六黒見鉱山跡 探検: 北の細道 六黒見鉱山跡

六黒見鉱山でお留山に登る



岩手県釜石市


 『遠野物語』は、民俗学者・柳田國男が1910年に発表した説話集である。
これは北上山地の内陸部を中心とした岩手県遠野地方に伝わる伝承や伝説を、
民話として口承から編纂したものだ。

全部で119話からなり、河童や天狗、神隠しなどの不可思議な現象を、
遠野の自然や風土と共に描いた民俗学的にも非常に価値の高い作品である。
芥川龍之介なども本作に影響を受けたと言われ、
100年以上経過した今でも、民俗学だけでなく地誌などの分野でも研究対象となされている。

奇談と怪談が混合し、そこに民間信仰の内容がリアルに描かれ、
不思議な世界と東北の原風景が交差しつつ、
遠野に暮らす人々の素朴さや勤勉さが如実に描かれている。

その44話目には、ある山の金坑の話がある。
この鉱山の下請けとして炭焼きで生計を立てる人が主人公だ。
彼が山で笛を吹いていると、年老いて霊力をもった猿が現れる。
これは経立(ふったち)と呼ばれる妖怪で、
寿命以上の年を生きて化け物になった猿のことである。

そしてこの金坑というのが今回紹介の六黒見鉱山である。

六黒見金山は寛政12年(1800)発見、天保年間は南部藩のお留山となる。
【御留(おとめ)山】というのは、 林産物や動物を取ることを禁止された山のことで、
この山は藩の管轄となる。

明治39年(1906)には久原鉱業の所有となり、企業化がなされた。
明治43年(1910)11月、日本鉱業株式会社による買収の後、低品位のため温存されていた。
昭和10年(1935)からは最盛期を迎え、その後昭和18年4月に金山整備令で休山となる。
昭和24年(1949)に再興し、昭和35年(1960)頃休山したとされる。

鉱山の呼び名は『ログロミ』、『ムクロミ』と『モグロミ』そして『ロクロミ』が混在している。
釜石圖幅地質説明書(M36/1903)では『ログロミ』鉱山、
鉱山名鑑 (S16/1941)と日本鉱業株式会社五十年史(S32/1957)では『ムクロミ』鉱山、
遠野ことば : 遠野民族資料(S49/1974)では『モグロミ』鉱山である。
そして金礦と金礦床 (S8/1933)、新編鉱床地質学 (S12/1937)、
日本鉱産誌 B 第1-a (S30/1955)では『ロクロミ』鉱山となる。
恐らく正しくは『ムクロミ』鉱山だと思われるが、確証まで至らないのもそれはそれで面白い。


橋脚・坑道・産金奨励・・・



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