確定炭量 『乙』の軌跡



釧路湿原は南北約36q、東西約25q、
湿原域は標高が20m以下で大部分が2〜5mと低く、
湧水が多いことで堆積した木々が腐らず表面に1〜4mの泥炭が分布している。 釧路湿原


深山から一本の舗装林道に入る。
炭鉱の開発期間は20〜30年もあり、その間の市場見通しが重要となる。
そしてその採掘可能な埋蔵量と商業的に回収可能な資源量の精査が重要となる。 林道


鉱区付近に到着した。
埋蔵量の産出規定は日本工業規格(JIS M2000)炭量計算基準により規定され、
確定・推定・予想炭量を深度により第1類と第2類に区分する。 炭鉱跡


すぐに平場に遺構が見える。
第1類の中に複数の炭層面があればそれは『甲』、確実性が低いものは『乙』と分類される。
つまり大規模な炭鉱が『甲』で本坑は『第1類乙』に規定される。 遺構


斜面上にも廃祉が見える。
ここには巨大な選炭工場が存在していたはずだ。
掘り出した鉱石から優良な石炭を選び出す工場跡だ。 斜面


斜面上部には角型断面の隧道のようなものがある。
これは坑口からのコンベア通過口の終端部分だ。
パンツァーコンベア(歩鉄の達人) と呼ばれる両側のチェーンで駆動するタイプのコンベアだ。 パンツァー


ここを通った原炭はホッパーに投入される。
チェーンコンベアは強靭な鎖環(チェーン)を歯輪で駆動して循環させ荷を運搬するコンベアで、
両鎖環間に鋼製かき板をつけて石炭を運ぶ。 チェーンコンベア



選炭所の遺構が続く。
トラフ (U字形の溝) 上をかき板 (スクレーパ)にて運搬するため、
相当強い傾斜でも使用でき、長路線で負荷の大きい運搬に適する。 選炭場


パンツァーコンベア口から更に登る。
チェーンコンベアの板子 (スラット)部分を箱にすれば、
垂直荷揚げにも使えるバケットコンベアとなる。 登攀


原炭ポケットの上部に到達した。
原炭ポケットの効果としては、
選炭機に平均して給炭でき、過負荷、過不足を防止できることである。 ホッパー


アンカーボルトの残る遺構がある。
坑内より搬出した原炭の多寡や炭質の変化によって、
操業時間を変更できるのも原炭ポケットの効果だ。 アンカーボルト


選炭機械は故障も多く、
運転停止による検査修繕時にも
原炭ポケットには貯炭可能だ。 ポケット


原炭ポケットから登ると明らかな平場と廃道がある。
かつて施設があったようだ。
斜坑やその巻上設備もあったという。 平場


坑口らしき斜面前には、
鋼製のパイプが立っている。
ここは新坑付近である。 遺構


これは坑道からのガス抜きのパイプのようで、
定期的にガス濃度を点検したようだ。
さらに奥に進む。 ガス抜き


更に開けた一角がある。
ここは植生から見て、
かつてのズリ山のようだ。 炭鉱跡地


平場には建物の土台らしき跡がある。
付近には本卸、連卸の坑口があったはずだ。
本卸(ほんおろし)とは傾斜の下方へ向かって掘削したメイン坑だ。 遺跡


連卸(つれおろし)はサブとなる下方掘削の坑道で、
一般に本卸が石炭搬出と入気、
連卸は排気を司る坑道だ。 遺構


丘の頂上付近には巻上機の土台が残る。
卸坑は掘り下げる斜坑であるが、対して掘り上げる坑道は『昇』と呼ぶ。
但し完成してしまえばそれが卸か昇か判断は付かない。 巻上機


尾根を越えた先にも遺構が続く。
ここは扇風機などの基礎が残る。
かつてアンカーボルトの上には何かの機器が設置してあったはずだ。 基礎


『連卸坑口位置』の銘板が残る。
坑口はすべて埋没してしまったようだ。
かつての繁栄が想像出来ない森の中だ。 連卸


接続の無い電柱が二本。
パンツァ Panzer とはドイツ語で装甲車の意だ。
装甲車、戦車つまり履帯。 電柱


履帯とは車体の両側の走行用キャタピラのことである。
コンベアの両側にある履帯のような駆動用チェーン、
これがダブルチェーンコンベアをパンツァコンベアと呼ぶ所以である。 レール







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パンツァ
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