精錬所→隧道→坑口→隧道
2014年5月12日をもって廃線となる江差線。
中須田駅は質素な車掌車駅舎を持つ、
静かな駅だ。付近にはまばらに民家がある。
豊田集落から如何にもの「金堀沢」をかなり遡る。
林道から分かれて、
旧鉱山道路のような廃道を歩く。
ここからは鉱床図とも大きく地形が変化しているので、
ひたすら歩き、その雰囲気に注意する。
まだまだ鉱山跡の中心部には距離があるが・・・。
これは鉱水枡のようだ。
この分なら更に遺構がありそうだ。
この谷に沿って登る。
水没しながら廃道を登る。
巨大なヒューム管が転がり、
いよいよ鉱山道路は荒れてきた。
茂賀川選鉱所の廃祉が立ちはだかる。
配管が複雑に組み合わさり、
鉱水を導いているようだ。
導管の支柱のような廃祉が残る。
標高はいよいよ鉱山跡と同レベルまで、
登ってきたようだが・・・。
丘を登りきると比重選鉱場の廃墟に到達した。
かなりの規模だ。
大きさは徳星鉱山までとはいかないが、何連も積み重なっている。
勝山選鉱所は斜面に沿ってかなり上部まで続く。
足場は無く、
斜面を登るのも大変だ。
崖の最上段を目指す。
およそ30m上部に渡って、
廃墟が続く。
上部にはアンカーボルトの設置された台座もある。
もう少しで最上段のようだ。
上には平場がある。
ここが最上らしく、
ひときわ大きな遺構がある。
ここから鉱石を流していたのだろう。
上段には2条のレイルが残る。
ここまで軌道があったということは、
坑道からのルートがあったはずだ。
中空を這うレイルを追う。
選鉱所から北東に向かって大切坑があったはずだ。
その方向には辛うじて軌道跡の痕跡がある。
際どい斜面を歩いて精錬所から移動する。
谷底は遥か下だ。
この延長上には通洞坑の記載もある。
最上部から精錬所全景を見下ろす。
かなり遺構は少なくなっているのだろう。
滑落に注意して移動する。
所々にレイルが露出する。
間違いなく軌道跡だ。
レイルは12kg級程度のか細いものだ。
軌道の先には、
なんと巨岩をくり抜く隧道が現れた。
これは予想外の大型物件だ。仮に「第一隧道」とする。
切通しではなく隧道なのがいい。
貫通しており、
先へ抜けてみよう。
第一隧道内部は完全な素掘りで、
結構な高さがある。
ここがサンドポンプにより鉱送した輸送パイプの跡だ。
延長の風景は・・・。
なんと第一隧道を抜けた先には次の隧道が見えるではないか!
その間は約50m。
驚きの隧道二連だ。
これは第二隧道とする。
第一隧道を出た途端、
次の第二隧道の坑門にあっけにとられたが、
更に驚くべきことに右手の土手に穴のようなものがある。
これはもしかして・・・。
これは紛れもなく坑口だった。
第一隧道と第二隧道の間に「T」字方向に、
坑口が出現した。
しかもレイルが埋没している。
これは通洞坑だ。
風の流れは無いが、そこそこ環境は良いようだ。
それでは突入する。
坑内は屈んで歩くほどの高さで、
脛まで水没する。
臭いもなく、滴る鉱水もないが空気は淀んでいる。
坑道内は30m程で埋没し進めない。
コウモリも虫もいない上、
酸素濃度は17.6%と問題があるので即撤退した。
坑道内から坑門を望む。
レイルがあり、そして陽射しが差し込む。
坑内は十分な装備がないと危険だ。
(今回、酸素濃度計の警報アラームが作動しましたので絶対に入坑しないようお願いします)
坑道から脱出し第二隧道を潜る。
こちらは第一隧道に比べて半分以上埋没している。
頭上に注意しながらその先を目指す。
第二隧道を抜けると一気に軌道敷きは不明慮となる。
しかしこの先に坑口があるはずなので、
更に上流を目指す。
軌道跡に沿って進むと木製の橋桁跡に到達した。
法面に沿って補助的に軌道を導いていたのだろう。
この先右岸に渡る。
軌道跡の下部には鉱山事務所があったはずだが、
小さな小屋が2軒あるのみだった。
坑口の場所を推理しつつ、斜面を追っていると、
埋没した配管を発見した。
その奥を辿ると・・・
落ち葉の堆積する草木の無い斜面の上に、
不気味に開く坑口を発見した。
これが「大切坑」だ。
大切坑のその先でレイルは果てていた。
精錬所から続く軌道跡に隧道、そして坑口と、
ここは鉱山跡の原風景だ。
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