火事だぁ


      

 5月下旬の夕方のことです。そろそろ「晩御飯の準備でもしようかな」と思っていた頃に、なんとなく外が騒がしい気がして、ベランダから外を見ました。南側も西側も異常なしでしたが、北のベランダに行ってみると、とんでもない情景が目に飛び込んできました。隣のマンションの最上階が燃えているのです。真っ赤な炎と黒煙が噴出していました。私のいる部屋のベランダから直線距離で50メートルほどしか離れていません。今いるところは幸いにも火元の風上にあたるので、火の粉や煙がこちらに流れて来ることは無さそうです。緊急の避難の必要はないと判断しました。ひとまず気持ちが落ち着いてみると、野次馬根性が湧いてきました。これまで私はなんとなくマンションは木造住宅より燃えにくいと思っていたのですが、実際に目の前の黒煙と炎を見ると、その考えは誤りとわかりました。マンションといえどもいったん火がつくと、火と煙の勢いがすごくて、とにかく早く非難しなければ命が危ない状況になるようです。
 消火活動についても認識を新たにしました。実は火事のマンションの道路の向かいは消防署なのです。私の長年「うちは消防署が近いから」と火事については安心していたようなところがありました。ところが現実に消防署の向かいで火事が起こっても、なかなか迅速な消火活動が始まらないのです。猛烈な炎と煙は既に最上階の部屋全体に燃え広がっています。なんだか、水をかけるというよりは燃え尽きるのを待っているような雰囲気でした。幸い隣や下の階への類焼はないようでした。はしご車がやってきて華々しい消火活動が始まるのかと期待していたのに、そういった展開にはなりませんでした。火災は一部屋を焼き尽くして消えたようでした。幸いにも人的被害は無かったそうです。
 いままでなんとなく平和な日常生活を送ってきましたが、2度の震災で震度5を体験して、地震については具体的なイメージはできましたが、火事についてはなんの対策もしていませんでした。今回は幸いにも明るい時間帯に火事になったので周囲の状況は比較的よく把握出来ましたが、これが夜間だとそうはいかないでしょう。風向きも反対方向だったら、火の粉や煙が流れてくるような至近距離でした。当たり前のことですが、いったん火が出たら努めて初期消火に努め、失敗したらいち早く非難することが肝心のようです。そのときの非常用持出しリストも早急に作っておく必要があります。今回のような全焼規模の火災では鎮火したあとも恐ろしいほどの憂鬱な手続きが待っているということに思い至りました。保険会社に連絡しておしまいというわけにはいかないようです。高温で焼けたコンクリートは強度上大丈夫なのでしょうか?共有スペースの修理や水漏れはどの程度の範囲におよんでいるのでしょうか?考えておいた方がいいことが一杯あるようです。「火事は怖い。火の用心」