コウモリの着床遅延


まずは一本の沢を遡上する。
深さは膝下、標高差は約70m、
流れは酷くないが、苔で非常に滑りやすい。 沢登り


延々斜度の無い沢を登る。
距離的にはおよそ1.2q進んでいる。
全く道の気配はなく、どうやって鉱石を搬出したのか謎だ。 沢登り


源頭に達して沢が狭くなる。
高巻きすることもなく、
穏やかな沢登りが続く。 沢


やがて沢の流れが左岸に折れ曲がる箇所がある。
その先には穴が有る。
自然の洞窟なのか、沢の直進方向には流れが無い。 廃坑


坑口は狭く水路のようだ。
水量が相当あり、
沢のすべての水がここ経由で流れ出している。 坑道


それでは安全を確認しながら入坑してみよう。
ヘルメットにヘッドランプを装備、
突然の立坑や崩れる頭上、酸素濃度に注意だ。 ゲート


これは明らかに人工的な掘削だ。
すぐに二股の坑内分岐がある。
水流は右手、左手は流れが無い。 坑内分岐


分岐側左手は汚泥の堆積する、
天井の低い坑道だ。
獣の臭いが立ち込めこれは恐らくコウモリたちだ。 汚泥


付近の岩肌は結晶質の石灰岩のように、
ギザギザの表面が露出、
そこに一部カビが育っている 結晶質



足元には配管用の部材が朽ちている。
ここが坑道であった証だ。
脚元の汚泥の黒い部分はコウモリの糞、劣悪な環境下だ。 配管


分岐坑は60m程で掘削中止部分に到達する。
付近は底なし沼の様相だ。
表面が固まり、タイムラグ後に深く埋没することもあるので要注意だ。 終点


埋没地点には箱のような人工物がある。
硫化鉄は硫黄と鉄の化合物(FeS)で、
鉄や硫酸の原料に用いられる。 箱


壁際には鋼製の部材も残る。
鉱石を融点に以下に加熱して化学組成を変化させる焙焼を行い、
発生する二酸化硫黄を触媒で酸化させ、硫酸を得ることができる。 鋼製


坑道の床には丸い穴が有り、
そこから清水が湧き出ている。
汚泥の原因はこの湧水によるものだ。 湧水


とめどなく湧き出る水は温泉かもしれない。
温度を計測してみるとそれは17.8℃と冷泉であった。
地下深くにしみ込んだ雪解け水がろ過されて噴出しているのだろう。 17.8℃


分岐まで戻り流れのある本坑を遡る。
支保工も残り、奥に続いている。
水流の音がさらに激しくなる。 本坑


80m程進と再び坑内分岐が出現する。
今度は本流が左手。
右坑は土砂が堆積している。 坑内分岐


右坑は汚泥の堆積が酷く、
坑道の半分程度が埋もれている。
奥には支保工も見えるが、そこまでは潜れない。 支保工


分岐付近にはコウモリの子供が鈴なりの個所がある。
コウモリは11月〜春まで冬眠、その前に交尾を行うが、
冬眠中は受精せず、保管した精子が着床するのは春を超えてからだ。 コウモリ


夏季のエサが豊富な時期に出産できるように、
繁殖時期を調整する機能が『着床遅延』と呼ばれるもので、
熊やカンガルーもこのタイプとなる。 着床遅延


またコウモリは鳥ではなく哺乳類であり、四足歩行から進化してきている。
そのため鳥類のように二足歩行はできず、
しかしぶら下がるのに筋力は不要で、重い部分を下部にすることで安定しているそうだ。 コウモリ


いよいよ激しい水流に逆らって上流域を目指す。
途中左上に斜坑が存在したり、
まるで坑道のラビリンスだ。 坑道


更に進むと出口の明かりが見える。
ここから一気に坑道は深い水量となり、
水深は股下までを超える。 出口


可能な限り水没して進むと、
坑道の向こうには轟音の主、滝がある。
上流の沢からの瀑布が坑道にすべて流れ込んでいるのだ。 滝








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坑道
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