トップへ
日本の伝統芸能私考
少し日本の伝統芸能について考えてみようと思いました。

そう思って書き始めたのですが、この年末年始(平成二十〜二十一年)NHK放送の歌舞伎番組の内で「矢車会」公演(平成二十年五月二十七日、歌舞伎座)が出色の大きな話題であり、私も既に録画したものと併せて「生」ではありませんが感動の舞台を見る事ができたのでその事をまずご紹介したいと思います。
公演に至るドキュメントが、NHK教育ETV
「弁慶の復活〜中村富十郎父子 勧進帳に挑む」が、夏頃放送され録画してありましたので様子は判っていましたが全体を見られたのは有難いことでした。
「矢車会」については歌舞伎公式サイト「歌舞伎美人」にリンクさせて頂きましたから「中村富十郎さん」の文をご覧ください。
その他、多くの歌舞伎フアンの「ブログ」がありますから、ご覧になると実際に歌舞伎座での実感が伝わってきます。

「矢車会」 五月二十七日(水)一日 各演目一回限り 歌舞伎座
昼の部
「寿三番叟」
  三番叟 歌昇  千歳 錦之助
「雪傾城」
  傾城 芝翫 禿  渡邊愛子
「勧進帳」
  武蔵坊弁慶   富十郎
  源義経      鷹之資
  亀井六郎  染五郎  片岡八郎  松緑  駿河次郎  尾上右近  常陸坊海尊  段四郎
  富樫左衛門   吉右衛門
   後見  錦之助
夜の部
「寿競べ」
  梅玉 魁春
「お祭り」 鳶頭 染五郎 鳶頭 松緑 芸者 福助
「連獅子」
  狂言師左近後に親獅子の精  富十郎
  狂言師右近後に仔獅子の精  鷹之資
  僧蓮念 橋之助 僧遍念   勘三郎

【長唄連中】(雪傾城・勧進帳・連獅子)
 (唄)今藤尚之 他 
 (三味線)芳村伊十七 他
 (囃子)笛 藤舎名生  (鼓)田中傳左衛門 田中傳次郎 田中長十郎 田中源太郎 堅田新十郎 田中傳八郎  (締太鼓)望月長左久 望月太左吉 田中傳九郎

 清元延寿太夫 他  箏曲 山勢松韻 他

富十郎傘壽(八十才)鷹之資(十才)の競演と、渡辺愛子(五才)の父子出演に、歌舞伎関係者と、能・片岡九郎右衛門氏が挙って協力一回限り、二度と無い舞台が鬼気迫るほどの気迫の舞台となりました。

各演目の感想は続いて書く事に致します。以降敬称は略します。
H.21.2.1

「矢車寿三番叟」
  中村歌昇 錦之助 振付 藤間勘祖
ご両人は、三代目中村時蔵ファミリーの従兄弟です。三代目の五人の子供は戦後の混乱期と四代目の思わぬ早世、映画界に移った「中村錦之助・嘉津雄」廃業した「獅童」(現獅童の父)などの事情の渦中で、諸先輩や親族の援護の中「萬屋」の屋号を見事に守り抜いて活躍中です。
「中村錦之助」は、平成九年、世界は違えど映画演劇界で高名を残し兄四代目時蔵の甥達の後ろ盾になってくれた名を伝えるべく二代目を襲名しました。
「歌昇」は、歌舞伎界では張りのある口調と、太めの体型を活かした、赤塗り大形な、可笑しみのある憎めない悪脇役に欠かせない存在です。
「矢車三番叟」は、素踊りで、矢車会の為の創作かと思いますが、歌昇の三番叟は非常にメリハリのある所作で、身体のこなし、手足の動作が見事でした。目線も厳しく、これほどの踊り手だとは知らなかった私は引き込まれました。対する錦之助の千歳は剛に対する柔といった対照で誠に叶った美しい姿でありました。
今若手では「松緑・菊之助」が踊りの名コンビがありますが「歌昇・錦之助」のコンビも再度見たいとの思いを大きく持ちました。

「雪傾城」
八十六才の芝翫が五才の愛子を見守りながらの舞台。
三十分を勤めました。「よくやりました」という言葉しかありません。

次は、いよいよ
「勧進帳」七十五分を、どうやり通したかという凄まじいドキュメント。
花道から鳥屋に入ってきた富十郎の「やったよー!」という言葉が総てを語ります。
これは書く事が多いのでページを換えます。 H21.2.2
トップへ 勧進帳へ