坑道運搬
12月の山中、本格的な積雪には至らないが、
葉がすべて落ち、探索にはベストシーズン。
通洞坑の上部を目指す。
丘の中腹にも遺構がある。
採掘したばかりの鉱石は手押しのトロッコでオアービン(貯鉱舎)へ運ばれる。
トロッコを展開して坑内の縦穴に粗鋼を落とすのだ。
これが坑内のオアービン鉱石投入口。
250o以上が通過できない
「グリズリ」
鉱石を供給しながらふるい分けする装置
と呼ばれる格子間に
鉱石を転がせて、
段階的に粒度分けすることができる。
やがて100m程登るとスレートのドーム型の建屋があった。
オアービン投入口の格子は大塊の除去と共に、
トロッコなどの墜落を防止する効果もあった。
坑内貯鉱舎下部から抜き出された鉱石は、
坑内のブレーカーで一次破砕され、
長尺ベルトコンベアー等で搬出立坑下に運ばれる。
建屋は波板のスレート製で、
本来は粘板岩を薄い板状に加工した建築材だがコストの関係で一般には、
セメントに繊維素材を混ぜて薄い板状に加工したものが化粧スレートとして用いられる。
このような大波のスレートは、
耐高温多湿、難燃、長期間劣化せず積雪にも強い。
施行がしやすく軽量で耐震性もありこのような工場ではよく利用されている。
スレート建屋内部には大径の滑車、ケーペシーブが2連並んでいる。
等間隔で下部のH鋼にピローで固定されている。
これはおそらくつるべ式の巻上装置だ。
シーブの外形は2m以上あり非常に大きい。
主要運搬というより補助装置の部類かもしれないが、
坑底からの粗鉱をあるレベルの水平坑道まで引き上げる装置であろう。
ワイヤーロープ両端にスキップを取り付けたつるべ式シーブでは、
巻き取る必要がなく、ロープはシーブの約半周に接しているだけなので、
現状のようにドラム幅は狭く、軽量に製作できる。
但し両端のスキップ吊り下げ荷重がアンバランスだと、
ロープスリップの危険性が発生するので、
その対策として両スキップ下にテールロープをつけて重量差を解消する。
立坑スキップから本装置で巻き上げられた粗鋼は、
地上までは搬出せずに通洞へ運ばれる。
通洞内はトロリー電車で搬出、選鉱所上部に運鉱される。
スレート部材には個性的な象の意匠がある。
スコップメーカーやトタンメーカー、チェンブロックメーカなどにあたってみたが、
この意匠(elephant)のメーカーの特定には至らなかった。
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