軌道と堀下の痕跡


坑口は斜面の高台にある。
崩れかけた開口部は小さな洞穴にしか見えない。
閉山から約60年、よく残存したものだ。 坑口


支保工が残り、すぐに激しく水没している。
自然のダムによって、
行き場を失った鉱水で満たされている。 支保工


支保工を崩さないように潜り抜け、
進むと股下までの水位がある。
酸素濃度やガスを計測しながら入坑する。 水没


かなり先まで水没しているようだ。
しかも金属鉱山にしては珍しく直線だ。
見えない足元には不思議な段差が続く。 水没坑道


坑道は一部、路側帯のように広くなっている部分がある。
ここでは複線のように行き違える幅はあるが、 
距離はない。 路側帯


そこには半ば水没して、
『回避所』の看板が残る。
ここは恐らく走る軌道から歩行者が避ける場所なのだ。 回避所


水深はかなり浅くなってきたが、
汚泥の深さは膝下まである。
奥に行くほど傾斜が登っているのだ。 汚泥


深さがお分かりいただけるだろうか。
肩のあたりに喫水線があり、
最も水没していた時にはここまでの水深があったのだろう。 汚泥


レーザー距離計で計測しても、
これは40mまでしか計測できず、
それ以上の距離はある。 レーザー距離計



ほぼ水没は免れ、足元がはっきりしてきた。
突然の見えない穴などに注意してきたので、
ここまでの歩行スピードは非常に遅い。 坑道


ここには一際広い回避所がある。
中央にはか細い支保がある。
足元の岩盤はかなり荒くなってきた。 回避所


その先では水が引き、
現れたのは取り外された枕木の跡だ。
ここには軌道が敷設されていたという動かぬ証拠だ。 枕木


昭和22年の労働基準法、労働安全衛生規則省令9条には、
軌条を設けた坑道等の回避所という規定があり、
適当な間隔毎に回避所を設けなければならないとの規定がある。 回避所


現在でも労働安全衛生規則第553条に、
事業者は、軌道を設けた坑道、ずい道、橋梁等を労働者が通行するときは、
適当な間隔ごとに回避所を設けなければならないとある。 楕円リング


短いレール、これは轍叉(てっさ)と呼ばれる交差部分かもしれない。
他にもパイプや鋼製の部材が朽ちている。
既に500mを超えているが、終点が近いのかもしれない。 レール


坑道内には油分の様なシミ出しが所々にある。
水没は免れ、
坑道は緩やかに登っているようだ。 油分


坑道の壁には定期的にペイントの文字が残る。
「5・10」「S・10」なのか、
恐らく距離や業務上のマーキングなのだろう。 ペイント


文字の残る缶が落ちている。
ヨコハマゴム、セメントとあり、
コーキング剤かラバーセメントのようだ。 (マウスon ゴムセメント)


岩盤にはカビの様な白い毛が無数に付着している。
坑口から800mを超え、
そろそろ撤退の判断だ。 岩盤


その先で掘削は終了している。
埋没した様子ではなく、
ここで掘削自体を中止したようだ。 閉塞


掘削終了地点には汚泥が溜まり、
底なし沼の様相だ。
ここで折り返す。 汚泥


終了地点には碍子があり、
ここまで電気が来ていたようだ。
軌道の終点でもあったようだ。 碍子


再び水没して坑口に戻ると、
そこは光が差し込み
支保工が守り神のように君臨していた。 坑口






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軌道跡
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