遊戯王能力デュエル小説

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〜第一話〜

 日も傾きはじめた夕方、二人の少年が公園で決闘していた。
決闘と書いてデュエル。遊戯王OCG(オフィシャルカードゲーム)での対戦の公称である。
「いくよ、 メインフェイズ1、ジャンク・シンクロンを通常召喚!効果で、墓地からドッペル・ウォリアーを守備表示で特殊召喚!」
二人の間に、メガネをかけた子供のような見た目のロボット兵士が出現した。
これがわざわざ外でカードゲームをしている理由。
デュエルディスクという装置でカードの絵を3D映像化しながら対戦しているのだ。
デュエルディスクは、お掃除ロボットのル○バくらいの円盤型の機械に、映像化したいカードを差し込む板がついており、対戦する二人がそれぞれ腕に装着して使うものである。
この装置できたことでカードゲームのエンターテインメント性が高まり、昨今はプロリーグまで存在する人気競技となっている。
ちなみに今ロボット兵士を召喚したのは、近所の中学校1年生、二本剣一(フタモト ケンイチ)。
「おっと、ジャンク・シンクロンの能力発動にチェーンして、手札からエフェクト・ヴェーラーの効果発動!ドッペル・ウォリアーは召喚させないぜ!」
そう言って応じたのは、剣一と同級生の幼馴染、岬遊章(ミサキ ユウショウ)。
遊章が手札から天使のような絵がかかれたカードをデュエルディスクの墓地(セメタリー)部分に差し込むと、剣一の召喚したロボット兵士の効果で現れかけていたモンスターがかき消された。
「げ、トラップがないと思って油断しちゃったよ。ま、気を取り直して、不死武士を反転召喚、ジャンク・シンクロン でチューニング!出てこい、ゴヨウ・ガーディアン!!」
落ち武者とロボット兵が同調して混ざり合い、異空間から歌舞伎役者のような見た目のモンスターが召喚された。
剣一の主力の一枚、ゴヨウ・ガーディアンである。
「攻撃力2800・・・飛ばすなあ、剣一。チェーンはないぜ」
そう言って、遊章が肩を竦めてみせると、剣一はニヤリと笑って宣言した。
「よーし、そのセットモンスターもらっとこうかな。バトルフェイズ、ゴヨウ・ガーディアンでセットモンスターにアタック! ゴヨウ・ラリアット!!」
ラリアット、と言いながら歌舞伎役者風のモンスターが十手を投げつけ、遊章の伏せていたモンスターカードを砕き、破壊した。
しかし、モンスターを破壊されたはずの遊章は余裕の笑みを浮かべている。
「破壊されたモンスターは、見習い魔術師だぜ。俺は、執念深き老魔術師をデッキからモンスターゾーンにセットする」
モンスターが破壊された場所に、再びカードが伏せられた。
見習い魔術師は、戦闘破壊された時にレベル2以下の魔法使い族モンスターをデッキから呼び出す効果があるのだ。
「ちぇ、見習いのほうだったか。まあいいや、見習い魔術師を、僕のモンスターゾーンに守備表示で特殊召喚するよ」
 剣一がそう宣言すると、破壊された見習い魔術師が剣一のフィールドに現れた。
「いいのか? そいつを俺が戦闘破壊したら、俺の場にモンスターが召喚されるぞ」
「いいさ、遊章の墓地にレベル2を残しとくと、ロクなことにならないからね」
そう言うと剣一は、カードを1枚伏せ、ターンを終了した。

ターン
遊章 LP8000 手札4枚
場:セットモンスター1(執念深き老魔術師
剣一 LP8000 手札3枚
場:ゴヨウ・ガーディアン 攻2800
  見習い魔術師 守800

「よっしゃ、俺のターン、ドロー!」
遊章が腕につけたデュエルディスクから元気よくカードを引く。
そのカードを見て、にやり、と笑う遊章。 「行くぞ、剣一。執念深き老魔術師を反転召喚」
その宣言と共に、遊章の場に伏せられていたモンスターカードが裏返り、血走った目とボサボサ髪の、いかにも誰かを恨んでいそうな老婆が姿を現した。
攻撃力はたったの450だが、反転したときに相手のモンスターを1体破壊できる、強力な効果を持ったモンスターだ。
「破壊するのは見習い魔術師だぜ!」
「え、そっち?」
剣一が疑問の声を上げる。見習い魔術師は守備力800でゴヨウ・ガーディアンの足元にも及ばない。
しかも、効果で破壊されてもデッキからモンスターを呼ぶ効果は発動しない。
「なんだよ、剣一。さっきはわかったようなこと言っといて。レベル2が墓地にいる俺は、すごいんだろ!」
そう言って遊章が召喚したのは、ジャンク・シンクロン
さっき剣一も使用した、召喚時に墓地からレベル2以下のモンスターを守備表示で特殊召喚できる、ロボット兵士だ。
レベル2のモンスターである見習い魔術師が、再び遊章のフィールドに現れる。
「あっちゃー、やっぱり出たよ」
剣一の嘆きを聞き流し、さらに遊章がデュエルディスクを操作する。<br> 「ジャンク・シンクロンと、魔術師2体をチューニング!出てこい、 ブラック・ローズ・ドラゴン!」
遊章の場に、薔薇の花のように見える大仰な翼を持った赤い竜が出現した。
その攻撃力は2400。ゴヨウ・ガーディアンには及ばないが、狙いはその効果にある。
ブラック・ローズ・ドラゴンの効果発動!フィールド上のカードすべてを破壊するぜ!」
「そんな簡単に、リセットさせないよ! リバースカード発動、神の警告!」 剣一が、伏せていた罠カードを発動する。
LP2000を払い、モンスターの召喚を無効にできる強力なカードだ。
無効にされては、ブラック・ローズ・ドラゴンの効果も発動できない。
竜は苦悶の表情を浮かべ、薔薇の翼が砕け散る。

剣一 LP8000 - 2000 = 6000

「さあ、どうするんだい、遊章。もう場に何もいないし、召喚もできないよ!」
と、剣一が勝ち誇る。そう、遊章はすでに1度ジャンク・シンクロンを召喚したため、このターンの通常召喚はできない。 「そんな風に勝ち誇るのは死亡フラグだぜ、剣一。俺は、手札からブラック・ホールを発動!」
そう言って遊章がデュエルディスクにカードを差し込むと、公園のど真ん中に真っ黒な渦ができ始めた。 最初は小さかった渦がどんどん大きくなり、ゴヨウ・ガーディアンを飲み込んでしまう。
「ぼ、僕のゴヨウ・ガーディアンが!」
「さらに、俺は通常召喚はできないが、特殊召喚ならいくらでもできるぜ。発動、死者蘇生!」
そう言って発動した魔法カードは、墓地にいるモンスターを元々の持ち主に関係なく自分の場に呼び出せる、遊戯王の初期からある強力カードだ。
ブラックホールと共に強力すぎてデッキに1枚しか入れられないそのカードにより、剣一の墓地から遊章の場に、ゴヨウ・ガーディアンが復活した。
「そ、そんなぁ」
たじろぐ剣一に、遊章が追い打ちをかける。 「さ、ら、に、もう一枚! ミラクルシンクロフュージョンを発動」
遊章が魔法カードを発動すると、墓地にあったロボット兵士と薔薇の翼を持ったドラゴンが混ざり合い、ドラゴンの装甲をまとった騎士が出現した。
「俺の切り札、波動竜騎士 ドラゴエクティスと、剣一のゴヨウで攻撃、スパイラル・ジャベリン、アンド、ゴヨウ・ラリアットー!」
竜騎士の攻撃力は3200。ゴヨウ・ガーディアンの2800と合わせて6000点のダメージだ。
デュエルディスクの機能で、剣一の体に衝撃が加わる。
「うわーーー!!!」

剣一 LP6000 - 3200 - 2800 = 0
遊章 WIN


「あーあ、もう、制限カードダブルで引いてるとか、反則だよ」
口をへの字に曲げて、剣一がそんな愚痴を言うと、遊章が言い返す。
「お前だって、最初の調律でドッペル落とすとか、積み込んでんじゃないかとヒヤヒヤしたね、俺は!」
「なんだと!」
「やるか!」
2人の言い合いが殴り合いに発展しそうになったところで、パン、パンと手を鳴らす音が割って入る。
「はい、はい、2人とも熱くなりすぎ。」
そう言ってベンチから立ち上がったのは、山久永香(ヤマヒサ エイカ)。
2人の同級生の女の子で、腕にはピンクのデュエルディスクをはめている。
遊章と剣一のデュエル仲間だ。
「剣一、あんた負けたんだからブーブー言わないで引っ込んでなさい。次は私の番ね」
「え、でも今1勝1敗で‥」
「ま、け、た、で、しょ!」
ポニーテールをサッとかき上げて、じと目で剣一を睨む永香。剣一はそれ以上何も言わずにとぼとぼとベンチに座った。
それを見て満足げにうなずくと、永香はサッと遊章に向き直り、笑顔で宣言した。
「遊章、私はラッキーじゃ倒せないからね。覚悟しなさい」
「だから、ラッキーじゃねーよ!」
すぐさま言い返した遊章だが、デュエルの準備を始めており、もうケンカをする気はないようだ。
遊章と永香が向かい合い、いざデュエルを始めようとしたその時だった。
「オホン!」
と、公園の入口の方から大きな咳払いが聞こえたのは。
今時そんなわざとらしい咳払いがあるのだろうか。逆に驚いて、3人が公園の入口を見ると、スーツ姿の老人が立っていた。 「君達、若いのにすごいデュエルをするんじゃなあ。うん、実に素晴らしい」
そんな事を言いながら、老人は近づいてくる。
「爺さん、誰だ?」
物怖じしない遊章がそう尋ねると、老人はカードを懐からカードを3枚取り出して、こう告げた。
「ワシのことはどうでも良い。君たち、このカードを使って、大会に出て見ないかの?」
それが、始まりだった。


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