BATTERY DRIVE

MOS-FET POWER AMP
(GOA&不完全対称)
Studyする





・時来たれり。

・故に、10年前に作った右のオールFET GOAパワーアンプ
が改変の仕儀となった。

こんな感じだったものを、
・こんな感じに。

・殆ど変わっていない。(爆)

・が、電源電圧を±15Vに変更し、それに合わせて定電流回路等のツェナーダイオードに流す電流を規定する抵抗の抵抗値を調整し、2段目差動アンプのカスコード回路の固定電圧を必要最低限とし、4電源仕様から2電源仕様に変更し、あわせてこの際クローズドゲイン設定を最近製作した我が元祖電池式完全対称型やバッテリードライブ不完全対称型パワーアンプと同じ22倍に上げた。

要すればリチウムイオンバッテリー電源仕様にして、リチウムイオンで聴こう。という趣旨。
・まぁ、どちらにしても回路的にはMJ1992年12月号のNo−137、オールFET 3cHパワーアンプにごく近いGOAパワーアンプである。

・で、この状態における利得&位相−周波数特性をLTSpiceで観ておく。

・負荷のR18=4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、50kΩ(負荷オープン相当)の場合のパラメトリック解析。
・GOAであるから、オープンゲイン(赤)は負荷にかかわらず低域で10kHz付近までほぼ一定で、53dB±2dB程度である。

・クローズドゲイン(緑)は帰還回路で設定した通りで26.7dB(=約22倍)。したがってループゲイン(青)は負荷にかかわらず低域で10kHz付近までほぼ一定で、27dB±2dB程度

・と、他には特に言うべきことはないが、利得交点周波数が400kHz〜500kHz程度と、存外に低いのが意外なところではある。
  
・2段目G-D間の位相補正Cは、方形波応答等から従前の10pFを20pFに変えた。

・その観察が下の写真等だが、順に上から、位相補正Cが10pF、20pF、そして39pFの場合で、左が10kHz方形波応答で右が100kHz方形波応答。

・写真は2現象で下が入力波形で上が出力応答波形。この場合、全て無負荷である。

・写真下にあるのは、LTSpiceの占う同条件での方形波応答波形。

・これらを観ると、LTSpiceの占うところでは位相補正には39pFが必要という結果なのだが、実機の方形波応答では20pFが最適との結果であり、音を聴いても20pFで音が最も自然な感じがする(^^;ので20pFに決定したもの。

10kHz 位相補正10pF
20uS/div 下0.2V/div 上5V/div
100kHz 位相補正10pF
2uS/div 下0.2V/div 上5V/div
・10kHz方形波応答写真では見にくいが、LTSpiceの占うとおり方形波の立ち上がり、立ち下がりにオーバーシュートと僅かなリンギングが出ている。それは100kHz方形波応答で明確になっている。
    
10kHz 位相補正20pF
20uS/div 下0.2V/div 上5V/div
100kHz 位相補正20pF
2uS/div 下0.2V/div 上5V/div
・LTSpiceの占い波形ではこの場合もまだオーバーシュートが出るが、実機の方の方形波応答は最適だ。モデルパラメータ等が妖しいものだからこの辺はやむを得ない。(爆)(^^;
    
10kHz 位相補正39pF
20uS/div 下0.2V/div 上5V/div
100kHz 位相補正39pF
2uS/div 下0.2V/div 上5V/div
・LTSpiceの占いではこれでようやくオーバーシュートが消滅する。
  
・と、動作には何も問題がない。

・ので、早速この状態でリチウムイオンバッテリーを電源として音を聴いてみる。

・TAD2WAYマルチシステムで、それをドライブする我が元祖電池式完全対称型&No−209もどき完全対称型とこのMOS−FET GOAパワーアンプを入れ替えてヒヤリングする。

・う〜ん、良い音だわぃ。(^^)

・が、あまり良く違いが分からない。(爆)

・まぁ、駄耳のせいなのだろうけれど。。。(^^;

・ただ、MOS−FETパワーアンプは1台だけなので、2WAYマルチでは低域側か高域側にMOS−FETパワーアンプを起用してのヒヤリングになる訳だが、そのMOS−FETパワーアンプが担っていた帯域を元のトランジスタパワーアンプに戻すと、存外に“ありゃ鳴りっぷり?音色感?が揃った感じ。”という印象を受けるので、多少の違いはあるようだ。それはMOS−FETの方が色で言えばコントラストがやや上がったような印象なのかもしれない。逆に言うと、用いているトランジスタが古いせいもあるだろうか、我が元祖電池式完全対称型とNo−209もどき完全対称型の音がやや薄味?無個性?なのかも知れない。また、極低域について、TR式もこのMOS式も共に体の芯を揺すぶり家をも振るわすような極低音まで出してくるのだが、TAD TL−1601Aをドライブする限りではMOS−FETGOAの方がより低域まで音程を保ってしっかり伸びている感じがする。

が、この程度の違いなら、わたくし的にはどちらでも良い。
・なので、このGOAのままで行くこととにした。

・と言うことで、最後にほぼ最大出力における方形波応答を観ておく。

・10kHzと100kHzの方形波応答だが、入力が1Vp−pなので出力は20Vp−pを超えており、電源電圧的にこれで殆ど最大出力である。限界最大出力は同じリチウムイオンバッテリ±15Vを使用したTRパワーアンプたちに比べると僅かに小さいがほぼ同程度だ。したがって、私の環境では全く不足はない。
10kHz 無負荷 
20uS/div 下0.5V/div 上10V/div
100kHz 無負荷 
2uS/div 下0.5V/div 上10V/div
10kHz 負荷10Ω
20uS/div 下0.5V/div 上10V/div
100kHz 負荷10Ω
2uS/div 下0.5V/div 上10V/div
・観測環境の悪さもあってか10Ω負荷時に入出力とも波形が乱れる。のは、我がTR式不完全対称型やNo−209もどき完全対称型に同じだが、それらとの比較では、100kHz方形波応答は無負荷時、10Ω負荷時ともこのMOS−FETパワーアンプが最も綺麗である。
  
・という結果を見て今ひとつLTSpiceで同条件における無負荷時の100KHz方形波を占ってみたくなった。

・観たいのは出力応答波形ではなく、その際の終段MOSFETに流れるドレイン電流の変化である。

・それが右下Id(M1)とId(M2)であるが、驚いたことに異常電流が非常に少ない。無いと言っても良いぐらいだ。比較のためにTR不完全対称型パワーアンプの場合も並べてあるが、両者の比較からそのことが明確だ。

・シミュレーション占いの結果のみでものを言うのは軽率というものだが、もしこれが本当なら、TRに対するMOSの優位性の一つがこの辺に出ているのかも知れない。
   
・と、言うわけでしばらくMOS−FETGOAパワーアンプとして聴いていた。

・のだが、ついつい「不完全対称型」にしたらどうだろうか、と思ってしまう。(^^;

・ので、やってみる。

そうするには、次のようにGOA抵抗のつなぎ先をアースから完全対称型同様に出力点に変えるだけ。

・そうするとどうなるかはTR式の不完全対称型パワーアンプで分かっているが、一応、負荷のR18=4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、50kΩ(負荷オープン相当)の場合のパラメトリック解析で、
この状態における利得&位相−周波数特性をLTSpiceで観ておく。
・その特性は、完全対称型同様にオープンゲイン(赤)が負荷に比例して増減する特性になる。

・クローズドゲイン(緑)は当然一定なので、結果ループゲイン(青)(≒NFB量)も負荷に比例して増減する。要するにK式で言うところの速度型モーショナルフィードバック(MFB)が掛かる所以の特性である。

・この場合オープンゲインはR17で調整可能であるが、今回これを2.2kΩにしたのは、オープンゲインを最近作った私のTR式不完全対称型パワーアンプや元祖電池式完全対称型パワーアンプに合わせるため。

・結果、負荷8Ωの場合のオープンゲインは低域で60dB程度と、GOA形式の場合より7dB程度大きくなる。

・この変更を加えても、高域の利得&位相−周波数特性は初段FETのgmと2段目差動アンプG−D間の位相補正コンデンサーの2者のみによって規定されるため、この場合でも30kHz程度以上の領域の特性には何の変化も生じない。ので、位相補正をいじる必要はない。
・という「不完全対称型」なのだが、その実態はそう大層なものではない。

・アースに繋がっていたGOA抵抗がブートストラップ抵抗になっただけである。

・ブートストラップと言えば、K式No−1が登場する頃の1970年代初頭の国産パワーアンプに良く使われていたらしい。それは、アンプ出力点から2段目電圧増幅段の抵抗負荷の中点に大容量のブートストラップコンデンサをつなぐものだが、この抵抗もそれと本質的に同じものである。

・しかし、この場合終段はMOSで入力インピーダンスはそもそもごく高いし、2段目も抵抗負荷ではなく出力インピーダンスの高いカレントミラー負荷なので、1970年初頭の国産パワーアンプで使用されていたらしいブートストラップと同様のものをこの回路で用いる意義は全くない。のだが、このようにK式で言うところの速度型モーショナルフィードバックが掛かるオープンゲイン特性が得られるという点で起用する。

・その意味では同じものでも目的、用法が違うということである。

・ちなみに完全対称型の終段上側の動作もこれと同様のブートストラップ型なので、これらが同じような特性を示すのは当然である。要すれば、これらのブートストラップ回路を電流ドライブするのが「完全対称型」であり、「不完全対称型」である。ということになる。

・と、いうところをLTSpiceで占ってみる。
A 型
・このA型は、完全対称型終段の上側である。前段から5mAの動作点電流が流れるとともに、正弦波信号が10mAp−pで加えられるという設定。

・その結果は右の通り、利得≒17dB、fc≒1.3MHzといった特性になっている。
B 型
・次にB型。こちらは完全対称型終段の下側である。設定はA型と全く同じで、ただ2SK134の負荷となるR2の位置がソース側からドレイン側に移っている。

・で、その利得とその周波数は右の通りであるが、これも利得≒17dB、fc≒1.3MHzと、若干0.1dB程度利得が小さいようにも見えるが、殆どA型と同じである。

・のは、A型とB型ではインピーダンスが0Ωである電源V1の位置が負荷抵抗R2の上か下かの違いで、そのV1を短絡して見れば明らかなように、そもそも全く同じものであるから、当たり前である

・が、このB型はA型と違ってブートストラップではない。教科書的にいうところのソース接地型(ソース共通型)だ。と言うわけで、結局ソース接地型と電流ドライブのブートストラップ型は同じものである。
・ホントかいな?少なくともゲート−ドレイン間の寄生容量によるミラー効果は違うのでは?

・なので、G−D間にわざと0.1pF(なしに相当)、10pF、100pF、1000pFをつなぐパラメトリック解析で観る。
・結果は位相が反転しているだけで、全く同じ。ソース接地型と電流ドライブのブートストラップ型は同じものなので当たり前。
・Pチャンネルの2SJ49で同様に観たのがC型とD型。
C型
D型
・当然だが、どちらも利得≒18.2dB、fc≒1.5MHzと、こちらも2SK134の場合と同じ結果。

・が、2SK134のA型、B型と2SJ49のC型、D型の結果を比べれば利得もfcも多少異なる。のは、コンプリ素子とは言え、別の素子であるから当然である。

・この場合に2SJ49の方が利得が大きいのは、前段から5mAの動作点電流でR1=150Ωに発生するバイアス電圧で流れるアイドリング電流が、このSpiceモデルでは2SK134が67mAなのに対し、2SJ49の方は113mAと多く、その分2SJ49のgmが大きくなるためである。

・試しにその動作点電流を調整して2SJ49のアイドリング電流が67mAになるように調整すると、その場合の利得は16.2dB程度となった。動作点を揃えても2SK134とは一致しない。 もともと違う素子なのだから、これも当たり前。
・以上から、2SK134のA型とB型、あるいは、2SJ49のC型とD型を組み合わせてプッシュ・プル動作をさせると大変良い理想的な結果が得られることが予想されるが、それをするのが「完全対称型」ということになる。

・同一素子を同一動作で組み合わせるのだがらプッシュプルとしてこれ以上対称な動作はない。従ってその組み合わせを「完全対称型」と名乗るのは適切である。
・が、一方、2SK134のA型、B型の結果と2SJ49のC型、D型の結果はそんなに違わないではないか。とも思える。(^^;

・ので、この際2SK134のA型と2SJ49のC型を組み合わせて
プッシュ・プル動作をさせようというのが「不完全対称型」。

・そこで、2SK134と2SJ49のアイドリング電流を揃えて、それぞれの負荷抵抗を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ωと変化させた場合の利得&その位相の周波数特性をパラメトリックに占ってみると、こうなる。
・どちらも下から負荷=R2が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ωの場合だが、利得はどちらも負荷の6dBステップの増加に比例して6dBステップで増加する。これは「完全対称型」と同じところだ。

・が、両者間では利得に1dB程度の乖離がある。これは素子が違うのだからいかんともしがたいところ。
・が、この程度の違いをうんぬんしてもしょうがないのでは?という現実的な考えで、2SK134のA型と2SJ49のC型を組み合わせてプッシュ・プル動作をさせるとこうなる。なお、信号電流を5mAp−pとしてあるのは、この場合プラスマイナスからプッシュプルで終段をドライブするからである。結果、上のシングル動作の場合に比していずれの負荷の場合も利得が6dB増加している。理屈通りだ。
・と、動作の対称性という意味では勿論完全ではないので「完全対称型」は名乗れないが、動作内容は「完全対称型」と同じであるし、これでも悪くはないのでは、というのが「不完全対称型」。

・なのだが、この「不完全対称型」にもメリットがある。

・それは、終段のバイアス回路をブートストラップ抵抗から分離でき、終段上下をプッシュプルでドライブでき、特に終段をトランジスタで構成した場合には分離できたバイアス回路で終段の温度補償を簡便かつ完璧に実施できる点である。この点は「完全対称型」より明らかに有利である。
・が、音が悪ければしょうもない。ので、早速聴いてみる。

・う〜ん、良い音だわぃ。(^^)

同じく2WAYマルチで、低域側か高域側にMOS−FETパワーアンプを起用してのヒヤリングになる訳だが、やはりMOS−FETパワーアンプの方が全域で色に例えればそのコントラストが強く色彩感が豊かで、低域では1オクターブ下まで音域が広がったようにエネルギー感の強い極低音を出してくる。結局GOAのときと印象的には同じなのだが、その傾向がより明確になったように感じる。で、端的に言えば、比較的にTRが淡でMOSが濃。どちらが良いか?となるとどうも今回のMOS−FET不完全対称型パワーアンプの勝ちだなぁ。。。

が、駄耳のせいもあり、MOS−FET不完全対称型でなければ聴けなくなった、と言うようなことはない。TR完全対称型の方も十分に良い音だ。

・で、結論としてはGOA型ではなく不完全対称型で行く。

・と言うわけで回路はこう。

・この際パイロットランプのLEDはアラート色の赤は止めて橙色にした。
・ところで、GOA型と不完全対称型の多少の音の違いの要因がK式のいわゆるMFB以外にもあるのか否かをを考えるために、両タイプの場合の出力インピーダンスを測定してみる。

・実機は、負荷R1とR2を用意して、R1負荷時の出力電圧とR2負荷時の出力電圧から求める方法を採用した。

・R1負荷時の出力電圧をVo1、R2負荷時の出力電圧をVo2、出力インピーダンスをZoとすれば、アンプ本来の起電力(Vとする)がZoとR1又はR2で分圧されてVo1又はVo2の出力電圧となる筈なので、
 Vo1=R1/(Zo+R1)*V
 Vo2=R2/(Zo+R2)*V 
 だから
 (R1+Zo)*Vo1/R1=(R2+Zo)*Vo2/R2
 これをZoについて解くと、
 Zo=R1*R2*(Vo2−Vo1)/(R2*Vo1−R1*Vo2)
 で出力インピーダンスが求められる。
 だから、R2=2R1を満たしている時(8Ωと16Ωとか4Ωに8Ωとか)には
 Zo=2*R1*(Vo2−Vo1)/(2*Vo1−Vo2)

・結果、このMOS−FETパワーアンプは、GOA形式では400Hz正弦波入力で8Ω負荷時に4.064Vの出力となる設定で4Ωを負荷にすると3.976Vの出力となった。ので、その出力インピーダンスは0.181Ω。

・不完全対称形式では、同じく400Hz正弦波入力で8Ω負荷時に4.076Vの出力となる設定で4Ωを負荷にすると3.936Vの出力となった。ので、その出力インピーダンスは0.295Ω。

・案外両者間にあまり違いのない結果だ。

・この辺LTSpiceの占いではどうか。

・シミュレーションでは壊れるという心配がいらないので出力への電流注入法でやってみる。しかも注入電流は1A。そうすると結果がΩで表示されから造作がなくて便利。

・先ずはGOA型。GOA抵抗=5.6kΩ、56kΩ、560kΩとするパラメトリック解析。

・結果は右で、緑が5.6kΩの場合、赤が56kΩの場合、青が560kΩの場合。やはり出力インピーダンスはGOA抵抗の設定によるオープンゲインの増加=NFB量の増加に比例するようだ。で、実機と同じGOA抵抗が5.6kΩの場合の出力インピーダンスは低域で0.06Ω程度という占い結果である。
・次に不完全対称型。ブートストラップ抵抗は実機に同じく2.2kΩ。今度は負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、50kΩ(無負荷相当)とするパラメトリック解析。

・結果は負荷とは無関係に低域で0.16Ω程度という占い結果。

・う〜む。。。不完全対称型は負荷によってオープンゲインが変わり、したがってNFB量も異なるので、負荷によって出力インピーダンスも異なるものと思っていたのだが、負荷の値には無関係のようだ。ちょっと不思議。(^^;
・と言うわけで実測の方が多少高く出ているが、シミュレーションでも実機と同様に不完全対称型の出力インピーダンスがGOA型より0.1Ω程度高いという結果であるから、実測値はあまり間違いのない結果と考えて良いだろう。

・となると、0.1Ω程度の出力インピーダンスの違いでは、これがGOA型と不完全対称型の音の差の要因になっているとは考えにくい。という結果だ。
・それは置いておくとして、世界最初のMOS−FET。

・“悪魔のパワー素子”だったのだが、なんでこんなに良い音なのか。。。(爆)





2011年2月26日