発破不要の主力坑
雄別中ノ沢中心部から約4q北の山中を進む。
11月の道東は積雪は無いものの、かなり気温は低い。
探索には程よい季節だ。
舌辛川左岸には斜坑があるようだが、
前日までの雨による増水で、
渡渉は断念した。
やがて谷間の広い場所に出た。
ここは雄別炭鉱の歴史後半に栄えた、
主力採炭坑だ。
斜面に小さな坑口がある。
堤沢総排気坑口である。
当初坑道内の温度は33℃と高温であった。
総排気坑口は非常に小さく、
もちろん封鎖されている。
当時、鉱区は85か所にのぼったという。
封鎖されたコンクリートの裂け目から内部を確認する。
すぐに柵があり、
30m程度で再度封鎖されているようだ。
総排気坑口のすぐ脇に、別の封鎖された坑口がある。
こちらはガス排気用か、
煙突が立っている。
これは総排気人道坑口。
つまりメンテナンス用の坑道だ。
湿度や通気量を定期的に測定し通風の合理化を図るのが目的だ。
その上流にはすぐに坑口がある。
こちらは先ほどより大掛かりだ、
坑口前部には台座もあるようだ。
これは総排気風洞坑口、つまりメインの換気坑道だ。
ここから坑内の空気を扇風機で吸出し、
舌辛川対岸の新斜坑坑口から吸込んでいたのだ。
坑口はエキスパンドメタルのような鋼材で封鎖されている。
ここからの排気、対岸斜坑からの入気により、
坑内温度は30℃となり、幾分環境は改善された。
風洞内部はすぐに封鎖されている。
低気圧の接近により、気圧が上がれば、
炭層に空気が入り込み、その後ガス湧出が発生する。
並列して最も大きな坑口がある。
二卸入気坑口である。
メタンガスの希釈、酸化による自然発火の防止も通気の目的だ。
この入気坑道は雄別通洞と直結している。
主要扇風機による排気に従い、
毎分千〜1万数千m3もの空気を吸込んでいたのだ。
坑道は坑口から大きくカーブしている。
坑道上部には小さなガス抜きの穴が有る。
堤沢坑の深部には発破を使用せずに掘削を行う装置が存在した。
内部は緩やかに右に曲がり封鎖されている。
深部ではドラムカッターを二重に重ねた装置を試験的に運用し、
それは『亀の子ドラム』と呼ばれたものの、重量増で実用化には至らなかった。
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