pH = ‐log [H+]
4月初旬、標高340m附近、まだまだの残雪の中を進む。
ここまでのアクセスは相当厳しい。
鉱床図に残る斜坑を目指す。
目的の斜坑はこの奥にあったようだが、
埋没した上に残雪でその姿は見えない。
そして手前には枯れ沢がある。
枯れ沢から振り返ると、
そこには斜面に空いた坑口がある。
自然の洞窟のようにも見える。
坑口からは轟音と共に大量の水が流れている。
坑道の奥は明らかに人工的だ。
鉱床図に載らない坑口への疑いもあった。
水没しつつ、坑口に近づく。
内部からは冷たい風が吹き出しており、
どうやら貫通しているようだ。
内部は川のように流れがあり、
流れる音が反響している。
奥は如何にもの手掘りの坑内だ。
水没しつつ入坑する。
4月の雪解け水の水温は低い。
奥に行くほど水流の轟音は大きくなる。
坑道は一定の高さで、
全体に右へカーブしている。
昭和13年頃が最盛期なのでおよそ80年程度経過していることとなる。
水量は変化せず、常時一定量が流れている。
喫水線が坑道中央部の高さにあり、
時期によっては半分以上の高さの水位になることもあるようだ。
出口から60mほどで異様に天井が低くなる部分がある。
どうやら堆積した土砂で、床面がせり上がったようだ。
なんとか匍匐で切り抜ける。
閉塞区間を抜けると入り口側坑口の明かりが見える。
コウモリは生息していない。
恐らく流れる清水で羽虫がおらず、エサが確保できないのであろう。
坑口付近は高さがやや狭い。
排水路として本来の沢をショートカットするルートだ。
本来の沢に川が流れれば、下流の斜坑にその水が流れ込んでしまう。
上流側坑口に到達、先にはRC製の遺構がある。
この先は滝のように本坑口に、
水が流れ込んでいるようだ。
これはどうやら水門の成れの果てのようだ。
ここで封鎖すれば本来の河川に水は流れ込む。
水門を開けば転流坑に水は流れ込む。
水門の上部に登ってみた。
坑内に溜まる水のことを『水坪』と呼び、
流れ込む水、湧き出る水とも問題となる。
黄鉄鉱(FeS2)などの硫化鉱物が水(H2O)、そして酸素(O2)と結びつくと、
金属イオン(硫酸第一鉄)(FeSO4)と硫酸イオン(H2SO4)が生成、
水は電離して水素イオン(H+)
を作る。
本来、H+とOH‐が同量で中性を示す水も、
H+が増加すればpH値が小さい=酸性となる。
この流れ出る酸性水には中和処理が必要となる。
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