あなたの知らない八雲ツアー2019




2019年4月29日、八雲鉱山跡を巡る、探索ガイドツアーを開催。
今回は多数の渡渉、ルートなき登攀が多いため、
事前に了解の上、数名に参加頂いた。 鉱床図

まずは下流の温泉施設に集合。
装備を整え簡単なミーティングの後、
元鉱山事務所付近のこの橋からスタートする。 出発


前半戦はウェイダーを用いての川渡りが中心となる。
元は 遊楽部鉱山 として安永年間に金・銀・鉛が採掘されたが、
正式な鉱山としては、大正5年〜昭和44年まで硫マンガン鉱を中心に開発された。 渡渉


最初の遺構はこの長大なトラスの廃橋である。
万歳坑からの鉱石積出用の軌道跡で、
土木構造物に興味のある参加者は興奮気味だ。 トラス橋




トラス橋の内部に入り、
鋼材やその幾何学的な様子を観察する参加者。
かつての形状が想像できないほど、変形している。 トラス橋


水没しながらひたすら鉛川を遡る。
途中にはレイルやピアの架台、石垣など、
連続して遺構が残存する。 渡渉


1時間程度の遡上で川から上がる。
橋台や腐食した鋼材の残存する付近で、
全員ウェイダーを脱いで、登山靴に履き替える。 アバット



付近の露頭が見えると鉱石採掘に余念がない参加者もいる。
本格的なロックピックハンマーを持参の上、
鉱石を割って内部組織を観察する。 マウスon ロックピックハンマー


鉱床は 「方鉛鉱」鉛の鉱石で立方体・6面体などの破断面を持つ「閃亜鉛鉱」亜鉛の鉱石で花崗岩と石灰岩の接触帯などに産出 を含む菱マンガン鉱脈で構成される熱水性鉱脈鉱床。
つまり熱水となった地下水が、岩石から鉱物を溶かし込み、
岩盤の割れ目伝いに移動しつつ、色々な鉱物を沈殿、熱水鉱脈を作ったものだ。 探索




河床には多数のレイルが埋没している。
どれも6kg級のか細いものだが、
引き抜きに挑戦しても、それはびくともしない。 レイル


更に遺構を目指して川を遡る。
参加者同士が協力しての渡渉だ。
上流には大きな遺構が見える。 渡渉

ここはかつての運搬軌道の廃線跡だ。
鉛川を跨ぐ廃橋が残る。
しばし見上げる参加者たち。 軌道跡

標高300mを超えると一気に鉛川の再上流域に差し掛かる。
ここからは更にハードルートとなるが、この先に目指す遺構はある。
参加者たちは健脚で遅れることなく登攀する。 最上流域


更に標高を稼ぎ河床を後にする。
鉱山採掘中に温泉が湧出し、
それは現在でも営業する下流の温泉宿となっている。 登攀

そして到達したのは、3連並ぶ焙焼炉の廃祉だ。
マンガンの品質向上のため一定時間鉱石に加温する、
その施設跡だ。 焙焼炉


今はメルヘンチックな森の遺構だ。
マンガンは電池の+極、脱酸・脱硫材、
そして重要な合金元素としてその利用価値は高い。 焙焼炉


焙焼炉内から上部を見上げると、
そこは耐火煉瓦が器用に組まれている。
800℃で70時間、これが品質向上の工程である。 マウスon 焙焼炉



焙焼炉の対面は開けたズリ山で、
その奥には滝がある。
ここなら鉱石が多数あるかもしれない。 滝



早速、焙焼炉の前で鉱石採集である。
地下の熱水の通り道は、鉱物が沈殿するに従いその間隔は狭まる。
詰まったところの下部では、二酸化炭素のガス圧が高まる。 鉱石




鉱石は閃亜鉛鉱のようだ。
高まったガス圧により爆発的な割れ目が存在し、
それはやがて、鉱脈の縞模様となる。 閃亜鉛鉱


広大なズリ山付近。
ここではしばし自由時間だ。
鉱石採集、写真撮影、上部探索と思い思いに過ごす。 広大


大きなズリ山で昼食だ。
各自ゆっくり休憩する。
滝の音と鳥の声、虫の音しか聞こえない。 昼食




昼食後、別沢を遡り到達したのは坑口だ。
鉱床図からこれは『大切坑』である。
内部を確認してみよう。 坑口


坑道内はすぐに埋没している。
以前は水没した坑道が続いていたが、それより現在は、
炭酸のような不快な臭気があり、即撤退だ。 大切坑



暫く笹薮を漕いでの登攀となる。
辛うじての鉱山道路も
ここからは完全廃道だ。 笹薮


藪を抜けた平場の先には巨大遺構、精錬所跡だ。
ここが最終の目的地となる。
精錬所の最上段を目指してみよう。 巨大遺構


精錬所は山の斜面に段々と建設されたカスケード型だ。
コンクリートは劣化している。
上部を目指す。 遺跡


施設の中段には丸い水槽がある。
かなり深く足元に要注意だ。
水面には何かが動いている。 散策


どうやら動いているのはサンショウウオのようだ。
しかも卵が多数あり、
それらを守るように泳いでいる。 マウスon サンショウウオ


精錬所の登りは藪との格闘だ。
向かって生える笹薮をかき分けて、
登攀することとなる。 探索


精錬所内部に入るポイントがある。
軌道が敷かれ、奥に続いている。
潜ってみよう。 坑道


精錬所内の通路はやがて坑道に直結する。
支保工も残存しているが、
曲がり角で埋没している。 坑道


更に精錬所を登り、
そのピークを目指す。
付近は荒れが酷くなってきた。 精錬所


その頂に立つ。
閉山からおよそ50年。
この鉱山跡には多くの施設が今も残存したままだ。 頂上


参加の皆様、お疲れ様でした。
また、大変ありがとうございました。









参加者
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