御殿と呼ばれた廃祉


まずは旧山手町付近、職員倶楽部を目指す。
急坂の斜面を登り、
谷間の平場に向かう。 アプローチ


しばらく進むとレンガの遺構がある。
付近には職員合宿所がかつて存在し、その一部かもしれない。
舌辛川を挟んだ対岸には睦寮が存在した。 煉瓦



少し進むと水路のような石垣がある。
しかし工業用の水路ではなく、
庭園のような豪奢な雰囲気だ。 水路


見えてきたのは酷く破壊されたような木造廃屋。
雄別炭鉱 職員倶楽部に到達だ。
繰り返す積雪により倒壊寸前だ。 職員倶楽部


ここは官公庁からの来賓や要人のおもてなしを行う、
いわば宿泊所も兼ねた料亭という施設だ。
この木造の洋館は贅が尽くされ『雄別御殿』と呼ばれた。 雄別御殿


当時、職員と鉱員には待遇に大きな差があり、
管理部門に値する事務方と坑内外作業員は明確に分類されていた。
また鉱員用の住宅においては水道やトイレ、浴場が共同であったりした。 玄関


昭和20年(1945)当時の雄別炭鉱従業員数は3,088名にのぼり、
社宅用地が不足するほどの盛況であった。
職員倶楽部はその表徴だったかもしれない。 職員クラブ



廃橋を渡り、然別鉱区へ移動する。
然別坑は大正、昭和初期の雄別炭鉱時代に採掘され、
通洞完成時期には休山状態であった。 廃橋


ベルプナイ川に沿って廃道を登る。
4月中旬はまだ残雪がある。
まずは火薬庫の痕跡を目指す。 ベルプナイ川


数キロ登ると倒壊した屋根がある。
これは火薬庫の廃祉だ。
倒木により悉く破壊されている。 火薬庫


然別炭鉱が再興したのは昭和31年からだ。
休山からおよそ20年間は放置されたこととなる。
損傷激しく火薬庫の内部は伺い知れない。 火薬


火薬庫だと断定できる明確な遺構、土留め(土提)だ。
火薬庫の建屋を囲むように配置され、
万一の爆発時の被害を食い止める目的だ。 土留め


火薬庫周囲の土提は庫壁から1.8m〜10.8m。
その高さも提外から火薬庫が見通せず、 また頂部の厚みは90p以上と細かく規定されている。
それらすべては防爆のためだ。 火薬庫


火薬庫から少し離れた一角には小さな小屋がある。
これは恐らく雷管庫、火薬または爆薬を点爆するために、
起爆薬を容器に装填したものの保管庫だ。 雷管庫


内部は木造ですでに何もない。
雷管は打撃や火炎、電気火花などで着火爆発、 本体の爆薬を 「爆轟」 爆薬がそれ自体の最大威力を発揮する完全爆発のこと に導く装置で、
延時薬を詰めて点火から爆発までに遅発(遅れる)させる場合もある。 内部





火薬庫を背に道なき廃道を進む。
炭鉱には付き物のズリ山を目指す。
その周辺に遺構があることが多い。 廃道


ベルプナイ川中流部には配管が朽ちている。
浄水の施設などがあったのかもしれない。
更に上流を目指す。 配管


川の岸辺には取水施設のような遺構がある。
かつては付近に堰堤があり、
選炭用水を揚水していたようだ。 取水施設


浮遊選鉱には多量の浄水が必要となる。
資料には『然別選炭場』という文字がある。
雄別とは別の系列、選炭も別施設で行っていたのだ。 選炭用水


更に上流にも別の遺構が残る。
これも浄水場関連の施設跡のようだ。
付近には地下水槽の設置も懸念されるので注意が必要だ。 浄水場


付近にはやはり小さな地下昇降口があり、
地下タンク、そしてゲートバルブが確認できる。
水面までは2m、水深はおそらく3〜4m、注意が必要だ。 地下タンク


上部にはズリ山のような植生が疎らな山がある。
新しいズリ山はピラミッドのように鋭利な形状だが、
経年のズリ山はなだらかに丸みを帯びる。 ズリ山


河床には取水用とみられる配管が這っている。
恐らく上流域に堰堤(小ダム)があり、
そこから導水しているようだ。 配管


ズリ山跡を登ると、
スレートの遺構がある。
レールもなく道でもなくインクラインのようでもない。 スレート


急角度のズリ山を登る。
ズリは石炭の滓、炭素が少なく燃えにくい石のことだ。
つまりズリ山が存在するということは、選炭施設が付近に存在した証だ。 ズリ山


ズリ山の頂上に到達した。
北海道でいうズリは『石』偏に『井』または『平』と記載し、
九州でいうボタは『硬』と記載する。 頂上


ズリ山の中段にある平場の一角、
ここにはかつて電車庫と呼ばれるトロッコの基地、つまり操車場があった。
今は辛うじての平場のみが残存する。 電車庫





電車庫の下流にはRC製の遺構がある。
急角度の斜面には4線の軌条が埋設。
これは恐らくインクラインの跡ではないだろうか。 インクライン


インクラインは標高差の大きな急斜面区間に、
レールを引いてモーターなどの動力を用いて、
台車やトロッコを引き上げ(引き下げ)るケーブルカーのような装置である。 インクライン


レールは高さ67o程度、10kgf級だ。
複線の傾斜レールにより、頂点で滑車を経由し、
やじろべえのように空車と積車の運転を効率よく行うのがインクラインの利点だ。 レール


斜面には水の流れる小さな沢があり、
その頂点にはコンクリート製の大きな遺構がある。
どうやら坑口のようだ。 坑口


斜面に存在する坑口は密閉され、
しかし配管からは坑内からの鉱水が導かれて噴出している。
これは連絡坑道坑口である。 坑口


配管を介した鉱水はドラム缶に導かれた後、
外部に湧出している。
硫化水素臭もなく斜面に染み込んでいる。 坑口





鉱水の温度を計測すると、
12.2℃と冷泉のようだ。
恐らく冬季も凍結しないのかもしれない。 温度計


坑口の下部には小さな池がある。
坑口からの湧水が溜まっているようだが、
時間をかけてズリ山内部に染み込んでいるようだ。 池









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火薬庫
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