東海自然歩道 その63
     -四谷の千枚田から宇連山を経て鳳来寺まで-

2019年5月30日 晴れ


 四谷の千枚田

 仏坂峠

 昨夜は、湯谷温泉の濃厚な温泉成分を含んだお湯につかって、ゆっくり休みました。そして、いよいよ今回のハイライトに挑戦です。四谷の千枚田から宇連山の麓を巡って、そこから棚山高原へ出て、玖老勢峠を経て蓬莱山から鳳来寺までの、およそ18キロの山岳コースです。早朝6時に旅館を出て、国道を走って滝上から四谷に入りました。前回、塩谷温泉からこの四谷の千枚田まで歩いたときは3月で、梅の花が咲いていました。今は丁度田植えを終えて、千枚田は朝日に照らされていました。東海自然歩道にはこれまでも千枚田はありましたが、本当にここが一番手入れも行き届いていて素晴らしいと思いました。
 棚田の最上部の前回終了地点まで車で登って行って、そこで装備を整えて午前6時45分に出発しました。まずは千枚田の上辺を歩いて、そこから林道を仏坂トンネルに向かって歩いて行きました。まず小さなトンネルを通過して、すぐに仏坂トンネルが見えてきました。その手前に広場があり、ここから東海自然歩道は仏坂峠までの山道になるようです。ここまで2.6キロ、午前7時30分と順調な滑り出しです。山道に入る梯子を登って、トンネルの上にあたるところを暫く登って行くうちに、細い山道が無くなってしまいました。この季節は草が生い茂って判りづらくなっているので、早速道を間違えてしまったようです。元に戻るのも癪なのでこのまま藪の中を登って行くことにしました。上に行けば鞍掛山から仏坂峠への道に合流するのは分かっていました。ただ、この急登攀に20分余計に時間がかかってしまいました。やっとのことで山道に出て一安心です。午前8時30分に仏坂峠に到着しました。トンネルから400メートル進むのに1時間かかりましたが、出発が早かったのでまだまだ気持ちには余裕があります。
 仏坂峠は標高622メートルで、これから宇連山までは標高差300メートルの尾根道を上り下りを繰り返しながら登って行くことになります。道標に書いてある距離と時間の表示では、わずか4キロ弱を3時間かかることになっています。9時40分に海老峠に到着しました。スタートから4.2キロ地点です。木製の階段を登ったり、岩の尾根道をへっぴり腰で登ったりで、やはり距離は伸びません。気温が上がってくる中を、更に1時間半歩いて、午前11時10分に宇連山山頂への登り口に到着しました。ベンチに座って休憩していると、これから私が行く棚山高原のほうから3人連れの登山者が登ってきました。私と同年配の夫婦と若者で、お父さんは東海自然歩道を6年かけて歩き切ったそうです。今日は宇連山に登るということでした。
 思いがけず人と会って会話が出来て少し元気をもらって、11時30分に歩きを再開しました。ここから棚山高原まではやや下りの尾根道を縦走するので、これまでとは違って少しは距離は捗るはずです。まずは笹原を縫って山道を歩いて行きましたが、ここあたりから強烈な日差しが出てきて、体力を消耗していきました。山道から砂利の林道に出てずんずん歩いて行きましたが、頭から強い日差しが容赦なく照り付けてきます。持参のペットボトル4本の水はあと1本になってしまいました。黙々と1時間半歩いて、午後1時頃に棚山高原という山の上の台地に出ました。昔、避暑地にしようとしたらしいのですが、今では荒れた雑木林のあちこちに崩れた小屋のような小さな廃墟が残っているばかりです。棚山高原の外れで一休みしました。11.1キロ歩いて来て、ここから先のルートをどうするか考えました。朝出発するときの計画では、この地点までに13時を過ぎていたら東海自然歩道を離脱して玖老勢の集落に出て今日はおしまいにするということにしていました。最後に待っている鳳来寺山への急登を考えると妥当な判断です。


 瀬戸岩からの眺望             蓬莱寺山への登り

 鳳来寺山山頂               鳳来寺奥の院

 とりあえずは玖老勢峠までの標高差300メートルの急激な降りです。その前に瀬戸岩という眺めのいい岩場があったので、そこで写真を撮りました。眼下に玖老勢の集落が見えます。足場をしっかり確保しながら1時間かけて玖老勢峠の道標までたどり着きました。ここから玖老勢に向けての下り道があるはずなのですが見当たりません。12.5キロ地点で、GPSは確かに別れ道があるように示していますが、藪があるばかりです。ここを過ぎれば鳳来寺山までの急坂を登るしかありません。少し進んでみましたが標識も別れ道もありません。GPSが示す地点からすこし藪の中に入ってみましたが、急激な降り斜面の沢になっていて危険なので引き返しました。
 時刻は15時を過ぎたのでついに玖老勢へ行くことは諦めました。くたびれた足をだましながら、鳳来寺までの東海自然歩道を突き進むことになりましたが、標高差300メートルの、岩の多い道は「決死の行軍」の雰囲気になってきました。16時45分に鳳来寺山695メートルに登頂、すぐに急激な下りを鳳来寺奥の院への道を下って行きました。持参の水はすでに無くなっていました。昨年の台風の被害にあったのか、大破した奥の院を通り過ぎて進んでいくと、奥の院より少し大きなお堂がありました。そのお堂に有難いことに湧水が引いてありました。頭から水をかぶり、がぶ飲みして座り込んでしまいました。その後もよろよろと歩き続けて、なんとか鳳来寺本堂にたどりついたのは17時30分でした。お寺の駐車場から湯谷温泉の宿に帰り着いたのは午後6時を過ぎていました。今日の歩行距離は15.9キロでしたが、距離以上に厳しい区間でした。大変苦労しましたが、これで東海自然歩道の愛知県部分はほぼ踏破、次回は静岡県に入ります。
 (累計 1031.1キロ/1700)