竜山鉱山跡 探検: 北の細道 竜山鉱業所跡

竜山鉱山の重さを忘れた鉱石たち



岡山県久米南町

 浮遊選鉱の出現に対して輝かしい特許保持者はかつて3名存在した。
第一の特許保持者は1860年イギリスのウイリアム氏である。
彼は油と水の層に鉱物と脈石が分離することを発見した。
これは現在の泡を使った浮遊選鉱法とは異なるものの、鉱物の『濡れ』の差を利用したものだ。

第二の特許保持者はアメリカのヒゼキヤ氏でこれは1885年となる。
これも泡というよりは物質の『濡れ』を利用した表面張力による分離であった。

第三の保持者はアメリカのエバーソン夫人となる。
こちらも1885年、第二の発見から2か月後となる。
経緯は兄の分析室に送る鉱石袋が油が染みて汚れていたため彼女が洗濯を行ったことに起因する。
その際に洗濯槽の中で鉱物の微粒子が水の表面にキラキラと浮くことから、
少量の酸を用いて油被した鉱物を浮かせることに成功したのだ。

このいかにも女性的な発見は発表から10年近く注目されることはなかったが、
やがて多油による選別から気泡を利用した方法へと進化する。

他の文献においても坑夫の妻が夫の作業着を洗濯中に浮遊選鉱を発見したような記述がみられるが、
事実はこのエバーソン夫人の一件であり、
坑夫の妻の事例は後から尾びれがついたものだと思われる。


今回紹介の昭和鉱業(株)竜山鉱業所は岡山県町吉備高原の東方にあり、
標高300m付近の準平原地帯に存在する。
鉱種は金・銀・銅・鉛・亜鉛・硫化鉄鉱となり、硫化鉄鉱とは鉄と硫黄が化合した鉱物の総称で、
硫酸の原料となる黄鉄鉱や分解しやすい白鉄鉱と、二酸化硫黄の原料となり磁性を持つ磁硫鉄鉱がある。

明治年間から採掘は行われていたようだが、数度の休山を繰り返した後、
昭和28年に最盛期を迎え、当時の従業員数は75名、
銅品位平均8%、月200〜300t出鉱していた。

正確な閉山時期は明確でないが、
昭和41年3月末までの坑道総延長は5,550mに及ぶ。

探索の焦点は、ここに静かに佇む選鉱場である。
そこは、鉱石が重力を忘れ、泡に託されて選ばれた場所。
近隣鉱山との関係性をも紐解きながら、浮遊選鉱を垣間見る探索へとご案内する。

浮遊選鉱・大熊坑・勝光山鉱業・・・



浮遊選鉱所
浮遊選鉱所





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