ヘッドフォン(専用)アンプの実験

(2000年8月)

SONY MDR−CD2000。何の予備知識もなくカタログデータのインピーダンス32Ω、許容入力1500mWを見て、これをフルにドライブするには、√(2*32*1.5)=9.8V、9.8/32=0.3だからパワーアンプ(と言うか、それなりの電流供給能力)が必要、と、「ヘッドフォン(も鳴る)アンプ」を急遽誂えたのだが、現実に使ってみるとそんな最大許容入力までドライブする電流供給能力など全く不要だということが良く分かった。

カタログデータのとおり能率は106db/mW。これに1.5Wを入力して耳元で鳴らしたら鼓膜が幾つあっても足らない。現実には1mも与えれば十分以上の音量で、常用使用域はそれ以下。40mWを供給すれば120dbを超えてしまうのだ。ということで、インピーダンス32ΩのMDR−CD2000をガンガン鳴らして聴くとしてもドライブアンプは数十mA程度の電流供給能力があれば御の字で、SEPPなら25mAのアイドリング電流を流しておけば120dbの音量までA級ドライブだ。な〜んだ(^^;)。

最近の(ことかどうか知るところではないが)ヘッドフォンが低インピーダンスに作られているのは、スピーカーの傾向と同じでその方が低い電源電圧でも出力が稼げるためだろうか。ハイインピーダンスの場合所要電流はさらに少くなり結構なのだが、電圧はインピーダンスの増加比に√2を掛けた分必要だ。1.5Vや3Vで動いているウォークマンなどのポータブル機器でも十二分に利用できるよう、数十Ωの低インピーダンスにし、数十mA程度の電流供給で十分な音量が得られるようにデザインされているのだろう。世の中はそれなりに調和している訳だ。


そう考えると、そんな風に作られたヘッドフォンを鳴らすのにGOAパワーアンプを持ち出すなど大袈裟すぎたようだ(^^;)。これらのヘッドフォンには適当に電流供給能力のあるオペアンプでも使って鳴らすのがよっぽどスマートだ。今やものによってはICオペアンプの方がディスクリートで組むよりよっぽど高性能かつ高音質らしいし。現実に我が家の3電池電源の“Discman”など侮りがたい音でMDR−CD2000を鳴らしてくれる。

が、過剰性能のGOAパワーアンプでヘッドフォンを鳴らすなんてこともアマチュアならでは(^^;;、だし、ディスクリートでヘッドフォンアンプを作るなんてことは、今やアマチュアしかやらないことだろう、などと考えつつ、よりスマートなヘッドフォンアンプとして完全対称型のヘッドフォン(専用)アンプが頭に浮かんだのだった。


そこで、ちょっと予備実験をしてみた。
次の回路の電流ゲインなどを実測してみたのだ。

2SA606 Hfe=150 15mA
Ic (mA) 1 2 3 4 5
Ii (mA) 0.5 0.52 0.535 0.55 0.56
2SC960 Hfe=150 15mA
Ic (mA) 5 10 15 20 25
Ii (mA) 2.95 3 3.05 3.1 3.15
2SA606 2SC960
Vc(V) 2.5 13 23.5 Vc(V) 5 13 21
Ic(mA) 2.8 3 3.2 Ic(mA) 13.5 15 16.5



電流ゲインはIc/Ii。で計算すると、2SA606の方は(5−1)/(0.56−0.5)=66.67、2SC960の方は(25−5)/(3.15−2.95)=100となる。アナログテスターを2台使って目視で目盛を読んでいるものなので正確とは言えないが、C960の方は全くリニアなデータだ。A607の方はhfe上昇部分の電流域なのだろうか、Icの増加と共に電流ゲインも増加している。

この回路を下の回路図のように組み合わせてヘッドフォンアンプにするのである。
何のことはない。No−128?(完全対称型プリアンプ)のフラットアンプだ。そう、そうではあるが、あの基本回路をそれなりにブラッシュアップして、「電池式完全対称型ヘッドフォンアンプ」として製作してみようという訳だ。

この回路は分かりやすい。初段で信号電圧がVI変換され、2段目、終段で電流増幅されながら電流伝送されて、最後に負荷抵抗に当該電流が流れることによりIV変換されて出力信号電圧となる。だから、回路のオープンゲインは、「初段gm×2段目電流ゲイン×終段電流ゲイン×負荷抵抗」となって、回路のオープンゲインは負荷抵抗値に比例する。実に簡単だ。

早速計算してみると、初段はK30GRでそのgmは過去のMJスーパーサーキット講座から200Ω半固定抵抗を勘案して1.84、2段目の電流ゲインが上の実測値を使って67、終段の電流ゲインが同じく100。

として、この回路のオープンゲインは、
1.84×67×100×負荷抵抗値(KΩ)となるので、

負荷30Ωの場合は
 369.8=51.36db
負荷300Ωの場合は

 3698.4=71.36db


と、計算上は30Ω程度のローインピーダンスヘッドフォンから300Ω程度のハイインピーダンスヘッドフォンまで、必要十分程度のオープンゲインが確保できるようだ。

が、この計算は2段目、終段とも理想的に電流出力アンプとして動作した場合で、現実はそうではないから、実際のオープンゲインはもっと下がるはず。だが、要は出力側と入力側の相対的問題、ということで上の予備実験では動作電流付近でコレクタ−エミッタ間電圧を変化させてコレクタ電流の変化も測り出力インピーダンスを実測してみた訳だ。これも正確性に保証はない。特にC960はこんなに電流を流すと自己発熱のためIcは安定せず正確な測定は無理だ。が、これによれば2SA606は(23.5−2.5)/0.4=52.5KΩ、2SC960は(21−5)/3=5.3KΩとなった。C960の方は測定手法が稚拙なためで本当はもっと高いはずだ。

これなら2SA606(607も同じ)はカスコードを付加する必要もなく裸の出力インピーダンスで十分だ。2SC960はプッシュプルだとさらに半分なのでちょっと低いかなとも思うが、実際はこの実測値より高いだろうし、300Ω以下の負荷を前提とすれば十分ではないだろうか。まあ計算どおりのオープンゲインは得られなくともそれなりのゲインになるだろう。


Headphone-2 基盤部ということで、動作設定。
電源電圧は±15V。ディスクリートではこれ以上低い電圧では不利だ。20本入りの電池を10本ずつ使って得られるこの電圧設定でいこう。レギュレーターは使わない。これで終段の実効電圧は±10V位になるから、実際上不必要とは言え32Ωで1.5W、300Ωで200mW程度の最大出力が得られる計算にはなる。
アンプ単体としてのクローズドゲインはNFB安定度等も勘案し11倍とした。

終段のアイドリング電流は18mAでどうか。これで32ΩのMDR−CD2000でも20mWまでA級動作でドライブできてしまう。300Ωのヘッドフォンなら200mWまでA級ドライブだ。C960は電流を流すほど出力インピーダンスは下がる。プリアンプのフラットアンプならもっと高くあってほしいところで、動作電流を減じるかエミッタ抵抗を入れたいところだと思うが、今回のヘッドフォン専用アンプとしては基本的に百Ω前後の負荷が前提だから問題はないだろう。高すぎると仕上がりの出力インピーダンスが十分下がらなくなるおそれがある。これでC960は動作時270mWを消費する。手を触れればちょっと熱い!という程度に発熱するがちょうど良い損失だと思う。


2段目はその負荷の220Ωに0.6Vのバイアスを発生させる電流となるので、3mA程度が必然となる。2SA606にはやや少な目かとも思うが、得られる高い出力インピーダンスとその負荷が220Ωと低いところがミソなので良いところだ。

初段は2mAにしよう。Idss4.2mA程度のK30GRを起用するのでちょうど良い。入手した05Z6.8がZランクでツェナー電圧が7V。故にC1775のエミッタ抵抗は1.6KΩとなった。

さて、終段はTRだし、270mWも消費させエミッタ抵抗も使わないので温度補償をしなければ熱暴走してしまう。このため、初段のドレイン抵抗−電源間にサーミスタ200D5を挿入し、マイナス側のC960の腹に抱かせるようにアラルダイトで熱結合することとした。No−128?完全対称型プリアンプを製作した時に、C960のベース−エミッタ間抵抗にサーミスタをシリーズ接続する最近の完全対称型パワーアンプで使用されている手法での温度補償も実験して良い結果だったが、今回はベース−エミッタ間抵抗がそもそも低いので採用できない。また、サーミスタを2つも用いるのはこんなシンプルなアンプにはやはり似合わない。と言うわけでこうしてみた。
そうしたら、この回路と動作電流設定ではサーミスタに820Ωをパラ接続するとちょうど良いようで、電源ON時に5mAほど多めに電流が流れるが、発熱と共に電流は減少し、設定電流値で安定となって以後びくとも動かない状態になる。大成功。


Headphone-2 内部なお、終段のアイドリング電流は2段目の共通エミッタ抵抗を調整して設定値にする。ツェナーダイオードのばらつき等をここで吸収するわけだが、私の場合は360Ω+20Ωと360Ω+10Ωとなった。10Ωの違いでアイドリング電流が5mA程度変動するので厳密に合わせようとすれば抵抗のシリーズ接続が必至だ。が、その程度のアイドリング電流の違いが問題を生じる訳ではないので神経質になる必要もないし、何なら最初から半固定抵抗にしてしまえば楽だ。

さて、問題はNFBによる発振などのトラブルだ。必要とあれば位相補正措置を講じなければならない。普通はゲインやポールを計算し、あるいは測定して所要の位相補正措置を想定して詰めていくのだろうけれど、私にはその能力も環境もないので(いばって言うことではないが(^^;))、まず作ってみてその後泥縄式に対処することとする。

取りあえず基盤への部品配置や裏側の配線等を検討して組み上げて見ると、特に位相補正措置を講じなくともまったく安定だ。TRのCo
bが勝手に効いているか、想定ほど出力インピーダンスが高くなくてオープンゲインもそんなに大きくなっていないのかもしれないが、この構成ならオープンゲインの高域カットオフ周波数がそんなに低いとも思えないので、これで良しとする。出力のドリフトをみると±5mV以内。ということは適度にオープンゲインが確保されていることの証でもあると思うので、いいんじゃないだろうか(^^;;

ちなみに400Hz、ON−OFF法で出力インピーダンスを測ってみた。
開放時(V) 負荷時(V) 負荷(Ω) 出力インピーダンス
Headphone-2 2.5 2.48 330 2.661290323
2.5 2.44 110 2.704918033
2.5 2.3 33 2.869565217

負荷によって余り変動することなく3Ω弱だ。ヘッドフォン(も鳴る)アンプの0.04Ωに比べると高いが、30Ω〜300Ω位のヘッドフォンに対しては良い数字ではないだろうか。

なんと一発で完成だ。本当は周波数特性や歪み率ぐらいは測らなくちゃいけないのだが、測定器類がないから知らぬが仏なのだ(^^;;。が、発振器とオッシロぐらいは欲しいなぁ〜。

図らずもヘッドフォンアンプが2台になってしまった(^^)。となれば当然聴き比べということになる。
私の耳だから、そんなに差を聞き分ける能力は備わっていない。ほとんど同じように聞こえるというのが本当のところだ。
Headphone-2 外観
が、あえて言えばGOAはやはりサラサラと天にも抜けるような爽やかさを感じる。音も比較すると全体によりタイトに聞こえる。完全対称型の方はGOAに比較するとねばりを感じると言うか、別に明瞭さに劣っているわけではなく、やや弾力感のある鳴り方がそう感じさせる。また、比較すると音がより立体的で彫りの深さやエネルギー感に優る感じがする。

さらに、演奏の感情がどう伝わってくるかといった聴き方で、どちらによりデリカシーがあるか?と言えば完全対称型の方のようだ。完全対称型と比較するとGOAは音の出方がやや機械的かつ平板の方向に振られる。この爽やかな明瞭さも捨てがたいものではあるが、演奏のニュアンスや感情表現では完全対称型に軍配があがるようだ。

などと偉そうに試聴記などを記してもしょうがないので、この辺にする。なお、これはあくまで私の作った以上の2台のアンプに関する話しですので悪しからず。

さて、
もうこの地は秋の気配が漂っている。日中はまだまだ蝉がうるさいものの、朝夕は涼しいぐらいだ。空も高くなりつつある。

秋の夜長は音楽を聴くのがふさわしい。ヘッドフォンももう少し勉強するかもしれない。

(2000年8月19日記)


その後

上の出力インピーダンスの測定手法が間違いだと気づいたので測定し直した。
結果は表のとおりである。
測定数値が正確かどうかは別にして、完全対称型の理論にマッチした結果となっているところがそれらしくて喜ばしい(^^)。
喜びついでにグラフにもしてみた。なお、270Ωの場合の出力インピーダンスは実測ではなく測定結果からの推計値である(^^;)。
測定負荷(Ω) 測定負荷時(V) +負荷時(V) +負荷(Ω) 測定値(Ω)
10 2.5 2.45 110 2.245
30 2.5 2.49 330 1.325
91 6 5.995 910 0.759

(2000年8月28日)

その後 2

「ヘッドフォン(専用)アンプ」は、実はあるヘッドフォンをターゲットに製作したものだ。

SENNHEISERのHD600。いずれ使ってみることを想定していたのだが、つい入手してしまった。
インピーダンスは300Ωと国産にはみられない高さだ。許容入力は200mW、感度は97db at 1KHzとある。
HD600
「ヘッドフォン(専用)アンプ」で鳴らすHD600からは、完全対称型パワーアンプでスピーカーを鳴らしたときに得られる音の感覚に似た感覚が得られると言ったら大袈裟だが、そんな感じが得られる。脳内定位以外はヘッドフォンで聴いているという違和感をあまり感じないですむ。低域から高域まで帯域バランスがごく自然で、非常にタイトかつ透明できめ細やかでありながら、骨格がしっかりしつつ弾力感もある、いわば芯のある音の鳴り方で、質感、実在感が得られる音だ。ヘッドフォンにはサ行が強調されるものが多いが、これはサシスセソもごく自然で、余韻も美しく漂い、音量を上げてもこれが崩れないのでうるさくなることもない。
「FUNKALLERO」(fairy tale/Yoshiko Kishino)で聴ける木住野のピアノの力強さや美しい張り、GOMEZのベースの重い芯と弾力感がちゃんと表現される。聴くほどに手にした偶然に感謝したくなる。法外に高価な部類のヘッドフォンだが、許すことにした。

MDR−CD2000。別に悪くはない。やや高域が華やかで低域がふくよかな感じもするが、これだけを聴く分にはこれで十分なような気がする。が、直後にHD600を聴くと、私の耳が駄耳であることを思い知らされる。音場のクリアさ、音の細やかさ、正確さ、どれをとってもHD600が上手だ。HD600と比較してしまうとCD2000の音には何か余計な付帯音が付きまとっていることが分かる。端的に言うとHD600で聴くSteinwayの質がそこらのピアノに落ちてしまう感じなのだ。とまで言ったら言い過ぎだが、微妙な差が結果を分けるのは致し方ない。が、逆に致命的な差かと言われたらそうではないと答える。やはり微妙な差だ。

とHD600は良いことづくめのようだが、別にヘッドフォン聴取がスピーカーによる再生に優るとは思っていないので念のため。
金田式DCアンプで鳴らすスピーカーの解像度、透明度はもとより高く、HD600の解像度、透明度がこれに優るという感じはない。また、HD600で得られる音楽表現はスピーカーでは当然の如くそれ以上に得られるものだし、体で感じる本当の音のエネルギーはスピーカーでなければ出ないし、大体、自然な音場感はヘッドフォンには望むべくもないのだ。

が、夜中に一人音楽を聴きたくなる時もある訳で、「ヘッドフォン(専用)アンプ」とMade in IrelandのHD600がその良き伴侶になってくれることは確かだ。

(2000年9月3日)

(補足)

大変嬉しいことに本ヘッドフォン(専用)アンプを製作して好結果だったというメールを頂いた。(^^)
が、当初、熱結合したA607が微妙にショートしてしまい出力が−15Vに張り付いて終段を飛ばしてしまったとのこと。

あえて書いておけば良かったのに、との反省を込めての補足。

A607の熱結合について、金田さんは99年9月号のNo−156でも「アラルダイトが絶縁体の働きをするのでマイカ板は必要ない」とおっしゃておられるのだが、私の経験ではこれは止めておいた方が良い。No−139で「本来なら絶縁シートを介して接着すべきだが、アラルダイトに十分に絶縁性があるので、接着面にまんべんなく塗ってから接着すると良い。また接着の後、コレクター間が絶縁されていることをテスターでチェックする」と書かれているように、アラルダイトの塗り方によってはショートしたり、絶縁が不完全になったりしやすい。
私は一度試してみてどうしても絶縁を完全にすることが出来なかったのでこのやり方は採用していない。

それにしては上の写真では直接接着しているように見えるがどうしているのか?
実はマイカ板をA607の直径程度以下の小さな円形に切ってA607の間に挟んで接着しているのである。これでショートや絶縁不足によるトラブルは全く心配無用となる。
(2001年2月5日)

その後 3
我が家にはヘッドフォンを鳴らすべく製作したアンプが2台ある。1台は勿論このヘッドフォン(専用)アンプであるが、もう一つは“ヘッドフォンも鳴る電池式完全対称型パワーアンプ”だ。

実は、“ヘッドフォンも鳴る電池式完全対称型パワーアンプ”の実体はパワーアンプであって、その出力にヘッドフォン端子を付けてあるに過ぎない。要するにヘッドフォンはおまけなのだ(^^;

これに対して、この“
ヘッドフォン(専用)アンプ”は正にヘッドフォンを鳴らすことをターゲットにしたアンプだ。

これまで、この2台のヘッドフォンアンプで聴くヘッドフォンの音に有意な差を感じることはなかった。
ヘッドフォン(専用)アンプ”の方がヘッドフォンをターゲットにしたものだから、心情的にはこちらの方が良い音がして欲しい、と思っていたのだが、甲乙付けがたい状況だったのである。

ある種、両雄並び立っていたわけである。

が、状況が変わってしまった。

“ヘッドフォンも鳴る電池式完全対称型パワーアンプ”をちょっと改良した結果、なんと少しく差を感じるのだ。

あちらの方がいいのだ。

これは困った。これでは折角のヘッドフォン(専用)アンプが・・・

と、いうことであれば、対抗すべくこの“ヘッドフォン(専用)アンプ”も改良しなければならない。

その結果、このようになったのであった。

何故こうなったのか? 
それは話せば長いので、興味のある方はどうぞこちらへ






入力アッテネータの33KΩは、折角だからスケルトンに、と思ったところ33KΩがあった、というだけのこと。

が、
初段定電流回路には懐かしの日立製TR、2SC984Cランクをわざわざ起用してみたものである。
のは、“ちょっとDCなオーディオのページ”から影響を受けて、“天上の音”を聴いてみたい・・・と、ちょっとした遊び心だ。

結果は、回路も改良してしまったのでどうも良く分からない(^^; 

のだが、全体的に一層細やかな表情が分かりやすくなり、鋭い分解能と柔和な優しさ・暖かみといった感じが両立したとても良い感じになったように思う。

さて、問題は“ヘッドフォンも鳴る電池式完全対称型パワーアンプ”と比べてどうか。である。

ちなみに電源は同じ±12Vの鉛シールバッテリーだ。

どちらも甲乙付けがたい。

が、終段の構成の違いが音の違いとなっているようだ。

と、言うのは、特に低域ということになるのだが、音のゆとりといった点で“ヘッドフォンも鳴る電池式完全対称型パワーアンプ”の方が勝っている感じなのだ。低域まで深々としていて聴いていて気持ちが良い。

対して、こちらは、比較すると音全体が高域よりという感じになってしまう。情報量自体は変わらないように思うのだが、こちらの方がスリムで明解に聞こえるのだ。

モニター的にはこちらが良いということになる。が、音楽を心地よく聴くには向こうの方が良いようにも感じられる。といったところだ。

では、この違いは何故なのだろうか?

それほど電流が必要なわけでもないのに、やはりダーリントンの電流供給能力がものをいっているのだろうか。

推測としては、ダーリントン前側の存在である。これがエミッタフォロア動作で、終段が負荷に電流を供給する上でのダンパーというか貯水槽の役割を果たしている。これが音のゆとりを醸し出す上でかなり利いているような気がする。

では、これにもダーリントンドライバーを付けてみたらどうだろう。

ま、それはまた次回にでも、ということで・・・(^^;





(2003年2月17日)



その後 4



我がヘッドフォン(専用)アンプもまた1年が過ぎて右のようになっている。

何も変わっていない。ように見えるが、目を凝らすと基盤左下に何やら回路が付加されている。のは、「但聞ドライブ」だ。

但聞ドライブ」を導入したからと言うわけではないのだが、近頃はこいつとヘッドフォンで聴く晴れ渡った宇宙の音も良いのではないか、と思っているのである。

バイノーラル録音とか言って頭の外に音像が定位すると言い張るものを含めて、ヘッドフォンで聴いて音像が頭の外に出来るものなど聴いたことがないのだが、このコンビで聴くと勿論音像は脳内に定位するのものの、その音像空間がスッキリと晴れ渡って、我が脳幹上方部を中心として音空間が天空にまで広がるのである。目を閉じると、音楽と共に体が宇宙を浮遊している感覚だ。

ヘッドフォンが生み出す非現実的な音空間感覚。これもまたおつなものである。と、思えるようになってきたのだ。(^^;






回路は2SK30による但聞ドライブ」が追加されただけである。





これ以上特に書くべきこともないので、「但聞ドライブ」関連で少しだけシミュレーションをやってみる。

まず、これが但聞ドライブ」付加前の我がヘッドフォン(専用)アンプの回路だ。

入力に1Vacを加えて終段2SC960のコレクタに電流マグニチュードプローブを取り付けて終段上下TRまでの回路gmを測定し、その対称性を観てみようという訳だ。








その前に、回路動作点を明らかにするため各部の電圧、電流の状況を表示する。

回路はNFBを掛けないオープンゲインの状態である。終段TRのアイドリング電流はコレクタ電流で上側が13.46mA、下側が16.54mAであり、実機の設定にごく近い。これを設定するのはR3であり調整後400Ωとなっている。出力オフセットは−498.7uVとごく小さい。これを設定するのはR12とR13であり、R12がそのために100.212Ωとなっている。

問題は終段2SC960の上下でアイドリング電流に約3mAの差があることである。これは要するに2段目差動アンプ右側の動作電流分の差なのである。それを終段下側が吸い込んでいるためのものなのだ。そうしなければ2段目右側の動作電流の流路がなくなるので出力にはオフセットが生じてしまう。
そこで初段のトリマー(ここではR12とR13)を調整して終段下側に上側より大きなバイアスが掛かるようにしてオフセットを解消するのである。

結果、表示桁の関係でここでは初段差動アンプの動作電流には差が出ていないが(実際は僅かに差を生じる)、2段目差動アンプについては左右で動作電流が僅かではあるが異なっていることが分かる。終段上下TRの動作電流の違いを含めこれらがすなわち終段下側が2段目差動アンプ右側の動作電流を吸い込まなければならないために完全対称型に必然となる僅かな動作非対称の意味なのである。

この結果、終段上下TRまでの回路gmはどうなるだろうか。が問題なのだが・・・





負荷が300Ωと大きくゲインが大きいというせいもあるのだが、このように終段上下まででややgmが異なってしまう。

ここでは縦軸がA(アンペア)だが、入力に1Vacを加えているのでこの数値がそのまま回路のgmであり、300Ω負荷で低域で終段上側がgm=3.38S、下側が3.55Sであることが分かる。



こちらは但聞ドライブ」を付加した回路である。






同様に各部の電圧、電流の状況を表示したものだが、
但聞ドライブ」で出力中点から3.1mAの電流(≒2段目差動アンプ右側の動作電流)を抜いてやることにより、終段上下TRのアイドリング電流もほぼ15mAと一致している。それだけでなく、終段上下TRのバイアス調整の要がなくなったため、初段トリマーも対称(R12=R13=100Ω)となり、2段目差動アンプの動作電流も3.126mAと全く一致している。
これがすなわち但聞ドライブ」の効果なのだが、その結果はどうだろう。





それがこれだ。

比べれば一目瞭然。終段上下TRまでの回路gmがこのようにぴったりと一致するのである。

すなわち但聞ドライブ」により特にプリアンプで顕在化する完全対称型の動作対称性の乖離が解消されるのである。





この結果は入力に正弦波を加えた場合の応答結果である出力波形にも観ることができる。

まずは
但聞ドライブ」がない場合。





波形のピークを見ると、その絶対値がプラス側は9Vを超えているのに対してマイナス側は9Vに達していない。





但聞ドライブ」を付加したこちらはどうか。







波形のピークの絶対値はピッタリ9Vに一致している。
このほんの僅かな差を
但聞ドライブ」がもたらしてくれる訳だ。






ではその僅かな差にどれだけの意味があるのか? は、実は難しい。

上で現れた僅かな差もオープンゲイン状態でのものであって、NFBを掛けてしまえば実際のところ意味のない程度の差異であると言っても間違いではないのだ。

例えばNFB後での100kHz方形波応答。
まずは但聞ドライブ」がない場合。





現実の実機もこんな立派なものであるかどうか知らないが、実に素晴らしい100kHz方形波応答波形だ。





但聞ドライブ」を付加した場合。





こちらも素晴らしい100kHz方形波応答波形である。

が、ここに上の但聞ドライブ」がない場合との差異を見ることは困難だろう。







と、まぁ、その程度の違いに過ぎないと言えば過ぎないのだ。

さらに、「但聞ドライブ」が解消する程度の動作非対称は差動アンプ等のペア選定での僅かな不一致や、動作時のオフセットやドリフトに伴う動作点の移動で簡単に生じてしまうものである。したがってこれらはNFBで処置される範囲のものだから、なんら問題ではない。
という解釈は正論だろう。と思う。

実際、その間の音の違いを語るなどと言うことは私には出来ない。




、なんとも空間が澄み渡って個々の音の充実感が増したように聴こえるのである。


まぁ、多分、気のせいだ。(^^;

なので、やってみて何の違いも感じなかったり、かえって悪くなったりしても一切関知しません。





(2004年1月17日)





その後 5



この“ヘッドフォン(専用)アンプの実験”も気づけば6年も立ってしまったのだなぁ・・・

ので、この辺でもはや“実験”の文字を外そうかいな・・・、という気になったのだった。

最近は我が嗜好も変わったのか、一人密かにヘッドフォンで気楽に音楽を楽しむという時間も増えている。気兼ねなく楽しめるヘッドフォンアンプが欲しくなったということもあったのだ。

そこで早速作業に入り、ジャンク箱から所要の部品を集めて、あっという間に我が家のヘッドフォンアンプ実用機は完成したのだった。
(^^)


・まずは電源部。これまではバッテリーで動かしていたのだが・・・、はっきり言って電池電源は過去の過ちの一つだ。電池の方が電気代が安いなどということはあろうはずもない。

・ので、実用機としては当然電源はAC電源だ。

・部品はジャンクボックスから見繕い、整流ダイオードには日本インターのいにしえの30DF2、フィルターコンデンサーには日本ケミコンのKMH35V3300uF基板実装型があった。ついでにLM317Tが二つも出てきたので、ICレギュレーター搭載電源としよう。


・ヘッドフォンアンプの回路については、色々考え、6年前に考えた当初の回路に戻ることにした。まっ、年のせいか最近は合理的でほどほどで智恵がさりげなく詰まったシンプルさ、そんなものにより魅力を感じるようになった。

・さて、このアンプの要点の一つは、温度補償のためのサーミスタと終段TRとの熱結合だ。右の写真に、2SC960の腹側にアラルダイトラピッドで接着したサーミスタ200D5の熱結合の姿が写っている。

・その接着の仕方だが、200D5は円盤形なので先生のご説明のとおりのやり方では上手く行かない。といって円盤の山を削って平らにする必要もない。先ずは少量のアラルダイトラピッドをサーミスタに付けて2SC960の腹に接着してしまうことだ。アラルダイトラピッドは10分位で最低限の実用接着強度に達するが5分位ではまだ固まらないので、5分から15分程度までの間、位置を正しく固定してサーミスタを手で2SC960の腹に押しつけて上手く接着させるという愛情ある作業をするのがポイントだ。そうすると少量のアラルダイトラピッドでサーミスタが2SC960の腹に接着した状態になる。その後1時間そのまま放置し、接着強度がさらに上がるのを待つ。そうしたらもう一度アラルダイトラピッドを捏ねて、マイナスの精密ドライバーなどを使ってアラルダイトラピッドを隙間に詰め込み、さらに200D5を包み込むように盛り付ける。そして1日待って接着強度が最大になってから基板取付等の作業をする。

・ケースはタカチのOS-49-26-33BX。余裕しゃくしゃくだが、私のような素人にはこの程度の余裕がある方が良いのだ。


回路はこう。



2段目のカスコードアンプは廃して、但聞ドライブもその後の検討結果から廃したので、ほぼ最初の回路に戻った回路になっている。

理由

@ 負荷が30Ωから300Ω程度のヘッドフォンであるため終段のみではゲインが不足であり、そのため2段目も最大ゲインの動作をさせるのであるが、問題はその場合のポール配置。カスコードで2段目と終段の相互作用を分離してしまうとポールの処理にやはり無理が生じる。それはftの低い2SA607や2SC960を敢えて使っているためにそうなるということでもあるのだが、やはりここは2段目と終段の相互作用をそのまま活用してワンポール補償で動作させるのがシンプルで良い手であるように思える。

A @と本質的に同じだが、終段がゲインを持ちその電圧ゲインが負荷によって変化するとなると、そのゲインの変化に比例してローポールも移動する普通の形にしておきたい。となると、2段目のゲインも活用するこの場合は2段目にカスコードを入れ初段にステップ位相補正を入れるのは妥当でなく、やはり2段目と終段の相互作用をそのまま活用して終段が負荷によってゲインを変えるのと同時にローポールも動く構成にするのが上手い手だろう。

B 2段目にカスコードを入れればその出力インピーダンスは高まり、結果確かに負荷対オープンゲインの直線性は改善される。しかしながらそれも程度問題であり、ここでは想定負荷が30Ωから300Ωのヘッドフォンと低いため、カスコードにしなくとも十分といえば十分なので、ならばそんなに頑張らずにシンプルにまとめるのが大人の手であろうて。

と言うわけで、2000年の時点ではどちらかというと余り考えずにこういう回路になったのだが、今回はちっとは考えた上でこういう回路にすることにしたのである。(^^;

さて、そこで実験機を脱して今後は実用機として長らく使おうということもあって、終段ベース抵抗とNFB回路の抵抗にはスケルトン抵抗を起用した。

のだが、ベース抵抗の方の220Ωのスケルトン抵抗が生憎ジャンクボックスに残っておらず、やむなくここは330Ωのスケルトン抵抗にしてしまった。(^^;

この関係で2段目差動アンプ共通エミッタ抵抗側の固定抵抗が270Ωから510Ωに、初段ドレイン側のサーミスタ200D5にパラの抵抗が820Ωから750Ωに変更になっている。のだが、これは全く手持ちの都合の問題でこうなっただけなので、ここはベース抵抗に220Ω、あとそれぞれ270Ω、820Ωの従来の設定でも全く構わない。

なお、終段のアイドリング電流だが、それを17.5mA程度として全体でチャンネル当たり25mAの消費電流に調整している。温度補償が適切な故か、終段エミッタ抵抗レスの危険な構成であるにもかかわらずこの電流値は調整後極めて安定だ。(^^)が、この構成は下手をすれば終段を暴走で壊す可能性のある構成なので、決してどなたにも推奨しない。

オフセット、ドリフトも±5mV以内であるし、ヘッドフォンを差し込んで耳に掛けた状態で電源のオンオフをしても全くショックノイズはない。が、別にDCモレに対する保護回路は設けていないので、このヘッドフォンアンプは決してどなたにも推奨しない。勝手に真似て製作され、結果DCモレで鼓膜を破ったなどということになっても一切関知しない。ので悪しからず。(^^;


ここで、方形波応答を観てみる。


写真は下が原方形波で、写真上が出力波形だ。極普通のヘッドフォンとしてソニーMDR−CD2000等を想定し負荷が30Ωの場合、海外製のインピーダンスが高いヘッドフォンとしてセンハウザーのHD−600等を想定し負荷が300Ωの場合、更にヘッドフォン非装着時の無負荷状態を想定した負荷開放の場合の3パターンで100kHzと10kHzの方形波応答。

100kHz 負荷300Ω 100kHz 負荷30Ω 100kHz 負荷開放
10kHz 負荷300Ω 10kHz 負荷30Ω 10kHz 負荷開放


結果は実に綺麗な方形波応答だ。(^^)

100kHz方形波応答から観て、どの負荷状況でも高域のカットオフ周波数fcは1MHzを超えているだろう。

シンプルで良いものになったよう。な〜んて。(^^;


ついでにちょっとシミュレーション。

負荷=rvalを30Ω、300Ω、3kΩとするパラメトリックシミュレーションで、それぞれの場合のオープンゲイン、ループゲイン、クローズドゲイン、ついでにループゲインはその位相も観てみる。






結果がこれだが、一番上がループゲインの位相で緑が負荷30Ωの場合、赤が負荷300Ωの場合、青が負荷3kΩの場合でこれらの縦軸は1の方である。

上から2番目がオープンゲインのグループで縦軸は2の方だが、低域で70dB付近の水色が負荷3kΩの場合、ピンクが負荷300Ωの場合、少し下がって低域で47dB付近の黄色が30Ωの場合だ。オープンゲインの高域カットオフ周波数は負荷30Ωの場合21kHz程度、300Ωの場合4kHz程度、負荷3kΩの場合2kHz程度である。




次の上から3番目がループゲインのグループで、紫が負荷3kΩの場合、青が負荷300Ωの場合、やや下がって低域で26dB付近の赤が負荷30Ωの場合である。ループゲイン≒NFB量なので、このヘッドフォンアンプでは負荷30Ωの場合で26dB程度のNFB量、負荷300Ωの場合で42dB程度の低域NFB量が確保されているということになる。また、ループゲインが0dBに沈むポイントはどの負荷の場合でも500kHz程度でそのポイントにおけるループゲインの位相遅れは−95°程度と位相余裕は十分であり、上の100kHz方形波応答の状況も宜なるかなと頷ける結果だ。

最後の一番下がクローズドゲインであるが、黄色で3つの場合とも低域で20dB付近で三本が重なっている。これを見ると高域のカットオフ周波数fcは500〜600kHz付近と、上で見た方形波応答からの結果とは異なる結果なのだが、実はシミュレーションの方はモデルパラメーターの設定でこの辺は如何様にでも変わってしまうところだ。実機の方形波応答から勘案すれば、ループゲインが0dBに沈むポイントは1MHz付近だろう。シミュレーションの方もそうなるようにパラメーターを設定する必要がありそうだ。

すなわち、私のシミュレーションは所詮妖しきシミュレーションなので、もともとその結果はマクロで大局的な視点で観る必要がある。ということなのだ。(^^;






で、シミュレーションで負荷=rval=30Ω、300Ω、3kΩの場合の方形波応答を描かせてみると・・・、





現実の方形波応答写真の結果と似たような結果になったわなぁ・・・。(^^)






では、と、ついでに耐容量負荷性能をシミュレーターはどう計算するかと、計算させてみる。(^^)

負荷にパラに10,000pF=0.01uFを繋いで、rval=30Ω、300Ω、3kΩの場合のパラメトリックシミュレーション。






オーバーシュート、アンダーシュートが生じることもなく、立ち上がりは0.1uFの充電のためにやや遅れるのだが、ほとんどそのCがない場合と変わらない程度だ。

ヘッドフォンという比較的低インピーダンスの負荷を対象に設計したことがこのような項目では生きた訳だ。(^^)







さて、問題はその音だが・・・・・・






とっても良いのではないでしょうか。(^^)

な〜んて。(^^;






(おまけ)


10月も末、黄昏の裏山を散歩する


我が裏山にも黄昏の秋色が濃く漂いはじめた

裏山のあちこちにはすすき

だが、里山はまだまだ緑が色濃い

とは言え、木々は確実に紅葉し、道は落ち葉で心地よい

黄昏の裏山

光が時を惜しむように散らばって色を残さんとす

が、遠くで太陽は彼方の奥山に吸い込まれ、まもなく漆黒の闇

ああ、この美しい世界にあること

感謝しても尽きない




(2006年10月29日)





(その後 6)


近頃世間ではヘッドフォン&イヤフォンがかなり盛況のようだ。Ipodで携帯オーディオ文化がすっかり拡大、定着したが故か?どうかは知ったことではないのだが(^^;、そのような中ついにK先生までヘッドフォンアンプを発表されるに至った。

わたくし的には、ヘッドフォンについては今のところSTAXのイヤースピーカーの方に興味を奪われているし、携帯オーディオにさほどの必要性を感じている訳でもないので、K先生の今回のNo−204についても、その設計方針が録音現場でのモニター用途として持ち運び重視のものであることもあり、すぐ追試しようかという気持ちではない。

が、やはりそれなりの刺激を受けてしまったことは疑いもなく、また、STAXのイヤースピーカー用のドライブアンプ製作 も一段落したこともあり、ある日、我がヘッドフォンアンプにも多少手を付けてみようか、という気になったのであった。

で、その結果、こうなった。








ケースとトランスは従前のもののキャリーオーバーであり、ヘッドフォンアンプ本体も従前のものがそのまま収まってはいる。

が、整流回路及び安定化電源は総入替し、さらに、それでもスペースに空きがあるので、この際もう一組のヘッドフォンアンプを新規製作し、それを従来のヘッドフォンアンプとパラで動作させ、同時に2台のヘッドフォンを聴けるヘッドフォンアンプにしたのである。

2台分のヘッドフォン出力を有していても一つのアンプ出力から2台のヘッドフォンに出力を供給するのが通常であろうが、ここではアンプ自体を2セット用意して2台のヘッドフォンにそれぞれ出力を供給するものとしたのである。

のは、ヘッドフォンアンプのAB比較を簡単にできるようにということである。であるから、電源の配線等に中継端子を使用し、アンプ部の交換が容易に出来るようにしたのだ。

そういう訳で、信号入出力にシールド線を使わずダイエイ20芯を撚って起用したこともあり、内部は配線でごたごたした感じになってしまった。



さて、整流回路と安定化電源だが、ブリッジ整流は新たに31DF2で組み、平滑コンデンサーはニッケミKMHねじ端子型を、また、レギュレーターについてはLM317による従前のものは廃用とし、いにしえのプッシュプルレギュレータをおごってみた。まぁ、レギュレータはなくても良いとは思うのだが、そうするとTK−P1使用では電源電圧が±27V前後と高すぎるものになるので、超高速P−Pレギュレータを使って悪いこともなかろうて。で、レギュレータの回路定数はGOA時代の±17.5V用なのだが、基準電圧発生のツェナーダイオードに05Z6.2Lを使用したためだろう、仕上がりは±19Vとなった。

ところで、このレギュレータには出力短絡に対する保護回路がない。ので、出力を誤ってショートさせると確実に制御トランジスタが昇天する。だから、過電流制御型の保護回路を組み入れるべきなのだが、ちょっとスペースがなくて省略してしまった。ので、細心の注意を払って使用する。







・で、新規追加製作のヘッドフォンアンプだが、

・新たに製作するヘッドフォンアンプはどういうものにするかなぁ。。。と、つらつら考えた。

・当然、No−204をモディファイしたものにしようかなぁ。。。とも思ったのだが、完全対称型は従前のヘッドフォンアンプが曲がりなりにも完全対称型だし。。。と思うと、どうせなら完全対称型とは対極にあるような形式のものを試してみてはどうかなぁ。。。という気持ちがふつふつと湧いてきたのだった。

・結果、このような、K教徒にあるまじき(^^;、上下対称、2段目GOA抵抗なしの、電流帰還型ヘッドフォンアンプになってしまったのだった。(爆)

・と言っても、回路的には世間的にどこにでもありそうな最も簡便な電流帰還型のヘッドフォンアンプである。
・電流帰還型であるから、初段はバッファである。ダイアモンド回路と言われるプッシュプルエミッタフォロアなどにした方が電流帰還型としての性能は良くなるが、シンプルを優先しコンプリFETによるプッシュプルソースフォロアとした。電流帰還アンプ理論的には初段はフォロアと解するようだが、それは反転入力側から見た場合で、非反転入力側から見ればこの場合ソース接地である。で、K246とJ103のモデルのIdssに差があるため、ソース抵抗が図のように異なって、これで初段の動作点を約2mAに設定するとともに、出力オフセットを0Vに調整している。

2段目はワイドラー型カレントミラーで初段電流を検出、折り返す上下対称プッシュプル回路に、終段用のバイアス回路を組み込んだものである。電源電圧が十二分にあるのでエミッタ抵抗値を大きくし、カレントミラーの精度を高めるとともに、2段目の出力インピーダンスを高いものにしてある。

・そして、終段はダーリントン接続コンプリメンタリープッシュプルエミッタフォロアである。

・終段はまぁエミッタフォロアであるが、前段からは電流ドライブされるのでその動作はトランスインピーダンスであり、いわゆるエミッタ接地と同等、すなわち等価である。完全対称型の上側の動作に同じだ。完全対称型は上側がトランスインピーダンス動作のエミッタフォロア、下側がエミッタ接地であるわけだが、これは、上側も下側もトランスインピーダンス動作のエミッタフォロアとするものだ。したがって動作は完全対称型と本質的に違いはなく、結果、終段が電圧ゲインも電流ゲインも有するし、終段の負荷に応じてオープンゲインも増減する。当然所謂MFB(モーショナルフィードバック)も掛かる。

・また、終段が大きなゲイン(トランスインピーダンス)を有するため、初段、2段目には大きなゲイン(トランスアドミッタンス)は必要がない。ので、初段にはgmの小さいFETを起用し、2段目には大きなエミッタ抵抗を入れて電流折り返し機能に徹しさせて出力インピーダンスだけを高める。

・と、まるで完全対称型と同じような設計になる。
そういう意味では対極のアンプのつもりが実は似たようなアンプになってしまった。。。とも言えるだろう。(^^;

・ではあるが、世間的には、2段目上下が互いにアクティブロードで、かつ、終段プッシュプルエミッタフォロアの入力インピーダンスも高いので、2段目が高い電圧ゲインを有する。という説明になるだろう。

・終段のアイドリング電流はバイアス回路のQ9の抵抗値で調整し約10mAとしてある。


・仕上がりゲインについては従前のヘッドフォンアンプと同様の11倍に設定する。

・それで各部の動作点は下図のようになる。

・で、実際製作する前にPSpice(評価版)でその動作を占っておく。
・出力の負荷=R13を37.5Ω、75Ω、150Ω、300Ω、そして負荷オープン相当の30kΩとパラメトリックに変化させた場合のゲイン−周波数特性である。

・グラフの上がオープンゲインで、57dBの緑が負荷37.5Ωの場合、61.5dBの赤が負荷75Ωの場合、64.5dBの青が150Ωの場合、67.5dBの黄が負荷300Ωの場合、そして70.5dBのピンクが負荷30kΩの場合である。負荷には帰還回路の抵抗(6.8kΩ+680Ω)がパラになるので負荷を大きくしてもオープンゲインの上昇は当然頭打ちになるのだが、負荷が大きくなるにつれ完全対称型と同様にオープンゲインもこのように大きくなる。

・オープンゲインの大きさとしては従前の完全対称型ヘッドフォンアンプとほぼ同等だ。

・クローズドゲインは、どの負荷の場合も帰還回路で設定した11倍=20.8dBである。

・また、どの負荷の場合もクローズドゲインの高域には何のピークもなく、素直に減衰している。よってこの状態で位相補正は適切であり、別途の位相補償措置は必要ないということが分かる。高域特性に優れると言われる電流帰還型故か。
・次に、出力の負荷R14=300Ωと固定し、帰還回路のR11を340Ω、680Ω、1,360Ω、13.6kΩとパラメトリックに変化させてその場合のゲイン−周波数特性を観る。
・上のオープンゲインのグラフについてはまぁこんなものだが、下のクローズドゲインのグラフがこの場合の観察ポイントである。

・一番上のピンクがR11=340Ωの場合、水色がR11=680Ωの場合、橙色がR11=1,360Ωの場合、そして一番下の灰色がR11=13.6kΩの場合だ。

・その高域でのfc(△3dBポイント)が、ゲイン設定の上昇とともに低域に下降していくのだが、その下降の度合いが電圧帰還型に比較すると緩やかであるところに電流帰還型の特徴が出ている。理想的な電流帰還型であるとどの場合でもfcが一定でゲインが上昇してもfcの下降がないということになるのだが、この回路では初段バッファが理想的ではないのでこの程度になるのだろう。

・が、灰色のグラフから、クローズドゲイン設定が1.5倍(3.5dB)の場合でもNFBが安定であることが明らかである。この辺にやはり高域特性に優れると言われる電流帰還型の特徴が現れているのだろう。
・その辺は、方形波応答でも観じることが出来る。

・負荷300Ωで10kHz及び100kHzの方形波応答を観る。入力は1Vp−p。
・何の問題も観じられない素直な方形波応答波形だ。
10kHz 100kHz
・と、占い結果はなかなか良さ気である。(^^)
   
・ので、早速ジャンクボックスからあり合わせのパーツを見つくろって現物を製作する。
・回路はこう。

・基本的にシミュレートした回路に同じだが、初段は2SK30ATM(GR)と2SJ103(GR)のIdss≒3mAのものを組み合わせた。PSpiceのモデルよりIdssが小さいので、ソース抵抗も回路図の通り小さくなった。また、カレントミラーのダイオードはトランジスタのダイオード接続とした。
・早速方形波応答で動作が適切か否かを確認する。

・写真は上から無負荷、負荷300Ω、負荷60Ωの場合の10kHz及び100kHz方形波応答。入力は無負荷及び負荷300Ωの場合については1Vp−pであり、負荷60Ωの場合は0.4Vp−pである。

・どの写真も下の波形が入力波形、上の波形が出力波形。
10kHz 無負荷 下:0.5V/div 上:5V/div 100kHz 無負荷 下:0.5V/div 上:5V/div
10kHz 負荷300Ω 下:0.5V/div 上:5V/div 100kHz 負荷300Ω 下:0.5V/div 上:5V/div
10kHz 負荷60Ω 下:0.2V/div 上:2V/div 100kHz 負荷60Ω 下:0.2V/div 上:2V/div
・どの場合もシミュレーターが示したものと同様に非常に素直な方形波応答である。

・ので、実機においても別途の位相補償措置は不要ということが明らか。

・良さ気だ。
  
・なので、早速音を聴いてみる。ヘッドフォンは10年選手のセンハイザーHD600である。

・ありゃ?。。。

・音いいわ。(爆)(^^;

・一言で言えばクリアで正確。すなわち、滲みや歪み感が極小で透明度が高い。その意味ではSTAXのイヤースピーカーに近い分解能だし、従前の完全対称型ヘッドフォンアンプ同様にエナジーに富み、結果なかなかの実存感だ。とても正負非対称歪みやDC歪みが大量に発生しているとは感じられない。(^^;

・ので、従前のヘッドフォンアンプとのAB比較によっても、当面このまま存続させることにしたのだった。(^^)

   
・が、時空を超えた新単行本において差動対称アンプについて子曰く

・“回路図上では一見対称に見えるが、動作はとんでもない非対称で、正負非対称歪みやDC歪みが大量に発生する”

・は、やはり気になる。

・ので、この上下対称電流帰還型ヘッドフォンアンプの場合はどうなのか、PSpice(評価版)シミュレーターでちょっと占ってみる。

・その方法だが、とりあえず、この回路の入力から上側の出力トランジスタQ4のエミッタ出力までのオープンゲインでのトランスアドミッタンス(要するにgm)、同じく下側の出力トランジスタQ6のエミッタ出力までのオープンゲインでのトランスアアドミッタンス、そして入力からアンプ出力までのトータルトランスアドミッタンスをグラフ化し、それによりこの回路の上下の動作の非対称らしさを観じてみよう。
・結果がこれである。

・オープンゲインでのトランスアドミッタンスの計算式はグラフ下の凡例のとおりだが、こうしてみると上側Q4(2SC959)のエミッタ出力(青)も下側のQ6(2SA606)のエミッタ出力(黄)もアンプ入力に対して低域で4S弱のトランスアドミッタンスとなっており、アンプ出力(ピンク)ではこれらがP−P合成されるため2倍(+6dB)の8S弱のトータルトランスアドミッタンスとなっていることが分かる。

・そして、肝心の上下の対称性なのだが、2MHz超の領域を除けば良く線が重なっており、動作はかなり対称であることが示されているような気がするなぁ。。。(^^;
・そんなことはこのアンプの結果だけでは判断できないだろう。

・という意見もそのとおりなので、この際、No−204(もどき)の完全対称型ヘッドフォンアンプについても同様にPSpice(評価版)シミュレーターで占ってみる。
・結果がこれ。

・ありゃ。。。上の上下対称型より対称性が良くないような気が。。。(^^;;

・しかも100kHz以上で終段トランジスタ出力のトランスアドミッタンスの減衰がアンプ出力のトランスアドミッタンスより弱まり、さらに事実とすればちと問題ということになると思うのだが、1MHz以上では
アンプ出力のトランスアドミッタンスよりそれぞれの終段トランジスタ出力のトランスアドミッタンスの方が大きくなってしまっている。
・とまぁ、当たるも八卦の占いなので、この完全対称型の方の結果についてのこれ以上の考察は置いておくとして。。。
  
・今回製作した上下対称電流帰還型ヘッドフォンアンプ。かなり、まんざらでもないよう。(^^)






(2009年10月6日)






(その後 7)



上で新たに作ってみた上下対称電流帰還型ヘッドフォンアンプ。これがなかなかに良い音を出す。

・ので、それが奏でる音楽に聴き惚れているうちに、もう一台、完全対称型の電圧帰還型
ヘッドフォンアンプが出来てしまったのだった。(爆)(^^;
その回路はこう。
・初段と終段を挟んで、2段目は上下の定電流回路からなり、初段がいわゆるAOCのように2段目上側定電流回路の電流をそのエミッタ側から抜き取ることにより情報を伝達する。

・と言うことになるが、要するに2段目上側は所謂フォールデットカスコード回路である。

・K式では2段目はエミッタ接地(カレントミラーもその一種)であり、フォールデットカスコード回路が起用されたことはかつて一度もない。のだが、2段目がエミッタ接地であると、終段完全対称型の場合ここに左右非対称のミラー効果が生じてしまう。ので、この際、ベース接地であって、そもそもミラー効果が生じることのないフォールデットカスコード回路を起用してみることにしたのである。

が、ここをフォールデットカスコードにすると、エミッタ接地なら最大hfeまでゲインを獲得・調整できるところ、そのゲインは1倍である。従って、その分初段と終段とで所要のゲインを稼がなければならない。


・どれぐらい稼げばいいのか? だが、例えばNo−204では初段2SK246でそのgm≒2.5mS、2段目で電流ゲイン10倍程度に設定されているので、2段目まででそのゲイン、すなわちトランスアドミッタンス(V/I変換率)は約25mSだ。もし、それだけのゲインを初段だけで稼ぐとなると当然だが初段には高感度FETを起用しなければならない。のだが、幸いにも今のところ東芝セミコンダクターに候補となる横型FETが現行品で残っている。今や奇跡のようだ。だから、この際これらがディスコンにならないことを祈って、そのいずれかを起用して初段でゲインを稼ぐことにした。

品名 gm(Id=2mA) Ciss Crss
2SK117 10mS 13pF 3pF
2SK170 20mS 30pF 6pF
2SK369 25mS 75pF 15pF
・K式でも定番の2SK117はこの場合ちょっとgmが足りない。gm的には2SK147の末裔と思われる2SK369がぴったりである。が、Ciss、Crssが2SK147と同数値でちょっと大きい。ので、この際、それらが半分以下でありながらgmは5分の4の2SK170を採用することにした。のは、この程度のgmの差だとオフセット調整用のソース抵抗が入ってさらにgmの差が縮まることもあって、オープンゲインへの影響は△1.5dB程度にしかならないということもある。

終段はNo−204とほぼ同等の完全対称型である。が、ダーリントン前段の2SC1775Aのベース-出力(マイナス電源)間の抵抗についてはNo−204の1.2kΩに対して2.2kΩにした。のは、終段のゲイン、すなわちトランスインピーダンス(I/V変換率)を少し大きくするためである。ちなみに、終段のトランスインピーダンスはこの抵抗を大きくするほどに大きくなり、この抵抗を取り払った時に最大になる。

・が、そういったことをするためには2段目下側に定電流回路が要る。ので、2段目に定電流回路を入れている訳だが、そうすると通常は2段目のマイナス側用に終段のマイナス電圧より絶対値の大きい負電源をもう一つ用意する必要が生じる。のだが、トランスがTK−P1では別途用意のしようがない。ので、HZ6C2にその役割を担ってもらうことにした。まぁ、これで普通の音量でヘッドフォンを聴く分には何も問題はない。が、ヘッドフォン相当の抵抗値の低いダミーロードなどをつないでこの電源電圧で可能な最大出力を出したりしてはいけない。

・終段2SC1775Aのベース-コレクタ間の20pFは勿論位相補償である。この場合位相補償は上下対称にこの部分だけでワイドラー型で完結し、分かりやすく面倒がない。
   
・で、早速方形波応答で動作が適切か否かを確認する。

・写真は上から無負荷、負荷300Ω、負荷60Ωの場合の10kHz及び100kHz方形波応答。入力は無負荷及び負荷300Ωの場合については1Vp−pであり、負荷60Ωの場合は0.4Vp−pである。

・どの写真も下の波形が入力波形、上の波形が出力波形。
10kHz 無負荷 下:0.5V/div 上:5V/div 100kHz 無負荷 下:0.5V/div 上:5V/div
10kHz 負荷300Ω 下:0.5V/div 上:5V/div 100kHz 負荷300Ω 下:0.5V/div 上:5V/div
10kHz 負荷60Ω 下:0.2V/div 上:2V/div 100kHz 負荷60Ω 下:0.2V/div 上:2V/div
・どの場合も非常に素直な方形波応答であり、位相補償措置が適切であることが明らか。

・良さ気だ。(^^)


・また、100kHz方形波応答波形から、上の上下対称電流帰還型よりこちらの方が仕上がりの高域カットオフ周波数がより高域に伸びていることが分かる。数MHzには達しているだろう。
   
・早速従前の完全対称型ヘッドフォンアンプの場所にこの新たな完全対称型電圧帰還型ヘッドフォンアンプを組み込んでその音を聴いてみる。ヘッドフォンは10年選手で10年前のゼンハイザーのフラッグシップ、HD600である。

・余計なことだが、最近ゼンハイザーの新フラッグシップHD800とウルトラゾーンのedition8を聴く機会があった。

・どちらも素晴らしい音がするものだった。値段が10万円安ければ衝動買いしていたかもしれない。。。が、当然しなかった。(爆)(^^; これらに対して近くで鳴っていた数百万円は下らないと思われる超ド級スピーカーシステムの音がどれもタコなのには笑ってしまった。

・まぁ、スピーカーは部屋などの伝送空間の影響が大きいということなのだが。

・さらにその際ついでにHD25−1Uも聴いてみた。が、わたくし的にはあまりぴんと来なかった。別に音が悪いというのではないが、実にプラスチッキ−で何でこんなプライスなのかと。軽いのが取り柄なのかな?(^^; 
・と、まぁ、どうでも良いことは置いておいて、早速その音を聴いてみる。。。

10年前のフラッグシップHD600、どこもHD800に負けない良い音だわ。(爆)(^^;

・今回、かなり勝手なことをしたので、音を聴くまで大丈夫かなと多少は思っていたのだが、聴いてみれば生き生きと躍動するいつもの音だ。しかも滲みや歪み感が極小で透明度が高くSTAXのイヤースピーカーに近い分解能や優れたトランジュント特性を感じる。のは上下対称電流帰還型に同じだが、どうもこの辺は超高速プッシュプルレギュレーターの効果のような気がする。が、どうだろう。

・結論としては、いずれのヘッドフォンアンプも波多野睦美の美しい日本の歌の情感を涙が出るほどに伝えてくる。

・ので、我がヘッドフォンアンプは、当面上下対称電流帰還型とこの新しい完全対称電圧帰還型でいこうかな。(^^)


・さて、一応この新たに製作した完全対称型ヘッドフォンアンプについてもPSpice(評価版)でその動作を占っておこう。


・この場合の各部の動作点はこう。終段の動作点は10mA程度。




・まず、出力の負荷=R14を37.5Ω、75Ω、150Ω、300Ω、そして負荷オープン相当の30kΩとパラメトリックに変化させた場合のゲイン−周波数特性。

・の結果が下のグラフだが、上がオープンゲインで、40dBの緑が負荷37.5Ωの場合、46dBの赤が負荷75Ωの場合、52dB弱の青が150Ωの場合、58dB弱の黄が負荷300Ωの場合、そして76dB弱のピンクが負荷30kΩの場合である。負荷30kΩの場合まで、負荷抵抗値に比例してオープンゲインが増加しているのはさすがである。

・オープンゲインの大きさとしては従前の完全対称型ヘッドフォンアンプより少し小さい。また、クローズドゲインは、どの負荷の場合も帰還回路で設定した11倍=20.8dB。
・次に、負荷300Ωでの10kHz及び100kHzの方形波応答。入力は1Vp−p。

・このクローズドゲインの周波数特性からすると、何の問題もない素直な方形波応答になるものと思われるがどうか。
・やはり何の問題も観じられない素直な方形波応答波形だ。そして上の実機の方形波応答にそっくりである。
10kHz 100kHz
・と、占い結果でも新しい完全対称電圧帰還型ヘッドアンプは良さ気。(^^)
  
・ところで、この新しい完全対称電圧帰還型ヘッドアンプのゲイン−周波数特性と、上の上下対称電流帰還型ヘッドフォンアンプのゲイン−周波数特性とを比べてみると、やはり負荷とオープンゲインの比例関係は完全対称型の方がずっと良くて理想的だ。

・したがって、上の方で新しい上下対称電流帰還型ヘッドフォンアンプの動作は完全対称型と本質的に違いはないと言ったのは間違いではないか。という意見もあるかもしれないので、ちょっと余計なシミュレーションをする。

・結論としては、それは初段と終段のゲイン設定の違いによるものである。すなわち上下対称電流帰還型ヘッドフォンアンプの方は終段のゲイン=トランスインピーダンス(エミッタフォロアなのでトランスインピーダンス=入力インピーダンス)が高いので、無限大ではない2段目の出力インピーダンスが無視できず、結果、負荷とオープンゲインの比例関係の理想からの乖離が大きくなる。これに対して、
新しい完全対称電圧帰還型ヘッドフォンアンプの方は終段のゲイン=トランスインピーダンスが低いので、2段目の出力インピーダンスが相対的に無視できるほど高く、結果、負荷とオープンゲインの比例関係がより理想的になる。
     初段のゲイン 終段のゲイン
上の上下対称電流帰還型ヘッドフォンアンプ
新しい完全対称電圧帰還型ヘッドフォンアンプ

・ということは、このような、設定が逆のものを拵えてみれば一目瞭然になる。

   初段のゲイン 終段のゲイン
上下対称電流帰還型ヘッドフォンアンプ
完全対称電圧帰還型ヘッドフォンアンプ

・最初に初段のゲインが高く、終段のゲインが低い上下対称電流帰還型

・初段にgmの大きいFETを起用し、終段のダーリントン前段の2SC1775Aと2SA872Aのベース−出力間に完全対称型同様の抵抗を繋ぐ
・動作点はこう。


・これまでと同様に、出力の負荷=R14を37.5Ω、75Ω、150Ω、300Ω、そして負荷オープン相当の30kΩとパラメトリックに変化させた場合のゲイン−周波数特性だが、グラフ上の方がオープンゲインで、42dBの緑が負荷37.5Ωの場合、48dBの赤が負荷75Ωの場合、54dBの青が150Ωの場合、60dBの黄が負荷300Ωの場合、そして78dBのピンクが負荷30kΩの場合である。負荷30kΩの場合まで、負荷抵抗値に比例してオープンゲインが増加しているのは、完全対称型の場合とすっかり同じになった。

・ただし、下のクローズドゲインの方は、負荷によって帰還回路で設定した11倍=20.8dBからかなり乖離する。のは、初段バッファが電流帰還型としては理想的でないためなのだが、これではちょっと問題のレベルだ。
・次に初段のゲインが低く、終段のゲインが高い完全対称電圧帰還型。

・初段にgmの小さいFETを起用し、終段のダーリントン前段の2SC1775Aのベース−出力(マイナス電源)間の抵抗を取り去る



・動作点はこう。



・これも同様に出力の負荷=R14を37.5Ω、75Ω、150Ω、300Ω、そして負荷オープン相当の30kΩとパラメトリックに変化させた場合のゲイン−周波数特性だが、グラフ上の方がオープンゲインで、62dB弱の緑が負荷37.5Ωの場合、66dBの赤が負荷75Ωの場合、70dBの青が150Ωの場合、72dBの黄が負荷300Ωの場合、そして76dB弱のピンクが負荷30kΩの場合である。

・と、製作した上下対称電流帰還型の場合と殆ど同じ結果である。

・こちらは、クローズドゲインが負荷によって帰還回路で設定した11倍=20.8dBから乖離するということにはならない。

・が、この回路はシミュレーションでは動作可能だが、実機として組むのはかなり困難ではないかなぁ。完全対称型の弱点であるバイアスの安定性(アイドリング電流の安定性)確保が図られる保証がない。
   
・この結果、2台のヘッドフォンアンプが残って実機となった。という訳だ。
   
・最後に、この回路の入力から上側の出力トランジスタQ5のエミッタ出力までのオープンゲインでのトランスアドミッタンス、同じく下側の出力トランジスタQ6のコレクタ出力までのオープンゲインでのトランスアアドミッタンス、そして入力からアンプ出力までのトータルトランスアドミッタンスをグラフ化し、それによりこの回路の上下の動作の非対称らしさを観じておく。

・まぁ、これに本当に意味があるかどうかは、まだ分からないのだが。(^^;



・その結果がこれだが、やはり、1MHz以上でアンプ出力のトランスアドミッタンス(ピンク)より、それぞれの終段トランジスタ出力のトランスアドミッタンス(青及び黄)の方が大きくなってしまっている。

・これは、単純に考えれば、負荷に流れるべき終段上下の電流が負荷に流れずに上下トランジスタを貫通するという意味に取れるのだが、どうだろう。










(2009年10月17日)






(その後 8)



・DCアンプ試聴会のDC録音再生デモ用音源の入手に際して一緒に入手することとなった“パリャーソ”というグループによる“風に吹かれて”。

・続木力(ハーモニカ)、谷川賢作(ピアノ・ピアニカ・口笛・うた)によるシンプルなデュオだが、いやはや、世の中にはこういう音の良いCDも出ているのだなぁ。。。と今頃になってようやく知ったのが、例の“INTERBEING”の“IKETANG 15th Anniversary”と、この“風に吹かれて(Blowin’ in The wind)”。

・こちらは、録音とマスタリングは五島昭彦氏であり、マイクはセンハイザーのMKE2Gold、レコーダーはPCM-D1とのことだが、これが実に生々しい。シンプルなサウンドだが、生音の圧倒的な情報量とほとばしるエネルギー感、そして自然な空間感で、聴くのがとっても嬉しくなる。

風に吹かれて(Blowin’ in The wind)は勿論Bob DYLAN。と聞いて懐かしくももの悲しい団塊の年代の人は、さらに“鉄腕アトム”(谷川俊太郎作詞)に泣けてしまうかもしれない。(^^;

・8曲目、谷川俊太郎詩の“じゃあね”を、ご子息が歌うのだが、確かにこれを子供たちが合唱するのを聴いたらおじさんは思わず涙を落としてしまうだろう。
     
・その“じゃあね”のボーカルについて、「やはり機械を通った音だなぁと感じられるのが残念。人の声は聞き慣れているので違和感を感じやすいのかなぁ。。。」と分を弁えず言ってしまった(^^;ところ、五島さん、「じゃぁ、これならどうだい。」というわけでやってきたのがこれ。

・見田諭(ギター)、佐野岳彦(ハーモニカとうた)による“mitatake”というグループの“あそびかたのちゅうい”というCD。

・これもシークレットトラックを除いては録音、マスタリングとも五島昭彦氏であり、マイクはセンハイザーのMKE2Gold、レコーダーはPCM-D1。であるが、ワンポイント収録で、リバーブも一切かけていないとのこと。

・。。。凄いね。(爆) さらに自然さが際だっている。 

・これだけのものが録れるなら、DCマイク、DC録音である必要はどこにあるのだろう?と思ってしまう。。。(^^;

・楽曲や演奏も素晴らしく、その上で、何も足さず、何も引かずというのはこういうものだということが分かる超優秀録音。いずれ、新型DCマイク、DC録音でこういうCDを是非出して欲しいと思わずにいられない。
    


・と、こういうナチュラルな優秀録音を聴くにはスピーカーで演奏空間にワープするのが一番だが、ヘッドフォンで細密に聴くのもまたおつなものである。

・で、我が上下対称電流帰還型ヘッドフォンアンプと完全対称電圧帰還型ヘッドフォンアンプは、その後も快調に良い音を聴かせてくれている。

・ところで、その後、微調整なのだが完全対称電圧帰還型ヘッドフォンアンプの位相補償を20pFから10pFに減らしてある
・ちょっと高域を伸ばしすぎになるかもしれないのだが、その辺LTSpiceで占ってみる。

・なお、今回からCQ connect で入手したデバイスモデルも使ってみる。
・最初にオープンゲイン(赤)、クローズドゲイン(緑)、そしてループゲイン(青)のゲイン&位相−周波数特性。
・ループゲイン(青)が0dBとなる利得交点周波数は4MHz強であり、ちょっと高いのだが、クローズドゲイン(緑)の1MHz以上の領域はピークも盛り上がりもなく素直に減衰しており、良さ気である。
・ので、方形波応答を観る。

・左がLTSpiceの占い波形、右が実機の方形波応答波形である。実機の方は2現象の下が入力波形で上が出力波形。入力は±0.5Vp−p。
100kHz 100kHz 無負荷 下:0.5V/div 上:5V/div
500kHz 500kHz 無負荷 下:0.5V/div 上:5V/div
1MHz 1MHz 無負荷 下:0.5V/div 上:5V/div
・LTSpiceの占い波形では方形波の立ち上がり、立ち下がりに僅かながら盛り上がりがあり、これは位相補償を多少増やすことによって消えるのだが、実機の方の方形波応答ではそのような盛り上がりはなく、これで最適な位相補償状態であることが分かる。

・ので、これで行くことにしたのだ。(^^)
・ところで、LTSpiceにも当然FFT機能がある。

・この際、参考までに1kHz正弦波入力に対する出力正弦波のFFTを占ってみる。なお、負荷は300Ωである。
・先ずは入力±1Vp−p。すなわち出力は±11Vp−pと殆ど最大出力時である。

・最も多いのが3次高調波で基本波に対して−70dB程度、次が2次と5次高調波で−90dB程度だから、歪率としては0.1%未満と想定されるが、LTSpiceの占い結果は、

・Total Harmonic Distortion: 0.047647%。
・次に入力レベルを±0.1286Vp−pとして出力±1.414Vp−p(すなわち1Vr.m.s.)時のFFT。

・高調波は2次と3次のみになった。そのレベルも−100dB以下なので、歪率はLTSpiceが占うには

Total Harmonic Distortion: 0.000509%

・まぁ、アマチュアレベルでは測定限界以下。
・次に入力レベルは同じく±0.1286Vp−p、出力±1.414Vp−p(すなわち1Vr.m.s.)として、負荷が1/10の30Ωの場合のFFT。

・アンプにとっては負荷が10倍に重くなって、歪率は一気に増加する。

Total Harmonic Distortion: 0.473164%
    
・であれば、この際、上下対称電流帰還型ヘッドフォンアンプについても同様に1kHz正弦波入力に対する出力正弦波のFFTを占っておこう。こちらも負荷は300Ωである。
・先ずは入力±1Vp−p。すなわち出力は±11Vp−p。こちらも殆ど最大出力時である。

・最も多いのが3次高調波で基本波に対して−75dB程度で上の完全対称電圧帰還型よりレベルが低い。次が2次高調波でこちらは−85dB程度で逆にレベルがやや高い。が、総合的にはこちらの方が歪みが少ないようだ。のは、オープンゲインがこちらの方が大きいから当然だろうか。

・が、何故かこちらには基本波付近に変な歪みがまとわりついている。これの理由は分からない。(^^;
・次に入力レベルを十分の一の±0.1Vp−pとして出力±1.1Vp−p時のFFT。

・高調波は2次と3次のみになった。のは上の完全対称電圧帰還型と同じだがそのレベルはこちらの方が僅かに高い。

・ということは、NFB量が少ない完全対称型の方が低歪みということになる。と、この点からはやはり完全対称型の方が対称性に優れるということにはなる。
・が、どちらのヘッドフォンアンプもこれらの優秀録音CDを素晴らしい音で聴かせてくれている。(^^)





(2009年11月23日)






(その後 8の訂正)


・上の上下対称電流帰還型ヘッドフォンアンプのFFT結果で、基本波付近に変な歪みがまとわりついていた理由が分かった。単にパラメータの設定ミスだった。(^^; 

・ので、やり直し。

・先ずは入力±1Vp−p。すなわち出力は殆ど最大出力の±11Vp−p。負荷は300Ω

・最も多いのが3次高調波で基本波に対して−75dB程度、2次で−85dB程度と、結果は完全対称電圧帰還型よりやや良い。LTSpiceの占う歪率も、

Total Harmonic Distortion: 0.024211%。

・と、約半分。

・次に入力レベルを±0.1286Vp−pとして出力±1.414Vp−p(すなわち1Vr.m.s.)時のFFT。

・高調波はやはり2次と3次のみになった。が、そのレベルは2次が基本波に対して−100dB以下、三次が−110dB程度と2次高調波のレベルが大きい。歪率も

Total Harmonic Distortion: 0.000735%。

・と、同条件における完全対称電圧帰還型より多少悪いという結果だ。
・最後に、入力レベルは同じく±0.1286Vp−p、出力±1.414Vp−p(すなわち1Vr.m.s.)として、負荷が1/10の30Ωの場合のFFTを観る。

・アンプにとっては負荷が10倍に重くなって、歪率は一気に増加する。のは、完全対称電圧帰還型の場合と同じだが、そのレベルはやや低そうであり、LTSpiceの占い結果も

・Total Harmonic Distortion: 0.239100%。

・と、同条件における完全対称電圧帰還型の約半分だ。

・以上からすると、この場合上下対称電流帰還型の方が仕上がりで完全対称電圧帰還型より低歪みということになる。

・が、それは同負荷におけるオープンゲイン、ひいてはNFB量が、上下対称電流帰還型の方が完全対称電圧帰還型より多いということによるものだろう。で、その点を勘案すれば
、完全対称型の方が対称性に優れると言えないことはないかなぁ。。。(^^;
・ところで、この完全対称電圧帰還型ヘッドフォンアンプも、終段アイドリング電流の安定性に関しては上下対称電流帰還型に比して格段に劣っている。いや、それを補償できないことはないのだが、比較的に簡単ではない。で、これらは完全対称型に共通する弱点の一つである。

・このデメリットを甘受しても採用すべき完全対称型のメリットは、まさしく文字通りの動作の“完全対称性”であるわけだが。。。(^^;




(2009年11月24日)







その後 9 Power IVC for Headphone)



・我がシステムはすっかり電流伝送に移行してしまっている。

・が、唯一、ヘッドフォンアンプだけが取り残されている。

・しかるに、先生の電流入力ヘッドフォンアンプがなかなか発表されない。

・やはり、自分でバンバンするしかないか。(爆)

・ということで、こう。

・先生もNo−218のヘッドフォンアンプでは遂に禁断の上下対称コンプリメンタリーを使っておられるから、先生の電流入力ヘッドフォンアンプもこんな感じかも?

・いや、もっとシンプル?

・かもだが、この程度の方がアイドリング調整も楽だしアイドリングも安定なのでこう。
・電流伝送プリアンプから1mAの電流入力があった場合の出力電圧―周波数特性をLTSpiceで占う。

・出力にはヘッドフォンを想定した30Ωの抵抗をつなぎ、IV変換抵抗=帰還抵抗のR13を1Ω、10Ω、100Ω、1kΩ、10kΩとするパラメトリック解析。
・下から順にIV変換抵抗=帰還抵抗のR13が1Ω、10Ω、100Ω、1kΩ、10kΩの場合だが、全く理論通りで、何も言うことのない特性となっている。

・この場合の100kHz方形波応答を観る。

・先ずはIV変換抵抗=帰還抵抗のR13が10Ωの場合。
・上の周波数特性でIV変換抵抗=帰還抵抗のR13が10Ωの場合は1MHz以上でゲインが盛り上がっている影響で100KHz方形波応答にはプリシュート等が生じているが、発振する訳ではないので問題はない。
・次に、IV変換抵抗=帰還抵抗のR13が100Ω、1kΩ、2kΩの場合をパラメトリックに観る。
・結果、出力電圧が小さい順にIV変換抵抗=帰還抵抗のR13が100Ω、1kΩ、2kΩの場合だが、プリシュートはあるものの、特に問題のない応答である。良いのではないかな。
・次に、1kHz正弦波入力に対する出力正弦波のFFTを占う。

・先ずはIV変換抵抗=帰還抵抗のR13を11kΩとして出力電圧を11Vとした場合で、負荷が300Ωの場合。
・最も多いのが3次高調波で基本波に対して−75dB程度、2次で−85dB程度。

・LTSpiceの占う歪率は、

Total Harmonic Distortion: 0.025069%。
・次にIV変換抵抗=帰還抵抗のR13を1.414kΩとして出力電圧±1.414Vp−p(すなわち1Vr.m.s.)時のFFT。負荷は同じく300Ω。

・高調波は2次と3次のみになった。そのレベルは2次が基本波に対して−115dB以下、三次が−120dB以下となった。歪率は

Total Harmonic Distortion: 0.000163%。

・と、非常に良好。
・最後に、出力電圧±1.414Vp−p(すなわち1Vr.m.s.)のまま、負荷を1/10の30Ωにした場合のFFT。

・負荷が10倍に重くなって、歪率は一気に増加するが、

・Total Harmonic Distortion: 0.045816%。

・と、そんなに悪くはない。
・と、いう訳で、早速実機を拵える。

・回路はこう。
・帰還回路は10KΩ程度のボリュームを用いれば良いのだが、既存のパーツを極力流用した関係上こうなった。

・で、あっという間に、基板も出来てケースに収まった。

のは、上の上下対称電流帰還型ヘッドフォンアンプをちょっと改造しただけのことなので当たり前。(爆)
早速電流伝送方式 USB DACと繋いで試聴タイム。
・な〜んと。

・こんな音が出るのか。

・もっと早くやればよかった。




(2012年10月1日)