重曹の水源
アプローチから豪雪だ。
昭和47年の閉山に伴い、
旧炭鉱専用水道の市営移管が進められた。
スノーシューを履いて上流を目指す。
左右のスノーシューがぶつからないように、
少し前を開き、足裏が食い込むように歩くのがコツだ。
新雪を突き進む。
我路簡易水道は1日約450m3の浄水を300戸に配水し、
その給水人口は1,057名であった。
かなり登ると左手に遺構が見えてきた。
沸騰後にpH値が8.6以上に上昇するような水で炊飯すると、
米が黄色に着色することが当時、実験にて確認された。
これは浄水処理後の清水を蓄える配水池の廃墟だ。
重炭酸ナトリウム(=重曹)は沸騰すると熱分解し、
二酸化炭素が遊離するため、炊飯過程でpHが急激に上昇する。
これは地下埋設のバルブやゲートの開閉を延長したロッドを介して、
地上で行う開閉台の跡だ。
上部のハンドルを回して開閉、つまりこの下には地下タンクがある。
浄水場を通過しているのに重曹成分が除去されない、
しかもどこからその重炭酸ナトリウムは混入したのか、
これを紐解くにはより詳しい水質検査と取水場所の確認が必要であった。
豪雪の廃道を進む。
我路簡易水道の水源は我路の沢川であり、
この本流には原水取水口の1q上流に2本の湧き水があった。
そして到達したのは、我路の沢浄水場跡。
2階建ての綺麗な建物だ。
無骨な炭鉱施設とは異なり化粧してある。
近づくと浄水場は窓ガラスも無く荒れた状態だった。
ここでは川から取水し、沈砂した後、
薬剤で浮遊ごみを集めてろ過後、塩素消毒して配水池に供給していた。
近くには凍結した滝がある。
我路の沢川上流の1本の湧き水には、
高濃度の重炭酸ナトリウムが含まれていた。
浄水場の窓はすべて鉄格子で閉ざされ、
玄関も厳重に施錠されており、
内部は伺い知れない。
既に電気も来ていない。
我路の沢川本流に流れ込む2本の湧き水の相対比によって、
水道水源水の重曹流入量が変化したと推察された。
建屋裏側も厳重に施錠してある。
配管が露出し、
いかにも浄水施設である。
時期は異なるが、浄水場の下流には浄水池が残る。
ここでは塩素滅菌を行っていたが、
原水中に含まれる重炭酸ナトリウムはそのまま浄水中に混入した。
80A程度の太い配管にゲートバルブが付いている。
水源の湧き水から重炭酸ナトリウムが混入したことが確認されたのち、
取水口を湧き水流入地点の上流に変更する工事が執り行われた。
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