山中の不夜城
網走地方最北の街、雄武町。
網走市の北150qに位置し、増養殖漁業や酪農・林業が中心の街だ。
鉱山跡付近には開拓農家の廃屋が目立つ。
中雄武から鉱山跡方面へ牧場の間を抜ける。
現在の標高は50m附近、鉱山跡は160m附近だ。
鉱山発見前の探鉱はひっそりと、外部にひた隠しにされたらしい。
カラマツ林を抜ける林道を登る。
分岐が多く、それは地形図にも載らない。
製錬も現地で行われていないので、痕跡に期待は持てない。
ようやくGPSの示す鉱山跡付近に到達した。
そこは辛うじての荒地で、目立った痕跡はない。
しかし産業遺産の雰囲気は十分にある。
附近にはひどく腐食した鋼板が埋没している。
鉱山跡の痕跡かはわからないが、
産業があったその証拠だ。
小さな池がある。
大正12年には従業員44名で稼行していたが、
その後昭和2年には112名と盛況を迎える。
再び奥には鋼材が残る。
小坂鉱山へ送鉱する際の舟の借り入れには、
大変な苦労があったようだ。
点々と鋼材が散らばる。
不漁続きの漁場で、新造船を作る資力がない。
個人の舟は大切な財産であり、易々とは貸してもらえなかったらしい。
更に山中を進む。
索道を利用した鉱石の搬出が盛んになると、
小坂鉱山との間に売鉱・探鉱契約が成立する。
スレートの部材が森に埋もれている。
やがて小坂鉱山への鉱石輸送は、
一千t〜二千tクラスの樺太帰りの空船を回航させて積込んだ。
山中には赤い沢がある。
再開した昭和時代の労務者数は8名、
月産は最盛期の2%と、過去の盛況には至らず閉山することとなる。
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