街のシンボル 中央立坑
上砂川町の人口は昭和34年のピーク時に1万人を超えたものの、
現在は3,200名とその1/3に減少している。
当初、運炭専用鉄道として敷設された函館本線上砂川支線も平成6年(1994)に廃止されている。
立坑は市街地のほぼどの位置からも望める中央部に存在する。
昭和42年建設の立坑は、閉山後の旧産炭地地域振興として、
国・道・新エネルギー産業技術開発機構などが出資し、無重力実験センターとして再開業した。
立坑内の地下710mの坑道に、供試材の入った金属製のカプセルを落下させ、
約10秒間の無重力状態が、
内部の材料にどのような影響を及ぼすのか確認するのである。
一回の落下実験の費用は約270万円。
新素材の開発等、これまで約4,600回の実験が行われた。
現在は町が立坑を買収し、モニュメントとしての存在感を醸し出している。
立坑周囲の建物からは白い冷泉が噴出している。
湯の華を含んだ、温度19.3℃程度の温泉は、
坑内から滲み出しているのだろう。
立坑の裏手から鹿道に沿って登る。
昭和16年完成の第二選炭機付近へ進む。
付近は夥しいエゾシカの足跡がある。
登った平場にはRC製の構造物がある。
これは扇風機とそれを駆動する機関の架台だ。
かなりの規模の施設だ。
これは坑内に新鮮な空気を送り、各種ガスの希薄を目的とした、
吸引するための主要扇風機の台座である。
つまり排気側の坑口が付近にあるということだ。
台座から近距離に封鎖された立坑跡があった。
一般に出炭tあたり77立法メートルのメタンを発生し、年間100万tを出炭する炭鉱で、
扇風機3台の合計出力1100kW、総排気量毎分17,000立法メートルが必要と定義される。
封鎖された立坑の上部にはガス抜き用の
ゲートバルブが設置されている。
酸素の供給、ガス希薄、冷却が吸気の目的だ。
排気立坑の先には太い配管の這った大きな施設が見える。
水利施設のようだが、炭鉱で見ない形状だ。
「バウムジグ」水槽中で泡にて撹拌し、空気と付着しやすい石炭だけを選ぶ
選炭方法選炭のプールだろうか。
マウスon
これはどうやら水道施設のろ過池のようだ。
大正11年、沢をコンクリートで堰き止め、
沈砂地とこのろ過池を設置したとのことだ。
複雑に配管が入り組んだ施設。
将来の人口を1万人と想定して造られたため、
昭和12年にはこれに増設されたという。
未だ水銀灯具がぶら下がる廃祉。
坑外の施設に電灯がついたのは大正7年12月のことであり、
それまでは石油ランプが使われていた。
『無重力の街宣言』そして市街地マンホールに残る実験用カプセルのデザイン。
再利用された立坑への期待は非常に大きかったようだ。
その立坑も、今はこのろ過池と同じく静かに余生を過ごしている。
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