熊野古道 高野坂

      
  
 
 熊野三山の参詣道、熊野古道には7つの道があります。大阪から陸路南下して紀伊田辺までが紀伊路、田辺から山に入って熊野本宮大社から那智大社経由で熊野速玉大社までの中辺路、高野山から本宮大社を結ぶ高野山町石道と子辺路、吉野から本宮大社に至る大峰奥駈道、勝浦の補陀落山寺から田辺までの海沿いの道大辺路、伊勢神宮から南下して本宮大社に至る伊勢路です。
 10月下旬の晴れた日に、熊野古道の高野坂へ行ってきました。場所は和歌山県の新宮にあります。熊野三山でいえば中辺路の熊野速玉大社から那智大社へ向かう途中です。今の地名でいえば新宮と那智勝浦の中間あたりで、熊野灘に面した海辺の道です。昔、熊野詣が盛んだった頃の巡礼コースは田辺から中辺路を本宮大社まで行き、そこから熊野川を舟で下って速玉大社へ行き、その後那智大社にお参りして大辺路を田辺まで北上するのがポピュラーだったようで、後鳥羽上皇に同行して熊野詣をした歌人藤原定家もこの道を通っています。平安の昔には参詣道が通っていたこのあたりは、海と山が入り組んでいます。現代では自動車用の国道が通ったり、住宅や農業用地として利用されて参詣道は寸断され、稀に高野坂のように昔の姿がそのまま残っているところがある位です。
 国道42号線を南下して新宮市に入る手前に「高野坂」用に駐車場がありますが、草に覆われて入口もよくわからない駐車場で、事前に知っていなければ絶対に見つけられないでしょう。車を止めて「高野坂」まで歩いていきました。近くに「しんぐうけいさつ」と看板のあるビルがぽつんと建っていました。紀伊半島では津波対策で役所、警察、消防署などは高台に移転しているので、びっくりするような場所に警察や消防署があります。警察の前を通って集落を抜けたあたりから、古道の石畳の道が始まりました。熊野灘の海鳴りの音が聞こえます。平安の昔の熊野古道にタイムスリップしたような風景の中を上り下りしながら歩いていきました。古道は距離的には2キロほどしか残っていませんが、雰囲気は十分味わえました。
  

 駐車場まで戻った我々は、次に鳥毛洞窟に向かうことにしました。この聞きなれない名前の洞窟は、白浜の南にある日置川の志原海岸にあります。新宮から車で1時間ほど国道42号線を北上すると志原海岸へ行く細い道があります。進んでいくうちにさらに道が細くなってきて、遂には行き止まりになりました。下のほうから波の音が聞こえてきます。車を降りて、ロープが張ってある細い道を降りていくと海岸に出ました。「ブラタモリ」によく出てくるような景色です。堆積岩の地層が波で削られてできた岩場を歩いていくと、「鳥毛洞窟」にたどり着きます。波で浸食されてできた洞窟です。満潮になると洞窟までの岩場は水没するということですが、幸いにも丁度いい潮加減で、歩いて往復することができました。
 細い道を登って車まで戻り、次は近くにある温泉へ行くことにしました。「リヴァージュスパ・ひきがわ」というホテルで、日帰り入浴も歓迎ということでした。ここの温泉はアルカリ泉で、「入ると肌がつるつるになる」やつです。すぐ近くの白浜温泉とは全く泉質が違います。隣にある椿温泉もこのアルカリ質のつるつる系で、入ると実に気持ちいいのですが、ほんの少し移動しただけでどうしてこんなに泉質が違うのでしょうか?温泉好きの人には大いにお勧めしますが、今のところは近所の人たちが主なお客さんのようです。温泉に入ってすっきりして、帰り道でスーパーに寄ってお惣菜を買って帰り、白浜の家で晩御飯を食べて、この日の「南紀隠れた名所の旅」は終わりました。