標高200m、山中の水瓶



まずは奔別炭鉱幾春別地区から山に入る。
目印は何もなく、古地図から推論した位置に進む。
4月の雪は締まっており、つぼ足でのアタックだ。 アプローチ


古地図にもある神社跡に到達だ。
既に鳥居も向拝のある祠もなく、
あるのは「神社に拝禮いたしませう」の石碑のみだ。 廃神社


その後はクマザサの斜面に沿って延々登ることとなる。
付近はエゾシカの足跡もなく、
この時期の雪崩には十分注意して歩く。 廃道


やがて尾根に出るとコンクリート製の遺構がある。
おそらく浄水設備、水関係の施設跡だ。
炭鉱時代の遺構である。 遺構


遺構は劣化がひどく原型をとどめていない。
元来の用途もわからないほど、
粗悪なコンクリートは激しく爆裂している。 廃祉


コンクリートが鉄筋爆裂する原因は、発生したヒビから空気が混入し、
主成分である水酸化カルシウムが中性の炭酸カルシウムと水へと変化し
元来pH12〜13の強アルカリ性のコンクリートが中性化してアルカリ性を失う。 鉄筋爆裂


中性化が進行したコンクリートは防錆力が落ち、内部の鉄筋の腐食が始まる。
化学変化で発生した水分は凍結し、圧力の発生と錆の進行を早め、
コンクリートの表面剥離や崩落を誘発、鉄筋の膨張と耐荷力低下により崩れ散る。 爆裂


更に登ると斜面に遺構が出現した。
浄水関連ではあるが詳細は不明。
ここからは更に奥の水路を目指す。 倉庫


少し登ると巨大な水槽らしき遺構がある。
バウムジグをはじめとする脈動による水の揺れを利用した選炭機も、
泡を利用した浮遊選鉱もそのズリの沈殿時間がネックとなる。 マウスon バウムジグ


選炭時には良い石炭が浮き上がり粗悪なズリは底へ沈む。
その沈殿時間が長ければ、効率が悪く多大な待ち時間が発生してしまう。
自然沈殿に時間を要す場合は、薬品沈殿の併用も利用される。 水槽


巨大水槽の上部にも建屋があり、これはポンプ室か動力室の様相だ。
同一原炭量で処理時間が短い場合は必然的に処理水量が多くなり、
つまりたくさんの水で大規模に処理することとなる。 二棟


建屋内部には何もなく、ブロック製の簡素な造りだ。
使用後の処理水からシックナーなどで純水を得て、
これも再利用するのは、新しい原水の確保量に制限があるからだ。 ポンプ室


水槽の上流にはポンプ室、その上流にはバルブ室の様な小屋がある。
恐らく更に上部にも水槽があり、
そこからの給水をここのバルブで制御しているのだ。 バルブ室


更に標高を稼ぐ。
再利用する循環水には少なからず微粉炭が残留している。
再利用を繰り返すとその残留濃度は増加する。 登攀


尾根にようやく到達した。
地形図ではここから尾根づたいに300m。
南斜面は 「サンクラスト」太陽熱によって雪面の表面上が溶け再び気温が下がった際に凍ること の危険が高いため留意して歩く。 尾根


尾根沿いのピークには更に巨大な水槽らしき建屋がある。
選炭用水を貯水した水タンクの廃墟だ。
足元には十分注意して接近してみよう。 水槽


再利用する選炭用水の微粉残留濃度が高まると、
いつか処理可能濃度を超え、選炭困難となり、
そうなればその再利用循環水は廃棄することとなる。 タンク


周囲を回ってみたが巨大な配水池施設だ。
実際には選炭休業日ごとに選炭用水を
一定の初期濃度にリセットする方法がとられていた。 配水池

裏側には溢流時の水瓶と配管が残る。
水タンクなので扉は無く、
内部は伺い知れない。 溢流


選炭用水は河川からの原水ではなく、
pHを調整された浄水が使用され、
再使用する処理水を確保する微粉処理施設は選炭場下流に設備される。 配水池


微粉処理施設はシックナーと呼ばれるものが一般的で、
これは遠心力をもって底から微粉炭を回収し、
上部からあふれる清水を回収する。 浄水


水槽内部を上部の小窓から見る。
内部は地面以下の相当な深さがあり、
深い水槽であることがわかる。 水槽内部


各炭鉱の処理水量の統計があり、
それから見ると処理水の中で廃水となるのは15〜35%であり、
用水の確保は選炭工場の能力を左右する黒幕であったのは間違いない。 選炭用水










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配水池
配水池

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