ウランの産出
坑口の覆工はコンクリートで覆われているが、
その奥はすぐに素掘りとなる。
内部は漆黒の坑道が続いている。
素掘り区間に入ると足元にはレールが残る。
軌間は610o、
レールは9sf級のようだ。
坑道内には水槽のような遺構もある。
坑内排水を直接坑外へ排水できない場合に、
一度、排水を中継槽に溜めそこから再び坑外へ送る。
しばらく進むと坑内分岐@だ。
左は同レベルでの素掘り坑道、
中央はコンクリート製の小坑道、右は大きく下っている。
中央の坑道は狭く、幅は人一人分しかない。
恐らく火薬庫や資材庫に接続するようだ。
中央から進んでみる。
やがて中央の坑道は少し太くなり、
右にカーブしていく。
電気関係の配管が壁に沿う。
左手には電球が並ぶ棚がある。
坑内の予備電球を保管したのだろうか。
未だに電球は割れずに残っている。
棚には『カンテラ置き場』の記載がある。
カンテラとは携帯式の手提げランプのことで、
ポルトガル語のcandela(燭台(しょくだい))やオランダ語のkandelaar(燭台)に由来と言われる。
やがてカンテラ置き場の奥で行き止まりとなる。
そこは小部屋になっており
資材が散乱している。
坑内分岐@まで戻り、
左の坑道を進む。
足元のレールは黒い泥に覆われている。
分岐を進むと、
頭上に架線を固定した碍子とその支持木材が残る。
いわば坑内電柱だ。
その先には坑内分岐Aがある。
実は右坑はそこでまた二手に分岐している。
レールを追って右に進む。
坑道内には腐食激しい油さしが残る。
鉱車の車軸や、
機器の回転部に油を差したのだろう。
坑内分岐が残るように、
レールの分岐器も多数残る。
これだけの分岐があれば複雑な坑内軌道だと言える。
分岐Aの右奥はすぐに崩れている。
太い木製の支保工が大きくゆがみ、
大量の土砂に覆われている。
分岐Aに戻り中央の坑道を進む。
RC製の擁壁があり、
おそらく上下に繋がる立坑が存在しそうだ。
その奥に鎮座していたのは斜めに倒れた太い櫓だ。
これは紛れもなく斜坑スキップ装置、
鉱石運搬専用の傾いたエレベータ装置だ。
下部は数十m以上下っているようだ。
ここにはスキップと呼ばれる斜坑専用鉱車(トロッコ)が走る。
遥か頭上に巻上機があるはずだ。
これがスキップ車両だ。(他鉱山資料より抜粋)
坑底に専用の鉱石積み込みビンがあり、
上部坑口付近には専用の鉱石排出装置がある。
これが坑底での積込バンカーと呼ばれる装置の模式図だ。
スキップが定位置に停止すると、
この鉱石積込装置で自動的に適量が積載される。
上部方面をみると、
プーリー(滑車)も残存している。
それにしてもレールの角度が恐ろしい。
スキップは炭鉱の
立坑制御同様に
、
停止位置の管理、区間での最大限の加減速、鉱石の搬入搬出、
それらを1サイクル自動運転で制御していた。
スキップ手前の小さな分岐を左に入る。
こちらの坑道は狭く、
足元にレールもない。
やがてこの坑道はすぐに行き止まりとなる。
試掘のための坑道なのか、
奥には急傾斜の地層が走る。
坑道内の酸素濃度は20.6%と問題ない。
分岐Aまで戻り、
一番左の坑道を進む。
こちらの坑道はレールがはがされたようで、
枕木の跡だけが残る。
かなり古い旧坑なのかもしれない。
付近は上部へと延びる立坑道が縦横に走る。
支保が施され、
相当な高さまで亀裂のような坑道が伸びる。
その奥では更に分岐Bである。
ここはY字に分岐しており、
坑道にしては分岐の角度が急だ。
分岐を右に進むと、
再びレールが敷設してある。
しかもここからは水没だ。
冒頭で述べた測量用の杭が天盤(坑道天井)に残る。
既に坑口から600m程度は進んでいる。
分岐ごとにメモをして道迷いには注意する。
分岐Bまで戻り、
今度は左に進む。
一旦水没は免れる。
その先では再び枝分かれ、分岐Cである。
右側には木製の支保工が残る。
写真ではわかりにくいが坑道全体が青色を帯びている。
左坑の奥にも木製の支保があり、
その奥にはブルーの地底湖が眠る。
相当深い立坑が水没しているようだ。
水面に光を当てると、
それは角度によって青や緑に変化する。
深さを想像するだけで恐ろしい。
分岐Cに戻り、右坑に入っても、
すぐに左坑の地底湖と繋がる。
地底湖脇からは上へ上へと坑道が伸びる。
坑道内部は何層ものレベル別で高さを稼いでいる。
木製の支保工がぶら下がり、
頭上にも足元にも十分注意だ。
相当、上部に進む坑道。
鉱脈に沿って、足元に鉱石を落としながら採掘する、
シュリンケージ採掘法のようだ。
再び延々歩いて最初の分岐@に戻る。
パーティ全員の能力、予備ヘッドランプ等の装備、浮石などへの注意、
入念な準備を行い、万が一の対策の検討も必要だ。
分岐@の右坑、
大きく下り、シーブとレールが残る。
巻上機で鉱車を引き上げていたようだ。
jisによると、明確ではないが、
シーブはワイヤーロープ(金属製)の掛かる溝を持つ円盤のことを呼び、
プーリーはベルトのかかる動力伝達用の円盤のことである。
下る斜坑を進むと坑道脇に木材の格子が残る。
昭和33年2月、地質調査所の確認により、
ウランの存在が認められた。
微量なウランの確認は、岩手県の野田玉川鉱山、
滋賀県五百井鉱山についで、
第三番目の発見となる。
昭和41年閉山。
そのマンガン鉱山跡の、
長時間にわたる坑道探索であった。
戻る