;

敢えて話題にすると、当時既に日立の2SK134等のパワーMOS−FETは存在しており、実はスイッチングスピードはそちらの方が高速なので、ここに2SK134を起用するとスイッチング周波数ももっと上げられるのだが、やはりMOSは音が冷たく固い、ので採用が見送られた、ということがどこかに書いてあったように思う。違ったかな(^^;

なお、わざわざ裏側に配置しているのは、勿論配線距離を最短に保つため。



わざわざ横にして見てもらうほどの大したことではないのだが、電池電源から電流が赤の配線で左側から直にポットコアに入り、ポットコアから直にスイッチングTRのコレクタとスイッチングダイオードに繋がり、スイッチングダイオード出力に双信ポリカーボがパラとなりそのまま出力となって右側赤の配線に抜ける。という単純な構造がこれで見える。

基盤上にたくさん載っているIC等の他の素子類は、このルートにあるスイッチングTRのベースを制御するためにあるものなのである。

スイッチングダイオードも配線距離が最短になるようにこんなところに配置されている。スイッチングダイオードは別に能動的なスイッチング動作をしているわけではないが、613KHzのスイッチング速度で出力されてくるパルス電圧に遅れることなくいわゆる整流動作を果たす必要があるので、高速動作が可能なものでないと効率悪化を招くのだ。

ために、ファーストリカバリータイプの30DF2である。

今となってみれば当然リカバリータイムのさらに高速な31DF2とか、ショットキーバリアダイオードを使うべきではないか、ということは確かではあるのだが、当時ないものを使ってしまうと復刻の趣旨に反する。ので、オリジナルの30DF2としたのである。




で、これがその回路。

金田式でSWレギュレーターが登場したのは1980年10月が最初だが、当初はスイッチング電源用途の専用IC、SG3524を使用したものであったものが、82年4月のNo−63“新スイッチングレギュレーター採用 DCマイクロフォン”で高速差動コンパレーターμA760を中心とする「単純明快かつ安定なディスクリートタイプ」となったのである。

このμA760を起用した新スイッチングレギュレーターは瞬く間に全てのDCアンプに応用され、最終的に多重出力SWレギュレーターまで進化し、85年10月のNo−87“ロボット型DCマイク”を最後にSWレギュレーターが絶滅するまで使われた、という歴史がある。

が、これにはμA760が使われていない。LM319なのだ。

何と言うか・・・(^^;、No−69の記事ではこのLM319を使用したSWレギュレーターがμA760使用のSWレギュレーターに替わり新タイプとしてその後の主流になるもののような記述だったのだが、何故かそうなることなく結局μA760タイプがその後も使用されつづけたために、LM319を使用したSWレギュレーターはこのNo-69で使用されただけとなり、結果LM319採用のSWレギュレーターは“幻のSWレギュレーター”になってしまったのだ。

だから、未だに当時のSWレギュレーターが生き残っているとしてもこのLM319タイプが残っている可能性は非常に低いだろう。

それがここに蘇ったのだ。う〜ん、何とも貴重。(^^)
な〜んて(^^;






素人が回路自体を説明してもしょうがないので、興味のある方はそれぞれ勉強して頂きたいと思うのだが、簡単に昇圧型スイッチング電源の原理をこのスイッチングレギュレーターに即して表すと右のようになる。

これだけなのだ。

スイッチングTR2SC2430がオンになると、100uHのコイルに電流が流れる。

続いてスイッチングTRがオフになると、100uHのコイルに電磁誘導作用で電流を引き続き流そうという方向の起電力が生じる。図で言えばコイルの左側がマイナスで右側がプラスの起電力だ。

だからその際、電源電圧の15V+コイルの起電力による電圧が30DF2を経由して出力コンデンサー2.2uFに蓄積され、入力電圧の15Vより高い電圧が出力される。

次に2SC2430がオンになり同じサイクルが繰り返される訳だが、2SC2430がオンの際には30DF2は逆バイアスで出力コンデンサー側との導通を遮断するので、出力コンデンサーに蓄積された起電力は温存される訳だ。

が、原理は簡単でも実際に作るのは難しい。上の回路図のように、考えて作った人だけが「単純明快」と言う資格を有する、智慧と努力が結集された回路になる訳だ。

が、やはり当時も記事の回路図には一部間違いがあるのである。また、No−69の記事ではその基盤配置図(プリント基板図)も掲載されなかった。その基板配置図が掲載されたのは翌83年7月のNo−75においてなのだ。しかもこの基板配置図にも間違いがある。(鬱)

ああ〜(嘆)。これでは誰が作れるのだろう。

だから、LM319を使用したSWレギュレーターがこの世に今もある確率は限りなく0に近いのではなかろうか。



この時期は未だ多重出力SWレギュレータとはなっていないので、アンプがプラスマイナスの2電源を要請するのに合わせて電源部もプラスマイナスの2電源を用意しなければならない。

だからSWレギュレーターも2台になる。2台間の違いは、ごく近い発振周波数が重なってビートが生じないように一方の発振器で作った発振信号を共有するための回路だけである。

SWレギュレーターはこの後1台でプラスマイナス2電源あるいは3電源も出力できる多重出力型まで進化した。

が、あれは持ち運ぶ乾電池を極限まで減らしたいというDCマイク録音における要請にはマッチするものだったのだろうとは思うが、家で据え置きで使う再生アンプ類には必ずしもマッチしたものだったとは言えなかったのではなかろうか。

多重出力は確かに1台のSWレギュレーター、ということは電池も15V1組からプラスマイナス2組の出力が得られる。SWレギュレーターも電池も半分で良いわけだ。資源が半分でよいのだから実に効率的だ。

が、エネルギー効率も2倍になる訳ではないのだ。15V1組の電池からプラスマイナス2電源を取り出せば、入力側の消費電流は倍になるのが理屈というものである。だから、電池の持ちは当然悪くなる。

SWレギュレーターを起用した最後のDCプリアンプである84年12月のNo−82のデータを見ると、15V入力の場合490mAの入力消費電流であり、入力電圧が10Vに下がるとこれが620mAにも達してしまう。

ハッキリ言ってこれは乾電池で実用的なレベルを超えている。

No−69の単独出力タイプでも、15V入力時270mA、7V入力時540mAなのである。
これでも決して電池の持ちは良くない。当時のナショナルNEOハイトップでも電池消耗を気にしないで落ち着いて音楽鑑賞に浸れるといったレベルのものではなかった。

これが倍の消費電流となればそれこそアッという間に電池がなくなってしまう。電池消耗が気になってとても長時間音楽鑑賞をしているどころではない。

GOA移行とSWレギュレーター絶滅の要因がこの辺りもにある。と思うのだが、まぁ、それはどうでもいいか(^^;。

ということもあって、今回は単独出力タイプのNo−69のSWレギュレーターのままとするのである。




さて、LM319タイプの幻のSWレギュレーターの復刻は上手く完了した。

ので、SWレギュレーターには付き物ということらしいノイズというものを見てみよう。

右が単純にSWレギュレーター出力29Vにプローブを取り付けたところ、オシロスコープの画面に表示されたノイズ波形だ。

縦軸が10mV/dip、横軸が1uS/dipである。

29Vの直流出力にノイズが乗っている。プラスマイナスのピーク30mV程度の三角波的ノイズが基本波になっているのだが、10uSで6波ということは周波数600KHzということになる。

であれば、これはスイッチング周波数だ。
ということは、これがまさにスイッチング動作により出力コンデンサーにスイッチングダイオード30DF2により充電され、また、負荷に放電される電圧の様が現れたものということだろうか。

う〜ん。これのスイッチング周波数は613KHzとあるのだが、実際は600KHzにしかならなかった、ということなのか・・・(^^;


600KHzの基本波の上に大分高調波が乗っているようなので、横軸を5倍の200nS/dipにしてみた。

MHzオーダーのノイズが乗っている。

基本600KHzのプラスのピークを越えた時点で大きなレベルとなるが、マイナスのピークを越えた時点でもそれなりの大きさとなっている。

何がこの原因であるのかは分かろうはずもない。

のだが、果たしてこれらのSWレギュレータ出力に現れる600KHz及びMHzオーダーの数十mVレベルのノイズ。このあとのプッシュプルレギュレーターを経てアンプ出力にはどのように伝達されて現れるのだろうか?なかなかに興味深い。

ところで、K先生の作例ではSWレギュレーターのノイズ輻射の影響がアンプに及ぶのを防ぐため、間にアルミの遮蔽板が設けられていたのだが、今回復刻に当たっては怠けて省略してしまったのである。

が、我が耳で聞く限りにおいてはアンプ初段の2SK97が発するホワイトノイズ以外のノイズは何も聞こえて来ない。ように思うのだが・・・(^^;

と言っても、こうなる前の調整中にはSWレギュレーター由来と思われるビートが聞こえたりしたのも事実である。
が、ことはそう単純ではなく、No−128?でも苦労したアース引き回し等の問題も絡んでいるようで、この辺は下でまた触れることとしよう。


(2003年5月24日)




次は、超高速プッシュプル・レギュレーター。

現代の完全対称型は微弱な信号を扱うMCプリアンプでもレギュレーターが使われていないのだが、いにしえの第1世代DCアンプ群には、本体以上に巨大で高度な安定化電源(=レギュレーター)が登載されていたのである。

今回復刻するNo−69のMCプリアンプも、オリジナルは上の「最新超高速SWレギュレーター」を経て「超高速シリーズ・レギュレーター」により安定化された電源が供給される構成である。

が、今回復刻に当たっては、No−69の「超高速シリーズ・レギュレーター」に代わって84年12月のNo−82のMCプリアンプに起用されている「超高速プッシュプル・レギュレーター」を復刻することにした。

何故か?それは、これがレギュレーターとしても、抵抗負荷2段差動という第1世代の型式の最終形だから、である。こちらは折角だから第1世代発展の最終形を復刻したい。

上のSWレギュレーターの場合は、最終形は多重出力だが、それはどちらかというと音というより資源の効率のための進化だったのだが、こちらがシリーズレギュレーターからプッシュプルレギュレーターに進化したのは、正に音のためなのである。

今回のDCアンプシリーズ30周年記念プロジェクトの気分は、多分に第1世代の究極を復刻したいというところにあるので、であればこちらは当然この「超高速プッシュプル・レギュレーター」が選ばれることになるだろう。というものだ。

これにより今回の復刻MCプリアンプは、No−69のSWレギュレーター+No−82のPPレギュレーターという電源構成になったのである。





回路はこう。

誤差アンプが抵抗負荷の2段差動アンプという希有なものなのだ。

この部分TR1個で済ませる例が多い中で、差動2段の構成としたのは、第1世代当初用いたOPアンプによる誤差アンプ構成に匹敵するゲインとOPアンプに勝る周波数帯域のものでなければ、OPアンプを起用したレギュレーター以上の音が得られるものではなかったからに違いあるまい。





PSpice(評価版)で誤差アンプ部のゲイン周波数特性をシミュレートしてみよう。




電圧ゲインは低域で85.5db程度と出た。高域のfc(△3dbポイント)は22KHz程度だろうか。
位相の方はここは180°反転しているのでデータに180°を加算して表示している。100KHz以上で位相補償が利いていて、位相が180°回転するポイントは15MHz付近である。

これがどれだけ現実の姿に近いのか不明だが、仮にこれが正しい姿だとすれば、誤差アンプにOPアンプ709を用いた場合に比較して、極低域でそのゲインにやや及ばないものの、100Hz以上の帯域では優にそれ以上のゲインが獲得できている、ということになろうか。

もっとも、ゲインだけの理由でOPアンプからディスクリートに転換した訳ではない。のだろうが。





実は、この抵抗負荷2段差動アンプによる超高速PPレギュレーターは第1世代の最後に現れたということもあり、実際に使われたのは第2世代のGOAアンプにおいてだったので、GOAアンプの電源として記憶している方の方が多いかもしれない。

このPPレギュレーターが登場したのは84年12月だが、翌85年は周知の通り、GOAが登場してK式の世界が一挙に相転移した年なのだ。その相転移の中で抵抗負荷2段差動アンプによる超高速PPレギュレーターだけが当分の間存続を許されていたのである。

が、やはりというべきか。
86年8月のNo−92において誤差アンプにGOAを導入した“最新式超高速PPレギュレーター”が登場するとともに絶滅の時を迎えたのである。

さて、この超高速PPレギュレータ使用上の注意事項をひとつ。

出力のプッシュプルのプル側のトランジスタは負荷が小さくなってレギュレータ出力電流が減った場合にはその分の電流を吸い込むことになる。のだが、このPPレギュレーターは電源供給先であるアンプ負荷が存在していること、すなわちいつも一定の出力電流があることを前提にして作られているのである。

したがって、このPPレギュレーターを製作して調整しようとする場合は、必ず出力に560Ω程度のダミー抵抗を繋いで出力電流を流した状態で調整しなければならないのだ。

それをしないで出力オープンのままで入力電圧を加えるとどうなるか?

プル側の2SB716、2SD756が壊れる。



さて、超高速PPレギュレーターの復刻も上手く完了した。

ので、SWレギュレーターの出力に現れていたスイッチングノイズらしきものがこの超高速PPレギュレーターの出力にも現れるものなのかを見てみよう。

SWレギュレーターの出力がPPレギュレーターの入力だから、PPレギュレーターの出力を見るとPPレギュレーターの効果、能力が分かる。ということであるのだ。

右が単純にPPレギュレーター出力25Vにプローブを取り付けたところ、オシロスコープの画面に表示されたノイズ波形だ。

縦軸が10mV/dip、横軸が1uS/dipである。

25Vの直流出力にノイズが乗っている。プラスマイナスのピーク最大30mV程度のパルス的ノイズで、SWレギュレーターの時のような三角波的ノイズではなくなった。

パルスは大きいのと小さいのと2つのピークがあるが、それぞれ10uSで6波ということは周波数600KHzということになる。

であれば、これもスイッチング周波数だ。

横軸を5倍の200nS/dipに拡大してみよう。

MHzオーダーのノイズだ。

なるほど。これは上のSWレギュレーターの出力において基本600KHzの三角波の上に乗っていたMHzオーダーの高調波的ノイズだ。

SWレギュレーター出力に出ていた600KHzの三角波ノイズは、この超高速PPレギュレーターの抑圧能力で取り除かれたようだ。

が、それより1桁以上周波数の高いこのMHzオーダーのノイズは、超高速PPレギュレーターの抑圧能力が及ばずPPレギュレーターの出力にもそのまま漏れてきたのだ。

と、いうことだろうか。

とすれば、図らずも超高速PPレギュレーターの効能とその限界を目で見ることとなった。と言うわけだ。

ふ〜む。

ではアンプの出力においてはこれはどのように現れるのだろう?



(2003年5月25日)



次はアンプ本体。

常に進化を続けているDCアンプシリーズにおいては、過去のアンプには何の意味もない。というのが公式見解だ。

確かに、理想NF型イコライザー方式ではない第1世代のMCプリを復刻するのは、その点でも復刻という以上の意味はない。

のだが、敢えてシリーズ第1世代のMCプリアンプを復刻するのである。

温故知新。
ということもあるし、SWレギュレーターや超高速PPレギュレーターというのも今や失われた面白さであるし、これで動作させる第1世代の抵抗負荷2段差動型の音が現代完全対称型の音に本当に劣るのか確かめてみたいし・・・。

近年とみに評判の良い真空管プリは別に理想NF型イコライザー方式ではないしなぁ・・・、ならばこれだって別に悪くはないのでは・・・な〜んて。(^^;

なお、理想NF型イコライザー方式等の金田式DCアンプシリーズの歴史におけるMCプリアンプの変遷については、NF型イコライザーのStudyを行ったこちらへどうぞ。

で、右が抵抗負荷2段差動アンプ+プッシュプルエミッタフォロア構成のアンプユニット2台で分配型イコライザー方式によりRIAAイコライズ特性を得ているNo−69のMCプリアンプ。分配型イコライザー方式であるからMCカートリッジ専用だ。

調整用の半固定抵抗が見えない。そう、もとよりそういうものは使われていないのだ。当時は接点1個にもシビアな今以上に妥協のない実にストイックなアンプづくりだったのである。

それがAT−1基盤1枚に収まっている。オリジナルは基盤を2枚に分けて間を2497で結線していたから、この点復刻の趣旨にはやや反するのだが、スペース効率や2497での結線の面倒さなどを思うと、1枚基盤に収めて間はダイエイ電線20芯で結線したい、ということでこうになった。(^^;



回路はこう。

No−69のものだが、この頃のアンプ回路は完成型として動きがなかったからNo−69onlyの回路ではない。No−82の回路と言っても可だ。

コンデンサーや抵抗の方向性については、No−69の1982年段階では未知の事項だが、復刻とは言え偶然に揃うこともある訳なので、今回はSWレギュレーターもPPレギュレーターもこのMCプリ本体も正しい(と思われる)方向に揃えてある。
のだが、2段目差動アンプの定電流回路関係の抵抗の方向については疑義が残った。このためファーストイコライザーとセカンドイコライザーで指定が逆になっているのだが、どちらが正しいのかは不明。(^^;

アッテネータはオリジナルと違ってステップを倍の12ステップにしてある。TMSの2段4回路6接点の回転ストッパーを切り取り、2段2回路12接点に作り直す。昔の録音アンプで使われた手法だ。今もそうだがオリジナルではゲインが大きすぎるので、この方が実用的。




ケースはオリジナルに忠実にということであれば、当時テクニカルサンヨーが鈴蘭堂のOEM(?)で出していたAK500というケースになるのだが、ないし、底が深いのも使いにくいし、鈴蘭堂のCL−10ALに配置すると面積的にピッタリなので、CL−10ALに右のように収めた。

右から超高速SWレギュレーター(No−69)、超高速PPレギュレーター(No−82)、MCプリアンプ(No−69)、カップリングコンデンサー(0.4uFケースマイカ)である。

超高速SWレギュレーターの間にあるのはバッテリーチェッカーだ。左下は勿論アッテネータ。

さて、左側、L型アルミアングルで横に寝かせて取り付けてある大きなケースマイカコンデンサー。オリジナルは勿論SE型である。

が、ここにあるのはスタック型。実はSE型にしたいのだが、SE型は余りに高価。いにしえの頃やはり買えなかったのだ。(悲) これで画竜点睛を欠くことになるかもしれないが止むを得ない。SE型があればすぐにも交換したい。ので、どなたか不要になったSEケースマイカを死蔵しておられる場合、是非只で譲って下さいませ(^^;

また、画竜点睛を欠くと言う意味では、入出力のピンジャックもそうかも知れない。接点1つも大きな音の劣化要因ということで、入出力ともラグ端子で半田付け中継するのが当時の正しい作法なのである。が、やはりそれは余りに面倒。ごく普通のやり方に堕落してしまっている・・・(^^;

さて、配線を済ませて即何も問題なく動作するということはまずない。と言うのが経験則。そのため、各基盤毎に動作確認しつつ最終的に結線するのだが、それでも単体で動作確認した時には問題なかったのに、全体の配線をすると問題が生じる場合がある。というのが現実だ。

まず、完璧に発振してオフセットが電源電圧に張り付いて調整不可という場合がある。この場合ははっきり言って諦めることが肝要だ。どこかオリジナルどおりに作っていないはずだ。半導体に代用品を使ったり、部品配置を指定どおりにしなかったり。結果、位相補正が不十分になったのである。したがって、位相補正コンデンサーの容量を増やすなり、NFB回路に入っている高域帰還制限抵抗の抵抗値を増やすなりの根本的対応策を講じる以外にない。


そこまでいかなくとも、何となく動作が不安定ということが良くある。微かにピーとかギャーとかブーンとかザーとかの音がする。朝鮮語のラジオ放送が聞こえる。アンプに手をかざすとそれらの音が変動して、手をケースに触れると止まったりする。アースが接続されている訳でもないのに近くのアンプに手を触れても止まったりする。実に不思議だなどと思う。

こういうことはオリジナルどおりに作った場合でも生じることがある。私の場合だが(^^;

実は今回もそういう状況だったのである。

こういう場合もやはり高域で微妙に発振しているようだ。
が、こういう場合はアース回りで対策を講じてみると上手くいく場合がある。

K式はアースについて、ステレオでもこれを1本にする(あるいは1本と見なせる状況に近づける)という配線手法はとられていない。アースも左右独立なのである。だから単体では問題がなくとも他の機器に繋ぐとアースのループが生じて、それが原因の問題が生じる場合があるようだ。私の場合だが(^^;

で、こういう場合には、アンプの入出力点において左右のアース間を結線してみると問題が解決する場合がある。要するにアースのループが外に出てそれが巨大になることを防ぐ訳だ。あるいはステレオで左右に2本あるアースを1本に見なせる状況に近づける訳である。

今回のMCプリはまさしくこの典型例となった。
配線完了当初はこれがSWレギュレーター由来のビートか?とも思ったが、アンプ入力のピンジャックのところで左右のアースを結線したところ全てが止まって嘘のように動作は極安定となった。聞こえるノイズは初段K97の発する微かなホワイトノイズだけだ。

というわけで、No−69(+82)“最新超高速SWレギュレーター採用MCプリアンプ”の復刻は上手く完了したのである。




最後は、SWレギュレーターに起因する高周波ノイズの件である。
超高速PPレギュレーター出力にもそのまま現れていたのだが、アンプ出力においてはどうだろう。

というのが右。

縦軸が10mV/dip、横軸が200nS/dip にして出力に現れた波形だが、ご覧のとおり、SWレギュレーターに起因すると思われる600KHz周期のピークとその上に乗っている数十MHzの高周波ノイズがアンプ出力にもそのまま現れている。

心持ちレベルが大きくなったようにも見えるが、それは測定時の機器配置やケーブル配置にもよるようなので、アンプで変化したという状況でもなさそうだ。

問題は、この数十MHzのノイズが音にも影響を与えるであろうかという点だが・・・少なくとも私には何の影響も感じられない。のだが、どうなのだろう。(^^;



さて、これでNo−69(+82)最新超高速SWレギュレーター採用DCプリアンプの復刻は一部オリジナルどおりではないものの曲がりなりにも完了した。

これで我が家にはK式第1世代のNo−69、第2世代のNo−122、そして第3世代のNo−168と三世代を代表するMCプリアンプが揃ってしまった。(^^)

「そんなに揃えてどうするの。」と外野の声・・・

う〜ん。確かに違いが分かるかどうかが問題だ。この続きがあるかどうかはひとえにそこに掛かっているわけで・・・(^^;(爆)





山法師の緑は濃いが空はもう五月雨・・・

(2003年6月1日)


(イコライザーアンプの方形波応答)


もうこれを作ってから早いもので3年だ。この間何も手を加えていない。全く安定した動作を続けているので手を入れる何ものもないのだ。さすがに第1世代の最終形。それだけの完成度の高さを有していたということだろう。

で、その確かな動作を確認する意味でも、これを題材に
イコライザーアンプの方形波応答とはどういうものか観てみる気になったのだった。(^^)

結果は実に分かりやすいものになったのだが、早速下がその写真。写真は全て2現象でその下が原方形波、上が出力波形。

No−69 ファーストイコライザー
1stEQ.1kHz Square Wave 1stEQ.10kHz Square Wave 1stEQ.100kHz Square Wave

・ファーストイコライザーは1kHz以下をブーストするローブーストアンプである。

・このため、1kHzの方形波は波形上側は右上がり、波形下側は右下がりの波形となる。方形波を構成する高調波は方形波の左側ほど高い周波数になっているところ、これに対するアンプのゲインは周波数が低いほど大きくなるから、仕上がり増幅度が方形波の左側から右側の方向で大きくなって、結果このような姿になる。

・10kHzになると、右上がりの傾向はかなり小さくなる。ファーストEQ.アンプのゲイン周波数特性は1kHz以上で平坦になるためだ。方形波が完全に平坦にならないのは10kHz方形波に1kHz以下の周波数成分が含まれているから。

・これが100kHz方形波応答になるとほぼ平坦な原方形波にごく近い出力方形波になる。方形波に含まれる1kHz以下の周波数成分が僅少になるためだ。

・なお、10kHz方形波応答波形、100kHz方形波応答波形ともオーバーシュート、アンダーシュート、リンギングが全く生じておらず、位相補正が適切であることが明らかだ。非常に適切に設計されている。また、100kHz方形波応答波形から高域のfc(△3dBポイント)は1MHz以上であることも明らかだ。

No−69 セカンドイコライザー
2ndEQ.1kHz Square Wave 2ndEQ.10kHz Square Wave 2ndEQ.100kHz Square Wave

・セカンドイコライザーは1kHz以上をカットするハイカットアンプである。

・このため、
1kHzの方形波は波形の真ん中から左側が徐々にカットされて丸まった波形になる。方形波に含まれる1kHz以上の高調波に対するアンプのゲインが周波数が高いほどに小さくなるからだ。

・10kHzの方形波は、ファーストイコライザーの1kHz方形波応答と同じ状況下にあるので、同じような波形応答だが、ゲイン下降の正にど真ん中の方形波周波数なので右上がり(波形下側は右下がり)の傾斜が最も大きく顕著だ。

・100kHz方形波応答も基本的に10kHzと同じなのだが、セカンドイコライザーのハイカットは1500pFにシリーズの1.2kΩにより100kHz付近で停止されそれ以上の周波数特性は平坦に転じるので右上がりの傾斜も緩くなっている。ファーストイコライザーの1kHz方形波応答がちょうど全く同じ状況にあるので、両者の応答波形は良く似ている。

・こちらの10kHz方形波応答波形、100kHz方形波応答波形についてもオーバーシュート、アンダーシュート、リンギングが全く生じておらず、位相補正が適切であることが明らかだ。非常に適切に設計されている訳だ。こちらも100kHz方形波応答波形から高域のfc(△3dBポイント)は1MHz以上であろう。

No−69 MCプリアンプ
1stEQ.+2ndEQ.1kHz Square Wave 1stEQ.+2ndEQ.10kHz Square Wave 1stEQ.+2ndEQ.100kHz Square Wave

・これらファーストイコライザーとセカンドイコライザーの両者を通過してNo−69MCプリアンプの出力となるのだが、その1kHz、10kHz、100kHzの方形波応答波形と正弦波応答波形はこうなる。

・勿論上の写真が方形波で下の写真が正弦波。MCイコライザーアンプの入り口から出口までだから非常にゲインが大きい。このため出力が飽和しないように入力を決めなければいけないので、特に低い周波数ほど入力信号レベルを小さくしなければならず、このため1kHzや10kHzの入力波形はノイズで大分滲んでしまっている。(^^; が、これで十分に分かるだろう。

・で、これがリアイコライズされ出力される方形波及び正弦波応答。

・リアイコライズされても、正弦波は高調波を含まない単一周波数の本当の正弦波であれば、何も変形されずに入力同様の正弦波として出力されなければならないはず・・・・。だが、まぁまぁか。位相は遅れているが。(^^;

・方形波は当然そうはいかない。方形波は広範な領域の正弦波の集合体だからだ。方形波の場合はそれを逆リアイコライズして入力してはじめて正しい方形波が出力されるということになる。

1stEQ。+2ndEQ.1kHz Sine Wave 1stEQ。+2ndEQ.10kHz Sine Wave 1stEQ。+2ndEQ.100kHz Sine Wave


以上、結論としては、大変立派な方形波応答、正弦波応答である。と言えるだろうて。

その音とて最近の完全対称に何ら引けを取るものではない。(^^)



(2006年10月21日)






(その後)



ある日、セカンドイコライザーアンプのオフセットがちょっと大きいことが気になった。

こういうことは大抵夏か冬に起こる。のは、勿論気温のせいだが、我が家の電圧ゲイン40倍のパワーアンプの保護回路が働いたのだった。

そこで、セカンドイコライザーアンプのDCオフセットを測ってみたら、なるほど当初−20mV〜−30mVにもなっている。これは暖まると共に減っていくのだが、これではパワーアンプの方は保護回路が働いてしまう。

ちょっと部屋が寒すぎたか。(^^; ← 暖房入れろ。(−−)

ならば、と、オフセットが小さくなるようにしようという気になった。

それにはNFBを増やせば良い。

目標としてオフセットを1/3程度にしたい。

ならばNFB量を3倍程度にすれば良い。

具体的にはセカンドイコライザーアンプ反転入力側のNFB回路のFD1840のゲートとアース間の抵抗820Ωを3倍程度に増やせば良い。

と、愚考は進み、さっそく行動に移ってジャンク箱を探してみると2.2kΩの進があった。

ので、820Ωを2.2kΩに交換することにした。

が、この世はそんなに単純ではない。何かを変化させると必ず他に影響が及ぶ。

この場合も、セカンドイコライザーアンプのゲインが小さくなってしまうとか、音が悪くなってしまうかもしれないとか、いくつかの影響が考えられるのだが、NFB量が増えてセカンドイコライザーアンプの動作が不安定になって、要するに発振なんかしてしまったら致命的だ。

ここはPSpice(評価版)の助けを借りつつ、必要なら対策を打つことにしよう。

と、方針は決まった。



そこで、まずはオリジナル状態を確認しておく。




上のグループは、黄色がループゲインの位相、水色がオープンゲインの位相、そしてピンクがクローズドゲインの位相。
下のグループは赤がオープンゲイン、緑がループゲイン、そして青がクローズドゲイン。

電流出力アンプでNFB素子をドライブするGOA以降の形式と異なり、第一世代は電圧出力アンプでNFB素子をドライブする。
ので、20kHz以下1kHzまでの間でループゲイン≒NFB量を減少させることにより所要のRIAA特性を作っている訳だが、その結果ループゲインの位相が5kHz付近で45°程度進んでしまっている。

が、この程度のNFB電圧の位相のずれが音に影響するとはちょっと思えないところで、影響するとすればNFBの量の方だろう。第二世代以降の理想NF型の場合は、位相ずれも小さくなるが、このNFB量がほぼ一定な訳だ。

さて、NFB安定度からはループゲインが0dBに沈むポイントと、その周波数におけるループゲインの位相が問題だ。

それは下のグラフのとおりで、ループゲイン(緑)が0dBに沈むポイントは10MHzというPSpice(評価版)のお告げである。 う〜ん、高い。素人が手を出せる領域ではない。(^^; のだが、イコライザーアンプはどうもこういう状況になりやすい。

で、その地点でのループゲインの位相は−110°ちょっと。なので、位相余裕は60°以上あり、一般的にはごく安全な範囲だ。

が、10MHzというところが問題なのだ。
この辺になると、私のような素人の浅知恵が遥かに及ばない魑魅魍魎の世界で、どこに落とし穴が潜んでいるか分からない。

ただ、とりあえずこのオリジナル状態で実機の動作におかしなところはないので、その意味でこのPSpice(評価版)のお告げは信頼に足るかもだ。(^^;






問題は、反転入力側のFD1840のゲートとアース間の抵抗820Ωを2.2kΩにした場合なのだが。











う〜む・・・、この結果ループゲインが8dB上昇しているのだが、やはりそれによってループゲインが0dBに沈むポイントが15MHz付近まで上昇してしまった。

その地点ではループゲインの位相は−125°に達しており、その結果としてクローズドゲイン(青)が3MHz付近から微妙に上昇して20MHz付近までに僅かながらピークが生じていることが分かる。







通常は−125°程度の位相回転で、この程度のクローズドゲインのピークは問題ないはずなのだが、どうもこういう高周波領域ではこの程度のことが問題になるのか、実機も少し様子がおかしい。

どうもこの場合僅かに発振症状を示すのだった。

それは、オフセットのちょっとした異常として現れた。NFBを増やしたことにより、目論見どおりに当初のオフセットは−8mV程度に減少したのだが、そのオフセットがある条件で+100mV程度になってしまう。

今回は、具体的にはボリュームを0に絞った場合と、オフセットをテスターで測定する際指が信号線側に触れていない場合に+100mV程度のオフセットになってしまう。右チャンネルも左チャンネルも同じだ。という怪奇現象だ。

と、まぁ、こういう現象はわざわざオシロで確認する必要もなく、微妙な発振現象に違いないのだ。

やはり対策が必要なようだ。

で、対策の方向性は決まっている。

このアンプの位相補償は勿論ワンポール補償なので、その補償を少し増やしてやることだ。

それは、2段目差動アンプの右側のTRのB−C間にCを追加することだが、最小限で2pFではどうか。

PSpice(評価版)に占ってもらおう。







結果。

補償量を増やしたことによりオープンゲインの高域での下降開始周波数が下に下がった。これに伴いループゲインの下降開始周波数も同様に低下し、結果、ループゲインが0dBに沈むポイントも10MHzとオリジナル状態に同じになった。その地点におけるループゲインの位相は−110°ちょっとと、こちらもオリジナルと同じ。結果、クローズドゲインには全くピークが生じていない。

これなら良いのではないか。というお告げだが・・・、さて。







問題の実機の方だが、とりあえず片チャンネルだけ2pFを取り付けてみる。

おぉ、上手く行った。(^^)

今度はオフセットは−8mVで不穏な動きは全くない。

し、片チャンネルだけにしか2pFを追加していないのに、何故か何もしていないもう片方のチャンネルまでオフセットが−8mVにとどまり不穏な動きをしないではないか・・・(爆)
いやいや、全くこれだから高周波領域は魑魅魍魎の世界だわぃ。(^^;

が、やはり、何もしていないチャンネルの方はボリュームを最小に絞った場合+100mVのオフセット電圧になるのだった。

やっぱりな。と、こちらのチャンネルにも2pFを追加した。

結果、両チャンネルとも完璧に安定になった。

結局PSpice(評価版)のお告げのとおり。

めでたし、めでたし。(^^)


これでセカンドイコライザーアンプのオフセットも小さくなり、その動作も安定で何の問題もない状態となった。

のだが、イコライザーとしてのトータルゲインは当然ながらやや小さくなった。

DL−103ではこれでも全く問題ないエネルギーに満ちあふれた音なのだが、何故かAT−F3Uではゲインが足りないようなふやけた音になってしまったように感じるのだった。

う〜む、ゲインがちょっと減ってしまったからかなぁ・・・

ので、次に、少しファーストイコライザーアンプの方のゲインを大きくしてみようかと考えた。

そこで、こちらもPSpice(評価版)に占ってもらう。







う〜む。

こちらはオープンゲインがDCから10kHz超まで80dBだが、RIAAの1kHz以下の低域上昇特性を作るために1kHz以下でループゲイン(緑)≒NFB量が低域ほど減少しており、10Hz以下ではそれが15dB程度だ。

GOAイコライザー並に低域オープンゲインが90dBから100dB程度あれば良かったのだが、抵抗負荷ではさすがにそこまでのオープンゲインは得られない訳で、となると、これ以上クローズドゲインを上げると、低域でのNFB量はさらに減ってしまう。のは、回路構成上避けられない。

GOAや完対ではイコライザーアンプの低域でのNFB量低下の問題は解決され、最低域でも25dBから35dB程度のNFBが確保されている。

ということからすると、これ以上NFB量を減らすことになるこの変更は止めておいた方が良い。

というのが
PSpice(評価版)のお告げだろうて。(^^;







という訳で、ファーストイコライザーアンプの方は変更なしとなり、結果、我がNo−69 MC専用プリアンプはこうなったのだった。





AT−F3U対応は・・・

まぁ、これしかイコライザーがない訳でもないし、後回しで良いだろうて・・・


って、これで103の奏でる音は、深く、甘く、切なく、魅惑的で、もう手を付ける気が失せてしまった。(^^;




日本ビクター VIH−6017

芸能山城組 黄金鱗讃揚

芸能山城組のダイレクトカッティングレコードはこれだけだろう。

録音日時の記載がないのでいつ録音されたものなのか不明だが、1978年に発売されたものだからその年に録音されたのだろう。場所は日本ビクター青山第一スタジオとある。

勿論マルチマイクで、エコールーム経由のエコーも加えられているのだが、リミッターやドルビー、dbx、コンプレッサーを一切使用しないで45rpmダイレクトカットされたもの。

カッティングエンジニアは余程優秀な方だったのだろう。ダイレクトカッティングだというのにレコード溝の模様が浮き出ている。

日頃キレイに整った音源を聴いていると、こういう削り出したままといったような素の音楽がかえって新鮮に思えてしまう。

西洋教会コーラスに対抗してどうのこうのというものではないが、40人程度の地声の女性合唱と男声合唱が、レコードでは限界と思えるダイナミックレンジで非常に生々しい鮮度で捉えられており、なかなかに聴き応えがある。

ダイレクトカッティングでなければ駄目だとは思わないが、ダイレクトカッティングには他では得にくい鮮度感があることも確かで、これも目前で合唱を聴くような臨場感が実に素晴らしい。






(2006年12月23日)






(その後の2)




書くべきほどのことでもないのだが、遂にスケルトン抵抗によるアッテネーターを廃してしまった。(^^;

変わってボリュームコントロールを担うのは文字通りボリューム(コスモスのA型)となった。

結果、ボリュームを50kΩにしたことで調整範囲が非常に広くなったこともあり、すこぶる使い勝手が良い。(爆)(^^;

と喜んでばかりでは勿論いけないわけで、ここの抵抗値を大きくするとフラットアンプの入力容量やケーブルの容量とのローパスフィルターの周波数が下がってくることに留意する必要がある。

抵抗値最大50kΩ、容量40pFとしてfc=80kHzだ。ここでの容量は2511が20cm位の容量とFD1840の帰還容量がミラー効果で初段の電圧ゲイン倍された容量がパラになったものになるわけで、20pFにもならないと思うのだが、まぁこのボリューム50kΩはその意味でもぎりぎりだが許容範囲内だろうて。






ここまでしてしまうと、
最早“No−69(+82) いにしえの第1世代(抵抗負荷2段差動アンプ)(もどき)
”と言うべきか。(^^;






(2007年1月7日)








(その後の3:徒然な今日この頃に)



・No−69は、1982年12月号だから、最早32年も前のことだ。

・その間、この抵抗負荷2段差動の第一世代から、電池式&GOA&理想NFBの第二世代、完全対称の第三世代、そして、電流伝送&SiC−MOSFETの現在へと、限りない進化が続いている。

・だから、今の電流伝送方式のMCプリアンプに比較したら、この第一世代のNo−69MCプリアンプの音などは聴けたものではない。

・が、久しぶりに聴いてみる。

・電源は、本来水銀入りの旧ナショナルネオハイトップだが、今となってはリチウムイオンバッテリー。

・カートリッジはDL−103。電流伝送となった第四世代の今となっても、無改造の103は手元にある。

なお、上で、セカンドイコライザーアンプのNFB回路のFD1840のゲートとアース間の抵抗820Ωを2.2kΩに変更し、併せて位相補正も変更していたのだが、それは元に戻した
・素晴らしい音がする。(爆)

・劇的な進化は、駄耳の凡人には分からないということだろうて。

・が、それはある意味幸せなことだ。(^^;



(2014年4月30日)







その後の4


・また10年が過ぎた。

・光カートリッジを導入し、0 SideForceも導入した今となっては、いにしえのK式第1世代MCプリアンプを聴いてもしょうがない?

・かも知れないが、K式30周年で20年前に作ったNo−69(+82)MCプリアンプが今なお生き残っている。ので、久しぶりに聴いてみる気になった。




・回路はちょっとだけ変えてある。






・ファーストイコライザーとセカンドイコライザー間のアッテネーターと言うかボリュームを、50kΩ(スケルトン)+50kΩ(RV30YGA)から50kΩ(スケルトン)+10kΩ(RV30YGA)に変更したもの。






・今となっては、超豪華な部品のオンパレード。

・バッテリーチェックもフルカラーLED(3色LED)でバージョンアップ。
・0 SideForceにDL−103、DL−103Rを取り付けてレコードを聴く。





・なんとも素晴らしい。





・No−69は1982年のものだ。





・K式は40年以上前から素晴らしい音楽を聴かせてくれるものだったことを、今更ながらに感じる。






・光カートリッジに比べてどうか?





・それは聞かぬが仏。





・0 SideForceのお陰もありそうだが、これはこれでとても素晴らしい。





駄耳は、要すれば許容範囲が広い。(爆)



(2024年9月24日)