その11まではこちらへ)



その12(“不完全対称型”?(^^;)



・ある日、久方ぶりに電池式GOAパワーアンプに触る気になった。

・K式は常に進化しているから、理の当然として常に最新型が最良であり、従って、旧型が顧みられることはない。のだが、近頃の巨大PA用?アンプと化石的真空管によるアンプにはちょっと触手が伸びかねて。。。(^^;

・という徒然に、我が家の電池式GOAパワーアンプに完全対称型の考え方を取り入れ、モーショナルフィードバックを効かせてみてはどうかなぁ、という気になったのである。
・で、実際の素材は我が家に幾つかある電池式GOAパワーアンプのうち、ウィルソン型カレントミラーを採用した、K式の歴史では電池式GOAパワーアンプのほぼ最終形のものにすることにした。

・その回路はこう。

・終段のパワートランジスタは実機では2SD188と2SA627だが、モデルがないのでこのLTSpiceの回路では2SC5199と2SA1942のモデルで代用する。そのため、バイアス回路のQ6周りの抵抗の定数がちょっと異なるが、これで終段パワートランジスタのアイドリング電流は14mA程度となっており、実機の設定にほぼ同じだ。
・早速そのゲイン&位相−周波数特性をLTSpiceで占う。

・と、その結果はこうである。なお、この場合の負荷は8Ω。

・オープンゲイン(赤)は低域で49dB程度、クローズドゲイン(緑)は設定通り20.8dB程度、ループゲイン(青)は低域で28dB程度となっている。

・ループゲインが0dBとなる利得交点周波数は1MHz程度であり、位相補償も無理のない設定であることが分かる。
・で、この場合、低域でのオープンゲインを決めているのがGOAとして2段目の出力とアース間に挿入された5.6kΩの抵抗R18である。

・古来、この抵抗の挿入については、識者筋からわざわざ特性を悪くするだけで何の意味もないもの、と馬鹿にされている。

・確かに、この抵抗を取り払った場合のゲイン&位相−周波数特性は下の通りであり、低域のオープンゲイン(赤)が74dBと25dBもアップし、その結果ループゲイン(青)も低域で25dBアップの53dBとなり、当然NFB量も25dB増えるので歪みは1/10以下になることが期待できるし、一方、この場合でも利得交点周波数は1MHzと同じであるなど、100kHz超の高域特性に変化はなく、位相補償もいじる必要がないので高域の周波数特性や歪み、スルーレートなどが悪化する訳でもない。

・これについては子曰く「付けた場合と外した場合で音を聞き比べてみよ」であった訳だが、この点については今回のテーマではないので、これ以上は深入りしない。(^^;
・で、今回のテーマに移る訳だが、それはこのアンプの負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ωとパラメトリックに変化させた場合のゲイン&位相−周波数特性がどうなるか、というところに現れる。

・ので、早速LTSpiceで占う。
・結果はこのとおりで、クローズドゲイン(緑)がどの場合も同じ20.8dBなのは当然だが、オープンゲイン(赤)も、従ってループゲイン(青)も多少の違い(2.5dB程度)はあるものの、負荷が4Ωから64Ωと16倍(=24dB)変化していることからすればほぼ一定と言える状況になっている。

・K式におけるいわゆるモーショナルフィードバックとは、クローズドゲインが負荷の大きさに関わらず一定の状況において、オープンゲインが負荷の増減に比例して増減することによって、結果としてNFB量が負荷の増減に比例して増減する状態で得られる効果である。から、この状態ではモーショナルフィードバックは働かない。ということになる。

・この点は、完全対称型と異なるGOA型の特性だ。
・そこで、このGOA型に完全対称型の考え方を取り入れ、モーショナルフィードバックが効くようにしてみようというのが今回のテーマだ。

・実は、その方策は非常に簡単で、回路を次のように1カ所変更すればよい。GOA抵抗R18の一方の接続先をアースから、完全対称型同様にアンプ出力点に変えるだけである。
・早速LTSpiceで、アンプの負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ωとパラメトリックに変化させた場合のゲイン&位相−周波数特性を占う。
・その結果はこう。

・オープンゲイン(赤)は、低域で負荷4Ωの場合に55dB、8Ωで61dB、16Ωで66.5dB、32Ωで72dB、64Ωで77.5dBと負荷の6dB毎の増加にほぼ比例して増加している。
トータルで負荷の16倍(=24dB)の増加に対し、オープンゲインの増加は22.5dBだ。

・なお、100kHz以上の領域を比べると明らかだが、この場合でも高域の特性には何の変化も生じない。から、位相補償を見直すなどの手間は何もない。

・で、クローズドゲイン(緑)は当然どの負荷の場合も20.8dBであるから、ループゲイン(青)、ひいてはNFB量も負荷に比例して増減することになる。ので、このアンプは、スピーカー負荷に対して完全対称型と同様にモーショナルフィードバックが働くということになる。
・この場合オープンゲインがGOA接続の場合よりちょっと増えすぎではないか。という感じがする場合は、R18の抵抗値で低域のオープンゲインを調整すれば良い。例えば下図のように600Ωにしてみる。
・結果、低域で負荷4Ωの場合に43dB、8Ωで49dB、16Ωで55dB、32Ωで61dB、64Ωで67dBとなる。この場合、負荷抵抗値とオープンゲインは完全比例である。
・下は、実機である。写真向かって左側の基板が今回のテーマによる改造作業を実施済みであり、右側の基板は従前のGOAのままである。

・要するに、慎重に聴き比べ中。なのだが、やはり音の勢い、魂の籠もり具合などにおいて左側に分がある。ように感じる。
・ので、もしかすると私の常用パワーアンプは、重い完全対称型からこれら古い電池式GOAパワーアンプをリニューアルして組み直した、軽い、そして、名前としては。。。GOAと言うわけにはいかないので、そうだなぁ。。。、まぁ、“不完全対称型”?かな(^^;のパワーアンプに変わってしまうかもしれない。という予感がするのだった。




(2009年12月2日)






その13(No−121(もどき)メタルキャンTRによるMCプリアンプ その後)

我がNo−121(もどき)メタルキャンTRによるMCプリアンプは、現在こうなっている。

前回からの変更は、

@イコライザーアンプ部のクローズドゲイン設定を6dBほど大きくした。
AMHz超領域のオープンゲインの減衰をスムーズにするため、2段目差動アンプ左側にも位相補正Cを加えた。
Bフラットアンプ部のクローズドゲイン設定も6dBほど大きくした。これに伴い位相補正Cを△6dBの20pFに変更した。
Cフラットアンプ出力にシリーズの10Ωを撤去した。
Dフラットアンプ部にパッシブDCサーボを付加した。

こと。




・最初にMCイコライザーだが、まず、クローズドゲインを約6dB大きくするために、初段J2のゲート側抵抗を120Ωから62Ωに変更する。

・のは、レベルの高いCD出力とのバランスを取るため。
・で、そのゲインだが、

・初段のゲインは初段のgm1×初段の負荷だが、初段の負荷はドレイン抵抗1.8kΩと2段目2SA606のhieの並列合成値となるので、まず2段目のhie=そのhfe/gm2。で、hfeを100、gm2は2段目の動作電流が4.5mAなのでそのgm2=40*4.5=180mSとしてhie=100/180=555Ω。なので、初段の負荷は424Ω。初段のgm1は2SK117の動作点が1mAなので規格表からそのgm1=9mS。実機の初段は2SK97で、モデルがないのでgmの近い2SK117でシミュレートするのだが、これでそう違いはないはず。ということで初段のゲインは9mS×0.424kΩ=3.816倍≒11.6dB。差動アンプなので本来その1/2だが、2段目でPP合成され2倍になるのでこのままにする。

・2段目のゲインは2段目2SA606のgm2(=180mS)×その負荷インピーダンスだが、カスコードアンプとウィルソン型カレントミラーの出力抵抗はこれまでの経験値でその並列合成値として2MΩと観て、あとはこれとNFB回路のインピーダンス、そして出力にぶら下がっているR13=820kΩとの並列合成値である。で、最低域では2000k//286k//820k=192kΩであるから、最低域でのゲインは180mS×192kΩ=34560倍≒91dB。

・したがって、最低域でのゲインは初段のゲイン+2段目のゲインで11.6dB+91dB=102.6dB。

・あとは高域に向かってNFB回路のインピーダンスがRIAA特性で低下するにしたがってオープンゲインもRIAA特性型に低下し、20kHz超のある時点で、高域NFB制限抵抗R12=1kΩのためにRIAA型の低下が止まり、この時点で2段目のゲインは180mS×1kΩ=180倍≒45dB、したがってトータルゲインが11.6+45=56.6dBとなり、それ以上の周波数ではNFB回路のインピーダンスは一定なので、それ以上の周波数でのオープンゲインは位相補正Cのミラー効果で規定されるgm1/2πfCとなり、したがって100kHzで56.8dB(この場合100kHz以前に56.6dBまでゲインが下がると計算されているので、100kHzではこの計算値より少ないオープンゲインになることになる。)、1MHzで36.8dB、10MHzで16.8dB。

・利得交点周波数は、gm1/2πfC=1/βとなる周波数fで、この場合、gm1=9mS、C=20pF、β=62/(62+1000)なので、利得交点周波数f=0.009*0.05838/(6.28*0.00000000002)≒4.18MHz。ちょっと高すぎるか。

・と、概算されるのだが、どうか。

・LTSpiceで占う。

・結果は、ほぼ概算どおりだ。
で、クローズドゲイン(緑)は1kHzで50.4dBと従前より6dB大きい。ループゲイン(青)≒NFB量はDCから100kHzまでほぼ一定で26dBから29.5dB程度確保されている。利得交点周波数は概算より低く3.3MHz程度私のような素人にはこの辺が限界だから、概算より低くて良かった。
・ところで、2段目差動アンプ左側に入れた20pFの位相補正の効果だが、それをC3=0.02pF(無い場合に相当)と20pFのパラメトリック解析で観る。
・結果はこう。

・このCがない場合オープンゲイン(赤)の2MHz以上の領域で減衰度合いが小さくなって膨らんでしまい、その結果ループゲイン(青)も高域側に膨らみ、クローズドゲイン(緑)が10MHz以上で不必要に持ち上がってしまっている。

・なので、20pFの位相補償Cを左側にも加える。
・これらの変更後の動作適切性を方形波応答で観る。

・左がLTSpiceの占い波形。右が実機の応答波形で下が入力波形、上が出力波形。出力波形は2SK117BLによるソースフォロアバッファ出力で見たもの。上から1kHz、10kHz、100kHz、1MHz。

・実機の1MHz方形波応答は、入力方形波が鈍っているために本来の応答の姿を示していないことが分かるが、結論としては特に問題のない方形波応答である。ので、動作は適切だ。

No−121(modoki) MCEQ 50.4dB 20pF 1kHz
4V/div
No−121(modoki) MCEQ 50.4dB 20pF 1kHz
10mV/div 5V/div
No−121(modoki)MCEQ 50.4dB 20pF 10kHz
4V/div
No−121(modoki)MCEQ 50.4dB 20pF 10kHz
50mV/div 5V/div
No−121(modoki) MCEQ 50.4dB 20pF 100kHz
4V/div
No−121(modoki) MCEQ 50.4dB 20pF 100kHz
0.2V/div 5V/div
No−121(modoki) MCEQ 50.4dB 20pF 1MHz
4V/div
No−121(modoki) MCEQ 50.4dB 20pF 1MHz
0.2V/div 5V/div
   
・次にフラットアンプ部。

・こちらもNFB抵抗R7を5.6kΩから12kΩに変更し、仕上がりゲインを6dBほど大きくした。のはこの方が使い勝手が良いから。

・また、そうすると利得交点周波数が同じで良いならβが小さくなった分位相補正Cの容量も比例で小さくできるので、C1を39pFから△6dBの20pFに変更する。
・そのゲイン等を概算してみると、最初に初段のgm1はその動作点が2.5mAなので規格表から2.7mS。初段の負荷はドレイン抵抗560Ωと2段目2SA606のhieの並列合成値となるので、まず2段目のhie=そのhfe/gm2。で、hfeを100、gm2は2段目の動作電流が4.2mAなのでそのgm2=40*4.2=168mSとしてhie=100/168=595Ω。なので、初段の負荷は288Ω。したがって初段のゲインは2.7mS×0.288kΩ=0.7776倍≒−2.18dB。差動アンプなので本来その1/2だが、2段目でPP合成され2倍になるのでこのままにする。

・2段目のゲインは2段目2SA606のgm2(=168mS)×その負荷インピーダンスだが、カスコードアンプとウィルソン型カレントミラーの出力抵抗はこれまでの経験値でその並列合成値として2MΩと観て、これとNFB回路のインピーダンスとの並列合成値であるが、この場合NFB回路のインピーダンスが圧倒的に低いのでカスコードアンプとウィルソン型カレントミラーの出力抵抗は無視できるから、低域でのゲインは168mS×13kΩ=2184倍≒66.79dB。

・なのでトータルでオープンゲインは低域で−2.18+66.79=64.61dB。


・高域については、2段目差動アンプに入れた位相補正Cのミラー効果で、初段のゲインをA1、2段目のゲインをA2、初段の負荷抵抗(ドレイン抵抗と2段目TRのhieの並列合成抵抗)をR、周波数をfとして、高域のゲインA=A1*A2/(1+2πf(1+A2)CR)
となるので、これで計算すると、1kHzで64.1dB、10kHzで60.4dB、100kHzで47.5dB、1MHzで28.7dB、10MHzで8.8dBとなる。

・ので、オープンゲインのfcは10kHz程度だろう。

・利得交点周波数fは=gm1*β/2πC=0.0027*0.0769/(6.28*0.00000000002)≒1.65MHz。

・また、スルーレートとしては2.5mA*2/20pF=250V/uSが見込める。はずだが、前回のヘッドフォンアンプの例からしてこの半分程度かもしれない。

・と、概算されるが、LTSpiceではどうか。

・やや低めだが殆ど概算通りだ。
・そして位相補正コンデンサーC1だが、LTSpiceでC1=5pF、10pF、20pF、40pFのパラメトリック解析をするとこうなる。

・オープンゲイン(赤)、ループゲイン(青)、クローズドゲイン(緑)とも高域に伸びている順にC1=5pF、10pF、20pF、40pFの場合である。

C1=5pFの場合はクローズドゲイン(緑)に5MHzをピークとした盛り上がりが生じておりちょっと不適だが、C1=10pFではクローズドゲイン(緑)は1MHz以上でピーク無く素直に減衰しており良さ気である。

・が、この場合実機の位相回転の方がシミュレーションの占うものより早いようで、実機の方形波応答も観てここは20pFとする。

・なお、これが位相補正C1=20pFの場合に、2段目差動アンプの左側にC2=20pFを付加した場合と付加しない場合のパラメトリックシミュレーション結果。

・3〜4MHz以上でより高域側に盛り上がるのが、この20pFが無い場合である。この不要な盛り上がりを避けるためにC2=20pFを付加する。
・で、その結果動作適正的にはどうか。方形波応答で観る。
・上から、10kHz、100kHz、500kHz、1MHzの方形波応答。左がLTSpiceの占い波形で右が実機の応答写真で、写真は下が入力波形で上が応答波形。

・やはり、この場合シミュレータの占いより実機の方が1MHz以上の高域でのオープンゲインの低下及び位相回転は早いようだ。その原因は2SA606のモデルパラメータが正しくないためだろう。

・シミュレータでは下のように位相補正Cが20pFの場合は勿論、10pFにしても方形波の立ち上がりにオーバーシュートが生じない。のだが、実機では写真のとおり位相補正Cが20pFでも多少のオーバーシュートが生じている。

・が、その程度は僅かであるので、これは許容範囲と判断し、位相補正は20pFとする。

No−121(modoki) FA 22.3dB 20pF 10kHz
No−121(modoki) FA 22.3dB 20pF 10kHz
0.5V/div 5V/div
No−121(modoki) FA 22.3dB 20pF 100kHz
No−121(modoki) FA 22.3dB 20pF 100kHz
0.5V/div 5V/div
No−121(modoki) FA 22.3dB 20pF 500kHz
No−121(modoki) FA 22.3dB 20pF 500kHz
0.5V/div 5V/div
No−121(modoki) FA 22.3dB 20pF 1MHz No−121(modoki) FA 22.3dB 20pF 1MHz
0.5V/div 5V/div
  
・次に、出力にシリーズの10Ωである。この抵抗はオリジナルNo−121にも挿入されているのでそのまま付けていたのだが、この場合、エミッタフォロアがある場合と違って、容量負荷は位相も回転させるがGB積も同時に小さくするのでNFB的に不安定になることはない。ので、資源の有効活用の観点から取り外す。
  
・そして最後にパッシブDCサーボである。

・我がパワーアンプは未だにNo−139(もどき)とNo−144(もどき)がメインになっている。すなわちパワーアンプの電圧ゲインは40倍である。そして、これらには出力に0.6VのDCが加わると動作を停止させる保護回路を搭載してある。ので、その前段のプリアンプ、ラインアンプ等から±15mV以上のDC電圧が加えられると保護回路が働いてしまう。

・これまでも熱的に安定するまでこの範囲を超えるDCオフセットが生じてしまうことがままある状態だった。ので、今回クローズドゲインを22.3dBに上げたことによりDCオフセット、ドリフトが大きくなって、ちょっとそれが実用範囲を超えるものになってしまう。

・ここはやはりオリジナルどおり、デュアルFETのFD1840(2N3954)を起用し、その動作点もQポイントの0.3mAとして、電源電圧も10.5VとしてFD1840の発熱も最小限にする、ということが必要なのだろう。

・が、先に拵えたCDラインアンプ兼ヘッドフォンアンプでその音に違和感を感じなかった駄耳のわたくしとしては、またしてもパッシブDCサーボでACアンプに堕落することにする。

・結果は、大きめに見てもDCオフセット&ドリフトは±2mV以内。と精神的にも非常に気持ちの良いものとなった。

・し、音的に悪くなった感じは全くないし。(^^;
・で、その音であるが、全く手前味噌ということになるが、これをもって聴くレコードもCDもいつまでも聴いていたいという気分になる。

非常に良い音に仕上がったわぃ。(^^)




(2009年12月28日)