光と影 興奮と失意


まずは道なき沢を150m程度登攀する。
周囲は荒れた岩場で植生が疎らだ。
鉱山の痕跡に向かって前進だ。 沢登り


いきなり沢にはレールの存在だ。
高さは65o程度の10sf級。
流されたのか、酷く捻じれている。 レイル


沢を跨ぐ露出した配管用炭素鋼鋼管だ。
太さは65A、こちらも腐食が激しい。
これは期待できる。 配管


ゴルジュのように狭くなる沢筋。
かなりの急角度で登っている。
この上に坑道があるとは想像できない。 ゴルジュ


沢の遥か上部に坑口の発見だ。
支保工があり内部はよく見えない。
角度があり、沢からこのまま登攀するのは不可能だ。 第三坑口


坑口の上部から8m程度、懸垂下降でのアクセスだ。
この坑口に接近するにはビレイしかない。
仮に第三坑道とする。 懸垂下降


坑口には平場がほとんどなく、
坑木を潜り入坑だ。
酸素濃度20.9%、問題ない。 坑道



内部は水没し水深は400mm程度。
汚泥が酷く進むのは困難、ここで撤退だ。
18m奥で壁があるが、その先はクランクかもしれない。 坑道


坑口を振り返ると上下シンメトリーの構図だ。
支保工が水面に反射している。
再びアッセンダーとグリグリを駆使しての登攀だ。 支保工


更に廃道で標高を稼ぐ。
本鉱山の発展は昭和30年台前半、
約60年前の遺構となる。 廃道


山中にはひどく腐食した鋼製の部材がある。
これは索道の搬器のようだ。
つまりスキー場のリフトのような索道にぶら下げるバケツ部分だ。 搬器


鉱石を運ぶバケツ部分は両側の支持部が軸受となり反転する。
空荷の場合は軸より下に重心があり、満載の場合は軸より上に重心がある。
ベルクランクと呼ばれるストッパーが外れると反転、荷を自動で排出し、
空荷になると重心により自動で開放部が上を向く。 マウスon 索道


更に登るとトロッコの車輪の遺構がある。
インローの付いたダクタイル製の重厚なものだ。
坑道ートロッコー索道の摸式が想像できる。 トロッコ


少し進むと如何にもの平場と、
湧き出る汚泥がある。
恐らく埋没した坑口、第二坑道とする。 第二坑道


約40m登ると谷あいに不思議な平場が存在する。
限りなく人工の色合いで、
ここに施設があったのは間違いない。 平場


振り返ると岩の亀裂のような坑口だ。
かなりの大きさだが、一気に下っている。
果たして安全に下れるか、見極めが肝心だ。 第一坑口


坑口からは7mの絶壁だ。
間に岩場の残る横長の開口部。
足場、酸素濃度、崩れ、全方向に危険予知を行いながら下降する。 坑口



懸垂降下した坑口下部は大きなホールとなっている。
しかも1時、8時、10時の方向に坑道が続く。
ここが最大の採掘坑道、第三坑道とする。 坑道


1時方向の坑道は動物の足跡がある。
若干の汚泥があるが、
沈み込むようなことは無い。 坑道


高さは1,200o程度、手掘りの坑道だ。
蛇腹のようにくねりながら奥へ進む。
これは探鉱用の試錐坑のようだ。 素掘り


少し登りながら、周囲は強固な岩盤となる。
直線でないことから、鉱脈に沿った、
樋押坑道の可能性が高い。 坑道



約60mで立坑直下の堀上坑道となり、
頭上に坑道は続く。 ここで終点だ。 堀上


再びホールに戻り、8時10時方向を望む。
10時方向の坑道の天井はカビと水滴で、
ギラギラと反射している。 坑内分岐


迷走を防止するため、決め事で右坑から入坑。
ご覧の通り、すべての坑道に支保工(支えの坑木)は無い。
これは無支保採掘法と呼ばれるものだ。 無支保採掘法


約20m進むと小さな開口部となり真下に続く。
意外と高さがあり下ることは不可能だ。
下部から発破で破砕するケービング法かもしれない。 堀上


光の届かない世界で発芽した3本の新芽たち。
食事中の方には申し訳ないが恐らく動物の糞に紛れた種から発芽したようだ。
自然の生命力を目の当たりにする。 新芽


8時方向の坑道は蟻の巣のごとく複雑に分岐する。
シュリンゲージ採掘、つまり採掘鉱石を下部から抜き取り、
一部を足場、一部を抽出用坑井(鉱石漏斗)として上向きに採掘する方法だ。 堀下


枝分かれしながら坑道が伸びる。
崩して容積の増えた鉱石を足場にして、
上部に掘り進めるため支柱は不要となる。 シュリンゲージ


あらゆる方向へ分岐する。
但し一部の分岐坑道には鉱石が充填され、
埋められている場所もある。 碍子


ここは廃石で採掘跡が充填されている。
切羽と呼ばれる採掘最前線の維持や安全確保、
作業者の足場の確保の意味もある。 配管

コウモリが坑内にぶら下がっている。
哺乳類の中で唯一飛ぶことができ、
羽の中には5本の指に値する骨がある。 コウモリ


下部に向かって漏斗状の採掘面がある。
この下部に鉱石を落とし、下段坑道から鉱石搬出を行う
グローリーホール法の応用かもしれない。 グローリーホール


坑道は複雑に続き、
数えきれないほど分岐する。
意外と距離を歩いてるかもしれない。 坑道


再びホールに戻る。
光が差し込むのはほんの一部で、
各脇坑には光が届かない。 ホール



再びアッセンダーとグリグリを併用しての登攀だ。
間に残された岩盤は補強の意味だろうか、 謎は残る。 グリグリ


坑口の上部にはレールが残存する。
更に坑口が存在するのかもしれない。
ここからは別の沢に沿って下る。 レール


すこし下るとRC製の遺構がある。
小さな配水池のような痕跡だ。
浄水や工業用水を確保したようだ。 配水池


水槽らしき施設の周辺は、
大きな平場となっている。
もしかすると建屋が存在したかもしれない。 水槽


沢には円盤状の鋼製品が埋没している。
恐らく索道のワイヤーをガイドする
プーリーの廃祉のようだ。 プーリー


付近には索道のワイヤーや、
鋼製の搬器が眠っている。
選鉱所がかつて存在していたのだろう。 索道


遺構は多数残り、これはノッチの刻まれた切型だ。
アナログ的なメーターで距離や速度または重量を計測したようだ。
バケットが曳索を掴む力を一定とするため装置かもしれない。 距離計


製錬所や選鉱所ではなく、
今回は採掘の最前線に遭遇した。
このような原風景が他の山中にも数多く眠っているかもしれない。 山中



今回は「道南ですかね」様より多数の情報提供を頂きました。
この場をお借りしてお礼申し上げます。









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