燃えるヤマ
かつて上砂川の街には国鉄の運炭支線があった。
現在はほとんどレイルは撤去され、
いくつかの駅跡の保存に留まっている。
かつての第一坑には三角屋根の竪坑があり、
目立った存在だった。
2003年に解体され、現在は密閉跡しか残存しない。
閉山間もない頃に、
内部を見学させていただいたが、
巨大なプーリーとモーターが印象的だった。
ズリ山に向かって山道を歩く。
最近は人は入っていないようだ。
しばらく進むと尾根は開け、
開放的な空き地に腐食した機械がある。
これはタンクだろうか。
エア抜きのフランジとゲートバルブが付いている。
大きな施設の無い開けた丘を歩く。
少し進むと小さな山が見えた。
ズリ山だ。
人工的な山はとんがっており
ピラミッドか富士のようにシンメトリーだ。
ズリ山に接近する。
頂上には何か遺構がある。
さぁ、登ってみよう。
ズリ山の裾野は大規模に治山され、
原野と化している。
付近には炭塊が落ちている。
いよいよ標高270Mの山に登る。
ズリ山の角度はそこそこ急で、
所々で手も使う。
トロッコのレイルらしき遺構が、
斜面に横たわる。
登るにつれ、コールタールが焼けるような臭いがあたりを覆う。
よく見ると、斜面から煙が上がっている!
斜面の土壌の奥から煙が上がる。
内部のズリが自然発火しているのだ。
煙の間を縫って斜面を登る。
気温は急上昇し、
やま全体がサウナのようだ。
噴気孔は地割れしており、
とめどなく煙が上がる。
穴の内部には虫が飛び込んで死んでいる。
斜面には朽ちた木々と煙、
そして廃材の遺構が散らばる。
どんどん登る。
転げたトロッコが朽ちている。
腐食はしているが、現状をとどめている。
トロッコは何連もあったに違いない。
一連でも残存しているのはすごい。
かなり登ってきた。
煙は突然止まったり、噴出したりしている。
ズリ山の尾根にはトロッコの軌道跡らしき道があり、
その延長には、竪坑が見える。
枕木と犬釘が残る。
頂上に向かい、遺構が増加してきた。
軌道跡もはっきりしてきた。
使用されなくなって20年以上が経過する。
突然、エゾジカの群れと遭遇した。
警戒の口笛を鳴らして逃げていく。
エゾジカも煙を避けて、
ズリ山を移動する。
いよいよ、ほぼ頂上に達した。
はたして、頂上の遺構は・・・。
山頂には大きな架台がある。
廃祉に接近する。
これはトロッコを牽引する索道の基点だ。
ようやくズリ山の頂上に登り詰めた。
遺構の突端に立ち、
街を見下ろす。
もう一方のプーリー側の突端。
意外と小さなプーリーだ。
先端まで歩いてみよう。
架台は揺れることも無く、
がっしりしている。
標高270Mの突端に立つ。
太いアングルとH鋼で組まれた、
滑車部分。
電気系統はすべて取り除かれている。
荒廃した斜面にホースが残る。
冬にはその地温で一部雪融けし、
まだらのコントラストを描く。
埋もれたレイル。
眺めのいいズリ山登頂は爽快だった。
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