昭和40年9月製 高速凝集沈殿装置


すでに浄水場までの道は壊滅的となり廃道状態だ。
鉱山は昭和50年代まで稼働しており、
浄水場が閉鎖されたのも、その頃と思われる。 アプローチ


80A程度の配管を追って進む。
ビクトリックジョイントで繋がれた配管は、
レシプロポンプによる脈動(振動)があるのかもしれない。 マウスon ビクトリックジョイント


しばらく歩くとやがて浄水場の廃祉に到達する。
建屋は2階建てで
重い水槽を支えるためか柱は太い。 建屋


一階はパイピングギャラリ、つまり配管室だ。
原水、浄水、排水、逆洗、表洗または空気、溢流(あふれた水)および、
ろ過後排水用の各種配管があったはずだ。 配管室


ポンプやゲートバルブの架台だけが残る。
配管の通過したであろう穴は150A(外形165.2o)程度と太い。
既にすべての配管は取り外されている。 ポンプ


配管室の脇には小部屋があり、石灰らしき袋が固まり残る。
飲料水の水質基準でpH値は 5.8〜8.6と決められている。
凝集沈殿装置に消石灰を添加して浄化を早めると同時にpHの調整を行うのである。 石灰


2階に登ると水槽や円形の装置が残存している。
水中に浮遊する不純物を薬剤で固めて沈殿、
砂を通して ろ過する水槽群だ。 水槽


施設の上流部にあるのが円形の高速凝集沈殿装置だ。
アクセレーターと呼ばれるこの装置は川から取水した水に、
凝集剤を混ぜてから緩やかに回転撹拌する。 マウスon アクセレーター


中央の軸をモーターで回転させて水槽内部を撹拌する。
固まった重い汚泥は沈んで下部から排出。
上澄み浄水は水槽上部から溢流(あふれる)して次の ろ過池に向かう。 高速凝集沈殿装置


これが次工程、二連並んだ急速ろ過池だ。
凝集剤と言われる硫酸アルミニウムなどを用い、
これを自然水に加えることで 「フロック」 水中の細かな不純物類が集まって固まり沈殿したもの が形成される。 急速ろ過池


急速ろ過池の底には砂層が60〜70p程度あり(現在は無い)、
処理水を通すことで不純物を除去するのだ。
しかし ろ過砂は長時間 ろ過を続けるとやがて目詰まりを起こす。 ポケットtitle=


目詰まりした ろ過砂は上部そして下部から定期的に洗浄して再利用する。
左右に2本ある桶は『排水桶』と呼ばれるもので、
目詰まりした ろ過砂を底から洗浄する『逆洗』時の排水を均一にするための水路である。


急速ろ過池の ろ過速度は120〜150m/日、
対して緩速(かんそく)ろ過池の場合は3〜6m/日と格段の差がある。
緩速ろ過池は薬剤を使用せず、微生物層を通過させて滅菌する。 ろ過池


これは別施設に残る緩速ろ過池の廃墟だ。
緩速ろ過は8〜24時間かけて原水中の大きな微粒子 (10 μm以上)を沈殿池で沈めた後、
ろ過用の砂層(0.7m〜1.8m程度)を通し、その上には好気性微生物(細菌や藻類)が数mmほど積もっている。 緩速ろ過


河川の自浄作用と同じく、この微生物ろ過膜が菌類の除去を行い、
砂層で微粒子不純物を除去、下部から染み出た浄水を殺菌することとなる。
ヨーロッパ大陸が起源のため、コンチネンタル・フィルターとも呼ばれるが、
不純物が多すぎると微生物ろ過膜が厚くなり、ろ過スピードが極端に落ちることとなる。 コンチネンタルフィルター


この一室は薬品注入装置の小部屋となる。
硫酸アルミニウム(硫酸バンド)は浮遊する不純物の帯電を解き、
反発を解くことで凝集し、塊になった『フロック』は固液分離して沈む。 薬品注入装置


これは内部にフロートがあり、
適量の水と薬剤を混ぜる装置のようだ。
日によって川からの取水は汚れ方が異なる。 注入装置


これは撹拌槽のタンク部分だ。

薬剤は多すぎるとpHの悪化につながり、少ないと効果が薄い。
当日の水質に合わせて、薬剤量は微妙な調整が必要なのだ。 撹拌槽


ソーダ灰と硫酸アルミニウムの袋が散らばる。
ソーダ灰はアルカリ性を高め、凝集効果を助ける薬品であり、
硫酸アルミニウムを加えた水を、ソーダ灰等でpH5〜7にすると、
水酸化アルミニウムのミクロフロックが生じる。 硫酸バンド


壁にはベルがある。
これは塩素ガス漏洩検知警報器の可能性が高い。
消毒用の次亜塩素酸ソーダは酸が添加され、pHが7以下になると塩素ガスが発生する。
その危険を知らせる警報ベルのようだ。 ベル


2階の端には事務室の様な一部屋がある。
人が常駐しその管理を有人で行っていた施設なのだ。
荒廃は激しいが様々な機器が残っている。 事務室


かなり古い冷蔵庫がある。
GENERAL ELECTRIC(ゼネラル・エレクトリック)社製、
アメリカ製のようだ。 冷蔵庫


机の上には試験管や薬剤、
その他化学的な試薬が残っている。
必要な濃度の硫酸バンド溶液での沈降テストなどを行っていたようだ。 試験装置


手書きの記録表が残る。
項目は日付、天気、温度に対し、原水と処理水のpH/濁度/投入バンドとソーダ量、
排泥量などが丁寧に記録してある。 記録


日々変わる水質に対してどれくらいの薬品(凝集剤)を入れると適正なのかを比較し調べる試験、
つまりジャーテストが行われていたのだ。
そのデータ取りを行いバックデータとしていたのだ。 ジャーテスト


朽ちた配電盤も残る。
ポンプや撹拌機、アクセレーターに排泥用スクリューコンベヤなど
浄水場には幾多の電気機器が存在する。 配電盤


足元も多くの機器が散乱し、
また高所、薬剤、そして見えない地下タンクの存在等、
浄水場には幾多の危険が潜んでいるため十分注意して探索を行う。 水槽


時期は異なるが付随する配水池の探索だ。
冒頭で解説した通り、重力で街に浄水を送水するため、
配水池は山上に建設されることが多い。 探索


標高を上げるとやがて見張り所の様な廃祉がある。
配水池の入り口のようだ。
かつては管理された区域だったのだ。 廃墟


時代考証の異なる、
アルミサッシの小屋もある。
この配水池は長期にわたって使用されていたようだ。 小屋


やがて山上の平場に建屋が数棟並ぶ。
配水池に到達だ。
かつてはそこそこの規模の施設だったようだ。 廃墟


配水池は浄水場から送り出された水を一時的に貯留しておく所であり
自然の落差を利用して各家庭に給水するため、
このような標高の高い場所に存在する。


これは地下タンクに通じる換気塔だ。
つまりこの地下には深さ4m程度の地下タンクがあることとなる。
十分注意して歩く。 換気塔


施設の規模はそこそこ大きい。
配水池の高水位と低水位の間の深さのことを有効水深と呼び、
3〜6m程度が標準とされている。 配水池施設


別の場所にも配水池施設が残る。
一か所に集中せず、
点在しているのは防災や火災の懸念からであろう。 階段


止水弁らしき遺構も残る。
配水池に貯留される水量を有効容量と呼び、
その量は計画一日最大給水量の12時間分を標準とする決まりがある。 止水弁


付近には水が溢流したタンク施設も残る。
繁栄した鉱山時代の給水人口から、
およそ1/5となった現在の遺構である。 配水池跡






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廃浄水場
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