シンターが金鉱の符号
小樽市は石狩湾に臨む港湾であり工業都市である。
国定公園、海水浴場も有し、
背後の丘陵地にはスキー場も多い。
赤岩市街地から林道を進む。
街から近いがすぐに道はグラベルとなる。
町中の標高が80mに対し、出発点は180mまで登ることとなる。
アクセスポイントはニセコ積丹小樽海岸国定公園の自然探勝路となっており、
遊歩道として整備はされているものの、
それなりの装備で挑まなくてはならない。
それが証拠に、付近の看板には、
チムニー、ルンゼ、ガレと専門用語が並んでいる。
やはりクライミングのメッカ、一般の入山者は敷居が高いようだ。
ここからは緩やかな登りだ。
日本を代表する金山、菱刈鉱山を初め、
下北半島恐山付近での金の沈殿現象が近年調査されていた。
遊歩道とは言えかなりの距離を登る。
両鉱床は火山に起因する別名温泉型鉱床と呼ばれ、
『酸性変質帯』と呼ばれる地質が発達していた。
これは火山活動で形成された岩石群が、
強酸性の熱水と噴気作用により変質し石英が主成分の地質となっている。
小樽市赤岩〜オタモイ地域も同様の地質だ。
350m付近のピークを超えると、
オタモイ方面の絶景が望める。
当時から『酸性変質帯』と金鉱の関係は注視されていた。
地下100〜1,000mに存在するマグマで熱せられた水は、
高圧のため100℃を超えても沸騰せず液体で存在する。
熱水が水の臨界温度(374℃)より低くなると、
周囲の原石を変質させる。
ここからは廃道となり、ルートを選びながら進む。
熱水は150〜350℃の状態で強酸性となり、
揮発成分が溶液化して含まれ金属鉱床を作る。
藪を抜けると一気に積丹ブルーの視界が広がる。
「ルンゼ」浸食作用でできた急で険しい岩壁の溝
の大岩が見える。
ここが鉱床の最上部だ。
標高360m付近から斜度30度の斜面を下る。
熱水にはマグマに含まれていた水分(=マグマ水)と、地下水が熱せられたもの(=天水)があるが、
それぞれがどう作用しているかは研究段階である。
付近は独特の眺望だが、遺構は見られない。
過去には探鉱跡が辛うじて見られたそうだが、
現在は自然の原風景だ。
場所によっては斜度40度を超える絶壁だ。
地表に湧出した温泉水が圧力や水温の急激変化、そして酸素と反応して作られるのが湯の花だが、
これが鉱泉の周囲に硬く固まったものを温泉沈殿物(=シンター)と呼ぶ。
石灰華や噴泉塔など吹き出す鉱泉から硫黄やシリカが固まったものがシンターとなるが、
これは熱水鉱床の目印となり、
マグマ起因の鉱床発見の糸口となる。
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