千里川のカワセミ
2022年の年が明けるのを待っていたように、世の中はオミクロン株が猛威を振るい始めました。この先どうなっていくのでしょうか。丁度季節は真冬で、家に閉じこもるにはもってこいの季節ではありますが、それにしても気分は滅入ってきます。
コロナ期間中の日課になっている千里川沿いの散歩中、川面をカワセミが飛んでいくのを見ました。10年ぐらい前にブラジル旅行のためにカメラを買って、カワセミを追いかけて写真の練習をしていたことを思いだしました。「そうだ、久しぶりにカワセミを撮ってみるか」と思い、家に帰って長い間放置されていたカメラを取り出しました。山歩きの時はコンパクト・カメラを使っていたので、望遠カメラは久しぶりの出番になりました。正月過ぎの千里川を、これまではひたすら万歩計をにらみながら歩いていたのに、これからはカワセミ・ハンターになって歩くことになります。一口にカワセミを撮るといっても、都会の中を流れる川では、やみくもに歩いてもそう簡単にこの小さい鳥を見つけることはできません。まずは10年前の記憶をたどって、カワセミと出会えそうなところを探すことから始めました。
カワセミの食物は小魚です。千里川には大きな鯉やナマズが泳いでいますが、体長15センチほどのカワセミには大きすぎます。せいぜい5センチぐらいの魚を上空から狙いをつけて水に飛び込んで捕まえるのですが、そのためには様々な条件が揃わなければなりません。まずは小魚の群れがいることです。長年にわたって千里川を見ていると、魚が多い年と、そうでない年があります。カワセミは小魚の群れがいなくなると千里川からどこかへ行ってしまいます。長いことカワセミの姿を見なかったこともあります。コロナ騒ぎの2年前ぐらいから千里川では小魚の群れが増えていました。
次の条件としては上空から水に飛び込んで魚を捕まえるために、待機して狙いを定める場所が必要になります。それには足場になる石や、川に突き出した枝があればいいのですが、そういう場所は限られています。また魚を捕るためにはある程度の水深も必要です。水に飛び込んで魚を嘴に挟み、方向を転換して飛び出すだけのスペースがなければならないということです。改めて、自宅近くの千里川を観察してみるとこの条件に当てはまる場所がありました。川沿いを歩いてみると、青い羽根とオレンジ色の胴体のカワセミが枝にとまっていたり、猛烈なスピードで川面を飛びすぎて行ったりしています。
小魚を鷺が追う
大食漢のカワウ ヌートリア発見 主に草食らしい
カワセミと同じ小魚を狙う大型の鳥たちがいます。鷺とカワウが最大のライバルのようです。これらの鳥たちは川の中で足元に近寄ってくる小魚を一瞬の早業で捕まえて食べています。カワセミの職人芸的な飛び込み作戦と違って効率が段違いにいいようです。ひょいひょいと小魚を挟んでは飲み込んでいます。近くではカワウが水中を潜っては魚を咥えて浮かび上がります。ウは鷺以上の大食漢で、そこら中泳ぎ回って食い散らしています。「みんなで餌を追いかけて大騒ぎ」している場所とは違って、カワセミが漁をする所は大型の鳥たちがいない静かな場所です。
また、撮影場所選定には写真を撮る当方の事情もあります。逆光を避けて、途中に障害物がなく、しかも鳥との距離が近いところが理想的なのですが、中々そう簡単にはいきません。カワセミはせいぜい15センチほどの小さい鳥で、しかも猛スピードで飛ぶので、素人写真でとらえるのはかなりむつかしいのです。どうしても枝にとまっている写真が多くなります。
年明けからカメラを持って千里川を歩くようになりました。自宅から坂道を下って行ったあたりから川下側500メートルぐらいが撮影スポットの条件に適しているようです。実際に観察していると、カワセミが少なくとも同時に2羽飛んでいるのが見えました。雌雄の区別は嘴の色で判別すると本に書いてありましたが、それがわかるほどは近寄れません。川に沿って歩いていると、カワセミが枝にとまったり土手で小魚を狙ったりしている姿を、かなりの確率で見ることができます。どうやら、カワセミはある程度魚を捕れる確率の高いところをマークしていて、そこを巡回しているようです。しばらくの間はじいさんもカメラをぶら下げて「カワセミが魚を咥えて水から飛び出す」シーンを夢見て歩くことにします。