2度目のブラジル 写真集その5
― アマゾン奥地で「お勉強」する ―
今は2021年10月です。新型コロナの大流行が始まってから2年が過ぎました。思いかえしただけでも息が詰まるような生活でした。東海自然歩道からもすっかり遠ざかってしまいました。仕方なく10年前のブラジル旅行記から写真を選び出して皆さんにお見せしているわけです。もう10年たってしまいましたが、写真を見ると当時のアマゾンの風景がよみがえってきます。今回は、アマゾナス州の州都マナウスからさらに奥に入った「マミラウア自然保護区」に滞在したお話です。
私たち3人はパンタナールの大湿原から飛行機でマナウスに飛び、そこで70人乗りのターボプロップ機に乗り換えました。そして1時間飛んで到着したのがテフェという町の空港でした。アマゾン川本流のソリモエス川に面した港町です。テフェの港から10人乗りの大型パワーボートに乗って更に1時間半走り、「マミラウア自然保護区」のウアカリ・ロッジに到着しました。ここは世界自然遺産となっている112万ヘクタールの広さの自然保護区で、ウアカリ・ロッジは唯一の宿泊施設です。ここで泊まるには3泊4日の学習プログラムに参加する必要があり、私たちも俄か自然科学研究者になったわけです。
このウアカリ・ロッジはソリモエス川の支流マミラウア川に作られた水上施設で、建物はフローティング・ハウスとしてもかなり巨大な二階建ての母屋と5つのロッジが桟橋で繋がっています。一つのロッジに2部屋あって、20人が宿泊可能です。今回は私たち3人と他に4人の外国人が参加しました。最初に「使用言語はポルトガル語、スペイン語、英語、フランス語、ドイツ語のどれでもいい」と言われて、私たちは無難に英語を選択しました。先生たちは全部の言語に精通しているようでした。
母屋の桟橋に立って迎えてくれたのは、この保護区の研究者兼先生で、なんでもよく知っていました。母屋には事務所、食堂、教室があります。宿泊用のロッジとは浮桟橋で繋がっています。
3泊したロッジの内部です。ベッドには蚊帳が吊られていました。本当に蚊が多かったです。水の上に浮かんでいるのですから当然なのでしょうが、環境保護のために極力自然に近い生活をしているので、エアコン、インターネット、テレビは無しで、自家発電の電灯のみ、シャワーはありますがお湯は出ませんでした。外にはハンモックが吊ってありました。生活で困ったことは、湿度が高くて洗濯物がまるで乾かないことでした。
雨季が終わって晴れ上がるとアマゾンはこんな景色になります。大きな空と水とその間に見える緑の線がジャングル、時折積乱雲から土砂降りの雨が落ちてきます。半年で水位は、この辺りでは写真のような状態から20メートルぐらい下がります。この時は年間最高水位から2メートルぐらい下がったところでした。ジャングルは水に浸かって浸水林となっていました。
乾期であればジャングルの中をトレッキングするのですが、この時期はカヌーで浸水林を進んでいきます。どうやって方角がわかるのか謎でしたが、2時間以上迷うことなく進んで、無事帰ってきました。遠くからホエザルの大きな声が聞こえてきました。樹上生活ができる生き物以外は高台に避難しているのでしょう。水中では多種類の魚と、それを追ってボト(ピンクイルカ)が入って来るということでした。カヌーに乗っているときに雨が降ってきました。土砂降りの雨は一度も弱まることなく10時間降り続きました。身をもって.アマゾンの自然を体験しました。勿論ずぶぬれでカヌーにたまった水を搔い出しながら帰ってきました。
ソリモエス川に現れた川イルカ、こちらは海にいるイルカと同じ色をしています。浸水林には入ってこないそうです。ボトはおでこが出ているので川イルカとの違いははっきり分かります。体は腹側がピンク色です。この写真は3回目に行ったときにネグロ川で餌付けをしているピンクイルカを撮ったものです。
私たちは3泊4日の滞在中に、ピンク・イルカのボトの生態を教室で勉強して、翌日には近くにあるボトの研究施設を見学したり、ボートに乗って原住民の集落を訪問したり、カヌーで浸水林に分け入ったりと、まじめに忙しい生活を送りました。オオオニバスは大人が乗るのはちょっと無理なようでした。ウアカリ・ロッジ周辺には多種類の鳥たちが飛び交っていました。この「ウアカリ」というのは珍しい猿の名前のようです。写真で見ると「酔っぱらった白いひげの爺さん」のような顔をしています。うまくいくと出会えるかなとカヌーから探したのですが駄目でした。普通の猿は何種類か見ることができました。私たちは四日後に、生乾きの洗濯物をバッグに詰め込んでアマゾン奥地からマナウスに帰りました。今回はここで一旦サンパウロに帰って休養しました。あとはベレンでゴルフをするという大事な日程が残っています。