今は蜘蛛のお家


5月のベストシーズン。
鉱区に近づくとすぐに廃道状態。
鹿道は多数ある。 廃道


道なき斜面で標高を稼ぐ。
スタート地点の標高は60m、現在94m。
目指す地点は203m、等高線に沿ってユリ道で進む。 斜面


斜面に忽然と現れる道。
そして突然消える道。
なんとなくの痕跡を追って更にトラバースする。 ユリ道


斜面に現れた遺構。
巻上機か索道の痕跡のようだ。
いよいよ近い。 廃祉


レールの発見だ。
斜面に埋没しているところを見ると、
更に上部に遺構がありそうだ。 レール


斜面上に何かある。
ここからは一気に登攀する。
恐らくあれは・・・。 遺跡


これは封鎖された坑口だ。
鉱床図では二坑との記載がある。
残念ながら完全に埋没している。 坑口


斜面に吐出したレールである。
坑口から搬出した軌道の跡だろう。
路盤が決壊し、レールが中空を舞う。 レール


坑口から標高を保ち移動する。
柵の続く廃道に導かれ、その延長に向かう。
完全に鉱区内の痕跡だ。 柵



付近には滑車スナッチのような部材が朽ちている。
クレーンか索道、その遺構のようだ。
坑口付近で遺構部材が増加してきた。 滑車スナッチ


斜面に沿って進むと、
そこにはレールと貨車の車輪が残存している。
車輪は鋳鋼の重厚なものだ。 トロッコ


更に登ると上部に視界の開けた平場のような場所が見える。
既に1.5時間程度の探索時間だが、
余力のあるうちに上部を確認しよう。 平場


平場には多数の遺構が広がる。
木造の建屋があったらしく、
多種に及ぶ機器が散乱している。 平場ト


油圧ユニットかタンクのような部材もある。
圧縮空気中の水分除去のための、
エアードライヤーのような装置かもしれない。 機器


敷設されたレールも残る。
軌間は420o前後の狭軌だ。
ここは溶断などの金属加工も司っていたようだ。 レール


煉瓦製の遺構もある。
これは鉄の表面硬度を高めるための焼入れ炉か、
火器を使用していたのは間違いない。 煉瓦


トイレか事務所の木造施設がある、
ここでは金属の加工や溶接、切断を行い、
坑道や諸設備の金属部材を製作していたようだ。 小屋


その鍜治場から見下ろす下部には、
機器が所狭しと並ぶ一角がある。
これは巨大遺構だ。 コンプレッサー室


4基並ぶのは空気圧縮機、つまりコンプレッサーだ。
大気圧以上に圧縮した空気を作り出し、その膨張力で削岩機やエアシリンダーなどを駆動する。
油圧に比較して圧が低く安全、漏れに対しても悪影響が少ない。 コンプレッサー


4台中2台は米国Ingersoll Rand(インガソール・ランド)製のコンプレッサーだ。
東京ー神戸ーニューヨークの銘板があり、
同社は現存する削岩機、エアツールなどのメーカーで、現在では冷凍機なども生産する。 マウスon 銘板


1台は昭和18年日立製のコンプレッサーだ。
空気は、 「ボイルの法則」pV=a【p:気体の圧力(Pa) V:体積 a:定数】 により体積を1/2の縮めるとその圧力は2倍になる。
気体はその体積を収縮させることができ、収縮した気体は元に戻ろうとする力を蓄えていることとなる。 マウスon 銘板


もう1台は昭和30年日立製のコンプレッサーだ。圧力は7s、容量217立方m、回転数250rpm。
圧縮方法は往復ピストン式でシリンダ内の容積を変化させて空気を圧縮する。
レシプロコンプレッサと呼ばれ、低速回転のため音や振動は大きいが低コストとなる。 マウスon 銘板


4基のコンプレッサーに対して2基のレシーバータンクがある。
このタンクに圧縮空気を一旦保持し、
ここから必要な動力としての空気を取り出すのである。 レシーバータンク


レシーバータンクの役割は安定した空気供給のために次の3点がある。
コンプレッサーのピストンが分速250往復することで発生する 「脈動」不規則な力の作用を受けて起こす微弱な振動 の伝達防止、コンプレッサー自体の保護、
急激な空気吐出時の 「バッファ」衝撃 の緩和である。 レシーバータンク


レシプロコンプレッサーを駆動する三相誘導電動機、つまりモーターだ。
三菱電機製などが混在している。
出力150馬力、112kw。 マウスon 銘板


スクラムのVベルトとプーリーを介してモーターとコンプレッサーは接続される。
2本が対になったスクラムベルトが5セット、
つまり10本のベルトで駆動される。 Vベルト


コンプレッサーには危険な圧力に達した時の安全弁がある。
最近の圧力開閉式ではなく、アンローダー弁による制御のようだ。
アンローダによる圧力開閉圧は安全弁よりも低い設定のはずだ。 コンプレッサー


設定圧になるとモーターを電気的に停止する圧力開閉式に対して、
圧力調整弁からバルブを介して、設定圧以上に昇圧しないように、
吸気側バルブを強制的に開きモーターは停止させないのがアンローダ式だ。 アンローダー弁


大工場などと異なり圧力変動が少なく、起動再起動が頻繁に発生しない現場ならではだろう。
モーターの起動時には定格の7倍の電流が必要で、
モーターは一定連続稼働、圧縮機側で圧の開閉を行ったようだ。 圧力調整弁


圧力計は10sfまでのもので、通常は7sf以下のはずだ。
メーターは針折れを防止するグリセリン入りのタイプではない。
現在はメーター内部で蜘蛛が穏やかに暮らしている。 圧力計










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