満澤鉱山跡 シックナー 探検: 北の細道 満澤鉱山跡 シックナー

満澤鉱山跡で沈降濃縮装置が朽ち果てる

山形県最上町

 液体中に浮遊する微粉の石炭や金属粒子が沈降するときの状況は、
『自由沈降』と『干渉沈降』の2つに大別される。
『自由沈降』とは個々の微粒子がそれぞれ固有の速度で沈む現象で、
液体の種類・温度、粒子の密度・サイズ・形状・表面電荷などによって異なる。

『干渉沈降』は、粒子濃度が高いときに粒子同士が集合したり干渉したりして、
はっきりした浄水と混濁汚泥の境目を形成して沈降することで、
界面沈降(または集合沈降)とも呼ばれる。
界面沈降は『自由沈降』に比べてその速度が遅いが、清浄な上澄み液が得られる。

また『圧縮沈降』とは液体中でそれ以上溶けない粒子がその自重により液体を押しのけて沈殿する状況だ。
つまり沈殿後の粒子にはその水圧がかかることとなる。

濃度や水温、粒子の種類、重さなどにより沈殿状況は変化するが、
一般に@自由沈降→A干渉沈降→B圧縮沈降と移り変わる。

@で粒は各自独立して沈降、その境目は無い。
Aで上方は自由沈降、下方は干渉沈降と混在が発生する。
その後、明確な界面(境目)を作り互いに作用しながら
全体として沈殿、沈降速度はゆっくりとなる。

やがて次々に沈降した粒子自身の重みにより、
それらの粒子間の隙に存在する水が抜けて、沈積層が圧縮されるB。

粒子が流体中で沈降するとき、粒子には重力と水から受ける抵抗力が作用反作用し、
それがつり合い一定の速度で沈降する。
これはその粒子が水より重いほど、そして粒の直径の2乗に比例して速くなる。
つまり塊が粒の10倍の大きさになれば、沈降速度は100倍となる。

この法則を利用して素早く沈降させるのがシックナーのような凝集法である。


シックナーは懸濁物を重力下で沈降させることによりできるだけ濃縮し、
上澄液や排泥、微粉の回収を目的とする。

シックナー

円すい状の底部をもつ浅い円筒槽(直径数m〜 数十m)で、
中心部に原液を供給するための給泥口がある。

周辺部にはあふれた清澄水を回収するための溢流樋(いつりゅうとい)がある。
原液が中心部を重力により下降しつつ@自由沈降する(沈降層)。
清澄水(上澄層)と混濁汚泥(沈降層)の境目を円周方向に流れる間にA干渉沈降が発生、
互いに結び付き、塊となった固体粒子は更に沈降する。

ゆっくりと回る、槽中心の回転軸に取り付けられた回転レーキ(かき取り羽根)により、
界面(境目)が破壊されることで、 更に濃縮度が高められるとともに
その後、底に沈むB圧縮沈降で濃縮される(濃縮層)。
濃縮された泥(濃縮スラッジ)は中心部底に集められ排泥される。
上澄水は外周の壁を越えてあふれ出し(上澄層)、溢流樋を通り外部に排水される。

このように浄水と溶け込んでいた汚泥を分離するのがシックナーの機能だ。


本坑は当初、金鉱として開山、やがて銅亜鉛鉱山として盛況する。
鉱員は140名、現地で浮遊選鉱が行われ、昭和38年(1963)まで断続的に操業、
鉱量枯渇や市況悪化により閉山を迎えた。

当時の金属鉱山数は全国で250か所、2000年には11か所に激減している。
今回は山深い選鉱所を目指してアプローチする。


社宅跡・選鉱場・シックナー・・・




選鉱所
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