選鉱、平和への道

京丹波町は山陰街道沿いの交通の要衝として繁栄した。
平成17年に付近の丹波町・瑞穂町・和知町が合併して京丹波町となった。 京丹波町


京都らしい杉林の林道を進む。
目指す標高は270m付近、
周囲に注意しながら進む。 杉林


やがて林道脇に水槽のような遺構がある。
選鉱用の水槽にしては小さく、周囲を探索してみる。 水槽


その奥には選鉱施設の遺構がある。
ギヤや配管が散乱し、RC製の基礎も残る。 選鉱場


坑道は上向階段掘で50馬力/100馬力の圧縮機による機械掘りであった。
出鉱は昭和26年11〜12月で粗鉱 2,124t 精鉱48,013tという成果、
労務者数は42名(内9名女子)であった ギヤ


タングステン鉱の選鉱はまず各坑道から搬出された粗鉱を200o以下に大割を行う。
それをブレーキクラッシャに投入して75mm以下に砕く。 遺構


ブレーキクラッシャは中心が偏ったホイールが回転し、
スイングジョーと呼ばれる板が反復することにより、
繰り返し挟み込む作用で鉱石を磨り潰す機械だ。 ブレーキクラッシャ


混入した鉄片をマグネットで除去し、
50mm角の斜格子で50mm前後を境に分級する。 鋼材


全てを40mm以下に粒度調整した後、
コーンクラッシャ及びトロンメルを用いて20mm以下に分粒する。 石垣


トロンメルは円筒状のメッシュ構造で、回転しながら内部の鉱石を分粒する。
粉は網目を通り抜け早くに落下、塊はトロンメル内部に残存、
回転速度や円筒の傾斜、網目のサイズによって鉱石をより分けることができる。 トロンメル


コーンクラッシャーは偏心回転しながら上下動するマントルという傘状の刃具と、
コーンケーブに挟まれた鉱石(緑)を衝撃を用いて磨り潰す装置だ。 コーンクラッシャー


和知鉱山での選鉱方法は
同じ大きさの粒の重さの違いを利用した、
比重選鉱法が利用された。 遺構


一般に鉱物が重く、不要な脈石は軽い。
この重量差を利用して振動や水流で早くに流れるものと、
残るものを分離するのが比重選鉱法だ。 水槽


和知鉱山での比重選鉱はテーブル選鉱が用いられ、
ジェームステーブル比重選鉱機3台と
ウィルフレーテーブル比重選鉱機3台が利用された。 プーリー


石垣の残る森を進む。
メインとなる選鉱場を目指す。 石垣


杜の深くには一升瓶が散乱している。
周辺には鉱員社宅のようなものがあったのかもしれない。 一升瓶


周辺には住戸跡と思われる平場がある。
もしかしたら鉱山事務所のような建屋だったかもしれない。 住居跡


これは五右衛門風呂かもしれない。
豊臣秀吉が石川五右衛門を釜茹での刑にしたという俗説からきているという。 五右衛門風呂


苔むした瓦のような部材が大量に保管してある。
資材なのか、建築用の部材なのか、
詳細はわからない 瓦


山中深くに進むとズリの散らばる一画がある。
これは恐らく選鉱施設が近いと思われる。 ズリ


やがて選鉱施設に到達した。
巾は60m程度で斜面に段々に配置される、
カスケード方式の選鉱所だ。 選鉱所


選鉱所では坑道から採掘した鉱石を破砕。
細かくして粒の大きさを揃える。
その粒から不要部分と鉱物部分をより分けるのである。 選鉱所


比重選鉱では尾鉱(不要な鉱石)を含めて
浮遊選鉱でも回収できなかったごく微量の鉱物をも分離できる。
ウィルフレーテーブル比重選鉱機などのテーブル選鉱機が代表例だ。 配管


テーブル選鉱機(ウィルフレーテーブル比重選鉱機)は
3〜5°の勾配のついた盤を長手方向に振動しながら、
短手方向に水を流す。 基礎


長手方向にリッフルという桟が付いており、
テーブル全体が下流方向に前進し、急激に後退する振動を繰り返す。
この動きにより慣性が発生して泥状にした鉱石は下流方向に進んでいく。 ウィルフレーテーブル


その振動方向と直角に給水すると、軽い脈石が水で流されて桟の上に残らず下部に堆積する。
比重の大きな鉱物は水に流されず、
振動で長手下流に移動し、これを精鉱として集める。 3段目


それに対しジェームステーブル比重選鉱機は精鉱及び細かい粒の選鉱に使用される。
構造はウィルフレーテーブルと同様で分級粒の大きさで選り分けた後に適用され、
ウィルフレーテーブルよりも小さい粒度のものがジェームスにて選別される。 穴


他の選鉱方法としては重液選鉱、浮遊選鉱、静電選鉱、磁力選鉱などがある。
重液選鉱は6mm以下の粒に使用し、
重液(比重の重い液)内で浮鉱と沈鉱に分離させて回収する。 5段目


浮遊選鉱は水槽内に水をはじく薬剤を塗布した鉱石を投入し、
細かな泡と共に撹拌、泡と付着しやすい鉱物が浮き上がり
尾鉱が沈降することで分離させる。
銅/硫化鉄に分類後、タングステンと尾鉱に分離させる。 最上段


静電選鉱は電気伝導性が鉱物ごとに異なることを利用して、
電場により陰極に集まる鉱石を回収する。
100メッシュ程度の細かな粉末を
静電選鉱機にかけて錫/硫化鉄と灰重石鉱を分離する。 遺構


磁力選鉱は磁選機と呼ばれる装置を用い、回転する電磁石によって鉱物を分離する装置だ。
投入する鉱物が溶液にて粘土状であれば湿式、
乾燥していれば乾式と大別される。 貯鉱舎


かつては電球や真空管、工具などの特殊鋼の材料、
そして電気接点、耐熱合金などと利用価値の広いタングステンは当時急激に需要が増し、
低品位の不純物の多い鉱石からでも、軍需目的として純度の高い製品が要求された。 ロッドミル



その純化製錬のための技術は第二次大戦に向かい、
軍需目的として15,000種の用途に利用されたという。
ここで元素記号Wのタングステンは軍用金属との呼び声が高くなる。 施設


しかし多種多様に使われるタングステンは
やがて平和利用され、『軍用金属W』の悪名を返上することとなる。 基礎






戻る

鉱山
鉱山

トップページへ