深い深い風洞
歌志内市街を望む高台が、
今回のスタート地点となる。
4月終わりというベストな時期に訪れた。
当初のアクセスロードは広い林道だ。
旧地形図では西山沢川の左岸に炭鉱施設があったようだが、
歌志内側からアクセスすると、到達するのは右岸となる。
最悪、水没しても渡渉する覚悟だ。
延々林道を歩く。
付近は現在でも火力発電用の石炭を採掘している。
最近の地形図をもってしても、地形の大変化が目の前に広がる。
大規模な露天堀を見下ろしながら歩く。
かなり登ったが、まだまだ1/5だ。
到達までに多大な労力を必要とする。
露天掘りを抜ける基幹林道から外れて、
旧道を行く。
当時の方々もこの道を歩いて歌志内市街地まで行ったはずだ。
峠の下りに差し掛かり、ようやく第一の遺構だ。
かつての集落を見下ろす位置にあった記念碑の台座だ。
碑は現在、市街に移設されている。
1時間以上のアプローチにより、
西山沢川を見下ろす場所に来た。
眼下には炭鉱集落跡が見える。
川まで下るとそこには炭鉱関連の廃墟があった。
選炭施設だろう。
標高は220m付近。歌志内市街が60m付近なので相当な山中だ。
川向うに広がる選炭場。
沢は3〜4mの川幅だが、雪解け水で激流だ。
どうやって渡渉しようか・・・。
これが答えだ。
倒れかかった倒木つたいに向こう岸に飛び降りた。
これで左岸の調査を開始する。
選炭施設は酷く荒れている。
RC造のものは立派に残存しているが、
すでに全景は想像できない。
左岸の更に上流を目指す。
点在する遺構を超えて、
2か所の坑口を目指そう。
沢向こうにも炭鉱跡地が広がる。
上流で再び右岸に渡渉する必要がある。
しかし激流だ。
少し大きな遺構が現れた。
RC製の小屋だ。
火薬庫ではない遺構のようだ。
苔に覆われた小さな廃墟だ。
すっかり森に還ろうとしている。
内部を覗いてみよう。。
ブロックで組まれた内部。
風呂のような遺構があるが、
その目的は不明だ。
近くには崩れた坑口があった。
隙間なく埋没し、風の通りもない。
ここから西山方面に1km、標高400m付近にも坑口の記録がある。
その坑は今回諦めた。
川向いに大きな丸い遺構が見える。
再び倒木を利用して渡渉する。
なお、水深は1m程度場所もある。
道なき笹藪を登り丸い遺構に近づいた。
これは風洞だ。
しかも相当の大きさだ。
延長は50m程度か・・・。
上部に扇風機室があるはずだ。
たぶん頂上からは一気に坑道へ下る斜坑が延長しているはずだ。
予想通り、扇風機室かその制御室があった。
もう痕跡は薄い。
ここから直下にある煙道を覗いてみよう。
これが新歌炭鉱 風洞直下の煙道である。
恐ろしい角度で数百mは落ち込んでいるはずだ。
さすがにこれは下れない。
残る遺構を見ながら炭鉱住宅街に戻る。
閉山からおよそ60年。
新歌は現状のまま時間が過ぎていきそうだ。
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