チェンマイ花祭り その1

 今、テレビではこれでもかというくらいに新型コロナウィルスの話題で持ち切りです。ダイアモンド・プリンセスには昨年の7月に乗って、北海道・樺太クルーズを楽しみました。今集中砲火を浴びている彼女がかわいそうでなりません。この国の政府や役人どもが、「下船させるよりはそのまま2週間留め置け」と安易で自分勝手な論理で、船がウィルスに対して完全にクリーンになっていないにもかかわらずおろしてくれないのですから、乗客・乗員が次々に感染していくのは当たり前です。もし半年前にこれが起こっていたらと思うと、他人ごとではありません。







 昨年の秋に、今年の冬は暖かいところで過ごそうと思って、タイのチェンマイのホテルを予約しました。以前から行ってみたかった古都チェンマイでゆっくりしようという魂胆で、2月3日から11日まで8泊の予定でした。調べてみると、チェンマイのこの時期は乾季にあたっていて、最低気温は13℃、最高気温は33℃位とのことです。早速飛行機の便を調べてみたら、バンコックまで行って国内線に乗り換える方法と、キャセイ航空で香港からチェンマイに直接入る方法がありました。香港経由は乗り継ぎ時間が往復とも2時間以内と便利なので、迷わずこれを選択しましたが、あとになってこれが心配の種になってしまうのです。年が明けて、中国で新型コロナウィルスが大流行しているというニュースが連日報じられるようになりました。事態の推移を眺めながら色々考えていましたが、出発1週間前にチェンマイ旅行決行と決めました。
 2020年2月3日の朝6時50分蛍池発のリムジンバスに乗って関空に向かいました。バスの乗客は全員マスクをしていました。8時過ぎに関空に到着してキャセイ航空のカウンターで荷物を預けました。そのあとで朝ご飯を食べているうちに時間は過ぎて、キャセイ503便の搭乗時間になりました。いつもと違うのは、ここでもほぼ全員がマスクを着けていることでしょうか。私は昔からマスクは大嫌いなのですが、さすがに今回は皆さんに同調してマスク姿です。乗客数は半分ほど席が埋まっているぐらいでしょうか。飛行機はほぼ定刻に離陸して、4時間15分飛んで香港に到着しました。ここで2時間の乗り継ぎでキャセイ・ドラゴン航空232便チェンマイ行きに乗ります。2年ぶりに来た香港国際空港ですが、ますます空港の規模が大きくなっているようでした。新型コロナウィルスのことがあるので、ウロウロせずに出発ゲートに行ってじっと座っていました。現地時間の15時に離陸したAIRBUーA321は17時30分に無事チェンマイ国際空港に着陸しました。多分いつもよりは厳しい検疫を受けて外に出ました。タクシーでホテルまでは15分程かかりました。ここで9日間滞在するのは、ル・メリディアン・チェンマイで、旧市街から少し出た繁華街にあります。チェック・インを済ませて、とりあえずはホテルのレストランで少し食べて、地元産のチャン・ビールを飲みました。
 翌日の2月4日は晴れでした。ホテルの窓からはチェンマイの北西にある山が見えます。ホテルの朝ご飯はブッフェ形式でした。10時頃からとりあえずホテルの近辺を散策してみました。ホテルでもらった地図によると、ここら辺は夜には「ナイト・バザール」という様々な屋台が立ち並ぶ地域です。朝は15℃ぐらいまで気温が下がり、午後に35℃くらいまで上がるのがこの季節の一日の変化なので、この時間は街を歩いていても快適です。道端は凸凹が多くて歩きづらいのですが、東南アジアはどこでもそうなので気を付けて歩くしかありません。ホテルから東に歩いて、ピン川を渡って一回りして帰ってきました。丁度昼時になったので、ホテルの近くの中華レストランで飲茶を食べました。量だけ多くてあまりおいしくありませんでした。
 ホテルの部屋で休憩して、午後は旧市街の探索をすることにしました。チェンマイの街は、掘に囲まれた2キロ位の正方形の旧市街があり、その外に市場やバザールなどがある新市街が広がっているのです。旧市街には沢山の寺院や役所、学校などがあります。レンガ造りのターペー門から旧市街に入って中心部まで行くと、ワット・パン・タオという大きなお寺がありました。観光客も沢山いました。自分と同じように、こんな時期に旅行している呑気な日本人の団体もいました。途中にあるお寺を幾つか見てホテルに帰って来たのは3時ごろでした。夕食まで時間があるので、ホテルのプールに行ってみました。水があまりにも冷たかったので入るのは止めにして、プールサイドで本を読んで時間をつぶして帰ってきました。
 夕食は、ホテルから東に少し歩いて行ったところにある、ピン川に面した「リバー・マーケット」レストランに行ってみました。大きな店で、川に面して緑の芝生が広がっています。団体客専用みたいな店の作りでしたが、思っていたよりもおいしい料理が楽しめました。ベトナム風の生春巻きがおいしかったです。メリディアン・ホテルの周辺に広がるナイト・バザールを冷かして帰ってきました。ファッション小物や衣料品などの屋台が延々と広がっていました。バンコックやクアラルンプールなどにあるものと同じです。いつも不思議に思うのは、どのマーケットでも毎日きれいに並べては、終わったら毎日きちんと片付けていることです。不思議な勤勉さだと思います。





 翌日は朝から快晴でした。朝ご飯を食べて、今日も市内を散策します。この日は少し遠出をしました。旧市街にある沢山の寺院を見て歩きました。大体の寺院は入り口に大きな竜が口を開けています。中には本堂、仏塔などがあり、ある寺院では金色のお釈迦様が寝ていました。徐々に上がって来る気温の中、旧市街を歩いて、昼にはワロロ市場に到着しました。沖縄の那覇にある牧志の国際市場に雰囲気が似ていました。いろんな店が集まっていて、市場の中に食堂もあります。ここでコメ粉の麺を頼んで食べてみました。澄んだスープで中々おいしかったです。値段は一杯90円ぐらいでした。ホテルまで歩いて帰り、午後は暑さを避けてホテルで休養しました。気温が上がる前だったので9キロ歩いてもさほどの疲れはありませんでした。夕方まで部屋で本を読んだりして時間をつぶしました。6時からホテルのそばのナイト・バザールを冷かしながらレストランを探しました。「何でも食べてやるぞ」という気持ちで歩いて行くと、おあつらえ向きの店がありました。北タイの料理も楽しめるようです。歩道にせり出したテーブルに座って、チャン・ビールを頼み、野菜サラダ、豚肉のサティー、骨付き豚肉の炒め物などを楽しみました。まずまず合格の店でした。2時間ほど過ごして帰ってきました。







 2月6日木曜日も朝から晴れでした。この日は郊外の植物園に行ってみることにしました。ホテルから見える西側の大きな山の中にある、クイーン・シリキット植物園は広大な敷地であるとガイドブックに書いてあります。ホテルでタクシーを呼んでもらいました。料金は往復1200バーツで、片言の日本語がわかる運転手さんが来ました。数年間日本で大工をしていたそうです。ホテルから郊外に出て、空港や軍の基地を通り過ぎて山にかかると、蘭、サル、蝶、蛇、象などのガーデンの客引き看板が出てきます。運転手によると、この辺りに野生の象はいないという話でした。1時間ほどで植物園に着きました。入り口を入ってすぐにある空中に伸びている展望用のプロムナードを歩いているとジャングルの中にいるような気分になりました。公園の奥へ移動すると大きな温室が並んでいるエリアもありました。外にはバラの花が咲いていました。熱帯は花にとっても季節感が無いらしく、日本やイギリスのように花の季節になって咲き誇っているという感じではなく、「年中、適当に咲いていますよ」といった雰囲気でした。1時間で植物園を出て、帰りにバタフライ・ガーデンで蝶を見て、市内まで戻ってきました。丁度昼になったので、運転手に地元の人が行く食堂を教えてもらいました。そこでおいしい麺とカレーを食べて帰ってきました。夕食はあまりお腹も空いていないので、ホテルのイタリアン・レストランで済ませました。 (続く)